2020年09月26日

映画『ゴッドファーザー』イタリア系マフィアを描いた傑作!再現ストーリー/詳しいあらすじ・ネタバレ・ラスト・解説・オスカー受賞式

映画『ゴッドファーザー』(ストーリー・ネタバレ 編)

原題 The Godfather
製作国 アメリカ
製作年 1972
上映時間 177分
監督 フランシス・フォード・コッポラ
脚本 フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ
原作 マリオ・プーゾ


評価:★★★★★ 5.0点



この映画は、すでに古典映画として評価が確立した一本だ。

当時タブーだったイタリアン・マフィアの姿を重厚に描いて、ある種の神話的風格を持った映画として今に残る。

商業的にも批評的にも成功を収めたこの作品は、当時オスカー3冠に輝き、公開後50年を経とうとする今となっては、古典として歴史に刻まれる映画となった。
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<目次>
映画『ゴッドファーザー』ストーリー
映画『ゴッドファーザー』予告・出演者
映画『ゴッドファーザー』解説・映画評価
映画『ゴッドファーザー』解説・アカデミー賞授賞式紹介
映画『ゴッドファーザー』ネタバレ
映画『ゴッドファーザー』結末

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映画『ゴッドファーザー』詳しいあらすじ

god1.png屋敷の暗い書斎、ニューヨーク・マフイアの一家のドン、ビトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)が、知り合いの困りごとを聞いている。そこには、長男のソニー(ジェームズ・カーン)、次男のフレド(ジョン・カザール)、そして孤児を養子とし弁護士となったトム・ハーゲン(ロバート・デュヴァル)が傍らに控えていた。
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ドンは、自分を頼る陳情者の願いを聞き入れ、金はいらないが、友情と敬意を払い、自分が必要とした時には協力すると約束させ、その頼みを聞き入れた。

その庭では縁者や、友人、ファミリーのメンバーが集り、華やかに彼の娘コニー(タリア・シャイア)の結婚パーティーが繰り広げられていた。そこに、ベトナム戦争から戻った三男のマイケル(アル・パチーノ)も、恋人のケイ(ダイアン・キートン)を連れて式に現れる。
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しかしケイはコルレオーネ家がマフィアだとは知らず驚く。

その参列者の1人に、ドンの名付け子の歌手ジョニー・フォンテーン(アル・マルティーノ)もいた。
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今は落ち目になっている彼は、映画の仕事を得て俳優として華々しくカムバックしたいと、ハリウッドで権力を持つプロデューサー、ウォルツ(ジョン・マーレイ)に働きかけてくれと泣きつきに来たのだ。

ドンはその頼みを聞き入れ、ウォルツにコンタクトを取るが、激しい拒絶にあった。
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すると、ある朝ウォルツのベッドに60万ドルのサラブレッドの首が転がっていた。
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そして、フォンテーンは映画の役を獲得した。

そんなドンの下に、麻薬を扱うギャング、ソロッツォ(アル・レッティエーリ)が政界や警察にコネのあるドンと、提携したいと面談に来た。
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ドンは麻薬を扱うことは出来ないと断る。

するとソロッツォは、街頭でドンを強襲し数発の銃弾を撃ち込んだ。
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ソロッツォの後ろにはタッタリア・ファミリーがおり、ニューヨークの五大ファミリーは激動を迎え、コルレオーネ・ファミリーはその挑戦の矢面に立った。

ドンは一命を取り止め病院に入ったものの、息子マイケルが見舞いに駈けつけた時、そこには警護の者がいず襲撃の危険があり、咄嗟の機転で父の命を守った。
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長男のソニーは部下を指揮し、臨戦態勢を整え、タッタリアの二代目を殺した。
顧問役のトムは、和平の道を模索していたが難しくなり、ソニーと激しい口論となる。
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しかし、ソロッツォが調停を申し込み、その交渉役としてマイケルを指名した。
マイケルはファミリーの仕事に手を染めていなかったが、父と一家の危難にソロッツォの暗殺を買って出た。
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彼は交渉の場であるレストラン『ルイズ』に赴き、この大役を果たすと、父の故郷シシリーへ身を隠した。

