原題 The Circus 製作国 アメリカ 製作年 1928年 上映時間 40分 監督 チャールズ・チャップリン 脚本 チャールズ・チャップリン 製作 チャールズ・チャップリン |
評価:★★★★ 4.0点
この作品は、チャップリンの映画としては、評価が低い映画の一本だと感じました。
しかし、この映画のチャップリンの、それまでとは一線を画す、命懸けの鬼気迫るギャグに驚きつつ、大笑いしました。
そして、何より、この映画の喜劇にあるまじきラストシーンには、感動を通り越して戦慄すら覚えました。
小粒な印象は有りますが、決して今作の前に撮られ、名作とされる『キッド』や『街の灯』、そして『黄金狂時代』にも、引けを取らない映画だと思います。


<目次> |

映画『サーカス』あらすじ |
サーカスの開園前。空中ブランコで曲芸の娘メルナ(ケネディ)が練習をしていた。客が入ったサーカスでメルナが舞台から降りると、父親の団長が近づき、彼女のミスを責め突き倒し、食事抜きだと宣言した。
サーカスが行われているカーニバルの中を歩く、チャーリー(チャップリン)は、大掛かりなからくり人形の前で足を止めた。その横で、スリが財布を盗み、ばれそうになりチャーリーのポケットに隠した。そうとは知らず、チャーリーは歩き出すと、親に抱かれた幼児の持つおやつを、こっそり食べて飢えをごまかす。チャーリーを見つけたスリは、財布を取り戻そうとチャーリーのポケットに手を入れた所を、警官に見つかり逃げ出した。
予期せぬ財布を手に入れたチャーリーは早速、屋台で腹を満たした。
しかし、そこに財布の本当の持ち主が通りかかりチャーリーがスリだと騒ぎ、それを聞いた警官はチャーリーを追いかけ出した。チャーリーが必死に逃げるとその横にはスリもいた。
からくり小屋に入ると、鏡の間に逃げ込んだチャーリー。スリもを追ってきたがそこで何重にも見えるチャーリーに混乱する。
鏡の間を出たチャーリーは、警官を見るととっさに近くのからくり人形と動きを合わせ、ごまかした。
しかし見つかり、再びガラスの間に逃げ、警官を迷わせた隙に、公演中のサーカス小屋の中に飛び込んだ。その舞台上で、警官と追いかけっこを繰り広げ、ピエロ以上のバカ受けを取る。
更に手品ショーの舞台にも出没し出たり消えたりして、警官との逃走劇を繰り広げ、笑いを誘った。客の入りが悪い、サーカスの団長は客の喜ぶのを見て、翌日の開園前チャーリー試す事にした。
翌朝、チャーリーはメルナと出会い、食事を与えられていない彼女に朝食を勧めたが、それを見た団長にメリナはぶたれた。
開園前に、チャーリーの試験が始まり、古株のピエロと共演も試みるが、まるで使い物にならず追い出された。
しかし、給料不払いに不満を持った裏方が辞めると、チャーリーが裏方として雇われた。
ショーが始まり、チャーリーが道具を運ぼうとすると、ロバが襲い掛かりチャーリーは必死に舞台上を逃げ、笑いを呼んだ。
更に手品のタネをばらしハトやウサギが次から次へと飛び出してきた。
ショーは大混乱に陥ったが、客には大受けだった。その成功に気が付かないチャーリーをいいことに、団長は安い給料で彼を雇い続け、次々と裏方の仕事も押し付けた。
しかしそこでも失敗を続け、ロバに追いかけられ、逃げ込んだ先はライオンの檻だった。
しかも、鍵が落ち閉じ込められてしまったチャーリーは、寝ているライオンを気にしつつ、必死に逃げようとする。メリナが通りかかるが、あまりのことに彼女は気絶してしまう。ついに目を覚ましたライオンに迫られるが、メリナ間一髪助けられた。
脱出の後、語り合う2人。そして、メリナはチャーリーが一番観客の喝采を受けていたのに、こんな仕事をさせてひどいと語り、チャーリーも自分が不当に扱われていることに気づく。
それを聞いていた団長がメリナを殴りつけると、チャーリーはりこの子を殴るんだったら辞めると怒った。そして、もっと良い待遇を要求し、交渉の末週100ドルの給料を約束させた。そして、チャーリーのおかげでサーカスは満員御礼となり、メルナに対する団長の扱いも良くなった。
メルナは団員の占星術師に「もうすぐ、あなたの近くにいる暗くハンサムな男と恋愛し結婚する」と言われた。
それを盗み聴きしたチャーリーは、自分の事だと思って喜びあちこち飛び回り、メリナへのプレゼントにピエロのしている指輪を買った。しかし、メルナは新しく雇われた綱渡り曲芸師のレックス(クロッカー)と出会い一目ぼれする。
アレックスに恋したメリルは、それを嬉しそうに占い師に報告する。その言葉を壁越しに聞き、トランプは一気に落ち込んだ。舞台に出ても、笑いを取れなかった。
メリナがあこがれの眼でアレックスを見つめるのに、羨望と嫉妬をかんじつつも、メリナの言うままに共に綱渡りをチャーリーは見た。
メリナとアレックスの仲睦まじい様子を、遠くに見ながら、チャーリーは密かに綱渡りの練習をしていた。それを見た団長は、綱渡りより、笑いを取れと、残るチャンスは一回しかないと宣告した。しかし、そこでも失敗したチャーリーは首を告げられた。
しかし、その時、綱渡り師アレックスが姿を見せず、団長はチャーリーを代役に立てた―

映画『サーカス』予告 |
映画『サーカス』出演者 |
放浪紳士チャーリー(チャーリー・チャップリン)/座長の娘メルナ(メルナ・ケネディ)/綱渡り芸人レックス(ハリー・クロッカー)/年老いたピエロ(ヘンリー・バーグマン)/サーカス団長(アラン・ガルシア)/マジシャン(ジョージ・デイヴィス)/小道具係(スタンリー・J・サンフォード)/小道具係の助手(ジョン・ランド)/スリの男(スティーブ・マーフィー)/ピエロ(チャールズ・コンクリン)/淑女(ベティ・モリシー)/警官(チャールズ・A・バックマン)/スリの被害者(マックス・タイロン)(

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映画『サーカス』感想 |
1928年当時、おそらく世界で一番有名だった人物は、このチャーリー・チャップリンだったに違いありません。
もう、大富豪といっていい収入を持ち、のんびり暮らせるにもかかわらず、本作ではライオンの檻に入り、命綱なしの綱渡りを決行するなど、失敗すれば命を喪いかけない、本当に命を削る芸で笑いを取りに来ているのです。
笑いの革新性では、大掛かりなセットを使った『黄金狂時代』に軍配が上がるかもしれません。
関連レビュー:古典的サイレント喜劇 映画『黄金狂時代』 チャップリン喜劇の代表作!! 大掛かりな仕掛けに工夫を凝らした、喜劇の革新! |
また、この映画は、その情感においても高い完成度を見せています。
確かに、『キッド』の親子の情や、『街の灯』の恋愛感情も、喜劇に新たな地平を開く新たな挑戦で、成功していると言えるでしょう。
関連レビュー:チャップリンの人情喜劇 映画『キッド』 チャップリンのサイレント喜劇の革命!! 喜劇と人情話の融合の生まれたわけとは? |
正直言えば、チャップリンのサイレント映画の中では、この『サーカス』が、一番完成度が高いと思っています。

例えば、『キッド』や『黄金狂時代』などでは、サイレント映画として表現不可能な要素まで表現しようと挑戦し、無理が生じているように感じます。
本作品はサイレント映画という表現形式の中で、可能なことの精度を高め、その機能を最大限に活用しており、サイレント映画としての完成形だと思います。
まさに、サイレント映画の中のサイレント映画と言うべきでしょう。
たぶん、この「純サイレント映画」が生まれた影には、チャップリンの危機感があったように思います。
なぜなら、1927年2月、ハリウッドの当時の大手映画会社5社がトーキー(音声入り映画)の互換性を保つと協定し、時代は大きくトーキーへと向かっていたのです。
そして、1927年10月公開のアメリカ映画『ジャズ・シンガー』で始まった、トーキー(音声入り映画)は革命的に映画の表現を変えていきます。
しかし、チャップリンは自伝で、放浪紳士チャーリーのキャラクターは、サイレント映画でしか表現できないと語っています。
それゆえ、命を賭けてでも「サイレント映画」のもつ可能性と素晴らしさを、この作品で伝えたかったのではないかと想像しています・・・・・・
しかし同時に、この映画のラストの切なさは、チャップリン自体「サイレント喜劇」の終焉を予期していたようにも感じられます・・・・

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以下の文章には 映画『サーカス』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
チャーリーは命綱をつけ、下で綱を引く男と息を合わせ、逆立ちや、宙返りをし、観客の歓呼を呼んだ。しかし、命綱が外れ、更にサルが何匹もチャーリーの顔や体にまとわりつく。
バランスを崩し、落ちそうな所を踏みとどまり、観客をハラハラさせる。しかし何とかやり遂げたチャーリーは、大喝采を受けた。
しかし舞台裏でまたも娘メルナに手を挙げる団長に我慢できず、遂に殴りかかる。そして彼は、解雇された。
その夜チャーリーが野宿をしていると、メルナがサーカスを逃げ出し、追って来た。
そして、一緒に連れて行ってと頼んだ。それを聞いたチャーリーは頭を振り、膝に抱きつき泣く彼女に、困った顔になった。
その顔が明るくなり、突然アイデアがあると言い、彼女を残しサーカスへと戻った。
サーカスで、レックスを見つけたチャーリーは、メルナが逃げて来たが、俺には何もしてやれない。君が彼女を助けてやれと、彼に指輪を渡した。そして翌朝、レックスとメルナは結婚し、チャーリーはそれを祝福した。
サーカスに戻った三人を待ち構えていた団長は、メルナを責めようとするとレックスが自分の妻に手を上げるなと結婚証明書を見せた。
団長は怒りを収め、レックスとメルナと和解するとサーカスと共に来るかと、夫婦となった二人に尋ねた。
二人は同意し、チャーリーも連れてくように団長に求めた。団長も不承不承認め、サーカスは旅立ちの準備を整えた。

映画『サーカス』結末 |
一緒の車で行こうと誘う、メルナとレックスの申し出を断り、出発する彼らをチャーリーは見送った。
次々と次の公演地へと旅立っていくサーカス馬車。チャーリーは舞台だった円形のテント跡に一人残り見送る。
すべて去った後に、その場の木箱に腰を下ろすと、もの思いにふけり、ため息を一つ着く。
勢いをつけて立ち上がると、円から歩みでて、いつものチャーリーの歩みで、背を見せ歩き去っていった。
THE END
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