原題 City Lights 製作国 アメリカ 製作年 1931年 上映時間 87分 監督 チャールズ・チャップリン 脚色 チャールズ・チャップリン 製作 チャールズ・チャップリン |
評価:★★★★★ 5.0点
この作品は、チャップリンの古典映画として、高い評価を確立している一本です。
この映画のチャップリンも、『キッド』から本格的に始まった、従来のサイレント喜劇とは一線を画す、新たなるチャレンジに挑んでいます。
その努力は実を結び、本作品での喜劇と人情話の融合は、非常に高い完成度を見せており、現代の「人情喜劇」の原型として、揺ぎない価値を保持していると思います。


<目次> |

映画『街の灯』あらすじ |
銅像の序幕式が盛大に開かれている。しかし、カバーが取られたとき、そこにいたのは熟睡する、放浪紳士チャーリーだつた。
喧騒に目覚めた彼は、慌てて銅像から降りようとするが、像の剣に引っかかりの中ぶらりんになつた。なんとか、外すと急いで逃げ出した。
町を歩くチャーリーは、いつものように、いたずら小僧にチョッカイを出されつつ、道を進んで行く。
そんな午後、チャーリーは街角で盲目の美しい花売娘と出会い、その姿にチャーリーは、花を一本買った。
娘が釣り銭を渡そうとした時、道端の車に乗り込む者がおり、娘は裕福な紳士が買ってくれたと思い込む。
そんな娘をチャーリーはしばらく見つめていた。
その夜、チャーリーが川岸を歩いていると、自殺をしようとする酔った男性に出会う。
チャーリーは、自殺を止めようとして、逆にチャーリーが川に落とされてしまう。その後も何度か川に落とされたチャーリーだったが、最後には自殺を図った男の家に招待された。
男の家に着くと、そこは執事のいる豪邸で、男は大富豪だった。彼の妻が屋敷を出て戻っていないのを知り、さらに酒を浴びるほど飲んだ。
そして、チャーリーを連れ街のナイトクラブに行き混乱を引き起こした。
朝まで飲み続けたチャーリーは酔っぱらった富豪と車で帰った。
そこを、通りかかった花売り娘の花を、チャーリーは富豪からもらったお金で全て買って感謝された。
さらに富豪の車で彼女を家まで送り、花売り娘はチャーリーを資産家の親切な男性だと思い込み、いつでも家を訪ねてくださいと告げた。
その頃富豪は酔いから冷めると、別人となり誰も家に入れるなと執事に命じ、戻ってきたチャーリーは執事に追い出された。
しかし、その日の午後、チャーリーが歩いていると、酔った富豪がレストランから出て来た。
富豪は「友よ」と抱きつき、パーティーだと家にチャーリーを連れ帰えり、盛大に騒いだ。
しかし翌朝に富豪が「しらふ」になると、チャーリーはまた追い出されるのだった。
富豪の家を出たチャーリーは花売り娘の様子を見ようと、彼女の街角の売り場に行くと姿がなく、心配になり娘の家を訪ねる。
すると、そこには病に臥せる娘がおり、看病する祖母に医師は娘を当分休ませるように告げた。
チャーリーは収入が無くなった娘のために、路上の馬糞清掃の仕事につく。
チャーリーは、昼休みが来ると手を洗い、同僚の昼食のチーズを石鹸と取り違えたのも気付かずそそくさと出かける。
昼は花売り娘の家に行き、食料品などを渡し一時の会話を楽しみ、午後の仕事に出るのが日課だった。
その日の昼休み、チャーリーは新聞で盲目の眼の治療に成功し、窮乏者には無料で手術をするとという記事を読んで聞かせた。今ではチャーリーに心から信頼を寄せている娘は、あなたの顔を実際にこの眼で見れるかもと、顔を輝かせた。
しかし、チャーリーは娘と祖母が家賃22ドルを払えず、翌朝立ち退きを迫られている督促状を見つけ、娘に訊ねると、彼女も知らず泣き崩れた。
その姿を見て、チャーリーは必ず翌朝22ドルを支払うと約束した。
しかし、昼休みから仕事場に戻ると、休憩時間の遅刻が多過ぎると怒りを買って、仕事をクビになってしまうしまう。
チャーリーは22ドルを求めて、町に出るとボクシングの試合で稼ぐことを決意した。
その夜の試合も決まり、チャーリーは対戦ボクサーと八百長の相談をして賞金の山分けで話がまとまる。
しかし、試合直前、対戦ボクサーが逃げ出し、代わりの選手は戦意旺盛で、八百長に応じないばかりか絶対勝ってやると敵意をむき出しにした。
試合が始まるとチャーリーは、レフェリーの後ろに隠れたり、クリンチで間合いを取ったりと、相手ボクサーを混乱させ、隙を見てパンチを入れる。
しかし、最終的にはノックアウトされ一銭も稼げなかった。
途方にくれチャーリーが街に出ると、あの富豪と再会し、酔った富豪はチャーリーを再び友と呼び屋敷に連れ込んだ。
そして、チャーリーが花売り娘の苦境を話し金の工面を頼むと、富豪は快諾し財布から大金を取り出した。
そのとき、屋敷に忍び込んでいた二人組の強盗がチャーリーと富豪に襲いかかり、強盗は取る物を取って逃げ出した。
しかし、チャーリーは警官に強盗犯だと疑われた。富豪から受け取った大金も疑念を深めた。
しかも、気絶していた富豪が意識を取り戻すと、しらふに戻っており、チャーリーに向かい「こいつは何者だ」と言い出したため、チャーリーは逃げ出し、その後を警官が追いかけた。

映画『街の灯』予告 |
映画『街の灯』出演者 |
放浪紳士チャーリー(チャールズ・チャップリン)/盲目の花売り娘(ヴァージニア・チェリル)/花売り娘の祖母(フローレンス・リー)/富豪(ハリー・マイヤーズ)/富豪の執事(アラン・ガルシア)/市長(ヘンリー・バーグマン)/対戦ボクサー(ハンク・マン)/控え室のボクサー(ヴィクター・アレクサンダー)/医師(T・S・アレクサンダー)/警官(ハリー・エイヤース)/強盗(アルバート・オースチン)/レフェリー(エディ・ベイカー)/レストランの女性(ベティ・ブレア)/新聞売りの少年(ロバート・パリッシュ、マーガレット・オリヴァー)/花屋店員(ミセス・ハイアムズ)

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映画『街の灯』解説『街の灯』の評価 |
時に1931年とは、すでにトーキー映画(音声入り映画)が主流になり、サイレント映画は時代遅れと見なされていた時期でした。
チャップリン自身も不安はあったようですが、結果的にはチャップリンの映画の中で、最も経済的に成功し、評価も高い作品の1つとなっています。
発表当時1931年の批評を見てみましょう。
ニューヨーク・タイムズ批評家モルダント・ホール:「驚くべき芸術性により成し遂げられた映画」
ニューヨーカー:「彼の他の映画と較べても、おそらくそれらのどれよりも良い」
Los Angeles Examinerの映画評論家「2巻時代のチャップリンコメディーからレビューして来たが、これほどチャーリーが狂乱の笑いを与えてくれたことはない」
また、この『街の灯』は1950年に再公開されており、その時にも観客と批評家から絶賛を得ています。
そんな作品の価値は、後世の映画監督からの賛辞も数多く寄せられています。
・『市民ケーン』のオーソン・ウェルズ監督は『街の灯』を好きな映画だと述べていました。
・『2001年宇宙の旅』のスタンリー・キューブリック監督も 1963年のインタビューで、映画10本を選ぶ中で5番目に挙げていました。
・『サクリファイス』のロシア人監督アンドレイ・タルコフスキーも1972年に答えて、べスト10の5位に本作を位置付け、さらにチャップリンについて「彼は、ただ1人映画史の陰に埋もれることのない人物であるのは疑いなく、彼の作品は彼が去っても決して古びることはない」と称賛しています。
・『甘い生活』のイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニは『街の灯』をたびたび賞賛し『カリビアの夜』でオマージュをささげています。
・小説家バーナード・ショーはチャップリンを「映画業界から生まれた唯一の天才」と評しました。
・漫画家手塚治虫は、漫画の描き方を問われ「とにかくチャップリンの映画を観ろ。あれにすべての答えがある」と答えています。
・『アニーホール』ウッディ・アレン監督は、『街の灯』をチャップリンのベストムービーだとし、自身の映画『マンハッタン』のラストはこの映画から取ったと語っています。
現代でも『街の灯』は、各国で編纂された「映画ベスト100」の企画で、サイレント、モノクロ映画でありながら高い評価を維持しています。
・AFI(アメリカ映画協会)発表『史上最高の100本のアメリカ映画』76位
・AFI選定『最も笑えるアメリカ喜劇・ベスト100』38位
・英BBC発表『100本の偉大なアメリカ映画』18位
・英国映画協会(BFI)選出!『映画監督が選ぶ映画べスト100』30位
・キネマ旬報選出『映画人が選ぶオールタイムベスト100 外国映画編』68位
・Time Out誌『史上最高の映画ベスト100』16位
・フランス映画批評誌カイエ・デュ・シネマ・シネマ『偉大な映画100』17位

