2018年12月19日

オスカー受賞映画『シャイン』ジェフリー・ラッシュの天才音楽家の実話/あらすじ・感想・解説・批判・ネタバレ・ラスト

ウソとホントとドラマとドキュメント

原題 Shine
製作国 オーストラリア
製作年 1995
上映時間 105分
監督 スコット・ヒックス
脚本 ジャン・サルディ
原案 スコット・ヒックス



評価:★★★  3.0点



この映画は結構強烈です。
親子関係が複雑な方には、いかがなもんかと・・・・・ 

しかし、そんな天才ピアニストの苦しみから、精神疾患を得た姿をジェフリー・ラッシュが鬼気迫る姿で演じ、アカデミー主演男優賞に輝いたほか、各国の映画賞を受賞しました。

その演技は一見の価値があります。

そんな力のある作品だと感じつつも、個人的な評価が3.0の理由は・・・・・・・また、のちほど。

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映画『シャイン』ストーリー


オーストリア、メルボルンの激しい雨の晩。一軒のワイン・バーで店員のシルヴィア(ソニア・トッド)は全身ずぶ濡れで店を訪ねたデイヴィッド・ヘルフゴッド(ジェフリー・ラッシュ)の面倒を見る。そして、精神的に病んだ彼を送リ届けた――

時はさかのぼり、デイヴィッドの少年時代(アレックス・ラファロヴィッツ)。ユダヤ人一家でスパルタ教育の父ピーター(アーミン・ミューラー=スタール)から、ピアノを叩きこまれたディヴィッドは、地元アデレードの音楽コンテストに参加していた。父ピーターはアウシュビッツ収容所に入れられ、彼の夢だった音楽家を断念したが、その道を息子に託していた。コンテストでは優勝は成らなかったものの、審査員のローゼン(ニコラス・ベル)に才能を認められ、彼の下でレッスンを始めた。その評価は高くなりリチャードが十代(ノア・テイラー)の頃には、州の音楽コンクールに優勝するまでになり、アメリカの音楽留学に招待される。デイヴィッドは家族の助けもあり留学を志すが、父ピーターだけは「家を出るのは、家族を破壊することだ」と言い張り、留学を許さず暴力をふるった。落ち込んだディビッドは、地元の小説家キャサリン・プリチャード(グーギー・ウィザーズ)と知り合い親交を深めた。そして再び、デイヴィッドはイギリスの王立音楽院への留学のチャンスを得た。再び強硬に反対する父ピーターに苦しむデヴィッドだったが、キャサリンの励ましもあり家出のように故郷を後にした。ロンドンの王立音楽院ではセシル・パーカー教授(ジョン・ギールグッド)に師事したデヴィッドは、愛弟子として鍛え上げられその才能を開花させていった。そしてデヴィッドは、その将来を賭けたコンクールの演奏曲に、幼少時代から父に将来弾きこなせと言われていたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を選ぶ。激しい特訓の末、コンテストでこの難曲を完璧に演奏したデイヴィッドだった。
しかし、その直後彼はピアノの前に崩れ落ちた。彼の精神の限界を超え発狂してしまったのだ。

それから10数年をイギリスの精神病院で過ごしたデイヴィッドは、オーストラリアに戻れるまで回復したものの、父ピーターは彼を迎え入れず、病を再発した彼はオーストラリアの精神病院に入院する。そこで彼の音楽的才能を知る女性に出会う。彼女はデヴィッドを自宅に連れ帰ったものの、その病は彼女の力だけでケアできる状態ではなく、彼をホテルの一室にあてがった。しかし、デヴィッドはしばしば外へとさ迷い出て行く。
そして冒頭のレストランへもそんな時に立ち寄ったのだった・・・・・

