原題 Brokeback Mountain 製作国 アメリカ 製作年 2005年 上映時間 122分 監督 アン・リー 脚本 ラリー・マクマートリー、ダイアナ・オッサナ 原作 アニー・プルー |
評価:★★★★ 4.0点
この映画は公開当時、高い評価を得て数々の賞に輝いた。
性的マイノリティーを題材にした作品が少なかった当時、配給も当初は少数の上映館で封切られたものの、徐々に拡大し最終的には全世界で 1 億 7,800 万ドルの興行収入を上げるヒットとなった。
正面から同性間の恋愛映画を描いた、説得力あるLGBT映画だと感じた。
<目次> |
映画『ブロークバックマウンテン』詳しいあらすじ |
1963年ワイオミング州シグナル。トレーラーから降りたイニス・デルマー(ヒース・レジャー)は、仕事を求めてプレハブの事務所の横でドアが開くのを待っている。
そこにピックアップが止まりジャック・ツイスト(ジェイク・ギレンホール)が降りてきたが、見知らぬ二人は言葉を交わさない。
そこに、雇用主である中年男ジョー・アギーレ(ランディ・クエイド)が到着し二人を呼び込み、自分の羊をブロークバック・マウンテンの森林局管理地で放牧し、昼夜を問わずコヨーテに襲われないよう、その見張りをしろと言った。それは違法だが、毎年繰り返されている行為だった。
イニスとジャックは、その晩酒場で酒を酌み交わし、お互いの身の上を語りあい、翌朝羊と共に、ブロークバックマウンテンに入り、長期の山の生活が始まった。
ジャックは食事の支度をし、野営地のイニスは食事の時だけジャックの所に帰って来る。
ジャックは牧場を持っ夢を語り、イニスは貯金が出来たら恋人アルマ・ビアーズ(ミシェル・ウィリアムズ)と結婚すると語った。
イニスはアギーレから送られる、週一回の食料を引き取り帰る時。クマに出会い落馬し食料を積んだラバが逃げてしまった。食事のため戻ったジャックは、怪我をしたイニスを見て驚く。二人は食料を調達するため、違法にヘラ鹿を狩って食べた。
二人だけの山の生活がお互いを近づけ、ある晩泥酔し、一緒にテントに入って寝ることになった。ジャックがイニスに手を伸ばす。イニスは最初こそ抵抗したが、最後には自からジャックを脱がせると、背後から責めた。
翌朝ジャックが起きた時、イニスは羊たちの元へ戻る準備を慌ただしくしている所だった。イニスはジャックと目を合わせず、山へと戻って行った。すると放牧地で、コヨーテに襲われたと見られる1匹の羊が、内臓も露わに無残に死んでいるのを、イニスは見つけた。
羊の見張りから夕飯にイニスが戻り、ジャックに「あれは1回限りのことだ、俺はカマじゃない」と言うと、ジャックも「二人の秘密だ。俺もカマじゃない」と応えた。しかしその夜、イニスとジャックは再び関係を持つ。
翌朝じゃれている二人を、たまたま山を訪れたアギーレに見られていたことを、二人は知らなかった。
ある日嵐が来て、過ぎ去った後の羊の群れは、他の放牧者の羊と一緒になってしまった。その羊を何とか選別し終え、再び放牧に戻った。
しかしある日、アギーレから大型の嵐が来るから、羊を連れ戻すように命じられ、二人は山を下りることになった。
イニスは山を下りる前落ち込んでいた、そんな彼にジャックがちょっかいを出すと、イニスが怒りジャックと殴り合いになった。イニスが流血しジャックが謝ったが、イニスはジャックを殴った。
山を降りついに別れの時。イニスは山に血の付いたシャツを忘れてきたことに気が付いた。
ジャックは来年もブロークバック・マウンテンの仕事に戻るかと問うと、イニスは結婚するからわからないと答える。
ジャックは、来年もまたこの仕事に戻ると告げた。その顔を見ながら、イニスは「いつか会おう」と答え、二人は別れた。
車に乗ったジャックは、サイドミラー越しに、一人道を歩くイニスを見た。
道を歩いていたイニスは、ふいに路地に入ると、その体を折り曲げ嗚咽を上げた。
イニスは故郷に帰ると、約束通りアルマと結婚式を挙げ、ワイオミング州に住み子も授かる。
翌年ジャックは約束通りアギーレの仕事に応募し、アギーレにブロークバック・マウンテンの仕事はあるかと尋ねると、アギーレは去年見たの二人の関係に嫌悪感を示し、ジャックがイニスが来たかどうか尋ねても答えなかった。
イニスとアルマの夫婦には子供が増えていたが、日々の生活の苦しさにストレスが募る。
一方のジャックは、ロデオ会場で知り合ったラリーン・ニューサム(アン・ハサウェイ)と結婚し、テキサス州で暮らし男の子も授かった。
彼女の父親は大型農機具の販売会社を経営し、そこでジャックも営業として働いていたが、婿養子のように義父の顔色を窺う生活だった。
ある日イニスが帰宅すると、アルマがジャックを知っているか?と尋ねた。ジャックの絵葉書が届いており、そこには、会いたいと書かれていた。
そしてジャックと再会の日。家で待つイニスは、車が到着すると、急いで階段を降りジャックと熱い抱擁を交わし、さらに二人は、物陰に隠れてキスを交わした。
しかし、それはイニスの妻アルマに見られられており、彼女の顔が苦悩に歪んだ。
そうとは知らないジャックは、部屋に戻りジャックを紹介すると、飲みに行って今日は戻らないと妻に告げた。
4年振りにイニスとジャックは、ホテルの一室で体を交えた。二人は、自らの近況を語りあい、その翌日から釣りに出かけた。家を出るイニスをアルマは見送り、その顔に涙が流れた。
ジャックの運転する車は残雪が光る、渓谷へと着いた。その夜、焚火をしながら、ジャックは二人で小さな牧場を経営しようと提案する。
しかし、イニスは結婚生活や子供を引き合いに出し、色よい返事をしなかった。
ジャックが不満を口にすると、少年の頃近所でゲイの男が、男性器を切り取られ殺されるのを、父に言われて見せられたと告白し、関係がばれれば危険だと語った。
それからジャックはイニスの下を定期的に訪れるようになった。
ジャックの妻ラリーンは、いつもワイオミングに夫が行くのが不満で、たまにはイニスが訪ねてこさせろと言った。
しかしジャックは新たな農機具のキャンペーンを放り出し、イニスの待つワイオミングへと車を走らせた。
イニスは、待ち合わせの釣り場に向かうため、家を出ようとすると、アルマが忘れ物だと声をかけた。そこには釣り竿が残されていた。
こうして二人は、数か月に一度の逢瀬を心待ちにして、日々を過ごしていた。
1975年にイニス夫婦は離婚し、それをジャックに葉書で知らせた。
すると、ジャックはワイオミングまでやってきたが、その日は月一回の娘二人との面会日と重なっており、イニスは今回はジャックと過ごせないと言った。
その言葉に怒りを見せたジャックは、車を走らせながら涙を流し、国境を越えメキシコへと走らせた。
ジャックはメキシコの裏町で男娼を買い、夜の闇へと消えて行った。
感謝祭、ジャックは妻ラリーンと一人息子、そして義父夫婦と団欒を持った。しかし義父と口論になり、ついにジャックは俺の家だ黙っていろと反抗し、その権幕に義父も大人しく席に着いた。
同じ日イニスは、元妻アルマと、その再婚した夫の家で、娘達二人に囲まれディナーを摂った。食後にアルマは、イニスに釣りと言いながら一度も魚を持ち帰らず、釣り糸に着けた手紙も読んでなかったと言い、釣りをせずジャックと何をしていたのかと責める。
激しい応酬の末、イニスは驚く娘達を後に、家を飛び出した。
イニスは町で、車に飛び出し急ブレーキを踏ませ、文句を言う運転手に、狂ったように殴りかかり、逆にたたき伏せられた。
久々に会ったイニスとジャックは、山の中を馬でトレッキングを楽しむ。川でテントを張り、焚火を囲む。イニスはジャックに妻ラリーンが二人の関係に疑念を持っていないかと尋ね、イニスは自分の地元で、秘密を全員が知っているように感じると話す。
ジャックはテキサスの牧場で二人で生きようと誘う。しかし、イニスは首を縦に振らずジャックは苛立つ。
ある日イニスは、酒場でリンダ(キャシー・カートライト)という女性と知り合い、交際を始めた。
一方のジャックは、ある晩レストランで一組の夫婦と知り合う。店の外のベンチで、その夫と話すジャックは、その男から湖にある小屋で、二人で酒を飲み釣りをしないかと誘われた。
イニスとジャックの逢瀬が来た。川沿いでテントを張り二人の時間が流れた。ジャックはイニスに再婚しないのかと尋ね、ジャックはイニスが恋しくてどうしようもない時があると訴えた。別れの朝、イニスはジャックに、次に会えるのは11月だと伝えた。
ジャックはあまりに会えなすぎると怒り、20年で数度しか会えず、一緒に牧場を経営することも拒否され、二人にはブロークバック・マウンテンしかないと叫ぶ。
イニスは、その言葉に涙を見せ、俺を楽にしてくれというと、ジャックはそんなイニスを抱き締めた
イニスと交際していた女性は、イニスとの距離を縮められず、彼との結婚をあきらめた。
そんなある日イニスはジャックに送った絵葉書が、宛先死亡とスタンプを押され返送されて来た。
映画『ブロークバックマウンテン』予告 |
映画『ブロークバックマウンテン』出演者 |
イニス・デルマー(ヒース・レジャー)/ジャック・ツイスト(ジェイク・ギレンホール)/ラリーン・ニューサム(アン・ハサウェイ)/アルマ・ビアーズ(ミシェル・ウィリアムズ)/ジョー・アギーレ(ランディ・クエイド)/キャシー(リンダ・カーデリーニ)/ラショーン・マローン(アンナ・ファリス)/アルマ・ジュニア(ケイト・マーラ)/リンダ(キャシー・カートライト)
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映画『ブロークバックマウンテン』評価・受賞歴 |
映画『ブロークバックマウンテン』評価 |
映画『ブロークバックマウンテン』受賞歴 |
<2005年度>
ニューヨーク映画批評家協会賞:作品賞/監督賞/主演男優賞(ヒース・レジャー)
ナショナル・ボード・オブ・レビュー :監督賞/助演男優賞(ジェイク・ギレンホール)/ ベストシネマ選出
ロサンゼルス映画批評家協会賞:作品賞/監督賞
ヴェネツィア国際映画祭: グランプリ
フェニックス映画批評家協会賞:脚色賞/撮影賞/年間ベスト作品選出 主演男優賞(ヒース・レジャー)/助演男優賞(ジェイク・ギレンホール)/助演女優賞(ミシェル・ウィリアムズ)
セントルイス映画批評家協会賞:作品賞/監督賞/脚本賞/主演男優賞(ヒース・レジャー)
シカゴ映画批評家協会賞:撮影賞/作曲賞
フロリダ映画批評家協会賞: 作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞
ユタ映画批評家協会賞: 作品賞/監督賞
ダラス・フォートワース映画批評家協会賞:作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞
サウスイースタン映画批評家協会賞 :ベストワン映画賞/監督賞/脚本賞
ラスヴェガス映画批評家協会シエラ賞: 作品賞/監督賞/主演男優賞(ヒース・レジャー)/作曲賞
サンフランシスコ映画批評家協会賞:作品賞/監督賞/主演男優賞(ヒース・レジャー)
ゴールデン・サテライト賞 -: 作品賞(ドラマ部門)/監督賞/オリジナル主題歌賞/編集賞
ボストン映画批評家協会賞 -: 作品賞/監督賞
パームスプリング映画祭:デザート/パーム貢献賞(ジェイク・ギレンホール)
サンタバーバラ国際映画祭: ブレークスルー・パフォーマンス・オブ・ザ・イヤー賞(ヒース・レジャー)
ハリウッド映画祭:ブレークスルー賞(ジェイク・ギレンホール)/キャスティング・ディレクター・オブ・ザ・イヤー(アヴィ・カウフマン)
<2006年度>
アカデミー賞: <受賞>監督賞/脚色賞/オリジナル音楽賞<ノミネート>作品賞/主演男優賞/助演男優賞/助演女優賞/撮影賞
インディペンデント・スピリット賞:最優秀作品賞/最優秀監督賞
英国アカデミー賞: 作品賞/監督賞/脚色賞/助演男優賞(ジェイク・ギレンホール)
ロンドン映画批評家協会賞:最優秀作品賞/監督賞
ゴールデングローブ賞: 作品賞(ドラマ部門)/監督賞/脚本賞/オリジナル主題歌賞
PAG(全米製作者協会)賞 : 最優秀作品賞
放送映画批評家協会賞:作品賞・監督賞・助演女優賞(ミシェル・ウィリアムズ)
関連レビュー:オスカー受賞一覧 『アカデミー賞・歴代受賞年表』 栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞 授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。 |
映画『ブロークバックマウンテン』ランクイン映画リスト紹介 |
2016 年BBC「21世紀の映画ベスト100」・・・・・40 位
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映画『ブロークバックマウンテン』2022年時点の映画サイト評価 |
<日本>
Yahoo!映画 -・・・・・4/5、アマゾン・・・・・4.4/5、Filmarks・・・・・3.8/5、映画.com・・・・・3.8/5、allcinema・・・・・7/10、キネノート・・・・・76.1/100
<米国>
Rotten Tomatoes・・・・・88%、Metacritic・・・・87%、IMDB・・・・・7.7/10
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以下の文章には 映画『ブロークバックマウンテン』ネタバレがあります。 |
(あらすじから続く)
イニスがジャックの家に電話をすると、妻のラリーンが出た。ジャックの死を知らせたかったが、ジャックがイニスの住所を隠していたため、通知が出せなかったと話す。
ジャックに何があったか聞くと、トラックのパンクを直している最中タイヤが破裂し、圧死したと聞かされた。
その瞬間、道端で股間を血に染め、全身打撲で横たわるジャックの痛々しい姿が映し出された。
まだ39歳の死だった。妻ラリーンは遺骨の半分を実家の両親に、そして残った半分をブロークバック・マウンテンに撒いて欲しいというのが遺書だったと語った。
それを聞いたイニスは、自分たちはブロークバック・マウンテンで羊番をし親友になったと、ラリーンに語った。
イニスはジャックの実家を訪ねると、そこは廃業した牧場だった。両親にイニスは、遺言に従って遺灰をブロークバック・マウンテンに撒く手伝いをさせて欲しいと申し出る。
父親は、ジャックは家族の墓地に向かないと思っていたようだと語り、ジャックがいつかイニスと共に彼ここの牧場を立て直すと話していたが、最後の頃はテキサスの男と二人で再建すると語っていたと、イニスに言う。
ジャックの母から、息子の部屋を見てやって欲しいと言われ、イニスはその部屋に入ると、愛おし気に室内を見渡す。
窓からの風景を見て、彼のクローゼットを開く。すると、そこには、ブロークバック・マウンテンを下りる日、殴り合いでイニスが流血したシャツがあった。
そのイニスの服の上からジャックの服が重ねられ、ハンガーにかけられていた。イニスはその二枚の服を強く抱きしめた。
そのシャツを、ジャックの母に頼み遺品として譲り受けた。
父親は、遺灰をブロークバック・マウンテンには撒かずに、家族の墓地に埋葬すると、イニスに告げた。
去り際、ジャックの母から、また会いに来てほしいとイニスは言われた。
映画『ブロークバックマウンテン』結末 |
今は一人、トレーラーハウス暮らしとなったイニスを、19歳の長女の○〇が訪ねてきた。
付き合っている相手がいて結婚するから出席して欲しいと言う。最初は牧場の仕事が忙しいと渋っていたが、最後は承諾し娘を喜ばせた。
愛しているのかと問うイニスに、娘が頷くと、二人は共にグラスを鳴らし乾杯した。
娘が出て行った後、娘のスカーフが残されていた。
イニスがそれをしまうため、クローゼットを開けると、その扉には、二人の思い出の地であるブロークバック・マウンテンの絵葉書が貼られ、ジャックとの思い出の服がかけられていた。【意訳】イニス:ジャック、俺は誓う。