2021年04月28日

映画『第七天国』(1927年)ネタバレ・ラスト解説/『ラ・ラ・ランド』のチャゼル監督が語るラストの秘密とは?!

映画『第七天国』ネタバレなしあらすじ・ 映画評価 編

原題 7th Heaven
製作国 アメリカ
製作年 1927年
上映時間 110分
監督 フランク・ボーゼージ
脚色 ベンジャミン・グレイザー
原作 オースティン・ストロング


評価:★★★☆  3.5



この作品は1927年のハリウッドのサイレントで撮られた恋愛映画です。

ボーイ・ミーツ・ガール、そして生まれた「恋」が、2人を天国へと導く「恋愛天国」の物語です。

しかしこの映画のラストは、驚愕の展開が待ち構えており、それは遠く時代を越え『ラ・ラ・ランド』に影響を与えたようです・・・・・

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<目次>
映画『第七天国』予告・出演者
映画『第七天国』ネタバレ
映画『第七天国』結末
映画『第七天国』ラスト解説
映画『第七天国』と『ラ・ラ・ランド』

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映画『第七天国』ネタバレ前簡単あらすじ


第一次世界大戦前のパリのスラム街、モンマルトルの下水道掃除人のチコ(チャールズ・ファレル)と、姉ナナ(グラディス・ブロックウェル)に日々ムチ打たれている、ディア−ヌ(ジャネット・ゲイナー)が出会う。体を売って生活しているディアーヌが、警察に捕まりそうなところを、チコが自分の妻だと助けたため、後日の調査に備え共に住むことになる。チコの部屋は7階の天井裏だったが、ディアヌーには天国だった。チコは警察が来たら出てけと釘をさすが、日々の生活の中でディアーヌに好意を持ち始め、ついには警察の調査が終わっても、共に暮らすことを許されディアーヌは喜ぶ。そして、ある日チコはウェディング・ドレスを持って帰ってきた。喜ぶディアーヌだったが、その日は戦争の開戦日で、結婚式を挙げるまもなくチコは戦地に赴いた。戦争は激しさを増し、激戦で重い傷を負ったチコは「上をむいて死んで行った」とディアーヌに遺言を残し、目を閉じた・・・・・・
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映画『第七天国』予告

映画『第七天国』出演者

ディア−ヌ(ジャネット・ゲイナー)/チコ(チャールズ・ファレル)/ブリサック大佐(ベン・バード)/ブール(アルバート・グラン)/ゴバン(デビッド・バトラー)/マダム・ゴバン(マリー・モスキニ)/ナナ(グラディス・ブロックウェル)/シュヴィヨン神父(エミール・ショータード)/叔母バレンタイン(ジェシー・ハスレット)/叔父ジョージ(ブランドン・ハースト)/ラット(ジョージE.ストーン)/リリアン(ウェスタン・アルレット)

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以下の文章には

映画『第七天国』ネタバレ

があります。
(あらすじから)パリのディアーヌのドアを、ブリサック大佐がノックした。
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警戒するディアーヌに、チコの死を知らせる電報を見せた。

信じないと言うディアーヌだったが、片腕となりながら復員して来た隣戸のゴバンも訪れ、チコの死は本当だろうと口にした。
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そして、シュヴィヨン神父が訪れ、チコの最後を語り、ネックレスをディアーヌに手渡したとき、彼女の希望は消えた。
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力なく椅子に座り込んだディアーヌは、毎日彼が来ていたと信じていたのに、ただの思い込みだなんて、なんて愚かだったのと、呆然と呟いた。
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その時、戦争終結の知らせが入り、街は喜びで沸き返り、人々は街路に満ちた。
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窓の外の喧騒を聞きながら、ディアーヌは虚ろな姿で椅子に沈み込んでいた。
そんな彼女は、いつしか異様な目をして笑いだした。
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それに気づいた神父は、神の意思を疑うなとディアーヌに語りかける。
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しかし、ディアーヌは、ここを天国と呼び、神がチコを戻してくれると4年間信じて来たのに、なぜ奪ったのと訴えた。

その時、下の町の歓喜に沸く群集の雑踏を、よろめきながら進むのはチコだった。
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時計の針は11時を指した。
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映画『第七天国』結末

ディアーヌを呼ぶチコの声がした。
そして、ドアが空きチコが入って来た。
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固く抱き合う2人。眼が見えないと言うチコに、ディアーヌは私があなたの目に成ると言った。
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天上から光が指す。
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レースのような陽光が2人に降り注ぎ、彼等だけを白く輝かせた・・・・
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映画『第七天国』考察

ラストの解釈

この映画のラストは、ある意味衝撃的です。
どう見ても、チコは死んでいると、くどい位語られていながら、最後には甦るのです。

この解釈をどうすればよいでしょうか・・・・・・・
一番ありそうなのは、サイレント映画の頃には良くあることですが、撮り終わった後でスタジオが商売を考えて、ムリヤリ観客受けの良いハッピーエンドをくっつけたという線でしょう。

それは決して、サイレント時代だけの話ではなく、常にビジネスとしてのシビアさを課される映画業界では、商業性と芸術性の「せめぎ合い」は現代でも繰り広げられているのです。
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しかし、個人的には、そんな映画外の事情で映画世界の独立性を脅かすという現実を、断じて認めるつもりはありません!
だとすれば、死んだチコは甦ったのです。
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その、死者の復活が成された可能性を考察してみたいと思います。
一番納得し易いのは、ディアーヌが錯乱し、チコをその妄想の中で抱きしめたというものです。

それは、美しくも、悲しい、悲劇的なエンディングとして幕を閉じる事となります。
さらに可能性を探れば、チコは幽霊として、例えば『ゴースト』のように、ディアーヌの元に帰って来たのかとも思います。

2人の愛の深さを思えば、死んだからといって、その「永遠の愛」が消え去ることなどありえないというラストになるでしょう。

しかし、しっかり映画を見ると、チコは町の群集の中を盲目となりながら、間違いなく歩んでいるのです。
そう考えると、作品内で客観的に彼は生き返って、現実世界に復活したように描写されているのです。

それを踏まえて、私の解釈は、このチコはキリスト同様「死」から「復活」を遂げた、「神の子」だというものです。
映画内で「神」の言及が多く、彼等が住んでいる場所が「天国」だと言い、そしてチコが「俺は特別な人間なんだ」と言う時、この物語は「神」とその「奇跡」を描いているのだと信じます。
この映画のラストとは、少年と少女が出会い、その恋によって「天国」を生み出し、「神」へと通じる「自己」を見出すドラマだと、私の中では決着しています。

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映画『第七天国』解説

『ラ・ラ・ランド』デミアン・チャゼル監督の解釈

デミアン・チャゼル監督は、『ラ・ラ・ランド』のラストシーンを、この『第七天国』のラストから触発されたと語っています。
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チャゼル監督も『第七天国』のラストを、スタジオの介入や、ヒロインの精神的変調の可能性を指摘しつつ、最終的には、チコは実際に死に 、そしてラストでは生きていると解釈したようです。

そんな監督の言葉を、アメリカのサブカルチャーサイト『Vulture』から紹介します。
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「これらの2つのことが共存できる理由は、この女性が彼をどれほど深く愛しているかによるのだ」と チャゼルは言う。
「この感情は非常に深く深いので、時と現実の法則と物理学は、存在を停止した。」2つの相反する現実が実際共存可能だとする、この観念は、チャゼルがミュージカルに取り組む挑戦の準備に役立った。「それは 映画が何が成せるかを語る、感情が全てを超越することができるという観念だ」彼は言う「その観念はこれまでに作られたすべてのミュージカルに真直ぐつながる。君が深く心打たれると、突然、90人編成のオーケストラが天から降って来て、それで歌が始まる。それはとてもばかげてばかげているが、少なくとも私には、時としてとても正しいと感じる。映画とは夢のような振る舞いを許された場所なのだ。」
【原文⇒https://www.vulture.com/2017/01/movie-that-inspired-la-la-lands-ending.html


このチャゼルの言葉に、私は心を打たれました。

映画という「夢」は、人々の感情、人々の感動、その心の動いた分だけ「現実を超越し」、人々の望む「夢」を生む自由を得られるのだと語っていると思えるからです。

「奇跡は人の心が生む」という事実を、形にしたものこそ「映画」であり「創作物」だとチャゼルは語っています。

だから私は、それらの「人々の夢=芸術」を愛するのです・・・・・
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