原題 From Here to Eternity 製作国 アメリカ 製作年 1953 上映時間118分 監督 フレッド・ジンネマン 脚本 ダニエル・タラダッシュ 原作 ジェームズ・ジョーンズ |
評価:★★★☆ 3.5
この映画は、アカデミー賞13部門にノミネートされ、作品賞や監督賞を含む8部門で勝利した歴史的一本です。
ドラマとして見れば、戦争に引き裂かれる恋人たちの悲劇という、古典的な悲恋物語となっています。
しかし、そんな甘いロマンスの背後には、アメリカ陸軍内の不正に対する告発の姿勢が秘められているのでした・・・・・
<目次> |
映画『地上より永遠に』詳しいあらすじ |
1941年ハワイオアフ島のショフィールド・バラックス基地。
職業軍人の二等兵ロバート・E・リー・プルーイット(モンゴメリー・クリフト)は、オアフ島の陸軍連隊・G中隊に異動してきた。着いた早々彼の親友である二等兵アンジェロ・マジオ(フランク・シナトラ)と再会した。
そして所属中隊の曹長ミルトン・ウォーデン(バート・ランカスター)に挨拶をし、G中隊の中隊長ダナ・ホームズ大尉(フィリップ・オーバー)とプルーイットの面談が行われた。
彼は移動前ラッパ兵として伍長だったが自分より下手な者が、情実でその座を奪った事に我慢ならず、二等兵として移動を希望した反骨心に富んだ男だった。
ホームズ大尉は、自らボクシングチームの監督を勤め、彼の中隊チームが優勝すれば昇進のチャンスがあるため、チーム強化に熱心だった。
プルーイットは、ボクサーとして過去に高成績を上げていたため、ホームズ大尉は彼に様々なメリットを提示し勧誘したが、プルーイットは過去にボクシングで友人を失明させてから、リングを降りており勧誘を拒絶した。
曹長ウォーデンはプルーイットに利口になれと諭しているところに、ホームズ大尉の妻カレン・ホームズ(デボラ・カー)がやって来て、その姿にウォーデンは魅了された。
ホームズ大尉はボクシングをしないプルーイット二等兵を眼の敵にし、ボクシング・クラブの下士官達に命じ、日々さまざまに嫌がらせをさせ続けた。
一方の曹長ウォーデンは、ある雨の日ホームズ大尉の妻カレンの元を訪れた。
夫である大尉の浮気に苦しみ夫婦生活に絶望しているカレンは、ウォーデンが好意を寄せているのを知り、彼を受け入れた。
毎日イジメに耐えるプルーイットの唯一の慰めは、親友のマジオと外出するときぐらいだった。ようやく巡って来た休日、マジオにつれられて基地外の酒場コングレス・クラブにプルーイットは向かう。
そこで、プルーイットは、ロリーン(ドナ・リード)というホステスに一目惚れしお互い親しくなった頃、マジオは営倉看守長の軍曹ジャドソン(アーネスト・ボーグナイン)とケンカを始め、互いに遺恨を残した。
曹長ウォーデンとホームズ大尉の妻カレンは外で密かに会うようになり、人気のない海で泳ぎ波打ち際でキスを交わした。
プルーイットの日々は相変わらず、過酷なイジメにさらされており、ある日たまりかねた彼が反抗する。
ホームズ大尉はついに軍法会議にかけると曹長ウォーデンに言った。ウォーデンは、ボクシングの試合に出れなくなると、巧みにホームズを説得しプルーイットの懲罰労働を2倍にすることで納めた。
基地のバーに行ったプルーイットとマジオは、そこで営倉看守長の軍曹ジャドソンと再び出くわす。ジヤドソンはマジオを見ると再び挑発し、ナイフまで出すケンカになった。
その場にいた、曹長ワーデンが割って入って、ジヤドソンにナイフを捨てさせ事なきを得た。
プルーイットは懲罰作業を課されていたが、ワーデンの計らいで外出許可を得ると、コングレス・クラブのロリーンを訪ねた。彼に惹かれながらも、ロリーンは、貯金をしアメリカ本土に戻り中流階級の暮らしを手に入れる事を夢見て躊躇していた。
それでも気持ちを抑えきれず、彼と店外でデートをすると、自らの身の上を話し本名を告げた。
そこに、マッジオが酔って現れたが、軍服姿なのを不審に思ったプルーイットが問い質すと、マッジオは突然命じられた歩哨任務に納得できず、抜け出してきたと打ち明けた。
驚いた、プルーイットが後を追ったが、その時にはマッジオは道で憲兵に喧嘩を売り、軍法会議の結果6ヶ月の営倉送りとなった。
営倉でマジオを待っていたのは、看守長の軍曹ジャドソンだった。
底意地の悪い笑みを浮かべたジャドソンは、警棒を手にしてマジオの前に立った。
カレンとワーデンは、車の中に居てさえ人目を避ける密会を重ねており、カレンはそんな関係に限界を感じ、ホームズ大尉と離婚してワーデンと結婚したいと願うようになった。
そのためには、ワーデンが夫の部隊から離れる必要があり、士官になれば可能だと訴えた。
しかしワーデンは士官を嫌っており、自分が士官になるなんて無理だと苦悩したが、ついには愛のため受け入れた。
プルーイットはロレーンが家を借りたため、そこで会うようになる。
そこで彼女に、プルーイットは結婚を申し込んだが、ロリーンは自分の夢は「まっとう」な生活を送ることだと言い、兵隊との結婚では無理だと言うと、プルーイットも兵士を辞めることはできないと応じた。
懲役労働に追われるプルーイットを、ボクシングチームのメンバーであるガロビッチ軍曹(ジョン・デニス)が嫌がらせをし、ついにブレウィットになぐりかかった。二人が互いに殴りあうケンカが始まった。
それを知ったホームズ大尉は現場に見にきたが、ついにガロビッチが倒されると、ガロビッチが先に手を出したのを知りながら罰を下さなかった。その様子を連隊長が兵舎の上階から観察していた。
その夜プルーイットは、基地の中で泥酔したウォーデンと語り合った。道の真ん中に2人座り込み、プルイットを友と呼び、自らが将校になる事の苦悩を聞かせた。
プルーイットが励ましている所に、マッジオが転がり込んで来た。
彼は、ジャドソンに日々殴る蹴るのの暴行を受けており、営倉から脱走して来たのだ。しかし、逃走の際に飛び乗ったトラックから転げ落ち、弱った体は限界を超えていた。そしてマッジオはプルーイットの腕の中で、ジャドソンの不当な仕打ちを訴えつつ息絶えた。
その翌日プルーイットの吹く、痛切な葬送ラッパの音が兵舎に響いた。その音を基地の者達は痛切な思いで耳をすませた。
ある晩、営倉長ジャドソン軍曹が夜の街を歩いて行くと、不意に呼び止められた。
声を掛けたのはプルイットで、マッジオの敵を討つため、暗闇に呼び込みナイフを抜き闘いを挑んだ。
裏町でもみ合う2人の動きが止まり、地に横たわったのはジャドソンだった。
その死体をまたぎ越え、歩み去るプルイットもよろめいていた・・・・・・
映画『地上より永遠に』予告 |
映画『地上より永遠に』出演者 |
ミルトン・ウォーデン曹長(バート・ランカスター)/ロバート・E・リー・プルーイット(モンゴメリー・クリフト)/カレン・ホームズ(デボラ・カー)/ロリーン:アルマ(ドナ・リード)/アンジェロ・マジオ(フランク・シナトラ)/ダナ・ホームズ中隊長(フィリップ・オーバー)/ファツォー・ジャドソン(アーネスト・ボーグナイン)/バックリー伍長(ジャック・ウォーデン)/ガロヴィッチ(ジョン・デニス)/スターク軍曹(ジョージ・リーヴス)
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映画『地上より永遠に』解説 |
<映画賞>
第26回アカデミー賞:作品賞/監督賞(フレッド・ジンネマン)/助演男優賞(フランク・シナトラ)/助演女優賞(ドナ・リード)/脚色賞(ダニエル・タラダッシュ)/撮影賞 (白黒部門)/録音賞/編集賞
ゴールデングローブ賞:監督賞(フレッド・ジンネマン)/助演男優賞(フランク・シナトラ)
ニューヨーク映画批評家協会賞:作品賞/監督賞(フレッド・ジンネマン)/主演男優賞(バート・ランカスター)
第26回アカデミー賞・監督賞スピーチ |
司会のドナルド・オコーナーが、ハリウッドで著名な女優とアイリーン・ダーンを呼び込む。
アイリーン・ダーンがノミネート者を紹介
フレッド・ジンネマン(地上より永遠に)/チャールズ・ウォルタース(リリー)/ウィリアム・ワイラー(ローマの休日)/ジョージ・スティーヴンス(シェーン)/ビリー・ワイルダー(第十七捕虜収容所)
受賞者はフレッド・ジンネマ。
【フレッド・ジンネマン受賞スピーチ・意訳】
将軍から准尉ビル・マレンまで、この映画で私たちに素晴らしい援助を提供してくれたアメリカ陸軍の太平洋軍司令部に感謝します。さらに、ハリー・コーン氏とコロンビア・スタジオのすべての友人、特にダン・タラダッシュとバディ・アドラーとの素晴らしい関係に感謝します。どうもありがとうございました。
関連レビュー:オスカー受賞一覧 『アカデミー賞・歴代受賞年表』 栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞 授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。 |
AFI(アメリカ映画協会)が2001年に編纂した、アメリカ映画界の総意を結集したといえるランキングにも本作は選ばれています。
<『アメリカ映画100年100本シリーズ』> |
(下はそれぞれのランキングにリンクしていますます)
AFI選定『史上最高のアメリカ映画100本』52位
AFI選定『史上最高の情熱的映画ベスト100』20位
◎いろいろな『映画ベスト100』企画紹介 世界各国で選ばれた『映画100本』のリストを紹介!!! 映画界、映画ファン、映画評論家など、選定方法もさまざま! 日本映画も各リストでランクイン! |
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以下の文章には 映画『地上より永遠に』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
ジャドソンによってプルイットも腹部に深い傷を負っており、何とかロリーンの家にたどり着くと倒れ込んだ。
新聞でジャドソン殺害の記事が連日報じられる中、プルーイットが行方不明となって三日が経過していたが、ウォーデン曹長は露見しないよう出勤扱いとしていた。
時を同じくしてホームズ大尉は、プルーイットに対するボクシングチームの嫌がらせの元凶が彼にあると報告が上がり、連隊司令官の査問を受け糾弾された。
大尉は事実を認めたが、軍法会議は避けたいと申し入れると、即日辞表を提出するよう命ぜられ基地を去ることになった。
カレンは夫ホームズから共にハワイを去ることを求められ、急いでウォーデンに連絡をとり基地の外で落ち合い話し合った。
ウォーデンは下士官でいたいと打ち明けると、カレンは「私ではなく陸軍と結婚していたのね」と別れを告げた。
しかし、ウォーデンは「愛している。いつかどこかで出会う」と力なく語った。
1941年12月7日、日曜日の朝8時未明、日本軍の真珠湾攻撃が始まる。
基地が騒然となる中、ウォーデンはいち早く反撃の態勢をとった。
【意訳】ウォーデン:弾薬を運べ。そっちに構えろ。しっかりと敵機の先を狙うんだ(ラッパの音)兵士:フライデーのやつ狂ったか?何で騎兵隊の突撃ラッパを?/ウォーデン:奴らが来るぞ!(一機墜ちる)撃墜したぞ!ピーター!墜した!/ピーター:俺がやった!
ロリーンの家でラジオから流れる攻撃のニュースに、傷の癒えないままプルーイットは中隊に戻ることを決意した。
ロリーンは、自分の夢を捨て、彼との結婚を受け入れると引き留めたが、プルーイットは応じない。
彼女は軍はあなたをいじめ、あなたの親友を殺したのに、なぜ戻るのと訴えた。
プルーイットは、ロリーンに「俺は兵士だから行かなければならない」と彼女を残し家をでた。
しかし密かに基地に戻ろうとしたプルーイットは、厳重警戒中の監視兵に見つかり射殺されてしまった。
その亡骸の脇にウォーデン曹長は上官と共に立ち、友人だったのかと質問された。
「そうです。頑固者でしたが、良い兵隊でした。私が知る限り最も軍を愛していました。」と答えた。
ウォーデンは「本当に頑固なヤツだ、ボクシングの試合は今年は中止になったのに」とプルーイットに語りかけ、膝を付いて手にプルーイットのトランペットのマウスピースを取った。
映画『地上より永遠に』結末 |
ハワイからアメリカ本土に向かう客船に、偶然ロリーンとカレンは乗り合わせ、遠くなるハワイの景色を感慨深げに見つめていた。
ロリーンは美しい土地ねと話しかけ、カレンも人生でもっと美しいところだったと答えた。
【意訳】ロリーン:とても美しくなくって?/カレン:今まで見て来た中で番美しい場所よ。/ロリーン:私が働いていたところが見えそうだわ。/カレン:伝説があって、レイを投げて陸に向かえばいつの日か戻れて、沖に行けば戻って来れないって言うわ。/ロリーン:私は戻りたいとは思わない。私の婚約者は、12月7日の攻撃で殺されたの。/カレン:それは、お気の毒に。/ロリーン:彼は爆は撃機パイロットで、離陸のため滑走路を走っているとき、日本人に撃たれたわ。たぶん新聞で読んでると思う。彼は銀星勲章を受けた。それは彼の母に送られたわ。彼女は手紙をくれて、私に持っていて欲しいって。 /カレン:彼女は素晴らしい人ね。/ロリーン:素晴らしい人たちよ。南部の人たち。彼は将軍から名前をもらったの。ロバート・E・リー・プルーイット/カレン:誰?/ロリーン:ロバート・E・リー・プルーイット。馬鹿みたいに古臭い名前じゃなくて?
ウォーデンからプルーイットの事を聞いていたカレンは、話の真実を悟った。
ロリーンの手にはプルーイットのマウスピースが握られていた。
レイは波間を揺れていった。
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