2020年10月28日

映画『女と男の名誉』これは!マフイアをディスってるのか!?/ネタバレなしあらすじ・解説・考察・監督ジョン・ヒューストン

巨匠のお言葉では、ありますが・・・・

原題 Prizzi's Honor
製作国 アメリカ
製作年 1985年
上映時間 130分
監督ジョン・ヒューストン
脚本リチャード・コンドン,ジャネット・ローチ


評価:★★★    3.0点

この映画を2度見ても、正直、オモシロイと私は感じませんでした。
ま〜〜標準作かなという事で、星三つです。
しかし、どこか釈然としないというか腑に落ちないところがあり、その違和感を追及してみました・・・・
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<目次>
映画『女と男の名誉』簡単ストーリー
映画『女と男の名誉』予告・出演者
映画『女と男の名誉』感想
映画『女と男の名誉』解説・映画評価
映画『女と男の名誉』解説・アカデミー賞授賞式紹介

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映画『女と男の名誉』簡単あらすじ

マフィアのプリッツィ家は、ドン・コラード(ウィリアム・ヒッキー)、ドンの長男ドミニク(リー・リチャードソン)、次男エドアルド(ロバート・ロッジア)、相談役のパルテナ(ジョン・ランドルフ)、パルテナの息子でヒットマンのチャーリー(ジャック・ニコルソン)を主要メンバーとして、ニューヨークのブルックリンを縄張りとしていた。ある日ファミリーの結婚式で、チャーリーはアイリーン(キャスリーン・ターナー)という女性に一目ぼれする。そんなチャーリーが、ファミリーの金72万ドルを持ち逃げしたヘラーを、始末せよという命令が入る。そこにはヘラーの妻としてアイリーンがおり、金は半分なくなっていた。しかしアイリーンに惚れ込んだチャーリーは、アイリーンの言い訳を信じて結婚をしたのだが・・・・・・実はアイリーンも闇社会に身を置く者だった。72万ドルの行方と、マフィアの掟、さらにドンの娘メイローズ(アンジェリカ・ヒューストン)も絡み、チャーリーの運命は思わぬ方向に転がるのだった・・・・・・・
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映画『女と男の名誉』予告

映画『女と男の名誉』出演者

チャーリー・パルタンナ(ジャック・ニコルソン)/アイリーン・ウォーカー(キャスリーン・ターナー/エドアルド・プリッツィ(ロバート・ロッジア)/アンジェロ・"パパ"・パルタンナ(ジョン・ランドルフ)/コラード・プリッツィ( ウィリアム・ヒッキー)/ドミニク・プリッツィ(リー・リチャードソン)/ロザリオ・フェラージ(マイケル・ロンバード)/メイローズ・プリッツィ(アンジェリカ・ヒューストン)/プランバー(ジョージ・サントピエトロ)/ハンレー警部補(ローレンス・ティアニー)/ピーチズ・アルタモント(CCH・パウンダー)/メイローズのメイド(CCH・パウンダー)/マークシー・ヘラー(ジョセフ・ラスキン)/兵隊(スタンリー・トゥッチ)

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映画『女と男の名誉』感想


え〜腑に落ちないというのも――
一つには、公開当時の賞レースに、受賞も含め軒並みノミネートしている事。
また、大物俳優ジャック・ニコルソンがこの程度の脚本で出演している事。

個人的な印象としては「軽いコント」に、とんでもない役者が出て、作品の実態よりも大きな評価を得ているという気がしてなりません。
もちろん、イヤイヤそんな事はない、これは十分面白いという人はぜひ「アナライズ・ミー」や「ドン・サバティーニ」「隣のヒットマン」なんて、マフィア・ギャング・コメディと比べてみて下さい。
この映画がコメディーと言えるのかという事にすら疑問を持ちます。

実際この映画は、評論家評価は高かった割には、興行収入はさっぱり伸びず、1,600万ドルの予算に対して、わずか2,600万ドルの収益でした。この数字は、広告費やもろもろを考えると、トントンか悪くすれば赤字というレベルです。

さらにアメリカ映画サイト「ロッテントマト」を見ても、観客の支持は62%に対し、批評家の評価は86%と高くなっています・・・・
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で、話は元に戻って、なぜこの映画が高評価なのか・・・・私には分かりません・・・

原因を求めて、ひとつ発見したのは、監督がジョン・ヒューストンだという事です。
ジョン・ヒューストンといえば、ハリウッドの映画史を作ってきた監督と言っても過言ではないでしょう。
jyon-huston.jpgジョン・ヒューストン(John Huston, 本名: John Marcellus Huston, 1906年8月5日 - 1987年8月28日)は、アメリカ合衆国の映画監督・脚本家・俳優。
父親は俳優のウォルター・ヒューストン。ミズーリ州にて俳優一家に生まれ、3歳の時から舞台に立つ。ティーンエイジャーの頃はボクシングに熱中し、その後各地を放浪して様々な職業に就いた。
後にハリウッドに落ち着いて脚本を書くようになり、『モルグ街の殺人』や『黒蘭の女』などの脚本を手がけて実績を積んだ後、1941年にハンフリー・ボガート主演の『マルタの鷹』で監督としてデビューした。(wikipediaより引用)

またこの人は、ホント豪快な、ほとんど禁治産者かと疑われるぐらいの、強烈な個性の持ち主だったらしく、そこらへんをクリント・イーストウッド監督が映画にしています。
アメリカ映画:1990年
『ホワイトハンター ブラックハート』
クリント・イーストウッド監督・主演で描く、伝説の監督ジョン・ヒューストン
映画『アフリカの女王』の舞台裏で起きていた騒動とは?

いずれにしても、日本でいえば「クロサワ」のような、ビッグネームです。
この映画の公開が1985年ですから、この当時79歳。
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こんな名匠の映画に出られるチャンスがあるとなれば、ジャック・ニコルソンといわず誰もが出演を望むのではないでしょうか。

さらに言えば、この映画の後何本映画を撮れるかと考えて、実際これが遺作になったことを思えば、「今でショ!」という事になろうかと思います。

そして、この「生ける伝説」に対して、アメリカ映画界全体が報いようという気持ちが在っても、何ら不思議はありません。
それがアカデミー賞ノミネートという形で提示されたということだと想像します。


そんなこの監督に対する敬意が、この映画『女と男の名誉』がノミネートされた、58回アカデミー賞で現れています。
その作品賞のプレゼンターとして、彼が登場した時のスタンディング・オベイションにアメリカ映画界の賞賛を感じ、胸が熱くなるものがあります。

第58回アカデミー賞・最優秀作品賞スピーチ

司会者はジェーン・フォンダ、アラン・アイダ、ロビン・ウィリアムス。
ジェーン・フォンダが、最も価値のある最優秀映画賞のカテゴリーまで来た。我々は幸運なことに最も偉大な三人の映像作家を紹介します。アラン・アイダがジョン・ヒューストン、ビリー・ワイルダー、ジェーンフォンダが黒澤明と3人のプレゼンターを呼び込む。
三人は握手してノミネート者を紹介。
『カラーパープル』/『蜘蛛女のキス』 /『愛と哀しみの果て』/『女と男の名誉』/『刑事ジョン・ブック 目撃者』
ビリーワイルダーが受賞者名の入った封筒を求め、黒澤が開封する。受賞者カードをジョン・ヒューストンの指示でビリー・ワイルダーへ。
受賞者は『愛と哀しみの果て』

【『愛と哀しみの果て』プロデューサー、シドニー・ポラック受賞スピーチ・意訳】
我々すべてにとって素晴らしい夜です。他に何を言えばいいのかわからないけど、大変感謝しています。そして、もし私が前(監督賞受賞時の感謝)に誰かを言い洩らしていたら、それはすべてプレッシャーのせいだったと、ご理解いただけると願っています。本当にありがとう。皆さん、ありがとうございました。

しかしこのシーンで思うのは、アメリカ映画界のその懐の深さであり、改めて凄いところだと感じます。
ジョン・ヒューストンがアイルランド系で、ビリー・ワイルダーがドイツからの移民であり、黒澤はアジアの異邦人で、さらに作品賞を受賞したシドニー・ポラックはウクライナから移民したユダヤ系のアメリカ人です。

その多様性が、アメリカ映画界を支えているのだと思います・・・例えば、以下のレジェンド3人の作品を見れば、多様性がいかに映画を豊穣にするかがわかるかと思います。
アメリカ映画:1960年
『許されざる者』
オードリー・ヘップバーンの異色西部劇
巨匠ジョン・ヒューストン監督の描く西部劇の懺悔

アメリカ映画:1962年
『7年目の浮気』
マリリン・モンロー「ロリータ巨乳」伝説
浮気な男の前に現れた天使のようなグラマー

日本映画:1954年
『七人の侍』
映画史に永遠に刻まれた日本映画
黒沢映画の時代劇と西部劇との関係?

話が横道に逸れました―
いずれにしても、アメリカ映画界のレジェンドに対する敬意表明だと思えば、この映画に対する評価というのは、監督ジョン・ヒューストンの名声と相まって形成されたものであり、映画の作品的価値とはちょっと離れた部分で与えられたようにも思えます。
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映画『女と男の名誉』映画祭・受賞歴
私個人の評価はどうであれ、この映画は評論家や映画賞で高い評価を受けています。
アカデミー賞
助演女優賞アンジェリカ・ヒューストン受賞:(以下ノミネート)作品賞/監督賞ジョン・ヒューストン/主演男優賞ジャック・ニコルソン/助演男優賞ウィリアム・ヒッキー/脚色賞/編集賞/衣裳デザイン賞
ゴールデングローブ賞
受賞:作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)/監督賞ジョン・ヒューストン/主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門)ジャック・ニコルソン/主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)キャスリーン・ターナー:(以下ノミネート)脚本賞/助演女優賞アンジェリカ・ヒューストン
ニューヨーク映画批評家協会賞
受賞:監督賞ジョン・ヒューストン/主演男優賞ジャック・ニコルソン/助演女優賞アンジェリカ・ヒューストン
ロサンゼルス映画批評家協会賞
受賞:助演女優賞アンジェリカ・ヒューストン
全米映画批評家協会賞
受賞:監督賞ジョン・ヒューストン/主演男優賞ジャック・ニコルソン/助演女優賞アンジェリカ・ヒューストン
ボストン映画批評家協会賞
受賞:英語映画賞/監督賞ジョン・ヒューストン/主演男優賞ジャック・ニコルソン/助演女優賞アンジェリカ・ヒューストン

第58回アカデミー賞・助演女優賞スピーチ


プレゼンターはマーシャ・メイソン、リチャード・ドレイファス。
ノミネート者を紹介。
マーガレット・エイヴリー(カラーパープル)/アンジェリカ・ヒューストン(女と男の名誉)/エイミー・マディガン(燃えてふたたび)/メグ・ティリー(アグネス)/オプラ・ウィンフリー(カラーパープル)
受賞者はアンジェリカ・ヒューストン。

【アンジェリカ・ヒューストン受賞スピーチ・意訳】
アカデミーのメンバーに、私の仲間の候補者と、私を称えてくれたことに感謝します。これは、私が父から指示された役割から来ているので、私にとって大きな意味があり、彼にとっても大きな意味があると、私には分かっています。また、『女と男の名誉』の出演者とスタッフ全員に感謝します。私は名前を言おうとは思いません。皆さんは自分が何者か知っています。そして、私の友人たち、彼らの愛と支援、そして私の守護天使、特にブルース・ワイントロープと、私の亡くなった教師のペギー・フィーリーに。有難うございました。

関連レビュー:アメリカ映画界の歴史アカデミー賞紹介
『アカデミー賞・歴代受賞年表』
栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞
授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。
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ここまで高い評価を受けている本作品・・・・・・私を含め、観客には一見分からないスゴイ価値が潜んでいるのでしょうか・・・・・?

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映画『女と男の名誉』考察

反マフィアの主張?

ただこう書いてきてナンですが、この映画の公開された1985年が気になって来ました・・・・・
もしかすると、不確かなのですが、マフィアを題材にしたコメディー映画の「オリジナル=原型」となった一本なのかなと・・・・・・

当時は「ゴッド・ファーザー」によって確立した、重厚でシリアスな、家族の愛と苦闘の物語としての「マフィア組織=ファミリー」のイメージを世間が共有していた時です。
関連レビュー:コッポラ監督の古典的マフィア映画
映画『ゴッドファーザー』
イタリア・マフィアの闘いを描く古典的傑作!
イタリア系移民の苦闘と家長の行方とは?

そのイメージを打ち崩す「マフィア・コメディ」映画を世に問う事は、なかなか困難な挑戦だったようにも思うのです。


しかし、だからこそ、ここに老いた巨匠の反骨精神を感じるのです。

ジョン・ヒューストンはアイルランド系アメリカ人です。
prizzis-jyon.jpgアイルランド人というと想起されるのが、「頑固一徹」という言葉です。

その頑固さは、例えば『ミリオン・ダラー・ベイビー』の悲劇的な物語を支える、頑なさとして存在すると思います。
アメリカ映画:2004年
『ミリオンダラーベイビー』
クリント・イーストウッド監督のオスカー受賞作
女性ボクサーの栄光と生命の尊厳

アイルランド系移民もイタリア系移民同様、アメリカに移住した際には、差別もあり苦労が絶えなかったといいます。
しかしイタリア系移民が非合法な犯罪に走ったとしても、アイルランド系移民は逆に命を懸けて正義を守る、警官や消防士という職業に就いたのです。

そんなアイルランド系アメリカ人から見れば「ゴッド・ファーザー」以後の、犯罪組織を称揚するような、暴力礼賛とでもとれる世間の風潮が我慢ならなかったんだと思うのです。
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それゆえ、この映画の中では「マフィア」を「金のためなら自分の子供でも食らう」、「亭主と女房で殺しあう」ような反倫理的な人間だと描き、その行動を茶化すように「笑い」に変えています。

そう思えば、これは組織暴力団に昂然と戦うという「老将」の決意表明だったのかもしれません。
そういう気合が、原題の「Prizzi's Honor」という題に現れているように思います。
このタイトル「プリッツイ一家の名誉」とは「金」だけなのだと、この映画は力説してくれます。

しかし「反マフィア」の直截な糾弾の姿勢と、笑いとの、映画的なバランスが今一つだと感じられるので、個人的な評価は頑固が信条のアイルランド系の監督に敬意を表し、カタクなに★三つとさせていただきます。



posted by ヒラヒ・S at 17:00| Comment(6) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月22日

名作映画『ゴッドファーザー』第1作!この映画は暴力賛美なのか?/感想・解説・考察・簡単あらすじ

映画『ゴッドファーザー』(感想・解説 編)

原題 The Godfather
製作国 アメリカ
製作年 1972
上映時間 177分
監督 フランシス・フォード・コッポラ
脚本 フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ
原作 マリオ・プーゾ


評価:★★★★★ 5.0点



この映画のもつ、重厚な骨格と品格に打たれる。

しかし、発表当時より犯罪組織イタリアン・マフィアを好意的に描きすぎる、これは「暴力礼賛」だとのの批判を受けていた。

しかし、その過激な暴力とマフイア礼賛には、必然的理由があったとも思える・・・・・
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<目次>
映画『ゴッドファーザー』簡単あらすじ
映画『ゴッドファーザー』予告・出演者
映画『ゴッドファーザー』感想
映画『ゴッドファーザー』解説・考察strong>
映画『ゴッドファーザー』ネタバレ
映画『ゴッドファーザー』結末

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映画『ゴッドファーザー』簡潔あらすじ

ニューヨーク・マフイアのドン、ビトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の娘コニー(タリア・シャイア)が結婚し、華麗な結婚披露宴が開かれている。長男のソニー(ジェームズ・カーン)、次男のフレド(ジョン・カザール)、養子となったトム・ハーゲン(ロバート・デュヴァル)、ベトナム戦争から戻った三男のマイケル(アル・パチーノ)と、恋人のケイ(ダイアン・キートン)が揃って写真に納まった。
しかし、コルレオーネ一家は過酷なマフィアの抗争に突入し、ドンは襲撃を受け病院で生死の境をさまよう。ファミリーの危機に、犯罪に関わらなかった3男マイケルも、銃を取り敵を射殺した。しかし敵の反撃は、シシリーに逃げたマイケルの身辺に迫り、長男ソニーも殺されてしまう。傷の癒えたビトーは、それを知って、マイケルを守るためニューヨーク5大ファミリーと手打ちをすると、マイケルにドンの座を譲り引退した。そしてマイケルの戦いが始まる・・・・・・
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映画『ゴッドファーザー』予告

映画『ゴッドファーザー』出演者

ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)/ マイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)/ソニー・コルレオーネ(ジェームズ・カーン)/フレド・コルレオーネ(ジョン・カザール)/トム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル)/ケイ・アダムス(ダイアン・キートン)/コニー・コルレオーネ(タリア・シャイア)/サル・テッシオ(エイブ・ヴィゴダ)/マクラウスキー警部(スターリング・ヘイドン)/アポロニア(シモネッタ・ステファネッリ)/カルロ・リッツィ(ジャンニ・ルッソ)

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映画『ゴッドファーザー』感想


かつて家長という言葉があった。
家族の頂点に立ち、あらゆる事柄に絶対的決定権を持ち、同時にすべての責任を負うのである。

マーロン・ブランド演じるドン、ヴィトー・コルレオーネは、家長であった。

イタリアからアメリカ合衆国への移民は、1880年代に故国で居場所を失ったか、貧窮のため仕事を求めて海を渡った者たちだった。
イタリア系アメリカ人(イタリアけいアメリカじん、英語:Italian American 、イタリア語:Italoamericano )は、イタリア出身者かその子孫で、アメリカ合衆国の国籍を持つ人々のこと。
他のヨーロッパ系移民に比べてイタリア系移民は比較的少数派であり、合衆国の人口全体の約5.9%にあたる1780万人ほどである。
多くは1880年代からの移民である。イタリア統一が達成された後、その母体となったサルデーニャ・ピエモンテ王国の人材(ピエモンテ閥)を中心とした統治体制において、旧両シチリア王国に属したイタリア南部や島嶼部の住民は冷遇される日々を送っていた。ブリガンタッジョと呼ばれる南部での反乱や山賊行為に対する激しい鎮圧を経て、一層に困窮したナポリ地方やカラブリア半島、シチリア島の人々を中心に北米への大規模移民が始まった。(wikipediaより)

当時のアメリカ社会において、イタリアからの移民は貧しく英語もしゃべれない、最下層の厄介者とみなされていた。
それは現代日本における、アジア圏、南米諸国からの出稼ぎ労働者に対する、日本人視線とどこか共通するものかもしれない。

それは、現代アメリカでも生じている、マイノリティーに対する蔑視でもあるだろう。
関連レビュー:アメリカ移民の歴史
映画『グラン・トリノ』
アメリカ合衆国の移民の苦闘と希望
クリント・イーストウッド監督・主演作品

彼ら当時のイタリア系移民者は、周囲の冷たい視線から逃れ、必然的に社会の片隅により固まり、従来の住民たちに邪魔にされながら生きていかなくてはならない。

しかもイチかバチかの活路を移民に求めた彼らは、自らの国で貧困に喘いでいた者が多かった事を考えれば、たとえアメリカに渡った所で、やはり経済的な困窮から逃れられるはずもない。
しかも遅れてアメリカに来た彼らであれば、割のいい仕事はもちろん、警官や消防士など、当時は汚れ仕事と見られた職業すら、最早残っていなかったのである。

同時期にアメリカに渡った、ユダヤ人達はスキマ産業を求めて、当時は下等な仕事と見られていた映画産業に活路を見出しハリウッド映画産業を隆盛に導く成功を収めた。
関連レビュー:ユダヤ人のハリウッド支配とは?
映画『紳士協定』

ユダヤ人差別問題を取り上げた問題作!
エリア・カザン監督の第20回アカデミー作品賞受賞作

そしてイタリア系移民が見出した、そんなスキマ産業が密造酒づくりなど非合法な犯罪シンジケートだったのである。
遅れてアメリカ大陸に到着したマイノリティーである彼らが、生きるために、家族を守るため、法を犯すことも厭わず、必死で活路を求める中でドン・コルレオーネは生みだされたのだ。
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そう考えるとき、マフィア同士の抗争というのは、少ないパイの奪い合いをせざるを得なかった、イタリア系移民たちの哀しき、共食いだったに違いない。
ヴィトー・コルレオーネはドン・コルレオーネに、なりたくてなったのでは無い。
家長の責任として、ファミリーを守るため、否応なくドン・コルレオーネに、ならざるを得なかったのである。
では2代目のドン、マイケルはどうであったろう。

マイケルもファミリー守るために、戦わざるを得なかったのだろうか?
私にはそうは思えない。
組織が拡大しても、家族は一人また一人と消えていき、紐帯は弱くなり続ける。

反面、支配する者とされる者の権力構造だけが、強くなっていく。
結局、マイケルは父親のように偉大な家長になる事に失敗してしまった。

たぶん、マイケルが愛し憧れていたのは、偉大な父だったのだと思う。
愛する父に近づき、父を越えようとしてあがき続ける姿は、痛々しくすらある。

そして、このマイケルの失敗=「現代社会における家族という紐帯の脆弱性」は、「家族の結びつきの強さと、貧困・苦難が比例する」という図式が在るとすれば、現代の平和で裕福な社会においては、必然的に家族という集団自体が、相対的に価値を喪失していかざるを得まい。
すでに「家長」と言う言葉を聞かなくなったのも、そんな理由によるだろう。

この「家長」に代表される「家族の紐帯」に、最もノスタルジーを持つ者達こそ「イタリア人」であると、一本でもイタリア映画を見れば納得するはずだ。

イタリア系アメリカ人のコッポラ監督は、イタリア映画の伝統にのっとった映像と、音楽をことさら印象付ける事で、過去の家長と格闘する、現代の父親達の悲哀を描いたように思える。

また、世代を経るにつれ「家族」が失われていく様は、アメリカに生活していく中で故郷「イタリア」を喪失していく悲しみをも、同時に表しているのではあるまいか・・・・・・
関連レビュー:「生地=聖地」を離れる者達の哀しみ。
『天国の約束』
イタリア系アメリカ人社会をノスタルジックに描く
アル・パチーノ主演の、もう一つの『ゴッドファーザー』

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映画『ゴッドファーザー』解説

暴力礼賛の批判に関する考察

この映画は、発表当時から、マフィアという組織犯罪の罪を責めずに、むしろ礼賛しているのではないかとの批判があった。

しかし映画というメディアが、世界に登場するとほぼ同時に『大列車強盗』など、犯罪者を描いた悪漢映画とも呼ぶべき作品が人気となった。
大衆芸術としての映画は、西部劇のアウトローや、ギャング映画を、ドル箱として成長して来たのである。
<『大列車強盗』予告>

特に禁酒法の影響から、密造酒で潤うアル・カポネに代表されるマフィア・ギャング達が、激しい抗争を現実に繰り広げていた時代には、ワーナー・ブラザースは、そこに眼をつけ数々のギャング映画を製作しヒットを飛ばした。

その当時に人気だったギャング・スター俳優に、エドワード・G・ロビンソンや、ジェームズ・キャグニーやポール・ムニ、ジョージ・ラフトなどがいる。
<ジェームズ・キャグニー『民衆の敵』予告>

しかし、それらの悪漢映画にしても、最後には「勧善懲悪」が描かれ、悪が滅びるストーリーとして語られていた。

そんな悪が滅びる物語ながら、1930年代のギャングを主人公に据えた映画に対し「暴力礼賛」の批判が浴びせられた。
その声を反映して、アメリカの映画倫理規定「ヘイズコード」の制定により、公序良俗に則った「勧善懲悪」の度合いは更に強められ、ギャング映画は姿を消す。
関連レビュー:アメリカ映画と「ヘイズコード」
『陽のあたる場所』
アメリカの光と影を描いて、第24回アカデミー賞6冠!!
ハリウッド古典映画と倫理規定ヘイズコードとの関係

実際、「ヘイズコード」が有名無実となる1960年代までは、悪人や犯罪、更には恋愛描写であっても、刺激的な表現には様々な言い訳を用いたりしたのである。
アメリカ映画:1946年
映画『汚名』
映画史上に残るキスシーンを君は見たか?
ヒッチコック監督のハリウッド大スターによるスパイ・サスペンス

その「ヘイズコード」が効力を喪った事の背景には、TVが登場し映画自体の興行収入が落ち込む中、海外の映画が、例えばイタリアのマカロニ・ウェスタンなどが「暴力的」で「反モラル」表現でヒットを飛ばしていたことが、ハリウッド映画界の危機感をあおり規制を緩めざるを得なかったと言われる。

そんな、アメリカ映画界に規制が弱まった時に登場したのが、アメリカン・ニューシネマだった。
その映画の旧来の「倫理観」に捕らわれない、新たな作品群の登場は、映画が「万人の娯楽」の座をTVに明け渡し、特定の観客にターゲットを絞ったことの必然だった。
そして、ハリウッド・メジャー・スタジオに取って代わって、新たな映画を産み出したのは、独立系プロダクションのTV出身のクリエーター達だった。
関連レビュー:60年代とアメリカン・ニュー・シネマ
映画『イージー・ライダー』
チョッパー・ハーレーで旅する若者の物語
アメリカンニューシネマと60年代カウンターカルチャー

その暴力や反社会的な主張を含んだ新たな映画は、ベトナム戦争が重くのしかかる、ティーンエイジャーや20代の絶大な支持を得る。

そうしたアメリカ映画界の状況下で登場したのが、この『ゴッドファーザー』なのである。
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そして、この反社会的な暴力集団の映画は、アメリカン・ニュー・シネマの観客層を越えて、広い世代にアピールした。
その要因を上げれば、まずは血なまぐさい暴力シーンの過激さが有るだろう。
それは、アメリカン・ニューシネマの開幕を告げる『俺たちに明日はない』のラストシーンが、何度も繰り広げられるような凄惨なものだ。
その過激な暴力と、反比例するような家族愛の崇高さを描いている。

そのアンビバレンツなメッセージとは、考えてみれば当時のアメリカ社会の現実を反映したものだとも思える。
この映画の暴力は1972年当時のベトナム戦争という暴力行為を思わせるし、その家族愛とは国家愛を想起させる。

ベトナム戦争を続けるべきか、辞めるべきかを巡り、アメリカ国内は分断され、更には「公民権運動」を巡り人種間対立も増していた。
その内患外憂の状況は、まるで敵に取り囲まれたコルレオーネ・ファミリーそのものではないか。

そして、映画の中でドン・コルレオーネは言う「お互いに子供たちを喪った。これ以上血を流すことは止めよう」と・・・・・
それは、自国の若者たちの命をこれ以上散らすのかと、暗に諫めているように響く。

この映画が製作された3年後の1975年に、ベトナム戦争は終結する。

しかし、その子供マイケルが繰り広げる戦争は、家族とその誇りを守るためというより、自らの利益のためであり、それもアメリカ社会のその後の戦争を反映しているように思える。



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2020年10月17日

オスカー映画『ムーンライト』の起こした「黒人映画」の奇跡とは?/解説・考察・アカデミー賞の奇跡・簡潔あらすじ

映画『ムーンライト』解説

原題 Monnlight
製作国 アメリカ
製作年 2016年
上映時間 111分
監督 バリー・ジェンキンス
脚本 バリー・ジェンキンス


評価:★★★★  4.0点



この映画がアカデミー賞2冠、特に作品賞に輝いたのは、本当に奇跡的なことだったのだ。

それはこの映画の、誠実な、真摯(しんし)なメッセージを湛えた、美しい作品が、人々の心を動かしたからこその結果だったろう。

ここでは、この作品『ムーンライト』が、なぜオスカー史上のエポック・メイキングなのか、その理由の説明を試みた。
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<目次>
映画『ムーンライト』ネタバレなし簡潔あらすじ
映画『ムーンライト』予告・出演者
映画『ムーンライト』解説
映画『ムーンライト』考察

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映画『ムーンライト』簡単あらすじ

マイアミで麻薬中毒の母と黒人低所得者地域で暮らす小学生のシャロンは、あだ名”リトル”と呼ばれ、学校でいじめられていた。そんな彼は麻薬の元締めのファンと出会い、仲良くなる。しかし、そんな彼はファンが自分の母に麻薬を売っていると知り、ショックを受けた。高校生になったシャロンは、幼馴染のケビンと一夜海岸で愛を交わした。しかしイジメの首謀者テレルが、ケビンにシャロンを殴るように強制し、ケビンは仕方なくシャロンの顔に何度も拳をめり込ませた。翌日シャロンはテレルに復讐し警察に逮捕され少年院に入れられた。そして大人になったシャロンに、ある日ケビンから電話が入った・・・・・
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映画『ムーンライト』予告

映画『ムーンライト』出演者

シャロン (成人:トレヴァンテ・ローズ/青年期:アシュトン・サンダース/少年期アレックス・ヒバート)/ケヴィン (成人:アンドレ・ホランド/青年期:ジャレル・ジェローム/少年期:ジェイデン・パイナー)/ポーラ(ナオミ・ハリス)/テレサ(ジャネール・モネイ)/フアン(マハーシャラ・アリ)/テレル(パトリック・デシル)

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映画『ムーンライト』解説

アカデミー賞・受賞式動画

この映画は、見事アカデミー賞、最優秀助演男優賞と、最優秀作品賞を獲得した。

しかし、この『ムーンライト』が作品賞を授賞した2017年開催の第89回アカデミー賞では受賞作品が最初『ラ・ラ・ランド』と誤って発表されるという前代未聞の椿事が発生した。

第89回アカデミー賞・作品賞スピーチ


プレゼンターはウォーレン・ベィテイとフェイ・ダナウェイ。
ウォーレン・ベィテイ:アカデミー賞、ベストピクチャーは…(封筒を見て困惑)
フェィ・ダナウェイ:ラ・ラ・ランド
ラ・ラ・ランド、プロデューサーのジョーダン・ホロヴィッツ、マークプラット、フレッド・バーガーが感謝の挨拶。その背後でアカデミー関係者が事態収拾に走り騒ぎが大きくなる。

(2分50秒〜)ジョーダン・ホロヴィッツ:みんな、みんな、すまない、違う、これは間違いだ。『ムーンライト』、君たちが作品賞だ。/マーク・プラット:『ムーンライト』が受賞した。/ジョーダン・ホロヴィッツ:冗談じゃない。上ってこいよ。冗談じゃない。間違って読み上げたんだ。これは冗談じゃない、『ムーンライト』が最優秀作品賞だ。『ムーンライト』最優秀作品賞(カードをかざす)/司会ジミー・キンメル:どっちにしても、持ってたらいいさ。これは不幸な出来事だ。個人的には、スティーブ・ハーベイに文句言いたい。何でもいいから、このオスカーを持ってなよ。なんでこんな混乱状態になっちまったんだ。/ジョーダン・ホロヴィッツ:私は本当に『ムーンライト』の友人に、オスカーを渡せるのを誇りに思う。/ジミー・キンメル:君は素晴らしい、本当に素晴らしい。/ウォーレン・ベィテイ:ど〜も、お〜い。私は…/ジミー・キンメル:ウォーレン何やってんだ?!/ウォーレン・ベィテイ:何が起こったか説明する。封筒を開けたら、エマ・ストーン『ラ・ラ・ランド』と書いてあった。それで長い間フェイや皆を見ていたんだ。おかしいと思ったけど。/ジミー・キンメル:そう君はおかしい。/ウォーレン・ベィテイ:どうもありがとう。『ムーンライト』最優秀作品賞
受賞作品は『ムーンライト』
アデル・ロマンスキー:感謝します。
バリー・ジェンキンス:絶対に、絶対に、叶いそうもないと思った夢。でも夢を見続けて、それは現実になった。神様。
アデル・ロマンスキー:感謝します。感謝します。
バリー・ジェンキンス:これが本当だ、ニセモノじゃない。彼らと長く歩いてきたが感謝したい。寛大な彼らに。『ラ・ラ・ランド』に私の愛を、皆に私の愛を。みんな。
アデル・ロマンスキー:アカデミーに感謝します。何て言えばいいのか。これはホントに…嘘みたいで…これが本当とまだ思えない。でもアカデミーに感謝します。寛容な「ララ」のクルーがまだいればいいが、いない、分かった、彼らは去った。でも、とても寛容にここに立っていました。
私が望むのは、受賞はこれ以上の価値があり、家で見ている軽視された、小さな黒い少年や、茶色の少女や、他の民族をを触発する事です。そして、この驚くべき才能、壇上に立って栄誉を受ける、友バリー・ジェンキンスが舵をとる芸術家のグループを見て、少しでも触発を受けることです。ありがとう。

バリー・ジェンキンス:私は、この映画に答えが出せなく、他の方法が見つからないで、この映画が不可能だと思った時があった。そんな時舞台の後ろの皆が「ダメだそんなの認められない」と言ってくれたんです。だから壇上の私の後ろの皆に感謝します。誰も映画から離れようとしなかった。なぜなら我々がやったんじゃなく、君たちが我々を選んだんです。選んでくれてありがとう。感謝します。多くの愛を。
ジェレミー・クライナー:よい夜を。ありがとうございました。

ジミー・キンメル:え〜っと、何が起こったのかよく分からない。自分自身を責めている。思い出してみよう、これは授与式だったよね。つまり、皆を失望させたのはイヤだけど、素晴らしいスピーチを聞けたという良いニュースもあった。素晴らしい映画もあったし。俺がこの賞を引っかき回したのは知ってる、そうした。見てくれてありがとう。明日の夜はいつものショウに戻ります。もう二度とやらないって、約束します。お休みなさい。
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栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞
授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。
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映画『ムーンライト』考察

アカデミー賞受賞の快挙

何度も言うが、この映画のアカデミー賞・最優秀作品賞の獲得は、長いオスカーの歴史の中でも、真に奇跡的な出来事だった。

その軌跡と言われる要因を挙げれば、インディペンデンス映画で、LGBTというマイノリティーを題材とし、そして監督から出演者まで全て黒人の手による「ブラック・ムービー(黒人映画)」である点が、オスカー史上で真にエポックメイキングな事件だったと言える。

この映画『ムーンライト』の製作形態、小予算のインディペンデンス映画がアカデミー賞で評価されることは、確かに稀だ。
しかし、それは無いことではない。
例えば、ジェシカ・ラングが主演女優賞に輝いた『ブルースカイ』や、脚本賞を獲得した『JUNO/ジュノ』などはその例である。
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またこの映画の語る、LGBTの主人公を主題にした作品も、俳優賞は獲得するものの、作品賞には届かないと言われてきた。

これも、主演男優賞に輝きトム・ハンクスがゲイの弁護士を演じた『フィラデルフィア』、ショーン・ペンが演じ主演男優賞を獲得した、ゲイの政治家を描いた『ミルク』や、受賞は逃しても候補となったエディ・レッドメイン『リリーのままで』や、主演女優賞にノミネートされたケイト・ブランシェットの『キャロル』などが思い浮かぶ。
印象で言えば、そのハードルは年々下がってきているように思える。

しかし、上の要素以上に、アカデミー賞史上で画期的なのは、この映画が黒人しか出ていない、純然たる「ブラック・ムービー」である点だ。
そんなことは無い『それでも夜は明ける』は、黒人を描いた映画ではないかと言うかも知れない。

しかし、違うのだ。
ベネディクト・カンバーバッチや、ポール・ダノ、ブラッド・ピットなど、白人スターが出たこの映画『それでも夜は明ける』は、黒人白人の混血映画というべきだ。

その制作費が、『それでも夜は明ける』が2000万ドル(1ドル110円換算で約21億円)で、この『ムーンライト』が150万ドル(1ドル110円換算で約1億5千万円)ということでも、その成り立ちの違いの一端を窺い知れるだろう。

実はアメリカ映画には、世界的に販路を獲得した一大コンテンツ、ハリウッドメジャーの映画とは違う、もう一つの伝統的映画産業「ブラックムービー(黒人用映画)」が存在する。

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アメリカ国内の黒人コミュニティー内だけで流通する「ブラック・カルチャー=黒人文化」を見れば、黒人の黒人による黒人のためのコンテンツが存在し、例えば、黒人映画監督スパイク・リーなどはそんなブラック・カルチャーから、メジャーになった希有な例だ。

しかし『ムーンライト』は良質な脚本を持っていると関係者が認めたにしても、黒人社会内でのみ流通されるような作品であれば、大きな収益を期待できず必然的に制作費も抑えられるのだ。

いずれにしてもこの『ムーンライト』という、そんな「ブラックムービー」の正統的コンテンツが、アカデミー賞の作品賞を獲得したのは空前絶後の快挙なのである。

それは、昨今の、社会的分断が増す情勢に抗する、かすかな希望として感じられる。

結局のところ、「分断」や「差別」は他人種の状況に対する無関心から端を発しており、その無関心を払拭するための強い力を映画が持っていると信じるからだ・・・・・

その、ハリウッド映画界の他者に対する許容の姿勢は、韓国映画『パラサイト』のオスカー受賞にも感じられる。

つまりは、トランプに代表される「分断」に対する、ハリウッド的な反抗の姿だと思える・・・・・
関連レビュー:アメリカ映画界の歴史
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授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。
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posted by ヒラヒ・S at 15:54| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする