2016年11月27日

『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』大人の夜に、ジャズ・ボーカルはいかが?

素敵な人と過ごす大人の夜に



評価:★★★★★ 5.0

ご紹介するのは女性ボーカル「ヘレン・メリル」。
スモーキーボイスとは、この人のためにある言葉です。
人呼んで「ニューヨークのため息」オシャレでセクシーで切ない。
女性が男性にアプローチしようという夜に、流れていたら良いムードになれるのではないかと・・・・・

ヘレン・メリル
Helen-meril.jpgヘレン・メリル(Helen Merrill、1930年7月21日 - )は、アメリカ合衆国の女性ジャズ歌手。本名はイェレナ・アナ・ミルチェティッチ(Jelena Ana Milčetić)。その歌声は、しばしば「ニューヨークのため息」と評される。
ニューヨーク生まれ。両親はクロアチア人移民だった。14歳でブロンクス区のジャズクラブで歌うようになり、1946年から1947年にかけて、レジー・チャイルズ・オーケストラ(Reggie Childs Orchestra)というビッグバンドの一員として活動。1948年、クラリネット奏者のアーロン・サクスと結婚するが、1956年に離婚。2人の長男アラン・メリルは、後に元ザ・テンプターズの大口広司と共にウォッカ・コリンズで活動したシンガー・ソングライター、ギタリスト。
1954年12月22日から24日にかけて、初のリーダー・アルバム『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』を録音。1956年に早世するトランペット奏者のクリフォード・ブラウンが全面参加し、クインシー・ジョーンズが編曲を担当。(wikipediaより引用)


感情を抑えたクールなささやき声は、抑制された低音部の煙るような歌となって、聞くものの心を人恋しい思いで満たします。
ノラジョーンズの声が好きな人や、シャーデーのジャージーな歌が好きな人なら、気に入ってもらえると思います。

CD【ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン】曲目
1. ドント・エクスプレイン
2. ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
3. ホワッツ・ニュー
4. 恋に恋して
5. イエスタデイズ
6. ボーン・トゥ・ビー・ブルー
7. スワンダフル


バックを固めるのも、
kurifo-do.jpg
トランペット:クリフォード・ブラウン






Gil-Evans.jpg
ピアノ:ギル・エバンス




Quinsi.jpg
編曲がマイケル・ジャクソンのプロデュースで有名になる、
若き日のクインシ−・ジョーンズという豪華なもの。


この名盤の誉れ高い作品の中から、おすすめする一曲目は「ホワッツ・ニュー」

「ホワッツ・ニュー」


そして何と言っても「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」。
この曲は、何度聞いても胸の奥でかすかな甘い痛みを呼び覚まします。
女性側からアプローチをするに相応しい、大人の女の秘めた思いを聞くうちに、知らぬまに彼氏の頬を涙がぬらしていることでしょう。
「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」

You’d Be So Nice To Come Home To

You’d be so nice to come home to(あなたが待つ家に帰れたら幸せ)
You’d be so nice by the fire(あなたと一緒に暖炉のそばにいれたら幸せ)
While the breeze on high sang a lullaby(そよ風が子守唄を歌うように)
You’d be all that I could desire(あなたがいてくれたら、それが私の望むすべて)

Under stars chilled by the winter(星空の下凍てつく冬空の下でも)
Under an August moon burnin’ above(八月の燃える月空の下でも)
You’d be so nice, you’d be paradise(あなたがいてくれれば幸せ、あなたがいれば楽園)
To come home to and love(あなたが待つ家とあなたの愛さえあれば)

この歌を聴いてあなたを好きにならない男なら、いますぐ殴ってしまいなさい。

名曲「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」
下の動画でさまざまな歌手が歌っています。どうぞ・・・・・

ジャズは自由な歌い回しが楽しいと思います。よろしければジャズもお聞き下さい


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posted by ヒラヒ at 20:09| Comment(4) | TrackBack(0) | ジャズ音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月17日

