2020年06月06日

映画『ファーゴ』と日本女性タカコの死!ファーゴが生んだ都市伝説徹底考察!/映画『クミコ、ザ・トレジャーハンター』紹介

映画『ファーゴ』考察・解釈 編

原題 FARGO
製作国 アメリカ
製作年 1996年
上映時間 98分
監督 ジョエル・コーエン
脚本 ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン


評価:★★★★  4.0点



この『ファーゴ』という作品は実際人騒がせだ。

嘘か誠か不明瞭な映画なので、作品内でも、作品外でも、混乱と誤解が生じて、収拾が付かなくなった。

そんな映画であるがゆえに、うら若い日本女性が、この映画の雪原に埋められた100万ドルを求めて、遭難するという悲劇が発生したのである・・・・・
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<目次>
映画『ファーゴ』簡潔あらすじ
映画『ファーゴ』予告・出演者
映画『ファーゴ』感想/『ファーゴ』の嘘
映画『ファーゴ』解説/コニシ・タカコの死と伝説
映画『クミコ、ザ・トレジャーハンター』簡単あらすじ・予告・出演者
映画『クミコ、ザ・トレジャーハンター』感想・解説

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映画『ファーゴ』簡潔あらすじ

ジェリー・ランディガード(ウィリアム・H・メイシー)は、ミネソタ州ミネアポリスで妻ジーン(クリステン・ルドルード)の父であるウェイド(ハーヴ・プレスネル)の経営するディーラーに勤めている。しかし、多額の借金で苦境に陥っており、義父から8万ドルをせしめようと考え、妻の狂言誘拐を企てる。実行犯として、カール(スティーヴ・ブシェミ)とゲア(ピーター・ストーメア)という二人のチンピラを雇い、計画通り妻ジーンを拉致したものの、事件は思わぬ方向へ転がりだし、地元警察署署長 マージ(フランシス・マクドーマンド)が捜査に乗り出した・・・・・
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映画『ファーゴ』予告

映画『ファーゴ』出演者

マージ・ガンダーソン(フランシス・マクドーマンド)/ジェローム・“ジェリー”・ランディガード(ウィリアム・H・メイシー)/カール・ショウォルター(スティーヴ・ブシェミ)/ゲア・グリムスラッド(ピーター・ストーメア)/ジーン・ランディガード(クリステン・ルドルード)/ウェイド・グスタフソン(ハーヴ・プレスネル)/ノーム・ガンダーソン(ジョン・キャロル・リンチ)

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!!!以下の文章には「ネタバレ」を含みますのでご注意ください!!!

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映画『ファーゴ』感想

映画『ファーゴ』の嘘

しかし、この映画に関し言わせていただければ、「嘘」ということをもっと明確に示して欲しかった。
例えば、映画の最後にコーエン兄弟が登場し「嘘」でしたと、宣言するぐらいのことがあっても良かったのではないか。

特に英語圏以外の国にとっては、付け足しのような「フィクション警告文」ぐらいでは、見落とす可能性が充分ある。

そんな、事実とフィクションを混同させるような手法を敢えて取る映画も、最近多く登場しているが、正直イカガナものかと思う。
関連レビュー:フェイク・ドキュメンタリーとは
『THE 4TH KIND フォースカイインド』
ミラ・ジョヴォヴィッチのフェイク・ドキュメンタリー
「映像リアリティー」とドラマの危険な関係とは?

それは、この『ファーゴ』のように、「小さな実話」を「ホラ話」に変換する効用を示すため(だと個人的に信じている)なら、致し方ない仕掛けだし、まだ許せもする。

しかし、往々にして、「実話」を営業戦略として利用する例もまま見られ、それは「実話」にも「フィクション」にも失礼だと思う。

もっとも、世界初のフェイク・ドキュメンタリーは、映画史に名を残すオーソン・ウェールズの「宇宙戦争」だった。
関連レビュー:パニックを引き起こしたドラマが原作
映画『宇宙戦争』
スピルバーグ監督の古典への敬意溢れる本格SF
トム・クルーズ主演。宇宙人との壮絶な戦い!


