評価:★★★★ 4.0点
この映画はたまたま知り合った子供のために、犯罪組織を敵に回して戦わざるを得なくなった男の話です。
子供を守るために自ら死地に赴く主人公という、このストーリー展開はすでに古典的な筋立てとすら感じます。
そういう意味では、ストーリーや、設定として、特別新しい所は見当たりません。
そしてまた、この物語パターンの傑作として、リュック・ベッソン監督の「レオン」や、さらにはジョン・カサベテス監督「グロリア」など名作が思い浮かびますので、ハードルも自ずと高くなります。
逆に韓国映画の中で比べて見れば、普通よりも刺激とコッッテリ感が少ないほうだと思います。
それでも、他国に比べれば相当ドロドロですが・・・・・・
ともあれ、映画全体から見れば使い古した素材で、韓国映画的には低刺激の作品でしかないといえます。
しかし、それなのに、この映画に引き込まれている自分がいます。
一つには激しいアクションと、どぎつい演出によって、目を逸らすことができないという点があるように思います。
また、その激しいアクションに見合った情念を持った、主演のソン・ドヒョンの存在感が素晴らしい。
どこか、高倉健のような大スクリーンに映える、映画スターとしての「格」を備えているように見えます。
しかし何より、韓国映画特有の全てを焼き尽くすような「情念」の発露が、この映画に力を与えているように感じます。
この映画で描かれている、激しいアクションや、どぎついセリフ、エグさグロさは、すべて感情に直結しているのでしょう。
つまりは、主人公の「情念」が燃え上がるほどに、暴力が過激になり感情の爆発が強くなるという構図です。
そういう意味で、韓国映画は「情念=エモーションに」従って、全てが「エキセントリック」に表現されるということだと思うのです。
そういう意味で、アメリカや日本の猟奇的な物語とは表現の目的・方向が違うというべきでしょう。
もう一度その韓国映画の性格を整理してみます。
例えばこの物語の原型とも言うべき「グロリア」は、この映画同様に主人公が子供を守りますが、その理由はアメリカ人の持つ「正義・フェア精神」からだと思います。
そしてまた「レオン」の主人公は、フランス人が命を捧げても悔いのない「愛・アムール」ゆえに助けたのでしょう。
そう考えるとき、この韓国の主人公の行動原理は、自分が苦しみ傷を負ってしまったことに対する「恨み・復讐」の為のように思います。
この映画を良く良く見れば、この主人公はこの少女を助ける為というよりは、この少女を喪ってしまった自分の傷に対して、復讐せずにはいられないのだと語られていないでしょうか。
そういう意味で、ある共通の「物語原型」を通して、その作り手の民族性が表出されてしまうのは、面白くも恐ろしいモノだと感じます。
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