原題 Wing 製作国 アメリカ 製作年 1932年 上映時間 141分 監督 ウィリアム・A・ウェルマン 脚本 ホープ・ロアリング、ルイス・D・ライトン 原案 ジョン・モンク・サウンダース |
評価:★★★☆ 3.5
この作品は、第一次世界大戦に参戦した、アメリカ空軍のパイロット2人の闘いと恋の青春物語です。
その当時の映画としては、膨大な制作費を投じた大作で、第1回アカデミー賞の最優秀作品賞に輝きました。
一世紀前のモノクロ、サイレント映画ですので、例えば『トップガン』のような迫力は有りませんが、しかし、この映画はそれら戦争青春物語の原型として永遠に残すべき作品かと思います。
<目次> |
映画『つばさ』詳しいあらすじ |
テロップ「この映画を戦場で命を落としたパイロットに捧げる」
1917年、アメリカの小さな田舎町。
そこに住むジャック・パウエル(チャールズ・ロジャーズ)が昼寝から醒めた。彼は空を見上げると、飛行機に乗る夢想に浸った。
起き上がり、自動車の改造作業に戻ると、そこに隣家の娘メアリー・プレストン(クララ・ボウ)か現れた。
ジャックに片思いしている彼女は、邪魔にされながらも、作業を手伝った。
そして完成した車に、メアリーは流星号と名付け、流れ星のマークを書き入れた。
そして、メアリーは「流星を見たら、愛する娘にキスをするのよ」と、口づけを求めたがジャックは無視して走り去った。
ブランコに揺られる、カップルは町一番の資産家の息子デヴィッド・アームストロング(リチャード・アーレン)と、都会から来た娘シルヴィア・ルイス(ジョビナ・ラルストン)だった。
そこに、流星号を乗り付けたジャックは、恋しているシルヴィアを強引に車に乗せると、ドライブに連れ出した。
ジャックとデヴィッドは、シルヴィアを巡って恋のライバルだつた。
ジャックはシルビアを乗せメアリーの目の前を通り過ぎ、彼女を泣かせるのだった。
その年に第一次世界大戦が勃発した。
ジャックとデヴィッドも空軍パイロットを目指して、軍に志願し入隊を許される。
そして故郷を去る日が来た。
ジャックは好意を寄せるシルヴィアを訪ねると、その場にあったに彼女の写真を入れたペンダントを、自分への愛の証だと信じて持ち去った。
しかしシルヴィアが本当に愛しているのはデヴィッドで、そのペンダントは彼への愛を込めたものだった。
デヴィッドは、シルヴィアから愛しているのはあなたと告白され、口づけを交わした。
一方のジャックは、家を去るとき、隣のメアリーからお守りといって写真をもらったが、その愛には無頓着だった。
デビッドは両親から無事に帰って来てと、涙ながらに見送られた。
その手には子供の頃愛した小さな熊のぬいぐるみをお守りとして手にしていた。
飛行士の訓練施設で、共に厳しい訓練に汗を流すジャックとデヴィッドだったが、恋のライバルでもある二人の仲は険悪だった。
ある日のボクシング訓練中本気のケンカになった。しかし、とことん殴り合った後には、友情が芽生えていた。
その頃メアリーは婦人自動車部隊があると知って、応募を決めた。
二人の男達はついに訓練が終わり、戦地へと配属された。
その宿舎には先輩飛行士のホワイト(ゲーリー・クーパー)がいて、二人のお守りを見ると、自分は信じないと語って飛行機へと向かった。
しかしホワイトは、その日墜落し訓練飛行から戻らなかった。パイロットの現実を知って、衝撃を受けた二人の元に初飛行の命令が下った。
ジャックとデヴィッドの二人は、その後飛び立つ時の合言葉になった、準備は良いか、OKと声を掛け合うと、空に舞い上がっていった。
そして、ついに実戦の日が来た。流星が描かれたジャックの機はデヴィッドの機と編隊を組んだ。
空には、ドイツ空軍のエース、ケラーマン大尉の部隊が待ち構えていた。
そして両軍の激しい闘いが繰り広げられ、ジャックとデヴィッドの隊は劣勢となる。
初めての空戦でジャックは撃墜されるが、何とか軽症で助かった。
デヴィッドは、機体の故障を哀れんだケラーマンの騎士道精神に助けられた。
そんな体験を重ね、ベテランパイロットに育って行く二人。
その戦場には、自動車部隊の隊員になった、メアリーもトラックを走らせていることは、ジャックは知らなかった。
そんなある日、弾薬の集結するメンベールの基地に、ドイツ軍の大型爆撃機ゴーダ機が爆撃に現れ、二人は空に迎撃に駆け上った。
二人は町の爆撃は阻止できなかったものの、ドイツ軍の護衛機を撃墜し、ゴーダ機をも墜とした。
地上ではその活躍に、大きな声援が送られていた。その中には爆撃の最中、トラックで物資を運びに来たメアリーもいて、その飛行機に描かれた流星マークで、ジャックの機だと知り投げキッスを送った。
ジャックとデヴィッドの二人は、その活躍に勲章を送られ、束の間の休暇を得た。
そして馬車でパリの町になだれ込み、夜になると酒を浴びた。
しかし、戦争はいよいよ大詰めとなり、バイロットが呼び戻され、従わないと軍法会議にかけると指令が出た。
だが、ジャックはその命令を受け取る前に、したたか呑んで泥酔しており、命令書を運んで来たメアリーにも気づかなかった。
しかし、メアリーはホテルまでジャックを運んだが、その胸のペンダントにシルヴィアの写真が入っているのを見て、怒り絶望した。
それでも、寝ているジャックにそっと頬を重ねるのだった。
再び戦場に戻ったジャックとデヴィッドは、大攻勢の前に語り合う。
デヴィッドは、もう戻れない予感がすると語り、自分が死んだら勲章を母へ届けて欲しいとジャックに頼んだ。
ジャックはそんなデヴィッドを励まして、秘密にしていたペンダントを見せた。
すると、落ちたシルヴィアの写真の裏には、デヴィッドへの愛が綴られていた。
それに気付いたデヴィッドは、そのメッセージをジャックに見せまいと、写真を破き返さなかった。
そうとは知らないジャックは怒り、友情がないのかと殴りかかろうとした。
そこに、偵察気球撃墜の命令が下り、ジャックは怒りがおさまらないまま、流星号に乗り込むと、デヴィッドの「準備は良いか」という出発前の呼びかけにも応じず飛び立った。
その、後を追ったデヴィッドは、お守りの熊を忘れていた。
気球を探し求める2人の機に、ドイツ軍機4機が迫った。
デヴィッドは、ジャックを守ろうと攻撃を仕掛け、激しい格闘戦が繰り広げられる。
デヴィッドは2機を撃墜したが、残りのドイツ機に背後を取られ、必死に逃げた。
その頃ジャックは、偵察気球を発見し無事撃ち落とした。
しかし振り返ると、デヴィッドの姿はなかった。
心配しつつ基地に帰投したが、デヴィッドは帰還していなかった。
デヴィッドは、その時、敵に追い詰められ沼に墜落していたのだ。
そして付近のドイツ軍兵士より一斉射撃を受けながらも、ドイツ陣地内を逃亡していた。
映画『つばさ』予告 |
映画『つばさ』出演者 |
メアリー・プレストン(クララ・ボウ)/ジャック・パウエル(チャールズ・“バディ”・ロジャース)/デヴィッド・アームストロング(リチャード・アーレン)/シルヴィア・ルイス(ジョビナ・ラルストン)/ハーマン・シュウィンプフ(エル・ブレンデル)/ホワイト(ゲイリー・クーパー)/セレスト(アルレット・マルシャル)
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映画『つばさ』感想・解説 |
時は、チャールズ・リンドバーグの大西洋横断飛行の快挙に、全世界が沸き立っていた頃であり、皆が空に注目しているタイミングで登場したこの映画は、たちまち評判となり大ヒットしたようです。
もちろん100年過ぎようかと言う映画ですから、今のアクション映画からすれば、小粒に見えるのは致し方ない所だと思います。
・・・・モノクロで声の入っていないサイレント映画ですから、今の映画に較べ刺激が少なく、思わず睡魔に襲われそうになりますが・・・・・
しかし、目をしっかり見開いて見て行くと、本当のパイロットだった監督が、本当のパイロットだった俳優を使った映画です。
やはり空戦の臨場感や、戦争の現実が確かに書き込まれていると感じます。
そして、見終わった印象は、実に『ハリウッド・青春戦争ロマン』の基本構造を持っているのに驚きました。<ドイツ爆撃機撃墜シーン>
例えば、トム・クルーズの『トップ・ガン』や、リチャード・ギアの『愛と青春の旅立ち』など、アメリカの若い兵士を題材にした映画につきものの、軍への憧れ、訓練、恋、失意、そして栄光が、本作で描かれています。
やはり、「青春戦争ロマン」の古典と呼ぶべきでしょう。
そして、そんな「ハリウッド青春戦争ロマン」表現の常として、夢と希望と恋が、ちょっぴり苦い痛みを含みつつ、あくまで明るいムードで描かれます。
それは、戦争という行為が、国家としての反映につながったアメリカ合衆国ならばこその、特徴ではないかと思ったりします。
つまりアメリカ合衆国にとって、戦争が繁栄と栄光を生む、賞賛されるイベントとして、認識されているのではないかと邪推したくなりますが・・・・それほど戦争の悲惨と悲劇は、ハリウッド映画には希薄に思えます。
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そんな、アメリカ的戦争映画の典型が、第一次世界大戦が終結してすぐの、この映画で現れていることは注目すべきだと思います。
アメリカ映画が、戦争に関して否定的な色を持たないことで、第一次世界大戦後のアメリカの世界戦略の選択肢として、為政者に戦争という選択肢を選ばせることを容易にしたのではないかと疑うからです。
ハリウッドの映画も、ナチスドイツやソビエト映画ほどではないにせよ、プロパガンダの一面を持つと思います。
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以下の文章には 映画『つばさ』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
基地の皆が心配する中、ドイツ軍エースのケラーマン機が、飛来し手紙を落として行った。
そこには、デヴィッドが墜落し捕虜になるのを拒んだため、死んだと書いてあった。
それを見たジャックは、友の死を悼み、デヴィッドの敵を討つまで帰らないと、怒りに燃えて激戦の続く地表を離れ、空に駆け上った。
ジャックは敵陣深く侵入し、ドイツ軍後方を撹乱し、将軍のジープを掃射し仕留めた。更に敵前線に背後から襲いかかリ、味方を助けた。
しかしその頃、ジャックはドイツ軍の飛行場を発見し、1機の飛行機を盗み脱出に成功した。
地上では、連合軍が勝利を収め、戦場には多くの死体が残された。
その上を、ジャックの機が飛んでいると、一機のドイツ軍機を発見した。
だが、そこに乗っていたのは、ディヴィッドで、必死に自分だと伝えようとする。
復讐心に燃えたジャックは気づかず、撃ち落とした。
連合軍の飛行場近くに落ちたドイツ軍機を取り囲む兵士達は、乗っていたパイロットに息があったため、ベッドに寝かした。
地上に降り立ったジャックも、そのパイロットを確認しようと覗きこむ。
すると、それがディヴィッドだと知り愕然とする。
瀕死のディヴィッドは、自らを責めるジャックに、君はドイツ機を落としただけで悪くないと慰めた。
ジャックは、写真のいさかいを詫び、君との友情以上に大事なものはないと語りかけた。
ディヴィッドは、分かっているよと答えると、離陸前の二人の合言葉「準備は」と口にすると、この世から飛び去った。
戦争が終わって、基地でジャックはディヴィッドの遺品を整理し、そこにあったシルヴィアのディヴィッドへの愛を綴った手紙を見て真実を知る。
故郷の町に帰ったジャックは、町を上げて英雄として迎えられた。
盛大なパレードが繰り広げられる中、ディヴィッドの家族とシルヴィアは、ひっそりと家に籠もっていた。
パレードが終わり、ジャックはディヴィッドの家を訪ねる。
ディヴィッドの両親に面会したジャックは、涙ながらに勲章と小さな熊を渡した。
ディヴィッドの母は、あなたを憎もうとしたけど出来なかった。あなたの責任ではない。
これが戦争よと泣きながら言った。
映画『つばさ』結末 |
ジャックは家に帰り、流星号のカバーを取った。
そこに、隣のメアリーが顔を出すと、2人は挨拶を交わし話し始めた。
いつしか流星号に腰掛け夜が深まるまで話し続けた。
ジャックが戦争を語り涙を見せると、未来のことを考えましょうとメアリーは慰めた。
その2人の頭上を、流れ星が通り過ぎた。
【意訳】ジャック:流れ星を見た時、何をするか君は知っている?/メアリー:愛する娘にキスをする。
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