映画『シャイン』予告

映画『シャイン』出演者

デイヴィッド・ヘルフゴット(成人期ジェフリー・ラッシュ:青年期ノア・テイラー:少年期アレックス・ラファロウィッツ)/ピーター・ヘルフゴット(アーミン・ミューラー=スタール)/ギリアン(リン・レッドグレイヴ)/セシル・パーカー(ジョン・ギールグッド)/シルビア(ソニア・トッド)/キャサリン・プリチャード(グーギー・ウィザーズ)/べン・ローゼン(ニコラス・ベル)

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映画『シャイン』感想


これは、「巨人の星=スポ根・ピアノ版」です。(ホント・・・ダト・・・オモウ)

ちゃぶ台がバンバン飛び交います(ウソ・・・ですが、外国にちゃぶ台があったらやってるなト・・・・)

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アウシュビッツを生き延びたポーランド人の父親、自分の音楽の夢を子供に仮託して千本ノックならぬ千本ピアノの大特訓(ウソ・・・・・タブン近い事はしたと思うんですが・・・・実際には描かれません)

その甲斐あってコンクールにも勝って、海外留学の道も開けるのだが「父を乗り越えてから行けと」ばかり、息子を手元に置きたがる父(ホント。どうもアウシュビッツのトラウマもあり、家族離散がイヤ?)

ついに風呂桶で「ウンチ」する息子!(ホント)

濡れタオルでシバキまくる父!(ホント)
ヒッシトばかりに抱きしめ「愛している」という父!(ホント)

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ついに家を出る決心をする息子に放つ、父の捨て台詞「お前はこの家族を捨てたんだ!そのドアを出たらもう戻る所はない!」(ホント)

泣く明子ね〜ちゃん(もちろんウソ・・・でも、姉妹はそんな顔をします)
父を捨てても選んだ海外留学、ピアノ虎の穴(ウソ)、そのコンクールで、ついに手にした栄冠!(ホント)


しかし、そのコンクールで超難曲ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第三番」を弾き終えた直後、崩れ落ちる息子!(ホント)
ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第三番」

そして、精神を病んだ息子は「裸の大将」のようなシャベリに(ホント)
 
入院加療のすえ、ハッキリとした説明も無くオバチャンと退院するのだが、またハッキリとした理由も語られず一人暮らしに(ホント)

そして雨の晩一人でフラフラしていて見つけたバー(レストラン?)でピアノを見つける息子、だがその日は帰る(ホント)

また別の日にそのレストランに行き、ピアノで「クマンバチの飛行」バカッぱやバージョンを弾くと、みんなブットブ!(ホント)
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ウケたので有名になって、結婚もする(ホント)

最後は墓参りに行くけど、その墓が父親の墓だったので、あ〜〜〜死んじゃってたの?(ホント)

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という感じの映画で、この息子は実在の人物、デイヴィッド・ヘルフゴット。(ホント。実在の人物)

オーストラリアではチョ〜ゆうめいなんだろうナ〜と想像をした。(ソウゾウ)
ちなみに映画の中の曲は本人サン演奏(ホント)

こんな事で・・・・・うるさいほど(ホント・ウソ)と書かせて頂いたが、伝記モノの映画で存命の人物を描く場合、往々にして誠実に真実を伝えようとするあまり、羅列的な説明になりがちになって、ドラマとしての強さが無くなると思う(ソウ思った)
でも、ホントのホントって何?って思う(オモッタ)

この映画にしてから、主人公の家族(姉妹)から文句が出て「オト〜サンはこんな悪者じゃない」って内容の本が出たらしい(ホント)

そんなこんなで、ホントってホントにホント?
 
そう思えば、この映画のテーマ「子供は親という不可避の運命を背負って生まれ、その一人一人違う運命を最終的に肯定することで輝く=シャイン」というお話ならば(たぶんホントだと思う)、何も事実にコダワリ過ぎる必要もないかなっと・・・・
 
いっその事、ドラマとして「テーマの真実」を伝えた方が、うまく伝えられるのではないかなと・・・・そう思った(オモッタ。ホント)

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映画『シャイン』解説

映画の個人的評価

この映画は実在のオーストラリア・ピアニストを描いた作品です。

しかしその内容は、イタリア映画『父/パードレパドローネ』と同様に父と息子の対立関係を描いて、強いインパクトを持って見る者に迫るものです。
関連レビュー:父と息子の厳しい関係
『父/パードレパドローネ』
イタリアの巨匠タビリアーニ兄弟の作品
イタリア人言語学者の実話


また、アカデミ賞―で主演男優賞に輝いたジェフリー・ラッシュの演技も特筆すべきものだと感じました。
この『シャイン』と、第83回アカデミー作品賞で4冠を獲得した『英国王のスピーチ』によって、ジェフリー・ラッシュの演技力は世間に認められたというべきかと思います。
関連レビュー:ジェフリー・ラッシュの名演
映画『英国王のスピーチ』

英国王ジョージ6世の実話映画
ジェフリー・ラッシュとコリン・ファース共演


しかし――
それでも――

上の感想でも書いたように、映画ドラマとした場合往々にして抜け落ちる情報が有るもので・・・・

この映画もまた、評論家やその家族から事実と違うということで厳しく糾弾されているようです。
たとえば、主人公の妹マーガレット・ヘルフゴットが、その著書(右)で主張するのは、父とディヴィッドの関係は良好だったし、敵対していなかったというモノです。

そしてまた、マーガレットの主張にもかかわらず、その家族が言うのは映画に描かれた父ピーターの姿に違和感を感じなかったというモノです。
ここには、家族、血族の持つ、メンバー相互の愛憎の濃淡やシガラミも感じたりします。

つまりは、そんな一例を見ても現実を描くことの難しさを思わずにはいられません。

映画という、ビジュアル=映像が主体のメディアで、言葉で解き明かす事ですら困難な、そんな複雑で微妙な事情を説明しきれるものでしょうか?

結局は、説明量の少なさから、単純なドラマとして再構築せざるを得ないのではないでしょうか。

やはり映画は現実から離れたフィクションとして成立させるべきではないかと思ったりして、評価3とさせて頂きました・・・・・

>
関連レビュー:映画と伝記の関係
『アメイジング・グレース』
イギリス奴隷貿易の廃止の闘い
『アメイジング・グレース』名演紹介

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映画『シャイン』解説

デイヴィッド・ヘルフゴット本人の紹介

ヘルフゴットのオスカー受賞式での演奏


ヘルフゴットのドキュメンタリー映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』予告編



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以下の文章には

映画『シャイン』ネタバレ

があります。
(あらすじから)
助けてもらった翌晩、再びバーのドアを叩いたデヴィッド。
突然ピアノの前に座ると、超絶的な速さで「くまん蜂の飛行」を引き聞く者の度肝を抜いた。

そんなデイヴィッドのピアノの腕を見込んで、彼は店の専属ピアニストとなり大評判となる。それは新聞報道として広まり、ある日父も訪ねて来た。しかし父を許せなかったデヴィッドは彼を追い返した。
そんなある日、シルヴィアは星占い師のギリアン(リン・レッドグレイヴ)を紹介し、二人は恋に落ち、愛し合い、結婚する。

映画『シャイン』結末・ラスト

妻の励ましを受けデイヴィッドはついにコンサート・ピアニストとして復活した。
しかしそのコンサート会場には、父の姿はなかった。
彼は妻とともに死んだ父の墓を訪れたところで映画は終わる。
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posted by ヒラヒ・S at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | オーストラリア映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月17日

『レイルウェイ運命の旅路』日本軍収容所の英国兵の実話/感想・ネタバレ・あらすじ・解説

贖罪と救済の唯一つの方法



評価:★★★★   4.0点

この映画は、戦争経験者がそのPTSD(心的外傷後ストレス障害)を克服する道を示した、感動の物語です。
ここには戦争従事者であればこそ語れる、真実の救いの道が、一筋の光明の如く輝いていると思います。

<レイルウェイ 運命の旅路あらすじ>
1980年イギリス、エリック・ローマクス(青年期エリック・ローマクス/戦後コリン・ファース)が列車に乗った時に旅行中のパトリシア(ニコール・キッドマン)に出会い結婚する。二人の結婚生活は、エリックの異常な行動を見たパトリシアは、その原因を知るため第二次世界大戦をエリックと共に戦い日本軍捕虜となった、戦友フィンレイ(ジェレミー・アーヴァイン/戦後ステラン・スカルスガルド)に会う。フィンレイが語ったのは、「戦争は痕跡を残す」という事実だった。エリックは捕虜として、クワイ河を渡るタイとビルマを結ぶ泰緬鉄道の建設に従事させられ、さらにスパイ容疑を受け厳しい拷問を経験していた。その収容所で通訳をしていた日本人・永瀬(青年期・石田淡朗/戦後・真田広之)がまだ生きていて、タイで戦争体験を伝える活動をしていたると知った。エリックは自らの過去を清算するため、永瀬を殺す決心をし一人タイへと向かう・・・・・・・

(2013年/オーストラリア・イギリス/2013/116分/監督ジョナサン・テプリツキー/脚本フランク・コットレル・ボイス、アンディ・パターソン/原作エリック・ローマクス )


雑誌『エスクァイア』の1995年度ノンフィクション賞を受賞した、エリック・ローマクスの自叙伝『TheRailway Man』を映画化したものです。戦争体験者だから語れる言葉に満ちています。




この映画の舞台は第二次世界大戦中、泰緬鉄道建設にあたり、1942年から1943年にかけて、タイ・ビルマ間の鉄道建設予定地で、日本軍が、鉄道建設に従事した連合軍の捕虜やアジア人労働者多数を動員し、多数の死亡者を生じせしめせた歴史的事件を背景としています。
この泰緬鉄道の工事中に、約1万6千人の連合軍の捕虜が、飢餓と疾病と虐待のために死亡したとされ、アジア人労働者の死亡数も、約4万人 - 7万人と推定されているようです。
参考:Wikipedia "泰緬鉄道建設捕虜虐待事件"

この泰緬鉄道の建設を描いた映画は1957年公開の英・米合作映画、第30回アカデミー賞作品賞受賞した、名匠デヴィッド・リーン監督作品の「戦場にかける橋」があまりにも有名です。
この下の動画を見ただけでも、デヴィッド・リーン監督の絵作りに感動します。
この映画は、戦争の無為さを表現した名作だと思います。

テーマ曲『クワイ河マーチ』はあまりにも有名



そんな何度も映画として表現されてきた、泰緬鉄道の建設に使役されたイギリス軍捕虜の体験談を描いた物語です。
コリン・ファースが演じる捕虜時代のPTSDに苦しむ主人公の姿が、迫力を持って迫ってきますし、加害者側の日本人を演じる真田広之も、誠実な贖罪の心を表現して地味ながら心に沁みる姿を見せます。
さらには、ニコール・キッドマンが戦争従軍者の妻を演じ、家族にまでその影響が及ぼされる深い苦悩を表します。

結局、この映画の前半が語ったのはたとえ勝利者の側であっても、戦争に参加させられた人間は、かくも深くその精神とついは人生をも破壊されるのだと語っていると思います。

関連レビュー:日本軍捕虜収容所の映画
『戦場にかける橋』
反戦映画の古典的名作
アカデミー賞受賞作

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!!!!!!!以下ネタバレが有りますご注意下さい!!!!!!!!
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そして、被害者と加害者が戦後40年を経て、直接対決をするシーンの二人の表現力は凄いとしか言いようがありません。
特にコリン・ファースの発する殺気は慄然とする迫力があり、それを受ける真田も静かな諦念を示してリアリティーに満ちたものです。

