2020年12月14日

映画『アバウト・ア・ボーイ』ニート中年と少年の挑戦!/感想・解説・考察・ネタバレなし簡単あらすじ

「何不自由もない」ことの不自由

原題:About a Boy
製作国 アメリカ
製作年 2002
上映時間 102分
監督 ポール・ウェイツ、クリス・ワイツ
脚本 ピーター・ヘッジス、クリス・ワイツ、ポール・ウェイツ
原作 ニック・ホーンビィ


評価:★★★☆  3.5点



経済的に恵まれた環境にいる方々は幸福でしょうか?

お金に困っている私からすると、きっと幸福なのだろうと想像するのですが・・・・・・・・この映画を見る限り事はそう簡単ではないようで・・・・

この映画の題名『アバウト・ア・ボーイ』=「1人の少年に関すること」とは、ヒュー・グラント 演じる主人公を指しているとも思います。
film1-Blu-sita.jpg

<目次>
映画『アバウト・ア・ボーイ』ネタバレなし簡潔あらすじ
映画『アバウト・ア・ボーイ』予告・出演者
映画『アバウト・ア・ボーイ』解説・考察
映画『アバウト・ア・ボーイ』解説


film1-Blu-sita.jpg

映画『アバウト・ア・ボーイ』簡単あらすじ

ノース・ロンドンに住む中年ウィル・フリーマン(ヒュー・グラント)は、亡き父のクリスマス・ソングの印税で仕事もせず優雅に暮らしている。そんな彼は女性と付き合っても、深い関係を避け独身を謳歌している。シングル・マザーなら結婚を求められないと、その交際サークル「SPAT」でナンパに励む始末だった。しかしそこで、学校でいじめられている12歳の少年マーカス(ニコラス・ホルト)と知り合い、付き合いが深くなる。ウィルはシングル・マザー、レイチェル(レイチェル・ワイズ)に恋し、マーカスに助けを求めを息子のふりをしてもらう。しかし真相がばれ、レイチェルにフラれてしまう。マーカスとの仲も悪くなるが、そんな時マーカスは母親のフィオナ(トニ・コレット)が精神的不安定さを深め、自殺さえしかねないのを励ますため、学校のコンサートで上手くもない歌をうたおうとする。やはり舞台でブーイングを浴びたマーカスのもと、以前の自由気ままな暮らしでは満たされないと知ったウィルが、ギターを弾きながら現われ彼を救う。そして、ウィルとマーカスは再び心を通わせ、周囲の人々も含め変化をし始める・・・・・・
film1-Blu-sita.jpg

映画『アバウト・ア・ボーイ』予告

映画『アバウト・ア・ボーイ』出演者

ウィル・フリーマン(ヒュー・グラント)/マーカス(ニコラス・ホルト)/レイチェル(レイチェル・ワイズ)/フィオナ(トニ・コレット)/スージー(ヴィクトリア・スマーフィット)/エリー(ナタリア・テナ)/アンジー(イザベル・ブルック)/リー(ベン・リッジウェイ)/フランシス(ジェニー・ギャロウェイ)/アリ(オーガスタス・プリュー)/リンジー(デニース・ステファンソン)/リンジーの母(ロザリンド・ナイト)

Film2-GrenBar.png
スポンサーリンク


film1-Blu-sita.jpg

映画『アバウト・ア・ボーイ』感想・考察


結婚している男性が言う「離婚する!もう我慢できん!」
えっと・・・・

それはともかく、かわいい小品という感じのこの映画。
大きな事件や、世界を揺るがすような陰謀が描かれるわけではないのです。
しかし、小さな世界のサザナミもそこ住む人達にとって見れば、シリアスな問題だということがシミジミと分かる、見ていて小さな幸福に気がつく。

主演のヒュー・グラントも、相変わらず「のらくら」したオヤジっぷりで責任を取らない大人キャラを自然に演じています。
関連レビュー:ヒュー・グラントの煮え切らないキャラ
『フォー・ウェディング』
ダメ中年、ヒュー・グラントのラブ・コメ!
4つの結婚式と1つの葬儀で明らかになった、結婚制度とは?

なにせ親の遺産で悠々自適に暮らし、誰もかかわらず一人で家にいるとなれば、これはもう「ニート」と呼ぶべきでしょう。

こういう、お金があって生きるに困らないんだけど、なんか不充足というのは先進国に共通の「ニート」普遍化現象といってもいいのではないでしょうか。
つまるところ人間は、生きるに困らなければ嫌なこと苦しいことはしませんという、自明の事を証明しているのでしょう。

で、この映画です。
主人公は今の生活に不足を感じているわけでは在りません。
でも、充実感を感じてもいないというのがちょっと不満という・・・・・まぁ贅沢なんですが、人間なんてそんなもんでしょう?


結婚している男性が言う「離婚すれば、俺は好き放題し放題、カミサンの顔色を気にする必要なんてなくなる!」
ま〜それはそれとして。

義務を持たない中途半端な男の、なんとなくツマンナイの話ですけど・・・・・
その主人公に転機が訪れるのは、12歳の冴えない少年と出会ったからです。
ダメな男が子供に関わり変わっていくというのは、古くはチャップリンの『キッド』以来の古典的筋立てではあります。
関連レビュー:子連れ男の人生転機の映画!
映画『キッド』
チャップリンのサイレント喜劇の革命!!
喜劇と人情話の融合の生まれたわけとは?

またこの少年も、このままいきゃ〜未来が明るいとは決していえないジミな感じがナカナカ良いです。
いずれにしても、この少年にしたところで生き死にの問題というよりは、現状をちょっと良くしたいという問題の質だと思えます。


結婚している男性が言う「カミサンがいなければ、好きなだけビール飲んで!女の子と遊んで!」
ま、ちょっとホッといて・・・・・

この映画で描かれる、現代の不充足の本質は結局もっと良く生きたいという願いなのだろうと思います。
しかしこの望みこそ、現代において最も困難な望みではないでしょうか。
なぜなら、苦しくて困っている人がその状態から良くなるのは簡単ですが、生きるのに不自由なく勝手気ままに生きてる人が、それ以上良くするというのは相当ハードルが高い物に違いありません。


結婚している男性が言う「ホントにシアワセだろうなぁ!でもなぁ・・・・・」
おや?ちょっと様子が?


そんな高いハードルの飛び越え方の方法が、この映画に描かれているように思います。


結婚している男性が言う「でもなぁ・・・・・医者が言うんだよ・・・・ヒトは、重力じゃないけど、ストレスがあってちょうど上手く機能するように出来てるって」
お〜?

なるほど、そうです。
そう〜なんです。

つまり何不自由が無い、ノーストレスの、苦労が無い状態の人間は、実はシアワセになれないのではないでしょうか。
この映画で、この主人公が少年と関わりを断ち切らなかった、ストレス状態を保持したことで幸福の道を発見したように。
もうこの飢えが無い先進国においては、飢えに代わる何らかの債務を、人生を生きる上で担わなければならないという、提言であるように思いました。

結婚している男性が言う「カミサンがいなきゃ結局だめってことかぁ・・・・・」

そのようですね。
この男性と、がんばって生きてる現代人にこの言葉を送ります。

「人の一生は重き荷を背負いて遠き道を行くがごとし、 いそぐべからず、 不自由を常とおもへば不足なし」

徳川家康さんからのプレゼントでした・・・・・・・

関連レビュー:1999年作品
『ノッティングヒルの恋人』
ヒュー・グラントとジュリア・ロバーツのラブスト―リー
ハリウッドセレブと冴えない中年男・逆シンデレラの物語

Film2-GrenBar.png
スポンサーリンク


film1-Blu-sita.jpg

映画『アバウト・ア・ボーイ』解説

映画のトリビア

この映画にまつわるトリビアを、アメリカの映画情報サイト「IMDB=インターネットムービーデータベース」より紹介します。
タイトルはロック界のレジェンド「ニルヴァーナ」の曲から
小説では、ウィルはマーカスにバンドニルヴァーナについて教え、エリーとの絆を生んでいきます。この本は1993〜94年の設定で、物語は子供たちがリードボーカル、カート・コバーンの自殺に関して知り、影響を受けてクライマックスを迎えます。物語のタイトルは、ニルヴァーナの歌『アバウト・ア・ガール』(下:動画)をもじったもの。
ブラッドピットは主役を断ったのに登場!?
ブラッド・ピットは、とても魅力的な人間が女性に会うためにシングル・ファーザーのふりをする必要があるとは考えられないという理由で、主役ウィル・フリーマンの役を断った。しかし、彼はウィルが彼の部屋で読んでいる雑誌「エスクァイア」の表紙を飾る形で映画に登場している。
映画『シックス・センス』との関係とは?
映画の冒頭で、マーカスは、ハーレイ・ジョエル・オスメントであれば、母親(トニ・コレット)の面倒を見ることができると言う。トニ・コレットは、『シックス・センス』(1999)でハーレイ・ジョエル・オスメントの母親を演じていたのです。
アヒル殺害シーンにピーターパン
マーカスが誤って一斤のパンでアヒルを殺すシーンは、ピーターパンの有名な像がケンジントンガーデンズにある場所です。ピーターパンはもちろん、決して成長しない少年です。
イギリスが舞台なのにアメリカ人監督のワケとは?
大変イギリス的な題材にアメリカ人監督を起用したのは一見妙ですが、しかしクリス・ワイツは「英国好き」であるだけでなく、実際ケンブリッジ大学で学んでいたのです。
実際働かなくても良い富豪の一員が映画に!!
映画はヒュー・グラントが父親の歌の印税で生活しており、まったく働く必要がないという設定から作られている。実生活では、ビクトリア・スマーフィット(スージー役)は7000万ドル以上の個人資産を持つダーモット・スマーフィットの娘であり、アイルランド最大企業の1つであるスマーフィットグループの過半数の株主であり、どちらにしても、おそらく働く必要はないでしょう。




posted by ヒラヒ at 17:00| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]