ザ・ケルン・コンサート

リリシズムとはこういうことだ。




評価:★★★★★  5.0点

最初の一音から美しい。

ジャズピアニスト、キース・ジャレットのピアノ・ソロ演奏です。
ただバックグランドミュージックとして流しておいても、自然にその空間は癒しの場に変わるでしょう。

しかし、ここに収められた音楽は、コンサートで演奏された一期一会の響きです。

楽譜もなく、出てきた一音、フレーズを元に、次の音が繰り広げられる綱渡りのような展開を追っていくうちに、最後の一音の消え行く響のなかに、深く静謐なリリシズムを見出すことでしょう。
できれば、初めて聴くときには、この演者が次に何をするのか予想できないという状況を想像しながら、コンサート会場の席に自分が座っていると思って、紡がれる一音一音を丹念に追いかけて見てください。
この演奏が、緊迫感に満ちて、スリリングなバランスの上で、奇跡的な完成度を持っていることに同意していただけると思います。


ピアノの持つロジカルでいながらヒューマンな、まさに音楽が形になったような楽器のポテンシャル。

キース・ジャレットの音楽的素養の蓄積を基に、誕生し消滅するリリシズム。

静かな深い森の中に明滅する光のような、音の連なり。

その演奏を聴き―

西洋文明にとって、音楽とはこういう事なのだなぁと・・・なぜか、そんな感慨を持ってしまいます。

この音の前ではただ黙るしかありません。


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posted by ヒラヒ at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月02日

グリニッジ・ヴィレッジのアルバート・アイラー

叫び



評価:★★★★★  5.0点

ムンクの叫びという絵を見ると、いつもアルバートアイラーを思い出す。
壊れてしまったのだなと思う。
聞く者の脳髄を直接痺れさせるような長い長い叫び。
恐怖と苦悩を叫ぶ事によりかろうじて均衡を保っていたのだろう。

ジャズと言うジャンルは、どこか難解な印象があるかもしれない。
しかし実はシンプルな演奏方法で、メインテーマを演奏した後、基本的なコード進行とリズムの中で、それぞれがソロを自由に演奏する。

それはブラック・カルチャーに共通する、コールアンドレスポンス(呼びかけと返答)であり、現在のラッパー達やヒップホップダンスのバトルと同様の形式の中で、自らを主張していくものだ。

ジャズが難しいと感じてしまうのは、そのバトルが言葉ではなく、楽器でなされる所に在るのではないか。
ボーカルをまず探してしまう、現代の軽音楽になれた耳には、バスドラムの音に呼応して金切り声を上げるトランペットの音を追うのは難しいかもしれない。

しかし、丹念に音を追って行けばその演奏の中に、何を表現してもいいという自由があふれていることに気づくはずだ。

つまり、実際のジャズとは、大声で好きな事を言いまくるという、音楽のことだと考えている。

それを楽器でしなければならなかったのは、奴隷としての長い歴史を背負わされたアフリカ系アメリカ人の歴史的経緯と、不可分な理由による。

白人にとって気に食わない言動一つで、縛り首になってしまう黒人達にすれば、しゃべることすら自由ではない。

そんな黒人達にとって、自由に怒りや悲しみ苦しみを表出できるのが、ジャズだったのだ。

つまり、ジャズの中には根本的に言葉にできない感情の奔流で、あふれているのである。
ちなみに言えば、黒人の音楽にはブルースにしてもロックにしてもラップにしても、同様の感情が潜んでいると考えている。
本来ブラックミュージックは、黒人達のどうしようもない社会に対する怒りの表出としてある。

それゆえ、白人達がどれほど技術的に模倣しようと、その表現にどこか軽さや薄い響きが在るのは、怒りを持ちようがないという理由によるのだろう。

そして、このアイラーである。

この音を聞けば分るはずだ。

誤解を恐れずに言えば、アイラーは死んで良かったのだと思う・・・…
この人はもう生きられない。
生きろというのも酷だ。
こんな魂を引き裂かれたままで・・・こんなに苦しい叫びを上げ続けている人に、生きろと強制する権利は誰にもない。

今、彼の魂が天国で心安らかな日々をすごしていると信じている。

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posted by ヒラヒ at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする