原題 shane 製作国 アメリカ 製作年 1953年 上映時間118分 監督 ジョージ・スティーヴンス 脚本 A・B・ガスリー・Jr. 原作 ジャック・シェーファー |
評価:★★★★ 4.0点
この1953年のジョン・スタージェス監督の作品は、西部劇と言えば必ず名前が挙がる名作です。
個人的に、この映画は、西部劇の名匠ジョン・フォード監督やハワード・ホークス監督とも違う、一種の気品と格調を感じ胸打たれます。
西部劇がアメリカの建国の精神を表現した「神話」だとすると、この映画こそ「建国神話」と呼ぶべき神格を感じる作品です・・・・
<目次> |
映画『シェーン』あらすじ |
ロッキー山脈を望む西部ワイオンミングの山を馬に乗った一人の男が下りてくる。
麓の牧草地では一頭の鹿が水を飲んでおり、その鹿をライフルで狙っているのはジョーイ(ブランドン・デ・ワイルド)だった。
そんなジョーイの目が、近づく馬上の見知らぬ男シェーン(アラン・ラッド)に注がれた。
ジョーイは開拓民として入植した父ジョー・スターレット(ヴァン・ヘフリン)が建てた家の庭に走り込み、シェーンを待った。
シェーンがジョーに挨拶をすると、ジョーは水でも飲んで休むといいと声を掛けた。母マリアン(ジーン・アーサー)は家の中から見知らぬ男に目をやった。
その勧めに馬を下りたシェーンは、背後でジョーイが操作したライフルの音に、すばやく腰の銃を抜き放ち、ジョ―イを驚かせた。
そこに数頭の馬に乗った男達が現れると、ジョーの顔が怒りに満ち、シェーンに向かって「お前もライカーの一味だな俺の土地から出て行け」と怒鳴った。
馬に乗った男達はルーフ・ライカー(エミール・メイヤー)とそのライカー牧場の者達だった。
アメリカ政府が推進する開拓政策「ホームステッド法」でジョー達開拓民が入植してきて、牛が自由に行き来してきた放牧地を分断されたことに我慢ならず追い出そうとしていたのだ。
柵の前まで近づい牧場主のライカーは、金は出すから土地を早く明け渡すのが身のためだと脅した。
ジョーが拒否し、両者に緊張が走った時、ジョーの背後を守るようにシェーンが現れると、ライカー達は去って行った。
ジョーは誤解したことを謝り夕食に招き、シェーンとスターレット一家は食卓を囲んだ。
入植者家族とライカー牧場の話を聞きながら、マリアンの料理を食べ、その傍らで、ジョーイは、シェーンの拳銃に興味を示していた。
夕食を終えたシェーンは、庭に出て耕作地の巨木の根を掘り起こすため、斧を振るい出した。
その作業にジョーも加わわり、宵闇が迫るころその根がついに揺れ出す。
シェーンとジョーの二人が、渾身の力を込めて根を押し続けると、ついにその根は大地から引き抜かれた。
汗の吹き出た二人の男の顔に笑顔が浮かび、ジョーはシェーンにこの家に留まらないかと誘った。
ジョーに雇われ農作業を始めたシェーンは、初日ジョーから町の雑貨屋で買い物を頼まれる。サム・グラフトン(ポール・マクヴィ)が経営するその店は、町でただ1つの商店で、その横には酒場が併設されていた。
ジョーイのためにソーダ水を買うため隣の酒場に入ったシェーンだったが、酒場はライカーの手下たちのたまり場で、シェーンを見ると豚の匂いがすると、絡み出した。
クリスという男は執拗に罵り、ついにはシェーンの顔に酒を浴びせた。
しかし、シェーンは抵抗せずに店を出る。
スターレット一家とともにに開拓に加わっているのは7家族だったが、一様にライカーの嫌がらせをうけており、ある晩ジョンの家で集会が開かれた。
そこに南北戦争で南軍に属したフランク・トーリー(エリシャ・クック・Jr)が現れると、彼はいつものように南軍兵の誇りを語り、他の者からからかわれるとトーリーはこのヤンキー(北軍の別称)めと反発するのがお決まりだった。
ジョンが俺が何とかすると、団結し、皆で戦おうと言うと、酒場でシェーンのようすを見ていたフレッド・ルイス(エドガー・ブキャナン)は、一味に馬鹿にされたまま帰ってくるような“腰抜け”がいると、昼の一件を語った。
シェーンは席を外し、外で雨に打たれているのを、ジョーイの部屋の窓からマリアンとジョーイは見ていた。
ジョーイはシェーンは勇敢だよねと声を掛けるとシェーンは話せば長いと答える。
マリアンは信じているわと返し、シェーンはその場を静かに離れた。
マリアンはシェーンをあまり好きにならないでとジョーイに語りかける。
ジョーイがなぜかと問うと、いずれいなくなる人だからと、切なそうな顔で語り、ランプの火を消した。
入植者家族が個々に町へ行くのは危険だという事で、全家族が連れ立って買い物をするとした日、開拓家族は久々の買い物に沸き立っていた。
ジョーイがソーダ水を欲しがったため、シェーンが酒場へと足を踏み入れると、再びライカーの手下クリスがシェーンを豚と呼び、絡み始めた。しかし今回は、シェーンもケンカを受けて立ち、クリスと殴り合いノックアウトした。
しかし、たちまちライカー一味に襲い掛かられ、それでも果敢に戦い続けたが、ついに羽交い絞めにされ、何度も何度も拳を顔に受けた。
それを見かねたジョンは、1人 酒場に踊り込み、再びライカー一味と乱闘が始まる。
見かねた店主のグラフトンが止め、ジョンとシェーンに「君達の勝ちだ」と告げると、ジョンは酒場の修理代は俺とシェーンで払うと宣言すると、酒場を後にした。
このケンカによりライカーは、銃を使ってでも奴らを追い出すと部下に告げると、遠くの地よりガンマン(拳銃使い=殺し屋)を呼び寄せた。
独立記念日、ジョーイはシェーンに射撃を教えてとせがみ、仕方なく銃を腰に下げ外に出ると、ジョーイは撃ってみてと頼んだ。
シェーンは素早く銃を抜くと、たちまち3発を的に当てて見せるとジョーイが天才だと喜ぶ。
母マリアンは銃声に驚き駆けつけると、シェーンに銃が無い世界になれば良いと訴える。
シェーンは、銃はただの道具で、使う者次第で悪にも善にもなると語った。
アル中の気のあるトーリーは町へ酒を買いに行き、酒場でライカーと遭遇して強がった言葉を吐いたが、新顔の酷薄そうな顔をした、二丁拳銃の男を目にしすぐに酒場を出た。
その日、独立記念日の祭日はジョンとマリアンの結婚記念日でもあり、皆から祝われた2人を中心に、7つの家族はダンスを踊り歓声があがる。シェーンもマリアンと息の合ったダンスを踊った。
町から戻ったトーリーが、二丁拳銃の男の話をすると、シェーンは早撃ちウィルソン(ジャック・パランス)と呼ばれるガンマンだと思うと口にした。
祭が終わり夜更けに帰宅したスターレットを、ライカーとその仲間が待っていた。
ライカーはスターレットに取引を持ち掛け、シェーンにも味方になれと誘いをかけるが、スターレットが開拓家族全ての面倒を見るかと聞くと、ライカーは強欲にも程があると怒り、交渉は決裂した。
その間、シェーンとウィルソンは、静かに睨みあっていた。
ライカーは徹底抗戦を決め、見せしめに開拓民の誰かを殺せとウィルソンに命令し、そこに開拓仲間と共にトーリーがやって来た。
トーリーは早速酒を求めて酒場に向かうが、酒場の前にはどっかりとウィルソンが陣取っていた。
ウィルソンはトーリーを呼び止めると、その名前が南軍の将軍から来てるのかと尋ね、南軍を侮辱しせせら笑った。
怒りに我を忘れトーリーが銃に手を掛けると、半分も抜き終わらぬうちに、ウィルソンの銃はトーリーの胸に向けられていた。
トーリーは、銃口を下げたまま身を固くし戦意を喪失していたが、ウィルソはゆっくりとトーリーに向け引き金を引き、トーリーの命を奪いその体を泥にまみれさせた。
トーリーの死が開拓民に知らされると、前から引き払うことを考えていたルイスは幌馬車に家財道具と子供達を乗せ、今にも家を出る所だった。
それを知ったジョンは、仲間の葬式だけは出ろと強くルイスに言い参列させた。開拓民の立会いの下、葬儀が終了しようかという時、ルイスの家から炎が立ち上るのが見えた。ライカーは立ち退いたルイスの家に早速火を掛けたのだ。
自分の建てた家が燃えるのを見たルイスは、悔しさがこみ上げ、こんなことをするライカーに絶対屈しないと家に戻る決心をし、それを聞いた男達は彼の家の消火に全員で向うのだった。
ライカーは、人が殺されても開拓民が土地に居座る姿に、そのリーダーのジョンを殺す以外に解決策は無いと決心する。
ジョンをおびき寄せるために、2人きりで冷静に話そうと、伝言を送った。
それを聞いたスターレットも、いざとなればライカーを殺す覚悟で、交渉の場である酒場に行こうと決断した。妻のマリアンは戦う位ならこの地を捨てようと必死で夫を止めるが、ジョンの意思は固かった。
マリアンはシェーンにも止めるよう説得してと訴えるが、シェーンは自分には何も言えないと止めなかった。
しかし、そんなシェーンのもとにライカーの手下のクリスが現れ、ライカーがジョンを殺そうと待ち構えていると忠告に来た。彼は、ライカーのやり方がひどすぎると心を痛めており、もう足を洗うのだと言って姿を消した。
それを聞いたシェーンは、銃を下げ戻ってくると、ジョンはライカーを 倒せたとしてもウィルソンには勝てないから、自分が酒場に行くと告げた。しかし、ジョンも自分が行くと譲らず、ついに殴り合いのけんかになる。
互いに譲らずもみ合ううち、シェーンは遂に銃を抜きジョーの頭部を殴り気絶させた。それを見たジョーイは、銃で殴るなんて大嫌いだとシェーンに言い、シェーンは切ない顔をみせた。
マリアンは酒場に向かうシェーンを引き留め、その顔を見つめると握手を交わし、命を大切にと言って送りだした。
母マリアンはジョーイに、シェーンも仕方なくしたことだから憎まないでと言うと、判っているといって、ジョーイは愛犬と共にシェーンの馬の後を追って走り出した。
映画『シェーン』予告 |
映画『シェーン』出演者 |
シェーン(アラン・ラッド)/マリアン・スターレット(ジーン・アーサー)/ジョー・スターレット(ヴァン・ヘフリン)/ジョーイ・スターレット(ブランドン・デ・ワイルド)/ルーフ・ライカー(エミール・メイヤー)/ジャック・ウィルスン(ジャック・パランス)/クリス・キャロウェイ(ベン・ジョンソン)/フレッド・ルイス(エドガー・ブキャナン)/フランク・“ストーンウォール”・トーリー(エリシャ・クック・Jr)/アクセル・“スウェード”・シップステッド(ダグラス・スペンサー)/モーガン・ライカー(ジョン・ディークス)/サム・グラフトン(ポール・マクヴィ)/リズ・トーリー(エレン・コービー)
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映画『シェーン』評価・受賞歴 |
【第26回アカデミー賞】
<受賞>撮影賞(カラー部門)
<ノミネート>助演男優賞(ブランドン・デウィルド)/助演男優賞(ジャック・パランス)/最優秀監督賞(ジョージ・スティーブンス)/最優秀作品賞(ジョージ・スティーブンス)/脚色賞、脚本(ABガスリージュニア)
映画『シェーン』映画ランキング |
<AFI(アメリカ映画協会)100年-100本ランキング>
アメリカ映画ベスト100・・・・・69位
アメリカ映画ベスト100(10周年記念版)・・・・・45位
アメリカ映画100人のヒーローと悪役・・・・・16位(シェーン/ヒーロー部門)
アメリカ映画100の名ゼリフ・・・・・47位(シェーン。カムバック!)
アメリカ映画100の乾杯・・・・・53位
アメリカ映画10ジャンルのベスト10・西部劇部門・・・・・3位
<その他>
文藝春秋発表「大アンケートによる洋画ベスト150」・・・・・45位
キネマ旬報発表「オールタイム・ベスト映画遺産200 外国映画篇」・・・・・59位
雑誌「ペースト」発表『1950年代の映画ベスト100』・・・・・33位
世界中で、いろいろな観点で、さまざまな企画で映画ランキングが発表されており、そのリストを下にまとめています。
◎いろいろな『映画ベスト100』企画紹介
世界各国で選ばれた『ベスト映画ランキング』のリストを紹介!!!
映画界、映画ファン、映画評論家など、選定方法もさまざま!
日本映画も各リストでランクイン!
また映画の歴史に興味があれば、アメリカのアカデミー賞の授賞式紹介と受賞リストはいかがでしょうか?
関連レビュー:オスカー受賞一覧
『アカデミー賞・歴代受賞年表』
栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞
授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。
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以下の文章には 映画『シェーン』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
シェーンは丘を越え川を渡り、トーリーの眠る墓場を通り過ぎ町へと向かう。
その後ろを転ぶようにして、ジョーイと犬が追い掛けた。
酒場についたシェーンは、ライカーに向けジョンの代理で来たと告げた。
酒場は一瞬にして緊迫した空気に包まれた。
ライカーがお前じゃない帰れと言うが、シェーンはウィルソンに用があると、ウィルソンに向き合った。
ウィルソンが立ち上がり対峙する。
その様子をジョーイが、スイングドアの下から覗き込んでいた。
シェーンは、お前は卑劣なヤンキー野郎だと吐き捨てると、ウイルソンが銃に手を伸ばす。ウィルソンの手が一瞬の内に銃を引き抜くが、それ以上にシェーンは早打ちだった。【意訳】シェーン:お前は、ジャック・ウイルソンだろ?/ウイルソン:それがお前に何の意味がある、シェーン?/シェーン:俺はお前の噂を聞いていた。/ウイルソン:どう聞いてたんだシェーン?/シェーン:俺が聞いたのは、お前が卑劣な、北部(ヤンキー)の嘘つき野郎ってことだ。/ウイルソン:試してみな!(撃ち合い2階の敵を見つけたジョーイが叫ぶ)ジョーイ:シェーン危ない。
シェーンはウイルソンとライカー一味を倒したが、自らも傷を負った。
映画『シェーン』結末 |
戦いを終え酒場を出て来たシェーン。
声を掛けるジョーイは「射たれている。家に帰ろうと」と声を掛けるが、シェーンはさよならだと告げた。
なぜと問うジョーイに、「人を殺せば、もう元には戻れない」「違う生き方をしたかったが無理だった」と言った。
シェーンは「もう銃はいらなくなった」「父さん母さんを大事にして強い男になれ」と言い残し、ジョーイに背を向け馬を進ませた。
【意訳】ジョーイ:もし見えていたら撃たれなかったよねシェーン?/シェーン:じゃあなジョーイ/ジョーイ:あいつは銃を全部引き出すこともできなかったでしょ、そうだよねシェーン?/ジョーイ:パパは一緒に働きたいんだ!それにママも望んでる。僕には分かるんだ!シェーン!シェーン!カムバック!
ジョーイの叫ぶ「シェーン!! カムバック!!」の声を受けながら、シェーンは山の中に消えて行った。
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