しかし、この二人の対峙は結局、加害者が贖罪のために生きてきたという真実を、被害者が認めさらに許したとき、初めて被害者にも心の平安が生まれ、彼の戦争が始めて幕を下ろしたのです。
このラストで示された、相互に交わされた手紙の言葉は、聞くものの心を強く打つものです。
現実に傷つけあって、苦悩の元凶である敵を、現実世界において許しえたのだという真実を伝えることこそ、この映画の目的だったと信じます。

そして、さらに敵を許すこと以外、自らの苦悩から救われる道も無いということを示した、奇跡の映画だと思います。
結局、贖罪と救済の唯一つの方法は、敵を許すこと以外に道がないと語っていると思うのです。


また、この映画は戦争というものが、どれほど酷く人の人生に傷跡を残すかを語っており、この経験をした人々は敵を許してでも「争い=遺恨」を減らす方向で努力せざるを得ないという真実だと思うのです。

戦争体験者が徐々に少なくなると同時に、国家間の対立が強くなり、右翼的な言動が増えて来たのは、戦争がどれほどの根源的な被害を生むかを知る人々が、年々亡くなられて行くのと無関係ではないように思います。

だから今こそ、ぜひ戦争の痛みの実話物語をその眼で確かめて、戦争が「絶対悪」だと認識してほしいと思うのです・・・・・・

映画「レイルウェイ 運命の旅路」原作者の妻が語る真実とは


関連レビュー:日本軍捕虜収容所の映画
『不屈の男 アンブロークン』
収容所の不屈の男
アンジェリーナ・ジョリー監督


関連レビュー:日本軍捕虜収容所の映画
『戦場のメリークリスマス』
捕虜収容所の東西対決
大島 渚 監督


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posted by ヒラヒ・S at 21:38| Comment(4) | TrackBack(0) | オーストラリア映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月23日

『月のひつじ』それぞれのアポロ計画/あらすじ・感想・解説

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評価:★★★★   4.0点

え〜まいど馬鹿馬鹿しいお笑いを一つ・・・・・
この間ある社長さんと話していて、仕事は何ですかとお尋ねしました所、飛行機の製造に関わる仕事だというので、それは大変なお仕事ですね、機体関係ですか?いいえ。エンジン関係?いいえ。コンピューター関係?いいえ。
じゃぁ〜なんなんですってぇ〜と、結局の所、飛行機の床を作ってるって話でして・・・・・こちらとしても、肩透かしってんでしょうか、な〜んだ床か・・・・・・ってガッカリしたりして。

ま〜それはそれとして、アポロ計画っていうものがありまして、これはアメリカとソ連が角突きあわせている「冷戦時代」に、ソ連のガガーリンが先に宇宙に行っちゃったモンで、ヤンキーさん達の焦ったの焦んないのって、焦ったんですがね。
それで、アメリカとしても負けチャられなイッテンデ、時のケネディー大統領が、あっちは地球の周りを回ったってんだったら、こっちは月に行ってやら〜ベラボウメって言う訳でして。
1969年7月には、いよいよ最初の月面着陸へ向けてアポロ11号が発射されるという、世紀の大イベントというヤツで、いよ〜大統領!

冗談抜きで、このときには世界中がドキドキして、日本でも特別番組が組まれたぐらい。真夜中だというのにTVにかじりついたりして、な〜に当時の白黒TVじゃよーく見えやしないんですがね。