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やはり、この映画のもつ古典的価値「ヒューマン・コメディ・ドラマ=人情喜劇の最初の一本」という映画史的業績と同時に、サイレントという純粋映画技術の完成形として、今なお輝きを放つ一本だと思います。

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以下の文章には 映画『街の灯』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
逃げたチャーリーは花売り娘の家に駆けこんだ。
チャーリーは娘にお金を渡し、家賃と目の治療に使うようにと言い、自分は旅に出ると告げた。
娘は感謝を込めチャーリーの手にキスをし、突然の別れを悲しむ。
娘の、家を出たチャーリーは警察に捕まり、刑務所に入れられた。
花売り娘は、チャーリーの残したお金のおかげで、目も治療し、花屋を開店していた。
そして店に、それらしき男性が店に来ると、自分を救ってくれた親切な紳士かと期待に胸をときめかすのだった。
そうとは知らないチャーリーが、久しぶりに町に戻ってきた。
懐かしい顔に、早速新聞売りの少年がチャーリーにちょっかいを出した。
そんなチャーリーが、花屋の前を通ると、一輪の落ちている花を見つけた。

映画『街の灯』結末 |
それを拾い上げ、娘に渡そうとして、あの花売り娘であると気づく。
チャーリーは娘を見て胸がいっぱいになり、ただ娘の顔を見つめることしかできなかった。
娘はそんなチャーリーを見て「私に恋したみたい」と笑い、一輪の花と一枚のコインをチャーリーに恵もうとした。
チャーリーは、我に返り花屋の前から立ち去るが、娘が追いかけて来て花とコインを手に握らせた。
その手が、あの紳士のものだと、娘は瞬間的に悟った。
娘は眼を閉じ、再びその手を確かめると「あなたでしたの?」と、チャーリーに問いかけた。
チャーリーは「見えるんだね」と笑顔を見せた。
娘は目に涙を溜め「はい、見えます」と答えた。
チャーリーはそんな娘を見て微笑んだ。
THE END

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映画『街の灯』解説ラスト考察 |
いろいろな見方があるとは思いますが、私はこのラスト、花売り娘の前から急いで逃げ出したチャーリーの行動に、「無償の愛」を感じたからです。

もし、チャーリーが花売り娘に恋愛感情を持っていたのだとすれば、真実を告げその自己犠牲を証明すればより確実に、彼女の心を手に入れられたはずです。
また、恋愛感情ゆえに自分の姿が恥ずかしく逃げ出したという見方もあるかと思いますが、もしそうならば彼女が幸福そうに働く姿を慈愛に満ちた目でここまで見つめるでしょうか?
恋愛感情という一種利己的な心理であれば、恋する相手を失うリスクに、そのみすぼらしい姿で立つことの危険に気づき、すぐその場を立ち去ったはずです。
しかし、チャーリーは花売り娘の幸福を我が幸福として、その娘の成功を自らの成功として共有したがゆえに、喜びにわれを忘れ没我の境地に入っていたのだと思えます。
そんなチャーリーは、娘から乞食と見られ硬貨を握らされそうになり、我に返ります。
なぜならチャーリーが注いだ愛は、金銭では購えない「無償の愛」だからです。
そんな対価を求めない愛の本質とは何かを探れば、最後に照れたように笑うチャーリーの表情に、その答えがあると感じました。
その羞恥を含んだ笑顔には、娘が嫁ぐ日に感謝を述べられた、父親の面映ゆい表情を見た気がしたのです。
つまりこの映画のラストが意味するのは、この娘に与えたチャーリーの無償の愛が「父性」から発した自己犠牲だったと信じています。
関連レビュー:放浪紳士チャーリーの父性とは? 映画『街の灯』解説 チャリー・チャップリンの渾身の傑作!! サイレント映画の完成形とも言うべき名作 |
蛇足ながら、そんな親が子に注ぐ愛だと思えば、この映画そっくりの自己犠牲を語った映画を思い出しました。
それはラース・フォン・トーリアー監督の『ダンサーインザダーク』で、主人公の女性は息子を失明させまいと、壮絶な自己犠牲を持って無償の愛を語っていた作品だと解釈しています。
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