原題 The Grapes of Wrath 製作国 アメリカ 製作年 1939 上映時間 128分 監督 ジョン・フォード 脚本 ナナリー・ジョンソン 原作 ジョン・スタインベック |
評価:★★★★ 4.0点
この映画は、ハリウッド映画の歴史を作った巨匠ジョン・フォード監督の古典的な名作とされる一本です。
1939年製作のこの映画は、大恐慌時代のドキュメンタリーのような力が有ると思います。
そのどっしりと腰の据わった表現は、一種のアメリカ国民の神話的な物語として今に残ります。
<目次> |
映画『怒りの葡萄』詳しいあらすじ |
大恐慌時代のオクラホマ州、延々と続く道を歩くトム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)は家を目指していた。
彼はケンカでナイフを出した相手を、シャベルで撲り殺し刑務所に入っていたが、仮釈放で4年ぶりに出てきたのだ。
トムは、道路脇の木の下でジム・ケイシー(ジョン・キャラダイン)という巡回説教師を見つけた。キャシーはトムに洗礼をした説教師だったが、今は信仰を失いさ迷っていると語った。
そんなキャシーとトムは連れ立ってジョードの家に行ったが、そこには家族の姿はなかった。
しかし、ミューリー・グレイブス(ジョン・クォーレン)という近くに住む者が隠れていた。
彼が語ったのは、砂嵐による凶作により地主が小作農の家をすべて取り上げ、地主はトラクターで機械化農業をはじめるため、何代にも渡りその地で生きてきた小作農民から家と耕作地を奪ったという。
ミューリーの家もトラクターの下敷きとなり跡形もなくなり、ジョード家に隠れていたのだった。
呆然とするトムに、ミューリーとジョード家の人々は、2週間前にジョン伯父のところへ移っていったとミューリーは語った。
トムとケーシーはジョン伯父の家に着き、家族と久しぶりに再会したが、すでに立ち退きを求められており、仕事が豊富にあると聞くカリフォルニアに向かう決心をした。
夜明けとともに、ジョード家、トムと母(ジェーン・ダーウェル)、父(ラッセル・シンプソン)、祖父(チャーリー・グレイプウィン)、祖母(ゼフィ・ティルベリー)、次男アル(O・Z・ホワイトヘッド)、妹ローザ(ドリス・ボードン)とその婿コニー(エディ・クイラン)、末弟ウィンフィールド(ダリル・ヒックマン)、末妹ルーシー(シャーリー・ミルズ)、そして叔父一家の伯父ジョン(フランク・ダリエン)従兄弟ノア(フランク・サリー)、そしてケーシーも含めて13人が、いつ壊れるか判らない1926年制のハドソン「スーパーシックス」トラックに乗り込み、カリフォルニアを目指して、「ルート66」の長い道を旅立った。
チェコタ、オクラホマシティ、ベタニーを過ぎ、旅半ばにして、高齢のジョード家の祖父(チャーリー・グレープウィン)が車上で亡くなる。
葬儀らしい事もできず道路傍に埋葬し、なおも一家はカリフォルニアを目指す。
一家は臨時キャンプに着くと、そこは仕事を求めカリフォルニアを目指す多くの家族で溢れていた。そこで、カリフォルニアから戻って来たと言う男と会う。
彼はカリフォルニアの仕事の過酷さをトム達に語り、8000人の求人に30000人が押し寄せており、賃金は低く労働条件は過酷だと言う。そして最後に、その地で妻と2人の子供を亡くしたと彼の経験を語り、ジョード家は不安を覚えた。
翌朝出発し、車はニューメキシコ州べコス川を渡った。
途中ダイナー兼ガソリンスタンドに寄ったジョード家は、なけなしの金でパンを買う。
その家族の様子に、店の主人は子供達が欲しがったアメを安く売った。その様子を見ていた長距離トラックの運転手は、チップを特別多く置いていった。
ジョード家はアリゾナを越え、何とかカリフォルニア州に入ったが、体調を崩した祖母を乗せたまま砂漠をこえねばならなかった。
夜を通して砂漠地帯を走破し、そして緑豊かなカリフォルニアの農園地帯を見て、歓喜に湧く。
しかし体調を崩していた祖母(ゼフィ・ティルベリー)は、その豊かな大地を見ず亡くなった。
街に入ったトラックを警官が止め、その地にはすでに仕事は無く、町外れの臨時キャンプに留まらなければ逮捕すると言われた。
ジョード一家は職を求める人々が身を寄せているキャンプ場に到着した。その、キャンプの一角で貧しい食事の準備をすると、その鍋の周りには飢えた子供達がたちまち現れた。そのキャンプには餓死すらしかねない放浪者で溢れ返っていたのだ。トムは、その惨状にショックを受ける。
そのキャンプ場に仕事手配師が、警官隊と共に乗り込み働き手を募集した。
しかし、1人の男が騙されるなと失業者達に警告する。騙されないように契約書を書かせようと言う。
すると仕事手配師は「労働運動の扇動者」だと決め付け、その男を逮捕しようとし、男が逃げ出すと警官が発砲し、脇にいた中年女性が倒れた。さらに逃げた男を撃とうとする警官を、トムとケイシーが殴り倒した。
ケイシーは保釈中のトムに逃げろと促すと、自ら警察に投降した。
トムたちジョード一家はキャンプの焼き討ちの噂を知り、急いでキャンプを後にした。
その時には、婿のコニー(エディ・クイラン)も身重の妻を捨て、ジョード家から逃げて行った。
再び走りだしたジョード家は、パンク修理のため車を止めていると、仕事手配師が通りかかりピクスレーという地のキーン農場に行けと、仕事を紹介され一家は喜び農場に向かった。
そしてジョード一家は桃積みの仕事にありつく。
しかし、そこは労働環境の劣悪さに抗議する労働者で騒然としており、警官隊も出動していた。
その農場で1日仕事をしても貧しい食事に、呆然とした。彼らは肉やその他の生活必需品が、市価より高い価格で売られている事に気付き、怒りを覚える。
トムは農園の周囲の騒ぎが何かを探ろうと、外に出ると棍棒を持った警備員に止められた。
しかしトムはその騒ぎの原因を知りたいと、人目を盗んで暗い森の中を進むと、密かに開かれている会合に出くわす。
そこには、警察から釈放されたケイシーがいて、トムに農園の賃金の不当さを説明し、今ストライキをしていると語った。
その時、会合を農場の警備員に急襲され、参加者は容赦なく打ち据えられた。ケイシーもキャンプの警備員の1人に殴られ殺された。
ケイシーを守ろうとしたトムは、警備員を殺してしまい、自らも頬に深い傷を負う。
警備員はトムの顔は見ていなかったが、傷を目印に犯人を探し始めた。
トムは家族に迷惑を掛けまいと、1人逃げようとするが、トムの母はこれ以上家族がバラバラになりたくないと押し止めた。
そして警備員が執拗に探索を続けるのを見て、農場を去る決意をする。家族はトムをトラックのマットレスの下に隠し、警備員のチェックにも耐え何とか農場を離れることができた。
そして走り続ける車のエンジンが限界を迎えようとした時、何とかキャンプにたどり着いた。
そのキャンプは、農務省が運営する小麦パッチキャンプで、失業者達を受け入れ、理想的な労働環境を提供しようと試みられていた。
ジョード一家は、その環境や労働条件に、最初は狐につままれたようだったが、ようやく安心出来る日々を得た。
しかし、ある日、トムは近くの町のキャンプに反対する住人が、騒ぎを起こしキャンプを潰そうとしていることを聞きつける……
映画『怒りの葡萄』予告 |
映画『怒りの葡萄』出演者 |
トム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)/母(ジェーン・ダーウェル)/ジム・ケイシー(ジョン・キャラダイン)/祖父(チャーリー・グレイプウィン)/妹ローザシャーン(ドリス・ボードン)/父(ラッセル・シンプソン)/次男アル(O・Z・ホワイトヘッド)/ミューリー(ジョン・カレン)/婿コニー(エディ・クイラン)/祖母(ゼフィ・ティルベリー)/従兄弟ノア(フランク・サリー)/伯父ジョン(フランク・ダリエン)/末弟ウィンフィールド(ダリル・ヒックマン)/末妹ルーシー(シャーリー・ミルズ)
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映画『怒りの葡萄』解説受賞・評価・批評 |
アカデミー賞/受賞(1941)
最優秀助演女優賞:ジェーン・ダーウェル。
最優秀監督賞:ジョン・フォード。
アカデミー賞/ノミネート(1941年)
主役のベスト俳優:ヘンリー・フォンダ。
最優秀映画編集賞:ロバートL.シンプソン。
最優秀作品賞:ダリルF.ザナック。
最高の録音:エドマンドH.ハンセン。
脚色賞:ナナリー・ジョンソン。
関連レビュー:アメリカ映画界の歴史アカデミー賞紹介 『アカデミー賞・歴代受賞年表』 栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞 授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。 |
その他の受賞歴
映画全国審査委員会:NBR賞; 最優秀作品賞-1940年。
ニューヨーク映画批評家協会:ジョン・フォード監督賞、最優秀作品賞。
ブルーリボン賞:ブルーリボン賞最優秀外国語映画、ジョンフォード-1963年。
世界各国映画ランキング
『AFIの100年... 100本の映画』21位
『AFIのの100年... 100人の英雄と悪役』トムジョード-12位
『AFIの100年... 100本の最も感動的な映画』7位
『100年... 100本の映画(10周年)』23位
ビジネス・インサイダー誌『批評家による映画オールタイム・ベスト50』43位
キネマ旬報選出『映画人が選ぶオールタイムベスト100 外国映画編』94位
関連レビュー:◎『映画ベスト100』企画を紹介! 世界各国で選ばれた『映画100本』のリストを紹介!!! 映画界、映画ファン、映画評論家など、選定方法もさまざま! 日本映画も各リストでランクイン! |
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これ以降 映画『怒りの葡萄』ネタバレがあります。ご注意ください。 |
(あらすじから)
キャンプでは盛大にダンスバーティが開かれていた。
そんな中、不審な4人の男達が紛れ込んで来た。
そして、キャンプの外には郡保安官が待機し騒ぎが起こるのを待っていた。
ダンスを楽しむ、キャンプの人々。トムも母と共に踊り、歌を歌った。【意訳】トム:さあ母さん踊ろう。【歌詞】愛するなら隣に座っておくれ。急な別れはつらいから。覚えていて欲しい、レッドリバー渓谷と君を本気で愛した男のことを。/保安官:9時29分だ行こう!
その時、4人が騒動を起こそうと動き出すが、キャンプの人々にあっという間に押さえつけられた。
突入時間をあらかじめ決めていた保安官達が突入にしようとしたが、騒ぎが起きずゲートで引き返した。
しかし、その夜保安官がやってきて、ジョード家のトラックを確認し、トムを逮捕するため逮捕状を申請すると話しているのが聞えた。
それを聞いたトムは、犯罪者をかくまうことで家族まで罪に落とすまいと、こっそり出て行こうとするが、母に気付かれ別れの挨拶を交わす。
【意訳】母:お前がどこにいるのかどう教えてくれるの?傷ついても、殺されたって分からないわ。/トム:そう、ケイシーが言ってた。自分自身の小さな魂は何か大きな魂の一部に過ぎない。その大きな魂は万人につながっていると。だから、そうなら、その時はたとえ何をしようと、問題じゃない。俺は暗闇の中のどこにでもいる。母さんが見る、あらゆる場所に俺はいる。飢えた人々が、生きるために闘う全ての所、そこに俺はいる。警察官が男達を殴る全ての所、そこに俺はいる。人々が怒りの声を上げる全ての所、そこに俺はいる。夕食の準備が出来、腹を空かした子供達が幸せな笑顔を見せる時、そこに俺はいる。そして、人々が彼らが生活し子を育てる家を建てる時、そこにも俺はいる。/母:私には良く分からないよ/トム:俺もだよ、母さん・・・・・でも、ずっと考えていたんだ。
トムは去った。
そして、ジョート一家は、キャンプで紹介された確かな仕事の待つ農園へと旅立った。
>映画『怒りの葡萄』ラスト・シーン |
目的地に向かうトラックの中、父が思わず弱音を吐くと、母はもう恐いモノなど無いと言い、男は過去に執着するが、女は流れに身を任せ、生きて行くと自分の決意を語った。
そして最後に民衆は決して打ちのめされないと、その信念を語った。
【意訳】父:確かに、確かに、ひどく打ちのめされたな。/母:そうね。でも打たれ強くなった。金持ちは死んで、子供がろくでなしや、いなくなればおしまいさ。でも私たちは決して死に絶えない。私たちは民衆として生きているから。奴らに絶滅させられやしないし、奴らがなめたことなどできない。私たちはこの先も生き延びる。私たちは民衆だから。
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