マイケルはシシリー島の娘アポロニア(シモネッタ・ステファネッリ)と恋に落ち妻とし、ひと時の安らぎを得たが、その妻を車に仕掛けられた爆弾で殺された。
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抗争は更に激しさを増し、結婚した妹・コニーの夫カルロ(ジャンニ・ルッソ)の罠に落ち、長男ソニーもタッタリアの手勢に殺される。
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そんななか退院したドンは、長男の死を嘆き、これ以上犠牲者を出すまいと、ニューヨークの各ファミリーのドンを集めた。
その場で、ドンにとっては大きな譲歩を提示し、和解を求め手打ちが成立した。
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ドンはマイケルの命を守るため、抗争を止めたのだった。
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映画『ゴッドファーザー』予告

映画『ゴッドファーザー』出演者

ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)/ マイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)/ソニー・コルレオーネ(ジェームズ・カーン)/フレド・コルレオーネ(ジョン・カザール)/トム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル)/ケイ・アダムス(ダイアン・キートン)/コニー・コルレオーネ(タリア・シャイア)/サル・テッシオ(エイブ・ヴィゴダ)/マクラウスキー警部(スターリング・ヘイドン)/アポロニア(シモネッタ・ステファネッリ)/カルロ・リッツィ(ジャンニ・ルッソ)

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映画『ゴッドファーザー』解説

映画の評価

映画『ゴッドファーザー』映画ランキング評価

世界各国で映画のベストを集計するランキングが企画されており、そこでは『ゴッドファーザー』がランクインしないのが不思議だと思えるほど、高く評価されています。

「映画史上最高の作品ベストテン」(英国映画協会『Sight & Sound』誌発表)※10年毎に選出
2002年:「映画批評家が選ぶベスト100」第4位
2002年:「映画監督が選ぶベスト100」第2位
2012年:「映画批評家が選ぶベスト100」第21位
2012年:「映画監督が選ぶベスト100」第7位
「AFIアメリカ映画100年シリーズ」(AFIアメリカ映画協会発表)
1998年:「アメリカ映画ベスト100」第3位
2001年:「スリルを感じる映画ベスト100」第11位
2005年:「映画音楽ベスト100」第5位
2005年:「アメリカ映画の名セリフベスト100」第2位
2007年:「アメリカ映画ベスト100(10周年エディション)」第2位
その他のランキング
2000年:「20世紀の映画リスト」(米『ヴィレッジ・ヴォイス』紙発表)第11位
2008年:「歴代最高の映画ランキング500」(英『エンパイア』誌発表)第1位
2008年:「史上最高の映画100本」(仏『カイエ・デュ・シネマ』誌発表)第36位
2010年:「エッセンシャル100」(トロント国際映画祭発表)第4位
2013年:「オールタイムベスト100」(米『エンターテイメント・ウィークリー』誌発表)第2位
2015年:「100本の偉大なアメリカ映画」(英BBC選出)第2位
2019年:『史上最高の映画ベスト100』(『Time Out』誌発表)第2位
日本のランキング企画
1995年:「オールタイムベストテン・世界映画編」(キネマ旬報発表)第18位
1999年:「映画人が選ぶオールタイムベスト100・外国映画編(キネ旬創刊80周年記念)」(キネ旬発表)第7位
2009年:「映画人が選ぶオールタイムベスト100・外国映画編(キネ旬創刊90周年記念)」(キネ旬発表)第1位
関連レビュー:◎『映画ベスト100』企画を紹介!
世界各国で選ばれた『映画100本』のリストを紹介!!!
映画界、映画ファン、映画評論家など、選定方法もさまざま!
日本映画も各リストでランクイン!

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映画『ゴッドファーザー』映画祭・受賞歴
また各国で開催される、映画祭でも高い評価を獲得しています。

第74回ゴールデングローブ賞
作品賞 (ドラマ部門)/監督賞:フランシス・フォード・コッポラ/主演男優賞 (ドラマ部門):マーロン・ブランド/脚本賞:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ/作曲賞:ニーノ・ロータ
英国アカデミー賞
アンソニー・アスキス賞:ニーノ・ロータ
ニューヨーク映画批評家協会賞
助演男優賞:ロバート・デュヴァル
アカデミー賞
作品賞/主演男優賞:マーロン・ブランド/脚色賞:マリオ・プーゾ、フランシス・フォード・コッポラ

第45回アカデミー賞・主演男優賞スピーチ


プレゼンターはリブ・ウルマンとロジャー・ムーア。
ノミネート者を紹介。
マーロン・ブランド(ゴッド・ファーザー)/マイケル・ケイン(探偵スルース)/ローレンス・オリヴィエ(探偵スルース)/ピーター・オトゥール(The Ruling Class)/ポール・ウィンフィールド(サウンダー)
受賞者はマーロン・ブランド。
代理出席サチーン・リトルフェザーにプレゼンターのロジャー・ムーアがオスカー像を差し出すが、受け取りを拒否した。
【マーロン・ブランド受賞スピーチ・意訳】
代理サチーン・リトルフェザー:こんにちは。私の名前はサチーン・リトルフェザーです。私はアパッチです。私は全米先住民族イメージ向上委員会の会長です。私は今夜マーロン・ブランドの代理です。彼の依頼は非常に長いスピーチを皆さんに伝えることです。それを今現在、限られた時間で私がここで共有することはできませんが、幸いなことにマスコミを通じ、後ほど皆さんにお伝えします。彼は非常に残念ながら、この寛大な賞を受け入れることができません。その理由は、今日の映画産業によるアメリカインディアンの扱いです。失礼ですが。テレビの映画再放送、および最近のウンデッド・ニー事件(白人によるインディアンへの残虐行為)です。私は今夜、その場に立たないことで、我々が将来、我等の心と我等の理解が愛と寛大さと出会うことを願っています。マーロン・ブランドに代わって感謝します。

第89回アカデミー賞・脚色賞スピーチ


プレゼンターはジャック・レモン。
【大意】この世を去った、記憶に残り、時代を反映した、我々に多くのギフトと才能を与えてくれた、この場の全ての者が感謝すべき作家がいる。比すべき者のないノエル・カワード氏だと語り拍手を浴びた(授賞式前日ノエル・カワードは死去)
ノミネート者を紹介。
ジェイ・プレッソン・アレン(キャバレー)/ ベント・フォルスランド、ヤン・トロエル(移民者たち)/ フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ(ゴッドファーザー)/ ジュリアス・J・エプスタイン(おかしな結婚)/ ロン・エルダー三世(サウンダー)
受賞者はマーロン・ブランド。

【マーロン・ブランド受賞スピーチ・意訳】
ドロシー・アンプーゾ:私の父は、この素晴らしい名誉を、アカデミー協会に感謝していると思います。
私は父に感謝したいと思います。そして、私は彼がこの場に居れて、彼自身がこの名誉を完全に受けとれたら良かったと思っています。どうもありがとうございました。

フランシス・フォード・コッポラ:
私がここに到着したとき、私がここに来ても何も言う準備をしてなかったので、とても神経質になりました。そして約40分後に何か言うことを考えたのですが、しかし、ここに来てそれを言えなくなってしまったので、私の緊張が始まってます。そして、それが何だったにしても、私はそれを忘れてしまいました。
最初に、ピーター・バートに感謝したいと思います。私のこの仕事の最初から助けてくれ、サンフランシスコの素晴らしい、ロマンチックな資金獲得の冒険から救ってくれ、生き延びさせてくれた。それから信頼を込めて、私はマーロンとアル・パチーノの非常に美しい庭のシーンを書いたボブ・タウンに感謝したいと思います。それがボブ・タウンのシーンでした。そして最後に、ボブ・フォスを祝意を表したいと思います。また、監督が獲得できる最高の賞は、彼の一番の友、親愛なる仲間、俳優である3人、ジミー・カーン、アル・パチーノ、ボビー・デュバルが同じカテゴリで、ノミネートされたことです。どうもありがとうございました。

第89回アカデミー賞・作品賞スピーチ


プレゼンターはクリント・イーストウッド。
ジョン・ウェインの映画で撃たれた全てのカウボーイになり代わってプレゼンターを務める。全ての候補作を見たが、どれも素晴らしく、違いが際立っていたと、各作品に言及し素晴らしい映画だとして、ノミネート者を紹介。
キャバレー/脱出/移民者たち/ゴッドファーザー/サウンダー
受賞作はゴッドファーザー。

【ゴッドファーザー受賞スピーチ・意訳】
アルバート・S・ルーディー:
今、失敗しないように!少し緊張しています。ニューヨークは真夜中過ぎで、親戚の何人かが寝たがってるので、この2つをすばやく行います。
他の皆と同じように、感謝に値する人がたくさんいます。ボブ・エヴァンス、時間と創造性の中でスタジオ所長より多を与えてくれた。この映画を売って母を金持ちにする勇気と想像力を持っていたフランク・ヤブランス。映画に資金を提供する勇気があったチャーリー・ブラドルン、私は狂気との境界線だと推測します。そしてずっと友達だったピーター・バート。
そして、最後に、何百万人もの人々がそこにいて、映画を愛し、映画を作りたいと願い、これを見たい人たちがいるのは不思議なことです。アメリカには映画ビジネスが必要であり、映画ビジネスにはアメリカが必要です。良い映画には良い視聴者が必要なので、良い視聴者には良い映画が必要です。私たち全員が、少なくとも私が望んでいるアメリカンドリームは、これに代表されます(オスカーを上げる)。もし我々が働こうと思い、夢を持って、これを手に入れようとするなら、それは誰でも可能です。大変感謝しています。
関連レビュー:アメリカ映画界の歴史アカデミー賞紹介
『アカデミー賞・歴代受賞年表』
栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞
授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。
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以下の文章には

映画『ゴッドファーザー』ネタバレ

があります。
(あらすじから)
マイケルはアメリカに戻ると、ドンの下ファミリーの仕事に手を染めつつ、恋人ケイにプロポーズをし彼女は受けいれた。
そして、マイケルはドンの跡を継ぐと、徐々にその勢力を伸ばして行った。
引退したビトー・コルレオーネは、孫アンソニーと遊び、マイケルの相談者として日々を過ごす。
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ビトーは、マイケルに、お前は議員のような表の人間になって欲しかったと、複雑な胸中は吐露し詫びた。
ある日曜日の朝、ビトー・コルレオーネは、緑に茂った畑で孫と遊ぶ中、その人生を終えた。
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葬儀の場では、早速ニューヨーク五大ファミリーが不穏な動きをみせていた。
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しかしマイケルも、それまで実行を控えていた復讐を決行する。

妹コニーの息子の洗礼式の日。マイケルは子供の名付け親(ゴッドファーザー)と成った。

その同時刻タッタリアを初め、ニューヨークの五大ファミリーのドンを抹殺した。
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そして、組織の裏切り者を粛清し、長兄ソニーを罠に陥れたコニーの夫カルロも殺した。
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映画『ゴッドファーザー』結末

妹コニーはマイケルを訪れ、カルロを殺したことを責めた。
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それを聞いたマイケルの妻ケイは、眼に涙を浮かべ夫にカルロを本当に殺したのかと問うた。
マイケルは怒りを見せ、「仕事に口を出すな」と声を荒げたが、妻の顔を見て「今回だけ答えてやる」と質問を受けた。
妻ケイは「本当にカルロを殺したの?」とマイケルに問う。
マイケルは「ノー」と答えた。
【意訳】マイケル:ヒステリーだ。/ケイ:本当なの?/マイケル:おれに仕事のことは聞かないでくれ。/ケイ:いやよ!/マイケル:もういい!(机を叩く)分かった、これ一度きりだ。この一度だけ君の質問に答える。/ケイ:本当なの?/マイケル:いいや。/ケイ:私達飲み物が必要ね。/手下:ドン・コルレオーネ。

安堵するケイの背後で、マイケルを取り囲んだ手下たちが“ドン・コルネオーレ”と彼に臣従を誓う声が聞こえた。
そして、その書斎のドアが閉じられた。
THE END。




posted by ヒラヒ・S at 17:00| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月20日

映画『ムーンライト』米国黒人の環境に染まる苦悩・ファンの死因とは?/解説・考察・米国のジェンダー・実話検証・簡単あらすじ

映画『ムーンライト』解説・考察

原題 Monnlight
製作国 アメリカ
製作年 2016年
上映時間 111分
監督 バリー・ジェンキンス
脚本 バリー・ジェンキンス


評価:★★★★  4.0点



このアカデミー賞2冠に輝く作品は、本当に誠実な、真摯(しんし)なメッセージを湛えた美しい作品だと感じた。

しかし、正直に言えば、アメリカ合衆国の黒人社会の実態を知らない身にしてみれば、その語るところを十分理解し得たか心もとない。

更に言えば海を隔てた日本に住む身にとっては、アメリカ黒人のこの物語に共感できずに、この地味な語り口の映画を「つまらない」と切り捨てられかねないとも思える。

ここでは、そんなアメリカの黒人の現状を調べ、作品中の意味が十分わからないと感じた部分を自分なりに調べて見た。
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<目次>
映画『ムーンライト』ネタバレなし簡潔あらすじ
映画『ムーンライト』予告・出演者
映画『ムーンライト』解説
映画『ムーンライト』実話/ファンの死は?
映画『ムーンライト』考察

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映画『ムーンライト』簡単あらすじ

マイアミで麻薬中毒の母と黒人低所得者地域で暮らす小学生のシャロンは、あだ名”リトル”と呼ばれ、学校でいじめられていた。そんな彼は麻薬の元締めのファンと出会い、仲良くなる。しかし、そんな彼はファンが自分の母に麻薬を売っていると知り、ショックを受けた。高校生になったシャロンは、幼馴染のケビンと一夜海岸で愛を交わした。しかしイジメの首謀者テレルが、ケビンにシャロンを殴るように強制し、ケビンは仕方なくシャロンの顔に何度も拳をめり込ませた。翌日シャロンはテレルに復讐し警察に逮捕され少年院に入れられた。そして大人になったシャロンに、ある日ケビンから電話が入った・・・・・
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映画『ムーンライト』予告

映画『ムーンライト』出演者

シャロン (成人:トレヴァンテ・ローズ/青年期:アシュトン・サンダース/少年期アレックス・ヒバート)/ケヴィン (成人:アンドレ・ホランド/青年期:ジャレル・ジェローム/少年期:ジェイデン・パイナー)/ポーラ(ナオミ・ハリス)/テレサ(ジャネール・モネイ)/フアン(マハーシャラ・アリ)/テレル(パトリック・デシル)

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映画『ムーンライト』解説

環境で染まる米系黒人の真実

ムーンライトという題名は「黒人の子は月明りで青くなる」という、劇中の言葉に由来していると思う。
そういう意味では、この映画は外的環境(社会環境)で人がどれほど影響を受け、どうその運命を変え得るかを語っていただろう。

それは、かつてスピルバーグが『太陽の帝国』で描いた、戦時下という環境が少年をいかに変容させたかという物語と、同様のテーマを有していると感じた。
関連レビュー:少年と環境の関係
『太陽の帝国』
スピルバーグが描く日本軍にあこがれるイギリス少年
クリスチャン・ベールのデビュー作

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そんな人に与える、社会環境の作用を効果的に表すため、この映画では少年期、青年期、成人の3部構成を、異なる色でCG加工し表現していると言う。

結局、人は本来の自分ではない何者かに、外的な条件によって変わらざるを得ないと言う真実を、この映画はリアリティーのある痛みと共に語っている。
その解釈に従い、物語を確認してみれば、実に丹念に外部と内面の相克を描いている事が分かる。

例えば、カイロンの少年時代に、彼を救い、父としての役割を果たしたファンは、彼を守る者でもあったが、同時に彼から奪う者でもあった。
なぜなら、麻薬販売の元締めとして、知らなかったとはいえカイロンの母にドラッグを売り、彼の養育環境を根こそぎ破壊した人物なのだ。

ここでカイロンは、自分を愛してくれる者が、自分を傷付けないわけではないと知る。
それは、そのまま自らの母親にも通じる真実であった。
そして、彼の友ケビンとの間に生じた現実でもあった。

しかし、これは、この少年の過酷な地域社会の状況から生まれた必然であり、もし、この母や、ファンにしても、もっと豊かで満たされた環境に居れば、お互い愛だけを人に与えて生きていけた。
貧しいがゆえに、他人を食い物にしなければ生きられない、その環境にこそ原因を求めるべきだろう。


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映画『ムーンライト』解説

売人ファンの死の真相

ムーンライトという題名は「黒人の子は月明りで青くなる」という、劇中の言葉に由来していると書いた。

しかし、この「青=ブルー」は、この原作者がインタビューで語るところに拠れば、ファンの実在モデルに由来していると思える。

この映画の少年期と高校時代の描写は、作者タレル・アルヴィン・マクレイニーの実体験が、実話と言うべき濃密さで、反映されているという。

そして、彼はBBCのニュース番組で、そのファンのモデルに言及している。
<タレル・アルヴィン・マクレイニー「私はまだか弱い少年です」BBC Newsnight>
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【大意】ドラッグディーラーは両極端な傾向があり、彼もその両面を持っていた。人は誰でも良い面と悪い面を持っている。もっと良い人間に成るべきだと言うが、人間とはそういうものだ。私の母の恋人の名前はブルー、彼はドラッグ・ディラーで、私にたいへん優しく、6年間、泳ぎや、自転車の乗り方を、サーモンコロッケの作り方を教えてくれた。

原作者タレルの庇護者であり、ドラッグディーラーだった男は、母親の恋人で名前をブルーと言った。
そして他のインタビューで、ある日母親が「ブルーは殺されたからもう来ない」と彼に告げたと言い、その事実は未だにショックで、とても作品内で描けなかったと語っている。

それゆえ、ファンのモデルであるブルーが殺された理由に言及は無いが、ドラッグディーラー間の揉め事か、警察に射殺されたのだろうと想像したりする・・・・・

ここからは、個人的に感じた感慨だが、ドラッグディラーには2面性があるという作者の感慨は、アメリカ黒人社会に今なお横たわる、貧困の問題に起因するのでは無いかと思える。

結局、もともと善良な人間であっても、追いつめられれば、生活のために犯罪を犯さざるを得ないという事実を示していると感じる。

だとすれば、驚くべきは、生活のために泥棒に身を落とす、第二次世界大戦直後の映画『自転車泥棒』と同様の状況が、2016年現在、しかも世界一富を蓄えているアメリカ合衆国で起きている。
関連レビュー:貧困が人に犯罪を強いる物語
『自転車泥棒』
イタリア・ネオ・リアリズモの代表作!
第二次大戦後の貧窮のイタリア社会描いた古典

「BLM=Black Lives Matter(黒人の命も大事)」運動の背景には、そんな貧富の差と、それを生んでいる社会矛盾に対する、憤りがあると思える。

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映画『ムーンライト』考察

アメリカ社会とジェンダー


またこのカイロンは、子供の頃から級友にイジメられ続ける。
その理由を、カイロンの母親ポーラは、売人のファンに「あの子の歩き方を見た?」と問いかける。

【意訳】ポーラ:ねえ、アンタ私の子を育てる気?そうでしょ?アンタ、あの子の歩き方見た?/ファン:口に気をつけやがれ/ポーラ:なんで、あの子が他の子から苛められるか教えてやれる!?アンタ言えるの!(ファン黙り込む)クソッたれが。行くよ。/ファン:何、見てやがる!

正直に言えば、私はこのセリフの意味が分からなかった。
カイロンの「歩き方」が特に変わっているとは見えないのだ。
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英語版の映画サイトで、その言葉の意味をいろいろ探してみても、その説明は見いだせなかった。

しかし、そんな中でヒントとなる言葉があった。
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それは、「男らしい=Manlike」というキーワードであり、「男らしくなければ」それは「オカマ」なのだ。

ここで、ポーラが言うのは、カイロンの身のこなしが「男らしくなく」、彼女自身も息子を「ゲイ」だと考えているという描写だと思えた。
それは、級友で、後に大事な相手となる、ケビンが言う「タフなところを見せろ」と言う言葉にも呼応する。

日本に居ては、なかなか実感しがたいが、アメリカ社会、特に黒人社会において「男らしい=Manlike」とは、絶対的な価値であるようだ。
つまり、男でありながら弱々しい者や、闘争の場から逃げるような者は、特に「黒人社会のコミュニティー」ではその価値を認められない。

しかしカイロンの本質が、その社会的「男性ジェンダー」の要求にフィットしない事は、彼の罪だろうか?
結局、この映画の中では、カイロンはその「男らしくない」事によって、イジメられ続けたのだと見るべきだろう。

そして、ついに自らがイジメから解き放たれるために、自らをタフだと証明するために、犯罪を犯すのである。
その「男らしさ」の証明を求められたカイロンが、成人して「マッチョ」で「いかつい」「男性ジェンダーの強化」を果たすのは、そうしなければその環境で生き残れないからだったろう。

それは決して、この映画のカイロンだけではなく、例えば映画『羊たちの沈黙』では女性ジェンダーの苦しみを描いている。
関連レビュー:女性ジェンダー
『羊たちの沈黙』
アカデミー賞5冠に輝く大ヒット映画
レクター博士とクラリスのジェンダーを巡るドラマ

結局アメリカ社会自体が「ジェンダー」に対する役割要求が強いのだと感じる。

つまり、カイロンは、社会的環境に少年時代から不適合なまま育ち、それゆえ自らを本来の自分とは違う存在へと装わなければ、生きられなかった。

そのカイロンにとって、真に自らを受容し、愛を与えてくれたと信じた瞬間があった。
その青年期、砂浜のケビンとの、一夜のみの性的快楽は、カイロンにとってその人生で最も愛され、充実した瞬間だったのだろう。
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moon_pos2.pngその瞬間が彼の人生の掛け替えのない宝石だったとしたら、この映画はLGBT映画と言うべきなのか迷うものがある。
つまり、カイロンが生まれながらにゲイとしての、性質を持ち合わせていたのかと問いたいのである。

個人的に感じるのは、このカイロンは生まれながらにゲイであると言うより、生育環境によって歪められ狂わされたその人生の中で、自ら「愛」を感じる真実の瞬間がたまたま「ゲイの愛」の瞬間だったと見るべきではないか。
だとすれば、彼が自分自身になるために大事だったのは、「同性を愛する者」としての自己規定よりも、「自分を愛してくれる者」の存在であったのだと思える。

結局、彼にとって、その人生の中で唯一真実の愛と感じる瞬間がケビンとの一瞬にしかなかったという所に、彼の孤独と、悲惨な人生の歩みを、思い知らされる。
そう言う意味で、この映画は、環境によって自分本来の人格を歪められた者が、唯一自分を愛してくれたと感じた瞬間をテコとして、自分本来の人生を取り戻そうとする物語なのだと総括したい。

このカイロンの変わり様を見るとき、その環境が与える圧力の凶暴さを感じずにはいられない。



posted by ヒラヒ・S at 17:00| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月14日

映画『きみに読む物語』実話を元にした「恋の奇跡、愛の永遠」の作り方とは?/感想・解説・実話・簡単あらすじ

映画『きみに読む物語』感想・解説 編

原題 The Notebook
製作年 2004年
上映時間 123分
監督ニック・カサヴェテス
脚本ジェレミー・レヴェン,ジャン・サルディ
原作ニコラス・スパークス


評価:★★★★  4.0点



愛の奇跡を信じている人に・・・・
今、恋愛で悩んでいる人に・・・・
恋する相手に思いを伝えたい人に・・・・
愛を必要としている全ての人に・・・・・


そんな恋と愛を巡るさまざまな問題に、この映画は一つの答えを提示していると思うのです。
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<目次>
映画『きみに読む物語』簡単あらすじ
映画『きみに読む物語』予告・出演者
映画『きみに読む物語』感想
映画『きみに読む物語』解説/実話紹介

映画『きみに読む物語』簡単あらすじ

介護施設に暮らすアルツハイマー病を発症した初老の女性(ジーナ・ローランズ)のもとに、デュークと名乗る男性(ジェームズ・ガーナー)が定期的に通って、とある恋の物語を何度も読み聞かせている。17歳のアリー・ハミルトン(レイチェル・マクアダムス)は、1940年、ノース・カロライナ州シーブルックに家族と避暑にやってきた。そこで材木工場で働く地元の青年ノア(ライアン・ゴズリング)と恋におちる。しかしアリーの両親は交際を認めず、アリーは学校へ、ノアは第2次世界大戦に兵士として従軍する。やがてアリーは、富裕な弁護士ロン(ジェームズ・マーデン)と恋におち結婚式が目前に迫った。そんな時アリーは新聞にノアの姿を見つけ、彼に会うために走リ出す・・・・・・

映画『きみに読む物語』予告

映画『きみに読む物語』出演者

ノア・カルフーン(ライアン・ゴズリング)/アリー・ハミルトン(レイチェル・マクアダムス)/認知症の女性患者(ジーナ・ローランズ)/デューク(ジェームズ・ガーナー)/アリーの母・アン(ジョアン・アレン)/ロン(ジェームズ・マースデン)/ノアの父・フランク(サム・シェパード)/フィン(ケヴィン・コナリー)/アリーの父・ジョン(デヴィッド・ソーントン)/サラ(ヘザー・ウォールクィスト)/マーサ(ジェイミー・アン・オールマン)/看護師エスター(スターレッタ・デュポワ)

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映画『きみに読む物語』感想


第2次世界大戦前の17歳カップルの一夏の恋の行方を、ノートブックを元に語る老人とそれを聞く老婦人。

二組のカップルの重層構造の恋愛物語となっています。

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若い二人の魅力が際立っているからこそ、この映画は素晴らしい完成度を見せたと思います。

特にアリー役のレイチェル・マクアダムスは、二人の男性の間で揺れ動く優柔不断なキャラクターながら、憎めない愛らしさを表現して物語に、リアリティと深みをもたらしています。
そしてこのアリー役に魅力が無ければ、この映画は成立しないように思います。
<レイチェル・マクアダムスのオーディション映像>

なぜなら、この物語は注意深く見てみれば、例えば、白鳥が渡り鳥であるのに飛び立たないとか、アリーがノアと結ばれた時にも婚約指輪をしていたりとか、映像イメージとして、そこかしこに結合と別離がイリコ細工のようにちりばめられています。

これは二人の愛の不安定さを表していると考えれば、その不安定さを作り出している張本人のアリーが、それでも魅力的だからこそこの物語がリアリィティ―を持つと思うのです。

このように、常に彼女アリーは離れようとするベクトルを持って存在しています。

そしてまた、離れようとする引力が強ければ強いほど、彼氏のノアが全身全霊で彼女に働きかけ、繋ぎ留め、 努力し続ける事で、初めて継続する関係なのです。

この二人の恋物語、ひいては愛情物語は、この物語の最後まで、飽くなき不断の男性側、ノアの献身的アクションによるものです。
<オープニングシーン>

待つ女性のもとに漕ぎ寄せるボートの姿は、ひたすら働きかける男性のイメージ・・・・

この映画の恋が永遠の愛になったのであれば、それは運命だとか、赤い糸だとかの、神秘的な力でも、魔法の作用でも有りません

永遠の愛があるとすれば、それはお互いを繋ぎ留める現実的な努力、日々の不断ない積み重ねを、このノアが続けた結果だと思うのです。

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そうであれば、この映画の悲しくも、美しく、崇高なラスト、老いたカップルの姿は「愛の奇跡」のように見えますが・・・・・

これもまた人為的な働きかけによるものかもしれないとすれば・・・・・

私はこのご主人が選んだなら、認めるしかないという気がします・・・・・

皆さんはどうお考えでしょうか?

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映画『きみに読む物語』解説

実話紹介

インタビューで、原作者ニコラス・スパークスは、60年以上結婚していた実在の夫婦からインスピレーションを得たと語っています。

その実在のノアとアリーのモデルとは、スパークスの妻キャシーの祖父母でした。
原作者スパークスの結婚式の日、彼の妻キャシーの祖父母は、祖母の病気で残念ながら出席できませんでした。

それを悲しんだ妻は、サプライズで祖父母を訪問する計画を立て、結婚式の翌日タキシードとウェディングドレスを着て、花と結婚式のビデオ、ウェディングケーキを持ち祖父母の家を訪問します。

彼らは共に写真を撮り、幸福なひと時を過ごし、そこで年老いた夫婦はスパークスに彼らの恋愛と結婚の長い思い出話をしました。
その老夫婦の結婚の歴史を元に、小説『きみに読む物語』が書かれたと言います。

著者スパークス(写真)は語ります。
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「彼らの話は素晴らしかったが、その日以来、私が最も覚えているのは、彼らがお互いにどのように接していたかでした。彼が彼女を見るときのその目の輝き、彼が彼女の手を握る様子、彼が彼女に紅茶を入れ彼女に給仕した姿。彼らを見て、自分たち夫婦も60年の結婚後、彼等と同様お互いを愛し合うだろうと考えました。」
さらにスパークスは「彼らが私たちに示した、本当に素晴らしい贈り物だと思いました。結婚の初日に、私たちの真の愛が永遠に続くと示してくれました。」と話しています・・・・

そんな著者スパークスの感動が、永遠の愛を謳う小説『きみに読む物語』に結実しているのです。

また、『きみに読む物語』の続編として、主人公ノアが結婚30年の夫婦の危機を救うという小説『きみに読む物語 もう一つの愛の軌跡』を書いています。

その小説も、この時の老夫婦の印象が反映されているように感じました。
<小説あらすじ>
仕事一筋のウィルソンは56歳。29回目の結婚記念日を忘れるほど、妻に関心がなく、その夫婦生活に危機が訪れる。その破綻を前に、彼は妻の父ノアに相談をした。ノアはアリーとの愛にあふれた思い出を語り、真の愛について彼に説いた。ウィルソンは、ノアから愛を学び、30回目の結婚記念日を迎えた日、もう一度夫婦は恋に落ちた―




posted by ヒラヒ・S at 17:00| Comment(4) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする