原題 Modern Times 製作国 アメリカ 製作年 1936年 上映時間 72分 監督 チャールズ・チャップリン 原作 チャールズ・チャップリン |
評価:★★★★ 4.0点
チャップリンの産み出した、「放浪紳士チャーリー(英語ではリトル・トランプと呼ばれる)」の、最後の登場作品となった一本です。
その最後は、庶民大衆の愛を受けて成長してきた「放浪紳士チャーリー」のキャラクターに相応しい、見事なメッセージで締めくくっていると思います。
この大恐慌の真っ只中で撮られた映画は、その社会主義的な主張からチャップリンの運命にも影響を与えたと思います・・・・
<目次> |
映画『モダンタイムス』あらすじ |
テロップ「『モダン・タイムス(近代)』、それは工業の物語、それは個人の事業―幸福の追求という聖戦に加わる人間性の物語」
エレクトロ鉄鋼会社の工場に吸い込まれる工員の群れ。
その社長室ではモニターで工場を監視する社長(アラン・ガルシアの姿があった。
工場で製造ラインに入っているチャーリー(チャールズ・チャップリン)は、上がったペースに追い付けず、しばしば次の工程まで追いかけ作業をし、隣の行員に怒られる。
一方社長は、全自動食事機の導入で、食事中も手を使えるようにし作業効率を向上させようと目論み、チャーリーでテストをした。
最初は順調だったが、徐々に暴走しだし、スープは飛び散り、トウモロコシは顔の前で暴れまわる。
ついに機械が壊れ、使い物にならないと判明し、社長は去った。
午後になると更に製造ラインのスピードが上がり、チャーリーの工程は追いつかなくなった。ついにチャーリーは、機械の中に吸い込まれ、その体をくねらせ、ねじり、運ばれて行く。
何とか脱出したものの、おかしな行動を取り始め、錯乱状態いなる。秘書の女性が通りかかるのを、追いかけまわし、秘書が逃げ出した。そこに警官が現れると、逆にチャーリーが逃げ出し、工場は大騒ぎになり彼は職を失う。
無職になったチャーリーは、道に落ちている旗を拾うと、それは赤旗で、共産主義のデモ隊の先頭をチャーリーが歩む形になる。
警官隊がデモ隊に襲い掛かり、チャーリーは逮捕され連行された。
港では、一人の貧乏な少女(ポーレット・ゴダード)がバナナを盗み、周囲の浮浪児達に分け与えた。
彼女は父子家庭で幼い姉妹がおり、失業中の父を助けるため、盗みを繰り返していた。
拘置所のチャーリーは食事の時間に、同室の男が麻薬の発覚を恐れ隠したビンを、調味料だと思い食事にふり掛け食べた。すると、顔が踊りだし、異様な行動を夢遊病者のようにとり始めた。
そのけがの功名で受刑者の脱獄を阻止し、看守の危機を救う。
少女の父が労働者の暴動に巻き込まれ死ぬと、少女とその姉妹は、救護院(孤児院)に連れて行かれそうになるが、少女だけはかろうじて逃げた。
一方チャーリーは、看守を助けた功績で、独居牢で快適な生活を過ごす。
しかし、もっと居たいと願ったものの、出所する事になり、大型船造船会社への就職まで斡旋してもら。
造船所で早速仕事に取り掛かると、上役から船を止めるためのストッパーを持ってこいと言われ、ようやく見つけたストッパーを強引に引っ張り出すと、何と作りかけの船が動きだしついに海中に没した。
チャーリーはその職場を後にした。
父親を亡くし、幼い姉妹も連れて行かれた少女は、空腹を満たすためパンを盗み、パン屋の主人に追いかけられた。逃げる少女はチャーリーにぶつかり転ぶと、警官に捕まった。
しかし、チャーリーは刑務所の居心地の良さもあり、自分が盗んだとして自ら逮捕されようとするが、少女の犯行現場が目撃されており少女が連行された。
そこでチャーリーは、レストランに入るとたらふく食べた後、外の警官を呼び無銭飲食だと申告した。しかし警察の護送車に乗せられたチャーリーの後に、少女が護送車に放り込まれ、泣き出した。
しかし、彼女は護送車の出口に突進し、見張りの警官とチャーリーと共に道路へと飛び出た。そしてチャーリーと少女は一緒に逃亡を始めた。
2人は、中流階級の住宅街まで逃げ、腰を下ろした。
そして、幸せそうな夫婦の生活を見て、自分達がこんな家に住んだらと想像を語り合う。
そしてチャーリーは、例えどんな苦労があっても、自分の家を建てると決意を語った。
2人がデパートの前を歩いていると、警備員が負傷し欠員になったと知る。チャーリーは早速、警察の推薦状を見せて、職を得る事に成功した。
人が居なくなったデパートで、チャーリーと少女は、売り物の食品を食べ、4階に上がるとおもちゃ売り場ではローラスケートを見つけ、遊んだ。
チャーリーは調子に乗って、目隠しで滑り始め、4階の吹き抜けから落ちそうなギリギリの所を、そうとは知らず何度も近づく。
5階の家具売り場のベッドを見つけると、朝には起こすからと少女を寝かせた。
1階に戻ってみると、そこには強盗が入っており、ローラースケートを履いたチャーリーは、強盗に脅されても思うように動けず、ついには銃を発射され酒樽から大量に酒が流れ出し、強盗も含めてたらふく飲みだした。
その時強盗の1人が、工場でチャーリーの隣で作業していたビッグ・ビルだと気付いた。二人は手を取り合い、大いに食べ飲んだ。
翌朝少女が起きてみると、すでに開店時間になっており、一階に下りてみると洋服売り場では、ワゴンセールが行われていた。
その服の中で寝ていたチャーリーは警察に連行された。
10日が経ち警察から釈放されると、少女が待っており、彼女は家を用意したとチャーリーに言った。
川のそばの掘っ立て小屋で、床は抜けるし、力を入れれば柱も傾くような家だったが2人は喜びを分かち合った。
翌朝、目覚めたチャーリーは水着に着替え川に飛び込むが、水深は浅く頭を打ち、川から上がった。
少女は朝食に缶詰とパンを用意しており、チャーリーと少女は満ち足りた朝を過ごす。
その時、チャーリーが読んでいた新聞に工場再開の記事があり、チャーリーは早速職を求めて工場に向かう。
その後ろ姿に少女の励ましの声が響く。
大勢が工場前で職を求める中、チャーリーは運よく選ばれ、機械メンテナンスを職長と共に、行うもののチャーリーは失敗を繰り返す。
職長の時計をプレスし紙のようにし、機械の中に工具を落とし、道具をまき散らし、ついには親方が機械に巻き込まれ、顔だけが外に出ている状態となる。
【意訳】職長:ここから出せ!/職長:そのレバーを引くんだ!/職長:待て!それをよそに、昼食時間となったためチャーリーがパンを食べ始め、職長は機械から出せと怒る。
チャーリーは休憩時間で電気が止まり、機械は動かないとボタンを押して見せた。
職長が自分の弁当を求めたため、チャーリーが口に運んでやる。
昼休みが終わり機械が回り出し、職長はようやく脱出できた。
しかし、工員たちがストライキを断行し工場が騒がしくなり、警官隊も出動する事態となった。
警官隊に押されたチャーリーが板を踏むと、その上にあったレンガが飛び、警官隊に命中してしまい再び逮捕された。
映画『モダンタイムス』予告 |
映画『モダンタイムス』出演者 |
チャーリー(チャールズ・チャップリン)/少女(ポーレット・ゴダード)/キャバレーの主人(ヘンリー・バーグマン)/工場の技師(チェスター・コンクリン)/製鉄会社社長(アラン・ガルシア)/ビッグ・ビル(スタンレー・サンドフォード)/強盗(ハンク・マン、ルイ・ナトー)/少女の父(スタンリー・ブリストーン)/独房の服役囚(リチャード・アレクサンダー)/牧師(セシル・レイノルズ)/牧師夫人(マイラ・マッキニー)/カフェの給仕(フレッド・マラテスタ)/タービンの交換手(サミー・スタイン)/流れ作業の工員(チャールズ・コンクリン)/流れ作業の職長(ウォルター・ジェームズ)/工員(ボビー・ワーカー、C・ハミルトン、ジャック・ロン)/囚人(フランク・モラン)/少女の妹(グロリア・デ・ヘイヴン)/造船会社の労働者(フランク・ハグニイ)/警官(パット・ハーモン)/医師(エドワード・キンボール)/デパートの売り場主任(J・C・ニュージェント)/ウエイター(ジョン・ランド)