ま〜考えて見ればこのアポロ計画の主役は、NASAのあるヒューストンで、この計画の大スターはアームストロング船長なんかの宇宙飛行士達なんですよね。
でも、この前たまたまTVで見た映画がナカナカ良かったんです・・・・『月の羊』って題名はど〜いう意味かよく分からないんですがね、原題は「The Dish=お皿(パラボラアンテナの別名)」と言いいましてね。
ひょんなことから、オーストラリアの片田舎のパラボラアンテナが、アポロ計画で重要な役目を仰せつかるというお話なんですが・・・・・・
あらすじ
1969年7月世界初の月面着陸へ向けて、アームストロング船長ら宇宙飛行士を乗せたアポロ11号が、アメリカヒューストンから打ち上げられた。その月面着陸の瞬間を世界中に生中継するため、衛星中継基地をアメリカ国内に準備していた。しかし、打ち上げスケジュールが遅れたために、電波をキャッチすることが出来るのが地球の南半球側になってしまった。そこで白羽の矢が立ったのが、オーストラリアの田舎町パークスにそびえ立つ巨大なパラボラアンテナであり、世紀の瞬間が放送されるか否かはアンテナ施設に勤めるオーストラリア人3人、所長クリフ(サム・ニール)、電子機器担当グレン(トム・ロング)、アンテナ操作担当ミッチ(ケヴィン・ハリントン)、とNASA職員のアル(パトリック・ウォーバートン)手に委ねられた。(2000年/オーストラリア/ロブ・シッチ監督)

正直、言いましてね、あっしらみたいなものでも、いままで散々アポロの映画を見てるじゃありませんか。
それに較べりゃ、圧倒的に細け〜、小っぽけな〜、せせこましい、え〜言っちゃ悪いけどNASAが自動車工場のような大企業だとしたら、まるで隣の町工場みたいな話でしてね・・・・・正直、地味な話だな〜と思いました。


そんなこんなで、映画の登場人物も、所詮は枝葉の仕事だとかハスに構えたり、とどのつまり田舎町の施設だとか自嘲してみたり、ど〜せNASAなんか俺達を馬鹿にしているだろうと拗ねてみたり・・・・ど〜にも煮え切らないアンバイなんで、見ていてイライラしたりして。

ところが、話が進むにつれて、皆の心に矜持、プライドってんですか、そいつが見えてくるわけです。
そりゃ〜俺達はアポロの枝葉の、取るにたらね〜仕事かも知れね〜が、俺たちがいなくちゃアポロは月に届かないんじゃねぇのか!べらぼうめ〜という・・・・・・それはねぇ、落語で言うところの熊さん八つあんのような庶民の営みに対する、愛情とか、執着とか、つまりはテメエの生活に対して真正面から取り組む、そんな名もなき人々が大きな仕事を支えてるんだという姿に、思わずホロリと。

正直ね、もっとドラマチックにも作れると思うんですよ、よくよく調べたらこのパークス天文台って「アポロ13号」の事故の時にもずっと電波を追尾し続けたとか・・・・でもねそこを敢えて押さえて、脇役としての分を守って語っているところなんぞ、8代目桂文楽の落語を聴いているような粋な心持がしました。

そんなこんなで、ここで描かれるのは花形以外の人々にも、等しく役割があり、その仕事を全うすることで大きな仕事が完成するという誇りだったんでしょう。
それは、そのまま、庶民の誇りなんですな。
そんな一般大衆、一人一人の人生に輝きがあることを描いた、本当にいい話だと思いましたね。

そんな誰もが秘めた耀きを持つ様子を、一句
名月や いずれの胸にも 名月や
おそまつ。
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あイケね!忘れてた!
あの、飛行機の床を作ってる社長さんのことです。
この映画を見て反省しましてね、飛行機の床が抜けちゃ飛べません、大事なお仕事ですな〜なんてヨイショしに行きました。
そ〜したらさすが大人、何も言わずにお酒の準備とは恐れ入りましたがね、なかなか良い心持になったところでこの映画の話になりまして、いい映画なんだが題名が良くない「月のひつじ」とは、腑に落ちないと申しました。
そ〜したところ、そのお方が申しますには「飛行機に床がなければ飛べないように、アポロにもアンテナがなければ帰れません。」
つまりは「月のひつじ(必濡)」品という・・・・・・

ま〜あまり良いオチではありませんが、アポロと飛行機だけにキレイに落としたくないということでご勘弁願います。

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posted by ヒラヒ・S at 17:12| Comment(4) | TrackBack(0) | オーストラリア映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする