2020年12月23日

映画『雨上がる』黒澤時代劇の残照/感想・解説・ネタバレなし簡単あらすじ・考察・本家取りの作法とは

黒澤組の新たな時代劇映画

製作国 日本
製作年 2000年
上映時間 91分
監督 小泉堯史
脚色 黒澤明
原作 山本周五郎


評価:★★★☆  3.5



この映画は巨匠・黒澤明の遺稿を、その弟子ともいえる 小泉堯史が監督を勤め、黒澤組が揃った、骨太の日本映画となっています。

出演の寺尾聰と宮崎美子も、作品世界にしっかりと溶け込んで、映画として高い完成度を見せ「日本アカデミー賞」の各賞に輝く、本当に黒澤作品が思い起こされる秀作です。

そして、この映画は「時代劇」の新たな地平を切り開く作品となったように感じます・・・・
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<目次>
映画『雨あがる』ネタバレなし簡単あらすじ
映画『雨あがる』予告・出演者
映画『雨あがる』感想
映画『雨あがる』解説
映画『雨あがる』考察・批判

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映画『雨あがる』あらすじ


江戸幕府治世下の亨保。武芸に秀でていながら浪人の境遇にある武士・三沢伊兵衛(寺尾聰)はその妻・たよ(宮崎美子)を伴い仕官を求めて旅をしていた。長い大雨で足止めをくらった二人は、ある宿に長逗留せざるを得なくなる。その宿には雨で仕事も得られない日雇い労務者や貧しい人々がひしめき、長引く雨に苛立ちが募り喧嘩が始まる始末だった。そんな投宿者の心を和ませようと、人の良い伊兵衛はご法度の賭試合で得た金で、宴会を開き喜ばれた。翌日、雨が止み外に出た伊兵衛は若侍同士の決闘に遭遇し、仲裁に入りその場を収めた。その地の藩主・永井和泉守重明(三船史郎)は、伊兵衛の力を認め剣術指南番に登用しようと、御前試合を行った。そこで藩主とも立ち会い池に落としてしまう・・・・・・・・
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映画『雨あがる』予告

映画『雨あがる』出演者

寺尾聰(三沢伊兵衛)/宮崎美子(三沢たよ)/三船史郎(永井和泉守重明)/吉岡秀隆(榊原権之丞)/原田美枝子(おきん)/仲代達矢(辻月丹)/檀ふみ(奥方)/井川比佐志(石山喜兵衛)/松村達雄(説教節の爺)/加藤隆之(内藤隼人)/山口馬木也(野田又四郎)/若松俊秀(鍋山太平)/森塚敏(犬山半太夫)/長沢政義(警護の武士)/下川辰平(宿屋の亭主)/奥村公延(お遍路の老人)/大寶智子(おとし)

映画『雨あがる』受賞歴

第24回日本アカデミー賞
最優秀作品賞/最優秀脚本賞(黒澤明)/最優秀主演男優賞(寺尾聡)/最優秀助演女優賞(原田美枝子)/最優秀音楽賞(佐藤勝)/最優秀撮影賞(上田正治)/最優秀照明賞(佐野武治)/最優秀美術賞(村木与四郎)/優秀監督賞(小泉堯史)/優秀助演男優賞(三船史郎)/優秀主演女優賞(宮崎美子)/優秀録音賞(紅谷愃一)/優秀編集賞(阿賀英登)
第43回ブルーリボン賞
優秀主演女優賞(宮崎美子)
第56回ヴェネツィア国際映画祭
緑の獅子賞

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映画『雨あがる』感想


映画に古典的な風格というものがあるとすれば、この映画こそその一本でしょう。

故黒沢監督は遺稿の他に絵コンテまで描いたんじゃないかと疑うほど、ファーストシーンから故黒沢監督そっくりの重厚な映像を見せてくれます。
それもそのはず、このスタッフは監督を含め黒沢組が再結集して撮り上げた黒沢監督へのオマージュであり、そのレスペクトと愛が色濃く表れている作品です。

雨の描写や、群衆劇のカメラの移動シーン、演出も浮いた所も無く実直で誠実、まさに昭和日本映画の古典的な古風を写して感動的です。

役者陣も、松村達雄、隆大介、仲代達也など黒沢映画で常連の懐かしい顔が嬉しかったです。
日本映画:1962年
黒澤明監督『椿三十郎』
黒澤時代劇の痛快娯楽作品!黒澤時代劇のルーツとは?
三船敏郎と仲代達矢、その壮絶なラストの決闘を見逃すな!

また、その立ち回りのシーンにも、黒沢監督へのオマージュが入っていると感じます。
<『椿三十郎』を思わせる殺陣>

主役の、寺尾聰の素直な演技にも好感を持ちました。
そして、それ以上に感銘を受けたのは妻役の宮崎美子、武家の妻としての気品と大らかな楽天性が同居したその人品が、この映画を一段高い作品としているように思います。

この映画の持つ、人々を助けるために、自己犠牲を厭わない主人公の姿にも、日本的な美徳の形として心打つものがあります。

さほど派手な立ち回りがあるわけでもないこの作品を、ここまで滋味溢れる作品にしたのは、間違いなく黒澤監督に対する篤い思慕の想いが結実したからでは無いかと感じます。

その、長所を総合して☆3.5です。
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映画『雨あがる』解説

製作の経緯と新たな時代劇の萌芽

1998年9月6日に88年の生涯を閉じた黒澤明監督の通夜が営まれました。
その席で、黒澤プロダクションの黒澤久雄氏と、アスミック・エースの原正人氏の2人のプロデューサーは、黒澤の残した脚本『雨上がる』を、黒澤監督の下で長年助監督を務めた小泉堯史氏の監督デビュー作として製作をするという話がまとまったそうです。

50歳になっても監督デビューを果たしていない小泉堯史氏の姿が、映画の主人公の浪人と重なり、黒澤組の総意として応援してやろうという声が上がったと言います。

しかし4億5千万円の製作費を集めるため、50歳を過ぎた新人監督で、映画としても地味な題材という事で、資金集めは難航したようです。
世界配給権のプリ・セール(前売り)で1億を得て、アスミック・エースや角川書店と住友商事、テレビ東京や博報堂など計9社からなる製作委員会を立ち上げて、残りの3億5千万円を集めることに成功します。

それを受けて黒澤組スタッフが結集し、監督輔・野上照代、撮影・上田正治、撮影協力・斎藤孝雄、美術・村木与四郎、照明・佐野武治、録音・紅谷愃一、衣裳・黒澤和子、音楽・佐藤勝、編集・阿賀英登が携わりました。

俳優陣も黒澤後期映画『乱』『夢』『まあだだよ』に出演した寺尾聰、その妻役に『乱』の宮崎美子、そして仲代達矢、井川比佐志、原田美枝子、松村達雄、隆大介、頭師孝雄、吉岡秀隆、そして三船敏郎の息子・三船史郎まで登場し、黒澤作品を彩ったスターも結集します。
関連レビュー:三船敏郎を世界的スターにした映画
『七人の侍』
映画史に永遠に刻まれた日本映画
黒沢映画の時代劇と西部劇との関係?

そういう意味で、この映画は、今は無き黒澤監督の遺徳を継ぐ人々が撮り上げた、恩人に対する敬意ゆえに温かく情の籠もった映画になったのだと思います。

そして、この映画は営業的にも、批評的にも成功したことで、黒澤監督が築き上げ、日本映画の代名詞となった「時代劇」の新しい潮流を作るきっかけを作ったと思います。

それは、この地味な「時代劇」が映画的成功を得られると証明されたことで、アクションシーンのまるで無い、更に地味な「時代劇」が生まれるきっかけとなったと思えるからです。

その映画とは2010年『武士の家計簿』で、そろばん侍というサラリーマン的な悲哀を描き、新たな時代劇ジャンルを確立したのです。
日本映画:2010年
『武士の家計簿』
森田芳光監督の加賀藩・経理侍の実話歴史映画
平凡な武士階級の家族の記録

そのプロデユーサーこそ『雨あがる』を作り上げた、アスミック・エース原正人プロデューサーでした。

さらに2013年『武士の献立』、2016年『殿、利息でござる!』など、チャンバラ抜きの時代劇は日本映画に確かな地歩を得ました。

黒澤監督は本作品を通じ、没後も日本映画界の発展に寄与したと言うべきでしょう・・・・・・
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!以下の文章には当作品に関する批判があります!
この映画を愛してらっしゃる方々は、ご注意ください。
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映画『雨あがる』考察・批判

本家取り

以降の文章には、個人的に感じた物足りなさを書かせていただきます。

和歌に本家取りという、創作の作法があります。
古歌の趣を残して新しき趣向を盛り込んで歌を詠むのですが、古来の歌に対する敬意と、古典と向き合って格闘する作者の志が、しばしば佳品を生み出してきました。

しかし偉大な作品との戦いとは、大いなる先人と向き合うことを意味し、しばしばその偉大さに飲み込まれ模倣に陥る例も見られます。
たとえばその苦悩は、名匠・森田芳光監督ですら『椿三十郎』のリメイクで見て取れます。
日本映画:2008年
森田芳光監督『椿三十郎』
黒澤監督の名作のリメイクは成功したか?
リメイクとは「絶対的存在 = 神」との格闘

そしてこの映画も黒澤監督に対する「愛」ゆえに、黒澤監督から外れまい外れまいとしているように感じられます。
その愛ゆえに自縄自縛に陥ってしまったと感じました。

結局「クロサワ」という「様式」を守ることに固執するあまり、新しい表現をなしえなかったように感じてしまいました。

藤原定家の本歌取りに関する教えにいわく「本歌取りをしようとするときは、本歌とは異なる主題でで詠むのが理想的」とあります・・・・・

実は、最近の小泉堯史監督作品を見ると、黒澤作品を基礎としつつも独自の色が出て「小泉様式」の完成に向かっていると、個人的な印象を持っています。
<小泉堯史監督『蜩ノ記』予告>

そんなわけで、2020年の今、同監督の来年の新作も楽しみにしています。
<小泉堯史監督『峠 最後のサムライ』予告 2021年6月公開!>




posted by ヒラヒ・S at 17:00| Comment(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月20日

映画『クローズZERO』オールスター!平成男達のお祭り騒ぎ!!/簡単あらすじ・感想・解説・考察

カラス達の祝祭空間

製作国 日本
製作年 2007
上映時間 130分
監督 三池崇史
脚本 武藤将吾
原作 高橋ヒロシ


評価:★★★★  4.0点



マンガを原作としたこの一本。

原作マンガを踏襲しつつも、映画としての世界観を確立しえた日本映画における稀有な例のように思う。

結果として、原作と映画の世界観が相互に作用し、この虚構世界をより豊穣で重層的な物語空間としていると感じた。
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<目次>
映画『クローズZERO』ネタバレなし簡潔あらすじ
映画『クローズZERO』予告・出演者
映画『クローズZERO』解説・考察

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映画『クローズZERO』簡単あらすじ

不良が集まる鈴蘭男子高等高校に、転入生、滝谷源治(小栗旬)がやって来た。親に暴力団・滝谷組の組長(岸谷五朗)を持つ彼は、鈴蘭の頂点に立つためにやって来た。高校は、芹沢多摩雄(山田孝之)の“芹沢軍団”、阪東ヒデト(渡辺大)の“阪東軍団”、一匹狼の“リンダマン”と呼ばれる林田恵(深水元基)、伊崎瞬(高岡蒼甫)、牧瀬隆史(高橋努)などなど群雄割拠の状態だった。そんな荒れた学校の覇権を目指し、源治は鈴蘭OBのチンピラ片桐拳(やべきょうすけ)と知りあって友情を深める。しかし片桐は、矢崎組に属し組長の矢崎(遠藤憲一)の命令で、源治を片付けるよう命じられた。同時期、源治の恋人のルカ(黒木メイサ)が拉致されてしまう。そして、鈴蘭内の抗争は一気にヒートアップする―
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映画『クローズZERO』予告

映画『クローズZERO』出演者

小栗旬(滝谷源治)/やべきょうすけ(片桐拳)/黒木メイサ(逢沢ルカ)/高岡蒼佑(伊崎瞬)/桐谷健太( 辰川時生)/渡辺大(阪東秀人)/深水元基(林田恵)/高橋努(牧瀬隆史)/鈴之助(田村忠太)/遠藤要(戸梶要次)/上地雄輔(筒本将治)/伊崎央登(三上豪)/伊崎右典(三上学)/大東俊介(桐島ヒロミ)/橋爪遼(本城俊明)/小柳友(杉原誠)/松重豊(牛山)/塩見三省(黒岩義信)/遠藤憲一(矢崎丈治)/岸谷五朗(滝谷英雄)/山田孝之(芹沢多摩雄)

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映画『クローズZERO』感想


映画に描かれた世界は、シンプルだ。

闘争本能を剥き出しにした、男たちの戦争。
これでもかとばかりに、延々と、次から次に、際限なく、画面一杯に、何十人もの野郎どもが、死に物狂いで、ムヤミヤタラニ、燃焼しつくさんと、肉弾戦を繰り広げる。

こんな暴力に満ちた映画を見ながら、どこか郷愁を覚えたのは私だけだろうか?

例えば、昭和という時代にあっては、男達というのは戦う存在だった。
関連レビュー:男達の生存競争を描く傑作
『仁義なき戦い』
タランティーノにも影響を与えた名作
深作欣二の描く仁義なきヤクザの欲望とは!

仕事といえ遊びといえ、常にどこか競い較べられ、何かに挑むかのような行動様式を持たざるを得なかった。
それは団塊の世代など、大集団の中で生存競争を強いられたことと無縁ではないだろう。
その、高度成長期にあって日本人は、圧倒的な活力を糧にして、戦争で失われた財や絶望感からの復興を果たした。

それはまた別の意味での「戦争」と、呼ぶべきだったに違いない。
その「戦争」の状況は、実は団塊の世代を超えて、バブル崩壊前の若者世代まで引き継がれた日本男児の伝統だった。
関連レビュー:スポコンと化したレジャー
映画『私をスキーにつれてって』
スキーレジャーブームを生んだ大ヒット映画
原田知世と三上博史のゲレンデ恋愛ストーリー

しかし、その戦いもバブル崩壊を頂点として、終戦の時を迎える。
それは、1995年当時アメリカに経済力で肉薄し、人口比を考えれば、実質1位と見なされるほどの力を示した。
しかし、そんな経済力による勝利が、精神の充足を意味しないという、誠に切実な真実を日本人に思い知らせた。
同時にその真実は、男達の闘争の終焉をも意味しなかっただろうか?
関連レビュー:団塊世代の喪失感の行方
森田芳光『失楽園』
男達の生きがいの喪失と女達の母性
不倫愛を描いた大ヒット日本映画

つまり、敗戦後の男達が「富=経済力」の戦争に勝利したにもかかわらず、富が幸福を担保しないという事実を突き付けられた時、男達にとっては戦う対象を見失ってしまった。

その結果、社会的な富の蓄積によって生きる事には困らないだけに、無駄な闘争を避けるという日本社会を成立せしめた。

「草食男子」とはまさに、戦いが不要とされた時代に成長した者たちだったに違いない。

こんな時代背景にあって、昭和のマンガやドラマの主役であった、ケンカに明け暮れた男達の物語は過去の遺物として忘れ去られようとしたかに思えた。

しかしこの映画である。

平成の世にあっても「男達の闘争」が、人の心にある種の感銘を与えることを、この映画のヒットが証明したように思う。
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映画『クローズZERO』解説・考察


しかし、映画とは流行歌の様に「時代」を反映するエコーのような存在だとすれば、明らかに時代錯誤の映画に違いない。

そのギャップを埋めて現代に蘇らせるために、今が旬の「男」達を並べた事が成功の一因としてあげられるだろう。

だが何よりも現代にあって訴求力を持ち得たのは、この描かれた「戦い」の光景を、非現実的な一種のファンタジーであると割り切って描いた結果だと感じる。

この「格闘」シーンを純粋に、ストーリーや感情などを脇役として、徹底して描くことによって「格闘」の持つダイナミズムが自立的な拍動を刻み「象徴化」され、それは一種のアスリート的な美を生んだ。

それはあたかも、プルースリーのカンフーのごとく、脈動する肉体が発する輝きを思わせる。
アメリカ・香港合作映画:1973年
映画『燃えよドラゴン』
ブルース・リー主演による、カンフー映画の傑作
アクション映画の歴史を変えた、古典的名作

またこの映画から、古来より人が生きるという苦難に立ち向かう時、必要不可欠とされた「伝統的慣習」と同じ効果を観客にも及ぼすであろう。

その慣習とは「祭礼」である。

祭礼というものが、辛く苦しい日々の暮らし「ケ=日常」をはなれて、「ハレ=祭」という祝祭空間に突入する事で日常の苦痛を寛解しようとする行事と見る時、この映画の男達がもみ合いへし合いする姿は、そのまま「ハレ=祭」の姿に重なりはしまいか。

ここに描かれた「暴力と血」は一種神聖な、生きるという事、命を燃やすという事、その純粋なシンボルとして輝いているように思えるのである。

この時代にあっても、長い人生の「ケ=日常」を生きるためには、10代後期という溢れんばかりの命を「ハレ=青春」として燃やさねばならない事を、この描かれた「格闘」の運動エネルギーの内に見出すのは、あながち昭和の懐旧の為だけとは思われない。



posted by ヒラヒ・S at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月07日

映画・初代『ゴジラ』1954年元祖・怪獣の王!そのリアリティーを考察!/あらすじ・感想・解説・意味・ネタバレ・ラスト

元祖ゴジラの力

英語題Godzilla
製作国 日本
製作年 1954
上映時間 97分
監督 本多猪四郎
特殊技術 円谷英二
脚色 村田武雄、本多猪四郎
原作 香山滋


評価:★★★★★5.0点



この映画の存在感とは何事かと思う。

タイトルの最初ゴジラの重苦しい足跡が響いただけで、心の中に禍々しい災厄の予感を持つ。
<『ゴジラ』テーマ曲:作曲/伊福部昭>

続いてゴジラの咆哮を耳にしただけでもう、破壊と殲滅から逃れ得ないと覚悟してしまう程のリアリティーがある。

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<目次>
映画『ゴジラ』ストーリー
映画『ゴジラ』予告・出演者
映画『ゴジラ』感想
映画『ゴジラ』考察・解説/ゴジラと戦争の傷
映画『ゴジラ』ネタバレ・結末

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映画『ゴジラ』あらすじ

太平洋で、船舶が原因不明の沈没をする。
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その後も船舶の沈没は続き、船の乗組員家族が不安にさいなまれる中、関係当局が対応に当たっていた。
そんな中、新聞記者萩原(堺左千夫)は、大戸島に沈没船の生存者が漂着したと知り取材に赴いた。
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島では海にいる巨大な怪物「ゴジラ」の伝説を、老漁夫は口にし近頃の不漁もそのせいだという。
萩原は信じなかったが暴風雨の夜、島は各所で異様な破壊が起こった。

大戸島に、調査団が送られることになった。
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古生物学者山根博士(志村喬)を先頭に、その娘で助手の恵美子(河内桃子)、彼女の恋人サルベージ会社の尾形(宝田 明)、原子物理学の田畑博士などからなる調査団が派遣され、実際に伝説の怪物の怪異な姿をその眼で見た。
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政府の諮問委員会の席で、山根博士は二百万年前の生物ゴジラが、水爆実験により目覚め放射能を蓄積して火を吐く怪獣となって出現したと説明した。
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そして、ついにゴジラは東京に上陸した。

品川駅を押し倒し、銀座で咆哮を挙げ、列車を引きちぎり、鉄橋を壊し、戦車や重砲の攻撃を受けても、国会議事堂やテレビ塔を破壊し、東京の街はゴジラに蹂躙(じゅうりん)された。

山根博士の弟子である芹沢(平田昭彦)は、恵美子に好意を持っていたが戦争で負傷した醜い顔になったのを苦に、実験室から出ず研究だけに没頭してきた。
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芹沢の秘密の研究は水中の酸素を一瞬に蒸発させ生物を窒息させる破壊兵器「オキシジン・デストロイヤー」だった。その研究を知る恵美子は、それを尾形に打明け、共に芹沢の説得に向かう。
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しかし戦争で人間を信じられなくなった芹沢はこれが殺人武器に用いられることを恐れて、説得に応じない。

しかし、ついに思いを寄せる恵美子を守るため、研究資料を悪用されないよう火に投じ、「オキシジン・デストロイヤー」と共に自ら海中に潜る決心をする・・・・・・・・・・
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映画『ゴジラ』予告


映画『ゴジラ』出演者

志村喬(山根恭平) /河内桃子(山根娘恵美子)/宝田明(尾形秀人)/平田昭彦(芹沢大助)/堺左千夫(萩原)/村上冬樹(田畑博士)/山本廉(漁夫政治)/鈴木豊明(弟新吉)/馬野都留子(新吉の母)/岡部正(田畑博士の助手)/小川虎之助(船舶会社社長)/手塚克巳(新聞社デスク)/橘正晃(アナウンサーA)/帯一郎(アナウンサーB)/中島春雄(変電所技師)/笈川武夫(対策本部長)/林幹(国会委員長)/恩田清二郎(大山代議士)/菅井きん(大沢婦人代議士)/榊田敬二(村長)/高堂国典(老漁夫)/東静子(ダンサー)/鴨田清(連れの男)/中島春雄(ゴジラ)

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映画『ゴジラ』感想


この映画のスゴいところは、その圧倒的なリアリティーにあると感じる。
俳優で言えば、志村喬の説得力に多くを負っていると感じたが、この役者のスゴいのは、明らかなフィクション世界を、そのたたずまい1つで現実世界に書き換えてしまうところにある。
関連レビュー:世界の黒沢の傑作時代劇
『七人の侍』
映画史に永遠に刻まれた日本映画
黒沢映画の時代劇と西部劇との関係?

しかし、それ以上に、本作品でリアリティーを生んでいるのは、全体に染み込んだ時代感にあるのではないか。
これが撮影された1954年とは第二次世界大戦が終わって、10年を経ていない。
つまり、この映画の、ゴジラという破壊の化身に、右往左往する人々の姿はそのまま、10年前の現実世界だったのだ。
<アメリカ軍の撮影した1945年の日本>

映画には間違いなく時代感覚が、映り込むことがある。
そして、しばしば傑作とは、監督の意図と、映り込んだ時代感がマッチした時に生まれるように思う。
関連レビュー:ロシア革命を描いた映画
『戦艦ポチョムキン』
映画と共産主義、2つの革命!モンタージュ理論誕生のワケ!?
エイゼンシュタイン監督の映画史上に輝く古典

この初代ゴジラの明らかな着グルミ感は、ビジュアル的にチープだと言わざるを得ない。
しかしその「作り物感」以上に、禍々しく怪異で重厚な、魔物とも、神とも見える存在として、その威容にリアリティを与えたのは、エキストラまで含め表現された、戦争の災禍の記憶が、ゴジラという存在に憑依したゆえだと感じた。

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映画『ゴジラ』考察・解説

特別企画「目撃者に直撃インタビュー」


Godzilla_press.pngこの映画が持つ圧倒的リアリティーの秘密を、作品中の人々の思いから読み解こうというのが、これ以降の文章の狙いです。

ということで、映画に登場した人々に新聞記者萩原がインタビューを敢行する、映画ファン待望の夢企画(嘘)である。

新聞記者萩原:あなたにとってゴジラとは?
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大戸島の老人:あれは祟神、大地の精霊、台風や地震のような大いなる気の表れじゃ。
あの顔を見よ、まるで狛犬のようじゃろ日本の神の姿じゃで。

新聞記者萩原:あなたにとってゴジラとは?
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古生物学者山根:二百万年前の生物ゴジラが、水爆実験により目覚めた自然界の脅威です。

新聞記者萩原:映画で28分後に登場していましたね。あなたにとってゴジラとは?
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電車の中の女性:ど〜でもいいんだけど、長崎の原爆ですら生き延びてきたのに、いい加減にして欲しいんだけど。ホント災難でしょアイツ。

新聞記者萩原:映画で32分後に登場していましたね。あなたにとってゴジラとは?
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32分の客船の乗客:私たちは平和になって、ようやくレジャーを楽しめるようになって、で急に海からゴジラが出てきてビックリなんだけど・・・あんまり言っちゃいけないんだけど・・・・実は遊びほうけている俺達を、戦争で死んだ人々が恨んで、ゴジラになって襲ってきたんだと・・・・・殺されてもしかたないと思った(号泣)

新聞記者萩原:映画で1時間2分後にゴジラに襲われていました。あなたにとってゴジラとは?
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子連れの母親:おとうちゃんのところに行くのと子供に申しました。お父ちゃんは戦争で死んで、私は子供を抱えて苦しい生活で、あ〜ゴジラが救いにきてくれたなぁ〜って。私にとっては救い神のように思えました・・・

新聞記者萩原:映画で1時間6分後にゴジラに襲われていました。あなたにとってゴジラとは?
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テレビ塔アナウンサー:戦争中大本営発表の嘘を言っていましたからね・・・・・ゴジラでも何でもいいんですが、命をかけても嘘は付きたくない・・・そう思っていました。

新聞記者萩原:調査隊にいてゴジラを見て、それからずっとゴジラに関わっていました。あなたにとってゴジラとは?
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山根の娘恵美子:戦争が終わって10年。実は不安だったんです・・・・こんな不安定な世界情勢で、いつまで平和が続くんだろうって・・・そこにゴジラが現れて、ヤッパリ戦争が起きたって、そう思いました。
だから、なんとしてもゴジラを斃したかった。ゴジラは再び始まる戦争そのものです。

新聞記者萩原:恵美子さんの要請を受けてゴジラと戦われますが、あなたにとってゴジラとは?
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芹沢博士:私は戦争に行きました。障害者となって戻りました。私は戦争で罪を犯したものとして、恵美子さんとの恋を諦めました。私とゴジラは結局、戦争の生き残り、戦争の傷跡なのだと思うのです。平和な世で生きていてはいけない者なのです・・・・・

新聞記者萩原:いろいろな意見を聞いて正直混乱しています・・・再び聞きます。あなたにとってゴジラとは?
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古生物学者山根:今となっては、正直なところ幻のようにも思えるのです。結局、ゴジラとは日本人が戦争で負った傷トラウマが形となって現れたものだったかと・・・・

新聞記者萩原:つまりは、ドキュメンタリーとしての強い力の上に、この禍々しい「祟り神」が現れるとき、フィクションを超えたパワーが発揮されたということでしょうか・・・・・・

新聞記者萩原:あっ!しまった!大事なインタビューを忘れていた!!!!

新聞記者萩原:いろいろあなたについてなんやかやと人間が言ってますが、また、あなたのこの映画以降の作品に関して評判が良くなかったりするのですが、あなたにとってゴジラとは?アッ!ギャァァァァァァ!!!
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ゴジラ:ペッ!不味いなコイツ!あ〜ウルセェ〜!人が見た数だけ違う姿を見せるのがスパースターってモンだろう!

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以下の文章には

映画『ゴジラ』ネタバレ

があります。
(あらすじから)
いよいよ、芹沢と緒方が、ゴジラとの対決に臨む。
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皆に見守られながら「オキシジン・デストロイヤー」と共に海中に突入した。
その様子を見守る船上の人々の目の前にゴジラが現れ、断末魔の叫びを響かせた。
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映画『ゴジラ』結末

芹沢博士は自ら命綱を切って、ゴジラと共に海に沈んだ。
芹沢は、緒方と恵美子の幸福を祈ると言い残した。
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山根教授は、また水爆実験が繰り返されるなら、第二第三のゴジラが現れるだろうと呟いた・・・・・
船上の人々は、均しく頭を垂れ黙とうを捧げた。
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海は静かに陽光を映していた・・・・・
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ラベル:志村喬 宝田 明
posted by ヒラヒ・S at 21:10| Comment(6) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする