2021年01月23日

映画『失われた週末』アル中最低男のリアル!再現ストーリー/詳しいあらすじ・感想・解説・ネタバレ・ラスト

映画『失われた終末』あらすじ・ネタバレ 編

原題 The Lost Weekend
製作国 アメリカ
製作年 1945年
上映時間 101分
監督 ビリー・ワイルダー
脚本 チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー
原作 チャールズ・R・ジャクソン


評価:★★★☆  3.5



この映画は7つのアカデミー賞にノミネートされ、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀俳優賞、最優秀脚色賞の4つを受賞し、同時に、カンヌ映画祭でグランプリを獲得した史上初の映画でした。

コメディーで名作を数多く撮ったビリー・ワイルダー監督ですが、暗いスリラー調の表現にも秀でており、職業監督としての幅の広さと、表現技術の確かさを感じます。

アメリカ映画界の自主規制「ヘイズ・コード」適用時期の作品としては、相当攻めたドラマだと思います・・・・

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<目次>
映画『失われた終末』詳しいあらすじ
映画『失われた終末』予告・出演者
映画『失われた終末』感想・解説
映画『失われた終末』ネタバレ
映画『失われた終末』結末

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映画『失われた終末』あらすじ


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木曜日。
ニューヨークのあるアパートの一室。その窓から酒のボトルがぶら下がっている。
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その部屋では、長年アルコール依存症のニューヨークの作家志望ドン・バーナム(レイ・ミランド)が、彼の兄ウィック・バーナム(フィリップ・テリー)と共に、酒から離れるための週末の旅行のために荷造りしている。
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ドンの恋人のヘレン・セント・ジェームズ(ジェーン・ワイマン)が、コンサートのチケット2枚を持って立ち寄ったとき、ドンはウィックをヘレンと一緒に演奏会に行くよう、執拗に促す。彼らを追い出し、窓の外の酒を口にしたいのだ。

しかしウィックに窓の外の酒瓶を発見され捨てられてしまう、ドンはそれは昔の酒だと言い、ヘレンに酒を断ったと宣言した。
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兄は弟の言葉を信じ、一銭の金もないから、酒も飲めないだろうと言うと、2人はドンを残しコンサートに出かけた。
2人が出て行くとドンは部屋をかき回し、酒を捜し求めたが見つからない。
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しかし、そこに通いの家政婦が給料を求めて尋ねて来た。
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ドンは家政婦の給料があると知り、彼女を追い返し10ドルを握って、途中の酒屋で2本のライ麦酒を購入し、ナット(ハワード・ダ・シルヴァ)のバーに向かう。
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札付きのアル中に酒を売るのを渋るナットだったが、現金を出され、注がないわけにはいかず、酔ったドンは何杯も飲み続けた。

家に着いた頃には、兄ウィックは電車の時間が迫る中、6年間も弟のアル中に振り回され、愛想が尽きたと絶望を口にし、恋人のヘレンにも縁を切った方が良いと言った。
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しかし、ヘレンはドンは病気だから、誰かが助けなければと、1人旅立っウィックを見送った。
帰って来たドンはその会話を隠れて聞いたが、こっそり部屋に戻りボトルを一本隠すと、もう一本を飲み続けた。
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金曜日の朝に、ナットのバーに行くと、その店で男達のデートの相手を務めて稼いでいる、グロリア(ドリス・ドーリング)から声をかけられた。
彼女はドンに恋しておりデートを申し込むと、ドンはその気も無いのに約束に応じた。
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それを見てナットは怒り、昨晩ヘレンがドンを探しに店に来て、可哀そうで見てられなかったと責めた。
ドンはナットに、言い訳のようにアルコール依存症との戦いについて「ボトル」という題名で小説を書くつもりだと語った。
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彼は、オペラ会場でヘレンと出会い恋に落ちたシーンを回想した。
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そしてドンとヘレンは結婚を考えるようになり、彼女の両親にあうことになった。
待ち合わせ場所に着いたとき、ヘレンの両親がドンが無職で生活力がないのを危ぶんでいるのを聞いた。
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ドンはその場を去り、アパートに戻り酒に逃げるのだった。
そこにヘレンが探しに来て、なぜ約束を破ったのかと責めると、ドンは自分はアル中で、「作家のドン」と「酔ったドン」の2人が自らの中でせめぎ合っていると告白した。それを聞いたヘレンは口付けを交わす。
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そして彼を助けると伝え、それから献身的に尽して来た。
ナットに語り終えたドンは、ヘレンのためにも小説を書くと、アパートへ帰るとタイプライターに向かいタイトルを描いた。
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しかし、タイプライターに向かっても、彼のアルコールへの渇望は抑えられず、彼は昨日買ったライ麦酒のボトルを必死に探したが発見できなかった。
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仕方なく外に出て、バーに入り酒をながしこんだ。出ようとして、請求書を見ると、持ち金が足りず、隣の女性のバックを盗んでしまう。
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トイレで現金を手にし席に戻ると、ドンが盗みを働いたことは露見しており、危うく警察に突き出される所を、温情で勘弁してもらった。
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それでも、アルコールを欲したドンは、部屋に戻ると隠していたボトルを見つけ、更に飲み続ける。
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土曜日になると、歯止めの効かなくなったドンは、酒を買うために彼のタイプライターを質草に入れようとするが、しかし近所の質屋はユダヤ教の祝日で全て閉まっていた。
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ドンはたまりかねてナットの店に入りタイプライターで飲ませてくれと言うが、ナットはタイプなんかいらないと断った。
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しかしドンの様子を哀れんで酒を一杯恵んだ。

ドンは酒を求めて、金を工面しようとデートをすっぽかしたグロリアの部屋を訪ね金をせびる。
最初は怒っていたグロリアもドンに同情し金を渡した。
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しかしドンは、そのアパートの階段を転げ落ちて意識を失った。
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日曜日、ドンはアルコール依存症の病棟で目を覚ます。
そこでは、看護師のビム・ノーラン()にドンに、アル中が治るまで隔離され、出られないと告げられた。
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その夜、ドンの周りの患者は幻覚を見て叫ぶ者や、うわ言を呟く者で病室は異様な状態だった。
ついには暴れ出す者も出て、看護師に強制的に連れ出された。ドンはその騒ぎに紛れて、病院から逃げ出した。
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月曜日、外に出たドンは、酒屋に入ると銃を持っていると見せかけ、店員を脅し酒のボトルを強奪した。
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その酒を飲み続けた彼は、アル中の幻覚に始めて襲われる。
壁からネズミが這い出し、コウモリが飛び回りネズミを殺し、壁を血に染めた。
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ドンは恐怖に叫び声を上げ、アパートの大家はたまりかねヘレンを呼んだ。
駆けつけたヘレンはドンが錯乱状態にあるのを見て、彼の部屋で一晩滞在する。
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映画『失われた終末』予告

映画『失われた終末』出演者

ドン・バーナム(レイ・ミランド)/ヘレン・セント・ジェームズ(ジェーン・ワイマン)/ウィック・バーナム(フィリップ・テリー)/ナット(ハワード・ダ・シルヴァ)/グロリア(ドリス・ダウリング)/ビム(フランク・フェイレン)/デヴァリッジ夫人(メアリー・ヤング)

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映画『失われた終末』感想・解説


この映画は、アルコール中毒の恐ろしさをリアルに描いた、ビリー・ワイルダー監督の作品です。

不気味な音楽が効果的です。
その音は、この映画ではじめて使われた、テルミンという電子楽器の始祖と呼ぶべき楽器によるものだそうです。
<『失われた週末』テーマ曲>


そんなオドロオドロしい音に彩られた、このドラマは一種のホラー映画の要素を持っていると感じます。
それは、ドイツ出身のビリー・ワイルダー監督の持つ、ドイツ象徴主義の陰鬱な世界観が反映されているように見えます。
関連レビュー:1920年
映画『カリガリ博士』
ホラー映画の歴史に名を刻む古典
ドイツ表現主義の代表作

物語を追ってみれば、酒のために、親身になってる兄弟を裏切り、献身的な恋人を欺き、人のバッグを盗み、命同然のタイプライターを質に入れようとし、酒場で酒をねだり、自分に好意を寄せる女性に金をせびり、ついには酒屋に強盗にすら入る最低の男です・・・・・

こんな、酒により身を持ち崩す人々のリアルな破滅の描写は、第二次世界大戦後イタリアで始まった映画の革新「ネオ・リアリズモ」の影響も感じました。
その表現は、それまでの明るく幸せなハリウッド映画の系譜とは違い、社会の問題を飽くまで追求する姿勢や、リアリティを求めてニューヨーク市街地でロケをゲリラ的に行ったというワイルダー監督の撮影も、どこかロケ撮影にこだわったネオリアリズムを感じさせます。

しかし考えてみれば、ネオ・リアリズモの代表作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』が1943年、『無防備都市』は1945年、『靴みがき』が1946年『自転車泥棒』が1948年に撮られています。
関連レビュー:時代を映したイタリア映画
『自転車泥棒』
イタリア・ネオ・リアリズモの代表作!
第二次大戦後の貧窮のイタリア社会描いた古典

そう思えば、この1945年の作品に直接的な影響を考えるのは無理があると思いだしました・・・・・・・・

結局のところ、この時代、1945年〜50年代に生まれた、現実を厳しく見つめる映画作品の誕生には、時代の要請があったと見るべきかもしれません。
それは、世界が破滅を垣間見た第二次世界大戦の痛切な反省から導き出された、必然的な表現だったのでしょう。
さらに遡れば、世界が混乱に満ちた大恐慌の1930年代より、人々の闇を描く作品「フィルム・ノワール」が登場したのも、そんな人々の不安と苦悩を反映したためだったと考えたりします。

しかし、この映画で描かれた、アルコール中毒患者の姿は、今描けばもっと過激に、もっと悲惨に、描写されるだろうと感じます。
その恐ろしさを訴えるのであれば、その方が効果的でしょうし、ドラマとしても、娯楽性も上がったと思います。

そういう意味では、今この映画を見て物足りなさを感じるかとも思います・・・・・・

しかし、映画が「娯楽の王様」で、万人が楽しめる「公序良俗」に則ったコンテンツであった事が求められた時代の作品です。
そのため、ハリウッド映画界では『ヘイズ・コード』という厳しい、映画倫理規定がありその枠内での表現を課せられていました。
関連レビュー:1951年
『陽のあたる場所』
アメリカの光と影を描いて、第24回アカデミー賞6冠!!
ハリウッド古典映画と倫理規定ヘイズコードとの関係

そんな中、監督のビリー・ワイルダーはチャレンジし続けた映画作家だったのです。

そういう意味で、この映画も厳しい規制の中、当時としては攻めた表現だったのですが・・・・・・

今見て生ぬるいと思うのであれば、それは現代社会がどれほど強い刺激にさらされて来たかの証左だったかもしれません。
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以下の文章には

映画『失われた終末』ネタバレ

があります。
(あらすじから)
夜中に叫び出したドンに、アパートの大家はたまりかねヘレンを呼んだ。ヘレンは苦しむ彼の部屋で、一晩介抱した。
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火曜日の朝、ドンはヘレンのコートを持って質屋に向かう。
その後を追ったヘレンは、質屋で彼が銃を受け出したことを知る。
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ヘレンがドンの家に着いた時、ドンは遺書を書き終え、自分の頭に銃を向けていた。
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ヘレンは酒を飲んでもいいから、死なないでと必死に訴える。作家のドンまで殺すのかと説得する。
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そこに、酒場の主人ナットが現れドンのタイプライターを返した。
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ヘレンはそれが神の意思だと、小説を書くように励ます。
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映画『失われた終末』結末

ドンは酒のグラスを手にすると、ヘレンの見ている前で、そこにタバコを投げ捨てた。
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決意も新たに、この週末の自らの体験を書くと言い、窓の外にぶら下がったボトルから始まる小説の冒頭を語りだした。
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そこにはニューヨークの街が広がっていた。
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posted by ヒラヒ at 17:00| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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