原題 Top Hat 製作国 アメリカ 製作年 1935 上映時間 99分 監督 マーク・サンドリッチ 脚本 ドワイト・テイラー、アラン・スコット 原作 ドワイト・テイラー |
評価:★★★★★ 5.0
”トップ・ハット”の意味は、日本で言う”シルク・ハット”だが、それは映画史上最高のダンサー、フレッド・アステアによって洗練と粋のダンディズムの象徴となった。
ハリウッド黄金期のミュージカル作品が持つ、美しく優美で品格を堪能できる1本であり、そして晴れ晴れと、たわいなく、明るい、楽しい作品である。
この映画は一般的に、傑作中の傑作、古典作品と見なされているわけではない。
しかし、私は断固として★5の「満点」を、このジンジャーとフレッドの史上最高のダンス・ペアに与えたい。

<目次> |

映画『トップ・ハット』ストーリー |
ロンドンの作家クラブの会則は「沈黙厳守」だった。
そのクラブで友人で興行主のホレースと待ち合わせをした、アメリカブロードウェイの花形ダンサー、ジェリー・トラバーズ(フレッド・アステア)は新聞を広げるのも白い眼で見られ、いたたまれない時間を過ごしていた。漸くホレースが来てクラブを後にする。
その時、出口で華麗にタップの音を立て、クラブ内に怒号を巻き起こした。
ショーの出演までホレースのホテルに同室するジェリー。
ホーレスは、妻からジェリーに紹介したい娘がいると伝えると、ジェリーは自由でいたいと謳い出した。
そして、ジェリーは部屋で1人踊り、華麗なステップを踏む。
しかし、その激しい靴音は階下まで響き、その部屋の真下で寝ようとしていた娘デール(ジンジャー・ロジャース)を苛立たせ、怒ったデールはパジャマ姿で階上のジェリーに抗議に行く。
ジェリーはその美しさに一目惚れし、気を引こうとするが、その軽薄な態度に、デールは取り合わず部屋に戻った。
ジェリーはそこで、ステップを静かな波のようなリズムに変えると、デールはベッドで安らかな眠りに落ちた。
翌日、デールが乗馬クラブに行く時、ジェリーが変装し馬車の御者を務めた。
デールは途中でそれに気付き、ジェリーに冷たくあたった。
デールは乗馬の途中で雨に降られ音楽堂に避難する。そこにジェリーが現れ、甘い声で歌いだし、ダンスを踊り始める。
デールもついには共に踊り出し、彼女はジェリーに恋をした。
ホテルへ帰ったデールは、恋に浮かれホーレスの妻マッジ(ヘレンブロデリック)とヴェニスで会う約束や、彼女がモデルを務める洋服デザイナーのアルベルト・べッディーニ(エリク・ローズ)がイタリアに行く契約だと責めても、ロンドンでの滞在を伸ばすと言い張った。
しかしデールは、ホテルのフロントで上階の客が友達であるマッジの夫ホーレスだと知り、ジェリーをホーレスだと思い込み、とんだ浮気男だと勘違いした。
デールは、恋が実ったとロビーで駆け寄ったジェリーに、平手打ちをすると、ロンドンを後にしマッジのいるヴェニスへと向かった。
その夜ロンドンで舞台に立ったジェリー。
そのパフォーマンスに観客から盛大な拍手を受け、そこにはロンドン作家クラブの面々もいた。
ショーが終わると、デールに夢中のジェリーは、ホーレスから妻マッジと一緒にデールがヴェニスにいると知ると、飛行機をチャーターしヴェニスに飛んだ。
ヴェニスでは、ジェリーをホーレスだと信じているデールが、マッジにその夫から誘惑されたと告げていた。
しかし、マッジは動ぜず、あの夫にしては頑張ったと受入れ、デールは混乱する。
そして、ジェリーとホーレスがホテルに到着した。デールはまだジェリーとホーレスを取り違えており、マッジと相談し浮気を懲らしめようと部屋に乗り込む。
しかし、そうとは知らないジェリーは浮気を悔いるどころか、誘惑してくるのに辟易しデールは逃げ出した。
その夜ディナーの席に現れたジェリーは、マッジとデールの席に近づき、デールと親しげに言葉を交わした。
マッジが私はいいから踊ってらつしやいと進めるのに、デールは夫の浮気を勧められてると思い混乱する。
しかし、ジェリーが、『チーク・アンド・チーク』を歌い踊ると、デールも華麗にバートナーを務め、二人の気持ちは1つになる。
ジェリーをマッジの夫だと信じて疑わないデールは、そんな相手に魅かれてしまう自分に苦しむ。
そんな彼女に、ジェリーは結婚しようとプロポーズしたため、軽薄な浮気男と怒り再び平手打ちをした。
そしてデールはジェリーをあきらめるため、デザイナーのアルベルトと結婚した。

映画『トップ・ハット』予告 |
映画『トップ・ハット』出演者 |
ジェリー・トラヴァース(フレッド・アステア)/デイル・トレモント(ジンジャー・ロジャース)/ホレース・ハードウィック(エドワード・エヴェレット・ホートン)/アルベルト・ベディーニ(エリック・ローズ)/マッジ・ハードウィック(ヘレン・ブロデリック)/ベイツ(エリック・ブロア)

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映画『トップ・ハット』感想・解説 |

フレッド・アステアの速いステップの後の、全宇宙を静かに押さえるかのような、指先の優雅に涙しない人とは言葉を交わしたくない。
ジンジャー・ロジャースの冷たい表情の下で、ついにからだが揺れてしまう姿に、秘めた想いの切なさと、それを楽しむ甘美を見い出さないならば、それは恋を知らないのだ。
フレッド・アステアはそのダンスで、自らの律動で、映画世界を完璧に支配し満たす。
それは踊りに伴い、真に祝祭空間として現出し、映画内でアステアを拒絶しているジンジャー・ロジャースをたちまち虜とし、アステアと一体となりその巫女のように、更に華やかに「祝祭=ハレ」を彩るだろう。
アステアとロジャースの2人が生む「祝祭」の輝きは、現世の「つらい日常=ケ」を一時忘れさせる、魔術的な力を間違いなく保持しているだろう。
実はこのジンジャー・ロジャース&フレッド・アステアがその華麗なミュージカル映画を世に発表したのは、大恐慌の真っ最中で人々が困窮し、家すら持てずに放浪する者達が続出していた時代だった。
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そんな社会的に困難な時代を生きる庶民大衆は、その不幸に立ち向かうために、何らかの希望や光を求めるものだろう。
1933年の『空中レヴュー時代』、次に1934年『コンチネンタル』そして、この1935年『トップ・ハット』と発表された、このコンビのミュージカルこそ、その輝く希望だったのだと信じている。
実を言えば、そんな大恐慌に打ちのめされた庶民を代表し、その誇りと、品格を、笑いと共に表現したチャールズ・チャップリンの「放浪紳士チャーリー(別名リトル・トランプ)」という稀代のキャラクターも存在した。
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チャップリンの「放浪紳士」のキャラクターとは、どん底で苦しむ人々に成り代わり、無一文で寝床も食もない、最底辺の人間だって希望を持って生きていけるのだと、困窮する大衆を鼓舞する映画であったと思える。
更に言えば、当時の社会で暴れまわった犯罪者すら、大恐慌時代にあっては人々の『英雄=ヒーロー』となり得たのである。
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再び言うが、現実が困難であればあるほど、人々は「救済」を、まるですがるように、求めざるを得ないのであろう。
この『トップ・ハット』もまた、人生の不運に絶望した「大恐慌の人々」を励ます「救済」の映画として全世界に、夢と希望をもたらしたのだと信じている。
もし、絶望に自らの命に見切りをつけた者であったとしても、セレブの夢のような世界に入ったとき、再び生きる気力を持ち得るだけの魅惑に溢れている。
それはチャップリンのチャーリーが、苦しむ人々と同じ立場の存在だとすれば、フレッドとアステアの2人は、苦しむ人々の「夢」として存在した。
それゆえ、敢えて生活感のない、明るく、楽しく、たわいもないストーリーに、華麗なダンスでスクリーンの全てを満たしたに違いない。
私は、人生のどん底で、この現実離れした「天国の映画」に魅せられ、癒され、再び人生に立ち向かう力を得た多くの人々を思うとき、この作品を高く評価しないわけには行かない。

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以下の文章には 映画『トップ・ハット』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
その事実を知ったジェリーとホーレス、そしてマッジはその突然の結婚について話し合う。そして、デールがジェリーをホーレスだと間違えていることに気付いた。
デールの今までの不可解な行動の理由を悟ったジェリーは、デールの下を訪れ話し合い、お互いの愛を確認した。
アルベルトは、自分の妻にちょっかいを出す者として、ホーレスに決闘を申し込むが、ホーレスの妻マージに説得されジェリーとデールを皆で探しに出た。
ジェリーとデールもアルベルトに事情を説明しようと探し回り、結婚式場に到着した。そこでは、華やかな群舞が始まり2人も歌い踊る。
アルベルトに会った二人は、勘違いだったと説明するが、もう結婚式も終わったのだから、デールは自分の妻だと納得しない。
しかし、実は結婚式の司祭はホーレスの執事がとっさに成りすました偽者だった。
そのため不成立となり、ジュリーとデールは無事結ばれた。

映画『トップ・ハット』結末 |
2人は腕を組みヴェニスの橋を渡った。
広間で華麗に踊った。
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