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映画『モダンタイムス』感想 |
その実情は、多くの人が、職を失い、家を銀行などに取られ、家族を養うべき父親達はその責任を果たせず、家族を捨て放浪する浮浪者となったり、自殺したりしたと言います。
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そして、チャップリンはこの映画で、明確に庶民の側に立ち「大恐慌」とその結果生じた「庶民」の困窮は、資本家による搾取が原因だと糾弾していると感じます。
この、社会主義的な労働改善の訴えは、当時の労働者達が一様に持っていた資本家(工場経営者)たちに対する、偽らざる本音だったと思います。
チャップリンは、彼自身の生い立ちから必然として生まれた、リトルトランプのキャラクターを愛してくれた、庶民大衆に対する義務として、彼等を代表しその思いを語ったのだと信じます。
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そして、最後に何があってもあきらめず「スマイル」で前に進もうと、リトルトランプのファン達に励ましのメッセージを送っているのです。
しかし、当時の資本家が支配するアメリカ社会においては、それ受け入れられない危険思想だったのです。
それゆえ、チャップリンはハリウッドを追われることになるのでした・・・・・・・
この映画の最後は、そんなチャップリンのその後を思わせます。
赤狩りとハリウッド追放
1945年8月に第二次世界大戦が終結し、まもなくソビエト連邦をはじめとする東側諸国との冷戦が始まったアメリカで、『モダン・タイムス』以降の一連の作風が「容共的である」とされ、非難の的とされた。
特に1947年公開の『殺人狂時代』以降はバッシングも最高潮に達し、1950年代に入り、ジョセフ・マッカーシー上院議員指揮の下、赤狩りを進める下院非米活動委員会から、他の「容共的である」とされた俳優や監督とともに何度も召喚命令を受ける。しかし、1948年にフランス映画批評家協会は彼をノーベル平和賞に推薦した。
1952年、ロンドンで『ライムライト』のプレミアのために向かう船の途中、アメリカのトルーマン政権の司法長官ジェームズ・P・マグラネリー(英語版)から事実上の国外追放命令を受ける。(wikipediaより)
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映画『モダンタイムス』解説映画の評価 |
英国映画協会発表「映画史上最高の作品ベストテン」※10年毎に選出
1982年:「映画批評家が選ぶベストテン」第21位
1992年:「映画批評家が選ぶベストテン」第41位
1992年:「映画監督が選ぶベストテン」第6位
2002年:「映画批評家が選ぶベストテン」第40位
2012年:「映画批評家が選ぶベストテン」第63位
2012年:「映画監督が選ぶベストテン」第22位
アメリカ映画協会「アメリカ映画100年シリーズ」
1998年:「アメリカ映画ベスト100」第81位
2000年:「コメディ映画ベスト100」第33位
2007年:「アメリカ映画ベスト100(10周年エディション)」第78位
その他
2000年:「20世紀の映画リスト」(米『ヴィレッジ・ヴォイス』紙発表)第67位
2008年:「史上最高の映画100本」(仏『カイエ・デュ・シネマ』発表)第65位
2015年:「100本の偉大なアメリカ映画」(英BBC発表)第67位
2019年:「史上最高の映画ベスト100」(『Time Out』誌発表)第49位
日本でのランキング
1980年:「外国映画史上ベストテン(キネマ旬報戦後復刊800号記念)」(キネマ旬報発表)第8位
1988年:「大アンケートによる洋画ベスト150」(文藝春秋発表)第16位
1989年:「外国映画史上ベストテン(キネ旬戦後復刊1000号記念)」(キネ旬発表)第14位
1995年:「オールタイムベストテン・世界映画編」(キネ旬発表)第29位
1999年:「映画人が選ぶオールタイムベスト100・外国映画編(キネ旬創刊80周年記念)」(キネ旬発表)第13位
このように、この『モダンタイムス』はチャップリンの「古典」として、世界各国で高い評価を得ており、下の『ベスト100企画』をご覧頂ければ、たくさんのリストにランクインしているのが分かるかと思います
◎『映画ベスト100』企画を紹介! 世界各国で選ばれた『映画100本』のリストを紹介!!! 映画界、映画ファン、映画評論家など、選定方法もさまざま! 日本映画も各リストでランクイン! |
映画の歴史に興味があれば、米国アカデミー賞の歴代受賞リストはいかがでしょうか?
関連レビュー:オスカー受賞一覧 『アカデミー賞・歴代受賞年表』 栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞 授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。 |
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以下の文章には 映画『モダンタイムス』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
一方の少女は、道でダンスをし日銭を稼いでいた。それを見た、ショーを見せる酒場の主人が、彼女をスカウトし、ドレス姿で酒場で踊る少女は客から喝さいを浴びる。
一週間後、チャーリーが警察署から出ると、キレイに着飾った少女が出迎えそのまま酒場に連れて行った。
酒場の主人にチャーリーを売り込み、チャーリーも芸ができると嘘を言い採用された。
店が始まり、給仕として働くチャーリーは、慣れない仕事に右往左往し、ある客はローストダックを一時間待っていると怒鳴った。
厨房からローストダックを受け取り出ると、フロアーはダンスタイムでもみくちゃにされたチャーリーは、客まで近づけずようやくたどり着いた時にはローストダックが消えていた。
ようやく見つけたローストダックだったが、客がおもちゃにしラクビーを始める。チャーリーは取り返そうと突進し、ローストダックに飛び込むと着地した先は客の皿だった。
主人はその様子に怒りながら、ショーの歌は大丈夫かとチャーリーに念を押した。
少女とチャーリーは歌の練習をするが、チャーリーが歌詞を覚えられないと言うので、少女がカンニング用に袖に書いた。
しかし、取り外しできる当時の袖が、いざ歌う時になって、シャツから取れてしまいチャーリーは途方に暮れ、始まらない歌に客も不平の声を上げ騒ぎ出した。
脇で心配そうに見つめる少女が、何か歌ってと促すと、チャーリーは踊りながら、アドリブで意味不明の言葉で歌いだした。
そのチャーリーの歌と踊りは、観客に大うけで、満場から笑いと喝さいを浴びた。
主人も喜び店で雇うと約束し、チャーリーと少女は喜び合う。
しかし、少女は救護院から逃げていたため、当局から警察に保護の手配が入っており、店に警官が捜索に入った。
それを知ったチャーリーと少女は、楽屋から抜け出し店から逃亡した。
映画『モダンタイムス』結末 |
長い道の途中、座り込むチャーリーと少女。
少女は成功を前にしながら逃げなければならない事に落ち込み、絶望を口にする。
【意訳】夜明け。/少女:頑張っても、どうしていつもこうなの?/チャーリー:元気を出して!あきらめないで、前に進もう。
道を共に歩き出したチャーリーは、少女に「笑って」と語り掛ける。
どこまでも続く道を、二人は腕を組み、背中を見せ歩み去った。
THE END。
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