このオーソン・ウェールズのラジオドラマは、緊急ニュース放送という「フェイクニュース」の形式だったため、放送された1938年の全米では、本当に宇宙人が攻めてきたと信じた人々がパニックに陥った。

ま〜このオーソン・ウェールズ自体、相当の山師だったような気もしてますが・・・・・
関連レビュー:オーソン・ウェールズ山師説
映画『市民ケーン』
ユニークな映画技術のオンパレード!!
映画史上に永遠に刻まれた古典的傑作

いずれにせよ、そのオーソン・ウェールズの『宇宙戦争』同様に、この映画『ファーゴ』も、その「フェイク性」によって、現実世界を混乱させてしまったのである。

なんと、この映画を実話と信じて、埋められた100万ドルを探す者が現れた。

それは28歳の日本人女性だったのである―
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映画『ファーゴ』解説

コニシ・タカコの死と伝説


この映画を実話と見て、日本から映画で隠された100万ドルを求めて、うら若い日本人女性がファーゴを目指して遭難死したというニュースが流れた。

<コニシ・タカコの死を巡るニュース>概要
2001年、東京在住の日本人女性が、映画の舞台であるノース・ダコタ州ファーゴから東に60キロの地点で凍死しているのが発見された。
その6日前に一度この女性を保護した地元警官が、「彼女は、映画『ファーゴ』の誘拐犯が地面に埋めた金の詰まったブリーフケースを探していた」と証言したというニュースから、映画冒頭の演出文を真に受けた女性が、宝探しにファーゴを訪れ遭難したという話が広まった。


いかにも、ありそうな話ではないか?

これは大々的なニュースとなり、アメリカ中に広まる。

そして世界中に配信された・・・・
<2001年12月1日:英国テレグラムの記事>スクリーンショット (25).png

【意訳】カルト映画をきっかけに財宝をめざす
日本人女性が、カルト映画ファーゴの架空の人物によって埋められた約100万ドルが入った鞄を発掘するため、アメリカの辺境地を横断し探求した。
映画では、犯人は雪原の鉄線のフェンスと支柱を除いて何も無い風景の中に車を止め、鞄を埋めた。
タカコ・コニシさん(28)は、財宝の存在を信じ発見するため、1月前に東京の自宅を出てノースダコタ州に旅した。
彼女はゴミ捨て場の近くで(死体で)発見された後、ビスマルクという小都市の警察に報告された。 コニシさんと面談したとき、彼女は財宝を隠した場所を示すおおざっぱ地図を彼らに見せた。
ビスマルク警察のニック・セバート警部補は、「それはフィクション映画であり、そこに本当に財宝はないと、彼女への説明に努めた」と言っている。

このままであれば、タカコは、馬鹿な娘だとして笑われて終わりだったろう。

しかし、この事実を2003年に追求した、米国人ジャーナリストがいた。

彼デビッド・ゼルナーの調査は『This is a True Story』と題されドキュメンタリー番組としてTV放送された。
<This Is A True Story>

【大意】記者:誤解から発したトラブル。ファーゴの郊外の雪の中で日本女性の死体が見付かった。死んだのはタカココニシ。映画ファーゴを本当だと信じて死んだと、世界中に報道された。小さなバカげた事件と、笑ってページをめくるかもしれないが、私はそうできなかった。彼女は最初数100マイルファーゴから離れた、ノースダコタのビスマルクという町のトラック駐車場に姿を見せ、そこの警察に連れて行かれた。
警察官:彼女は寒そうな服だと思い、ミニスカートでストリッパーかと思った。英語も日本語もうまく通じず、彼女は道に木のある簡単な地図を見せたが、その地図のような場所はどこにでもあるし、通訳を求めた中華料理店も閉まっていた。警官ジェシーは、他の警官から金を探していると聞き、映画ファーゴの話をしていたと聞き、そこに金は無いと伝えたが、逮捕も出来ずバス停につれていった。車で腹を押さえる彼女に聞くとガンで6ヶ月だと聞き、落ち込んだ。出来ることはしたが、辛かった。
記者:タカコの通った道を通りファーゴへ。映画のセットのようだが、それは現実。/タカコを発見した猟師が警官を止める。警官は脈を調べ、彼女は死んでると言った。/記者:タカコの生前をたどる、彼女の新宿のアパートの大家と会う。/大家:最初は普通の子でOLをしてたが、会社が倒産し、仕事が無く性格が変わって行った。/記者:彼女はファーゴのモーテルに泊まった。/モーテルスタッフ:魅力的な日本の若い子の相手が出来てハッピーだったが、彼女は少し寂しげで、疲れて見えた。/記者:たぶん一人でいることに疲れた彼女は、バーに行きバーテンダーと話す。

バーテンダー:ノースダコタの地図を見せ、星のきれいなところはと訊ねた。俺と一緒にに過ごしたいというが、俺には彼女がいるから断った。/記者:大学の精神課の学性が彼女の隣人だったが、彼女は昼夜逆転の生活をし、陽の光を避けていた。/大家:仕事も決まったが、深酒するようになって、田舎に帰った。/記者:そして、そこから家出した。朝ファーゴを出たタカコは財宝の鞄の宝の地図を誰にも見せなかった。結局彼女は映画のためにファーゴに行ったのではない。ホテルで40分のシンガポールへの長距離電話が彼女の最後の電話だった。後で知ったが、彼女は東京でアメリカ人の恋人がいた。そして仕事でシンガポールに行ってしまう。彼女は映画ではなく彼に会うための旅だったのか?何にせよ彼女は翌日死ぬ。彼女はファーゴを出てデトロイト・レイクという星の良く見える小さな町にタクシーで行く/タクシー運転手:14年間タクシー運転手をしているが話をする気にならず、運転したのは初めてだ。下りたところホテルもなく、野犬や野生動物の危険があった。/記者:主婦に不信な目を向けられながら丘を登り、最後に会ったのはタカコがヒッチハイクした車に乗っていた2人の男性だった。/男達:彼女の英語が分からず、中華料理のウエイトレスかと思ったが、彼女は突然途中で降りた。/記者:最初は名前も分からず捜査も夜明けまで始まらなかった。/女性警官:人里と離れた場所で、他の人の痕跡もあったから、殺人事件とも思った。/警察官:道路から数キロも離れた場所に死体遺棄は困難だ。/検視官:服も脱いでおり性的暴行も考えたが、その証拠は無かった。/警官:考えられるのは薄着による凍死だ/検死官:彼女の血中に6種類の精神治療薬が認められたが、致死性の物質は無かった。彼女の胃にガンも無かった。/記者:彼女が嘘をついたのか、警官が誤解したのだ。映画が理由でなければ、なぜ彼女はここで死んだのか?大家はタカコの好きな、男が女と別れる曲をかけ泣き出した。結局彼女は、東京であった妻帯者のアメリカ人ビジネスマンの恋人と、よりを戻したくて電話に望みを賭けたが果たせず、家族への遺書を残して自殺したのだ。/検死官:彼女はシャンペンを過剰に飲み自殺したが、その心に何か在った。/記者:都市伝説。彼女の孤独の死が、変化し、有名になった。/警官:メディアが興味を持ち、アメリカ中に、更に欧州、アジアに広まっていった。ノースダコタの警官が、彼女が金を求めているような印象を受けたかは分からないが、我々は人々が何を期待しようが、事実の捜査をするだけだ。/記者:ここには、真剣なメッセージがある。小さな誤解がファーゴの財宝という大事になった。


上のドキュメンタリーにあるように、実際には、英語がつたない日本人女性と、ビスマルク町の警官との間で対話の行き違いがあった。

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調査によれば、警官が誤解した内容が、そのまま報道されてしまったものであり、死の前の知人との電話や家族に送っていた遺書などから自殺であり、死の背景に仕事や失恋があると推察している。

タカコにとってこの真相探求が、どういう意味を持つのかは、正直分からない。
彼女は喜んだだろうか・・・・・本当は、静かに眠りたいだけなのではないか・・・・

いずれにせよ、彼女がファーゴの埋蔵金のタメに死んだのではないという実話は、明らかにされた。
しかし、上のドキュメンタリーが証明したのは、彼女の死はファーゴの埋蔵金が原因ではなかったという、事実だけではないか?
その先にある、彼女がなぜ死んだかの真実は、いろいろ推測するにしても、決して100%の答にはならない。

本当に失恋で、自殺をしたのか、それともシャンパンを飲みながら満天の星を見ようとして、凍死してしまったのか、その心の内は本人しか、いや、本人すら分からないかも知れない―
つまり、現実としての痕跡は、タカコがシャンパン二本を極寒の地でのみ凍死し、そんな彼女は、失恋し、遺書を書いたという証拠を残した。

その現実の「かけら」を元に、かってに推測する事しかできない。

そんな、もっともらしい「推測」が、真実であるとは到底言えないだろう。

その事を裏付けるように、上のドキュメンタリーを監督したデビッド・ゼルナー自身が、都市伝説の内容を映画にした『クミコ、ザ・トレジャーハンター』という映画を製作した。

つまり、事実を追ったその本人自身「フィクション」でなければタカコの真実が描けないと思ったからだと信じている。

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映画『ファーゴ』考察

映画『トレジャーハンター・クミコ』の真実

上で書いた、デビッド・ゼルナー監督の『This is a True Story』と題されドキュメンタリー番組。
その追求の果てに、デビッド・ゼルナー監督自身、タカコの真実を伝えきれないと感じたからこそ、敢えて「フィクション映画」として描かざるを得なかったのだと信じている。

そして、この映画は「サンダンス映画祭」史上で、最高の作品とまで言われ、それ以外の映画祭でも数々の賞に輝いたのである。

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原題 Kumiko, the Treasure Hunter
製作国 アメリカ
製作年 2014年
上映時間 105分
監督/脚本 : デヴィッド・ゼルナー
製作総指揮 : アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー、菊地 凛子

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映画『トレジャーハンター・クミコ』簡潔あらすじ

29歳のOLクミコ(菊地 凛子)は、東京で一人暮らし。会社では嫌いな上司の下で仕事に対する熱意も無く、対人関係も上手く行かず、母親からはうるさく結婚を迫られる。唯一の救いはペットの文蔵というウサギ、と彼女が実話と信じる「ファーゴ」の宝を探すことだった。彼女は映画を何度も見て、その宝の地図を消えないように刺繍で縫い上げた。
東京の生活はますます彼女を追い詰め、ある日会社のカードでミネアポリス行きの飛行機に乗り込んだ。アメリカに渡った彼女は英語力の低さゆえに、上手くコミニュケーションが取れないものの現地の人々の優しさに助けられて、旅を続ける。ファーゴは嘘で、宝は無いと地元警官から諭されても、カード横領もバレて帰る場所も無くなった久美子は、宝があると信じて厳寒のアメリカを突き進む―
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映画『トレジャーハンター・クミコ』予告

映画『トレジャーハンター・クミコ』出演者

クミコ(菊地 凛子)/サカガミ(勝部 演之)/ナカザキ(河北 麻友子)/ミチ(東 加奈子)/老女(シャーリー・ヴェナード)/カルドウェル(デヴィッド・ゼルナー)/ロバート(ネイサン・ゼルナー)
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映画『トレジャーハンター・クミコ』解説

受賞歴

2014年サンダンス映画祭 ドラマ部門 ノミネート
2014年ファンタジア(モントリオール)国際映画祭 最優秀監督受賞
2014年リトルロック映画祭 最優秀長編映画受賞
2014年ナンタケット映画祭 長編映画の最優秀脚本 受賞
2014年ラスパルマス映画祭 観客賞/審査員特別賞 受賞
2015年クレステッドビュート映画祭 最優秀ドラマ部門 受賞

この『トレジャーハンター・クミコ』は、タカコ・コニシの死の実話を元に膨らませ、「ホラ話=フィクション」として表現したものであり、その手法は、実にコーエン兄弟の『ファーゴ』の手法を踏襲したものだと思える。

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現実のタカコは失恋や失業という事実を抱えていた。

この映画の久美子は、恋人も無く、仕事はあっても意欲が無いと、その設定が変えられている。
しかし、この変換の中には、監督デビッド・ゼルナーが、タカコにある「絶対的孤独」を見出したがゆえに成された描写だと思える。

更に、異郷の地で、人々の優しさに包まれながらも、その「絶対的孤独」ゆえに、自らを人里離れた孤立に駆り立てる。
そこには、すでに回復し得ない傷をただ終わらせるしかない、寂寥と諦念が漂う。

そんなタカコの死を知っていてなお、ゼルナーは彼女の心にあった、生きることへの希望と絶望のアンビバレンツな心情に思いを馳せたに違いない。
それゆえ、久美子に仮託して、この映画のラストにかすかな希望を、一条の救いを描かざるを得なかったのであろう。

そして、この現実をもとにした「フィクション=ホラ話」は、タカコ同様、現実世界で「絶対的孤独」に苛(さいな)まれている、多くの人々に希望はあるのだというメッセージを届けるだろう。
それこそは、ただ事実を追っただけでは決して表現し得ない、事実のもつ「真実」の抽出だった。

そして、その「真実」は「フィクション」だからこそ、大胆に描き得る表現なのである。

それゆえ、私は「フィクション」が必要だと信じ、「フィクション」を愛するのである。



posted by ヒラヒ at 15:00| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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