原題 Girl, Interrupted 製作年 2000年 上映時間 127分 監督 ジェームズ・マンゴールド 脚本 ジェームズ・マンゴールド、リサ・ルーマー、アンナ・ハミルトン=フェラン 原作 スザンナ・ケイセン『思春期病棟の少女たち』 |
評価:★★★☆ 3.5
原題の『Girl, Interrupted』は、「休止した少女」という意味かと思います。
原作者スザンナ・ケイセンが、10代に過ごした精神病棟の体験を綴った原作を、当時人気スターだったウィノナ・ライダーが主演で製作された少女達の青春映画です。
この映画の少女達の、精神的苦悩の闇と、それでも抑えられない命の光りに、同年代の少女達だけではなく、多くの年代に訴えかける作品だと感じました。

<目次> |

映画『17歳のカルテ』あらすじ |
1967年アメリカ合衆国、ニュー・イングランド、18歳のスザンナ・ケイセン(ウィノナ・ライダー)はアスピリンとアルコールの過剰摂取で、緊急搬送され命の危機を迎える。一命を取り留めたが、地元の精神病院クレイモアに隔離された。
それまでに、彼女は英語教授のギルクレスト教授(ブルース・アルトマン)や、トビー・ジェイコブス(ジャレッド・レト)というボーイフレンドとも性的関係持っていた。少女病棟には、看護士長ヴァレリー・オーウェンス(ウーピー・ゴールドバーグ)が待ち構え、収容患者を日々管理していた。
その病棟には、同年代の少女達が加療を受けており、自らの体を焼いた統合失調症のポリー・クラーク(エリザベス・モス)、病的な嘘つきでスザンナのルームメイトのジョージーナ・タスキン(クレア・デュヴァル)。自傷行為をし、強迫性障害を患っているデイジー・ランドン(ブリタニー・マーフィ)。拒食症の皮肉屋のジャネット・ウェバー(アンジェラ・ベティス)が居た。
そんな中スザンナは、病院を脱走し連れ戻された、リサ・ロウと出会う。
その反抗心に満ちたカリスマ性に惹かれる。リサはスザンナに薬の服用をやめるよう勧める。クレイモアに8年間入院しているリサは、病院の内部を知リつくし、地下トンネルを通じて夜徘徊し、医師の部屋にも自由に潜り込む術を知っていた。少女達を扇動し、病院内に騒ぎを起こすリサの存在は看護師長ヴァレリーを含め、病院スタッフの頭痛の種だった。しかし、スザンナとリサを始め、少女達は閉ざされた環境内で、お互いに友情を深めて行った。
スザンナはメルヴィン・ポッツ医師(ジェフリー・タンバー)との定期的な問診を受けるが、彼女を境界性人格障害と診断した。スザンナの母アネット・ケイセン(ジョアンナ・カーンズ)と父カール・ケイセン(レイ・ベイカー)がクリスマスは世間体があるから帰してほしいと求めても、当分入院加療加療が必要だと認めなかった。
その一方、友達のデイジーが退院する事になり、スザンナ達一行は町のバーラーでの、さよならパーティーが許された。しかしそこで、スザンナはギルクレスト教授の妻であるバーバラとその娘ボニーと出くわす。
バーバラはスザンナに2度と外に出るなと、辛辣な言葉を投げつける。その攻撃に、リサと他の少女達はバーバラとその娘に反撃し、スザンナを助けた。看護師のヴァレリーはリサ達を叱責しバーバラに詫びその場を収めたが、スザンナは自分を助けてくれたリサ達と、さらに深くつながるようになる。
そんなある日、ベトナム戦争に徴兵されたかつての恋人トビーが、スザンナに面会を求め一緒にカナダに逃ようと彼女を誘った。
彼女は病院に友達がいるから、まだ彼女達からは離れられないと彼に言伝えた。
その夜に、ポリーは興奮し暴れ出し、看護師達に取り押さえられ隔離病室に入れられた。スザンナとリサは夜警の看護師に睡眠薬を飲ませ、ポリーを慰めるため彼女の病室の前で歌を歌った。
スザンナは、彼女に思いを寄せる病院の男性スタッフのジョン(トラヴィス・ファイン)と抱き合って夜を過ごし、その傍らでリサも寝ていた。
朝、それを発見した看護師長ヴァレリーは、廊下で眠っているスザンナ達を見つけると、激怒した。
問題児のリサは電気ショック療法と独房の罰を課された。
その夜遅く、リサは独房から抜け出すと、スザンナの部屋に行き一緒に逃げようと説得した。病院を脱走した2人は、一足先に退院していたディジーの家を訪ねた。デイジーは精神安定剤と引き換えに2人を迎え入れた。リサはデイジーが精神病から立ち直ったと言うのに対し、皮肉な顔を見せ、デイジーの手首を掴むとリストカットの痕を露にした。さらにリサはデイジーに向かい、父親と寝ているくせにと責めた。
たまらず2階に逃げたディジーは、階下に下りてこなかった。
翌朝、スザンナは、デイジーがバスルームで手首を切り、首を吊っているのを見つけた・・・・・・・・・・

映画『17歳のカルテ』予告 |
映画『17歳のカルテ』出演者 |
スザンナ・ケイセン(ウィノナ・ライダー)/ジョージーナ・タスキン(クレア・デュヴァル)/デイジー・ランドン(ブリタニー・マーフィ)/ポリー・クラーク(エリザベス・モス)/ジャネット・ウェバー(アンジェラ・ベティス)/シンシア・クロウリー(ジリアン・アルメナンテ)/ジョン(トラヴィス・ファイン)/クランブル医師(カートウッド・スミス)/メルヴィン・ポッツ医師(ジェフリー・タンバー)/アネット・ケイセン(ジョアンナ・カーンズ)/カール・ケイセン(レイ・ベイカー)/トビー・ジェイコブス(ジャレッド・レト)/ソニア・ウィック医師(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)/ヴァレリー・オーウェンス(ウーピー・ゴールドバーグ)/ギルクレスト教授(ブルース・アルトマン)/バーバラ・ギルクレスト(メアリー・ケイ・プレイス)/ボニー・ギルクレスト(ケイディー・ストリックランド)/テレサ・マカリアン(ロビン・レック)/トニー(ミーシャ・コリンズ)

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映画『17歳のカルテ』感想 |
10代後半とは、本来生命力に最も満ちた時代であるのに、なぜこうも心が痛むのだろう・・・・
親の言葉を受け入れられず、大人を嫌いになり、自分の事すら嫌いになる。
同年代の少女達の輝きを見て、自分の影が重く大きくなる。
その影から逃れようとして ― 命すら危うくする。
でも心のそこから、とりあえず20歳まで生きてみて欲しいと願う。
毎日苦しくて、辛くて、疲れて、怠くて、ただ休みたい、早く楽になりたい、そう思う毎日だとしても、とりあえず20まで生きてみて欲しい。
10代後半は危険な時期だ。
それは親や周囲の大人の言いつけを守れば良かった子供時代を終えて、自分1人で、自分の意思で、世界と向き合う時期なのだ。
その心の自立のためには、親を、大人を、世界中のルールを疑い、それに抵抗しなければ自分と世界の関わりを生み出せない。
生まれた子供が歩むのに時間がかかるように、たった一人で世界に居場所をつけるのは、失敗と痛みと恐怖を伴う。
世界に立ち向かい、それに打ち負かされ、とても立ち上がれないと思ったとしても・・・・・・
この映画の少女達が、その後も生き続けたように、世界が敵ではなく味方になる日がきっと来ると信じて欲しい。
信じるのは、難しい事かもしれないが、証拠は在るのだ。
あなたが10代後半まで、生きて成長してきた、その背後に、あなたに愛を注いだ世界が間違いなく存在した。
嬰児は、話しかけられ、抱きしめられなければ、その成長率は低くなり、まるっきり人間の関与を加えなければ死んでしまうという実験結果が残っている。
だから今、生きて、成長してきた背後には、そう思えないとしても親なり周囲なりからの愛が存在し、それを愛として受け入れた分だけ成長をして来たのだと信じて欲しい。
愛を受け伸びてきたあなたは、愛を感じ取れる心も、愛を力に代える能力も備わっていると、信じて欲しい。
だから、過去の世界があなたに愛を送ったように、一人で立ち向かう、次の世界にも愛が存在すると信じて欲しい。
そう信じて歩む先に、愛を贈れる大人へと成長し微笑むあなたの未来を、心から信じ、幸あれと祈っている。

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以下の文章には 映画『17歳のカルテ』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
リサはデイジーの部屋で現金を漁り、スザンナに逃げようと促す。しかし、スザンナはディジーの死の衝撃に、リサと共に行動することを拒否した。スザンナは、デイジーが飼っていた猫を連れてクレイモアに戻り、リサは1人フロリダへと逃げた。
病院に戻った夜、看護師ヴァレリーにスザンナは、ディジーを救えなかった後悔を、自分の気持ちを、正直に語った。
そんなスザンナに真摯に応えるヴァレリー。
スザンナはリサが、病気が真実を見る「贈り物」だと語ったと言う。
ヴァレリーはリサは8年もここにいる。ここに根を張っちゃダメと諭すと、スザンナも素直に受け入れた。
その後、スザンナは治癒に向けて日々を過ごすことに専念し、主治医のソニア・ウィック医師(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)もスゼンナが改善していると認め、ついに退院の日が決まった。
スザンナが病院を去る直前に、リサは警官に連れられ、クレイモアに戻された。そしてスザンナが退院するのを知ったリサは、ある夜スザンナの日記を盗み、地下トンネル内でジョージーナと猫を抱いたポリーを前に、その内容を読み上げた。
そのスザンナの日記には友達に対する、スザンナの冷静な分析が記され、リサはその文章からスザンナを攻撃し、友人達もスザンナに非難の眼を向けた。リサは逃げるスザンナをなおも追い詰め攻撃する。
たまらず、責められたスザンナはリサに対し、彼女がすでに精神的に死んでいて、クレイモアに依存し、外の世界を恐れていると反撃した。
その言葉は、リサの心を抉り彼女は自殺を図るが、取り押さえられベッドに拘束された。

映画『17歳のカルテ』結末 |
スザンナは、翌日の退院の時を迎え、ジョージーナに日記の文章を謝り、ポリーには猫の世話を頼み、それぞれ和解した。
そして最後に、看護師ヴァレリーの温情で、隔離されたリサを訪ねた。
スザンナは彼女が退院し、外で会える日を待っていると告げ、爪にマニュキアを塗った。
そしてスザンナはクレイモアを去り、残った少女達はそれをそれぞれの思いを噛みしめながら、見送るのだった。
そして映画は、スザンナの友人達が、その後ほとんど退院したと語り終わる。
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