原題 Jaws 製作国 アメリカ 製作年 1975 上映時間 124分 監督 スティーヴン・スピルバーグ 脚色 ピーター・ベンチリー カール・ゴットリーブ 原作 ピーター・ベンチリー |
評価:★★★★ 4.0点
この1975年のスピルバーグ監督の大ヒット映画は、今見ても強いインパクトを感じる。
ストーリーを追ってみても、前半の恐怖と後半の恐怖が違う性質を持っており、その両者がバランスよく語られ飽きさせない工夫がある。
以下では、ネタバレ前のパートとネタバレからラストまでのパートに分けて詳しく再現を試みた。



<目次> |

映画『ジョーズ』あらすじ |
アメリカ東海岸にある小さな港町アミティの海。月の輝く夜、大学生たちが海岸でパーティーを楽しみ、その中の一人の娘が海へと入っていった。
一人で気持ちよさそうに泳ぐ、その娘の体が突然沈み、再び浮き上がったときには、娘は必死にその体をもがかせていた。しかし、ついに水面下に消えた。
その町アミティの警察署長として着任したブロディ(ロイ・シャイダー)は、浜辺に打ち上げられた娘の死因がサメだと見て、海水浴場の遊泳禁止を決断した。しかし、市長ボーン(マーレイ・ハミルトン)を始め町の有力者は、海水浴客の観光収入減少は町の死活問題だと反対した。
しかし、海水浴の少年が再びサメに襲われ、その両親がサメの捕獲に3千ドルの賞金を懸けた。事態が明るみに出て町はマスコミや、賞金狙いのサメハンターが集まり大騒ぎとなる。
市議会では、海岸を閉鎖すべきか激しい議論が交わされた。そのとき、地元の漁師でシャーク・ハンターとして名高いクィント(ロバート・ショウ)が、1万ドルで人喰いザメを始末すると言った。
そんな時、ブロディは若い海洋学者フーパー(リチャード・ドレイファス)と出会い調査を依頼した。フーパーは最初の死骸から大型のサメの存在を予見する。しかし、海開きを控えた町の人々は、小さなイタチザメを捕獲したことで問題解決として、それ以上追おうとしなかった。
危機感を持ったブロディとフーパーは密かにイタチザメを解剖するが、その胃に人肉は発見出来なかった。
二人は、フーパーの船で海に出て調査すると、一艘の漁船が漂流しているのを発見した。フーパーは、海中に潜り船底を見ると、そこには巨大なホオジロザメの歯が食い込んでおり、漁師が犠牲になっていた。
2人はボーン市長に「犯人は巨大なホオジロザメだ」と必死に訴える。
しかし、海開きの日でもあり市長は閉鎖を認めなかった。
浜は海水浴客で埋まり、海の中でも多くの人々が歓声を上げていたが、その沖には不気味にサメの背びれが遊よくしていたのだった。そしてその背びれが近づき、また新たな犠牲者が出て、一転浜はパニックとなり、阿鼻叫喚が響いた。
この事態を受けて、さすがにボーン市長も鮫退治の必要性を認め、警察署長ブロディにその処置を任せた。
警察署長ブロディと海洋生物学者フーパーは漁師クイントを雇うことを決め、彼の船オルカ号でサメの捕獲に出航した。
探索の末、沖合いでついにその巨大な姿を探知した。
【意訳】ブロディ―:どうやら最デカイ船が必要だ。/クイント:エンジン停止。/フーパー:20フィートはあるぞ!/クイント:25フィートだ。
そのホオジロザメは、全長8m3トンもの巨大な体躯を持つ規格外の存在だった。
クイントは驚きながらも、果敢にサメに立ち向かい、タルの付いた銛をその体に向け放ち、その力を削ごうとする。
しかし、巨大サメは脅威的な力で樽を引きずりながら海に消えた。
その夜、クイントとフーパーは酒に酔って自らの体に残ったサメの傷跡について話す。
クイントは第二次世界大戦で沈み、1,100人の乗員の内で生存者が316人のみという巡洋艦インディアナポリスの生存者だと明かした。
そして、漂流し海でサメの餌食となった仲間の事を語った。
その時、サメが突然現れ船体に突撃し、船底を破壊し進水させた。
そして、オルカ号のエンジンは動かなくなった。

映画『ジョーズ』予告 |
映画『ジョーズ』出演者 |
マーティン・ブロディ(ロイ・シャイダー)/サム・クイント(ロバート・ショウ)/マット・フーパー(リチャード・ドレイファス)/エレン・ブロディ(ロレイン・ゲイリー エレン)/市長ヴォーン(マーレイ・ハミルトン)

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映画『ジョーズ』感想 |
結局、人は見えない恐怖こそが一番怖いのだと言う「プリミティブな真実」を、その禍々しいメロディーで響かせているのがこの作品だと感じる。
そんな、見せないことによる恐怖とは、サイレント時代の『ノストラフェウス』から続く、映画のゴシック的表現の系譜に連なるものだと感じた。
<『吸血鬼ノスフェラトゥ』予告>
また、この映画は、動物パニック映画としての要素も含んでいる。
動物パニック映画の元祖としては、ヒッチコック監督の『鳥』を上げるべきだろう。
関連レビュー:世界初の動物パニック映画!! ヒッチコック『鳥 』 「動物パニック」ジャンルの世界初映画! ヒッチコック監督とパイオニアの宿命 |
しかし、その『鳥』が描いたのは、日常に生息するごく普通の鳥が、突然人を襲うという「原因不明の不条理な恐怖」だった。
対する、この映画は明らかに、獰猛で、人の天敵である、規格外のサメであり、その基本属性としてはむしろ「怪物」に近い。
そういう意味では、この映画のオリジンは『キング・コング』と言うべきかもしれない。
そう考えれば、この映画は後の『ジュラシック・パーク』の習作とみなすこともできるだろう。
<『ジュラシック・パーク』 予告編>
しかし、そのサメの実態を隠すことによって、無意識下の「恐怖の増大」に成功し、更にその「姿の明示」によって、「怪物=怪異に対する興味」を満たすという、二つの効果を作中に埋め込んでいる。
そして、スピルバーグのスピルバーグたるゆえんは、その「秘匿」と「明示」の絶妙な演出力に在ると感じる。
そんな、この作品の要素を見るとき、個人的には同スピルバーグ監督のデビュー作『激突』を思い起こす。
関連レビュー:1972年 『激突!』 スピルバーグ監督の映画でデビュー作 あおり運転の恐怖!巨大トラックの正体とは? |
この激突も基本的には「恐怖の明示」と「恐怖の対象を秘匿」することで、成功を収めていたと感じる。
しかし、この『ジョーズ』における「恐怖の秘匿」には、当時の表現技術の限界という事情が関わっていたのだ・・・・・


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以下の文章には 映画『ジョーズ』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
徹夜の修理で航行可能となった船で、再びサメを追う。
ブロディは沿岸警備隊に無線で連絡をしようとするが、クイントは無線を壊し外部からの援助を拒否した。
追跡の後、サメに追いついたクイントは別の樽をサメに打ち込む。
しかし、逆に船が引きずられ、デッキを湿らせ、エンジンルームを浸水させる。クイントはサメとの力比べにエンジンを回しすぎ、遂にエンジンが故障した。オルカ号はダメージを深め、ついにその船体を大きく傾ける。
その危機にサメ研究者フーパーは、檻に入って海中に潜り、毒入りの水中銃でサメを仕留めようとチャレンジする。
しかし巨大なサメの打撃に、檻が破壊されたフーパーは必死に檻から海底に逃れた。
怒りに満ちたサメは、攻撃の矛先を船の上の二人に向けた。オルカ号の船尾に体を乗り上げたサメは、その巨体で船を破壊した。
必死にサメと戦うクイントも、大きく開いた顎に襲われ、ついにサメにその命を奪われてしまう。

映画『ジョーズ』結末 |
1人残った警察署長のブロディは、襲い来るサメの顎に向け、酸素ボンベを投げた。サメは海に潜るとかろうじてマストにしがみつく、ブロディ―に迫る。ブロディ―はその口に向けて、ライフルを撃った。
【意訳】ブロディ―:いいぞ、よし、来い、タンクを見せろ、笑ってみろコン畜生・・・・
弾はついに酸素ボンベに吸い込まれ、大爆発を起こしサメはバラバラに吹き飛び沈んで行った。
しかし、オルカ号もついに沈没の時を迎え、板切れにつかまり疲れ切ったブロディーは波に漂う。そこに、ポッカリと顔を出したのはフーパーだった。
【意訳】(笑いあう二人)フーパー:クイントは?/ブロディ―:ダメだった。それに捕まれるか?今日は何曜日だ?/フーパー:水曜か、ああ、木曜かも/ブロディ―:俺たちの潮の向きだな/フーパー:蹴り続けろ/ブロディ―:俺は水が嫌いだった。/フーパー:なんでか分からん。
板に横並びになった2人は、陸に向けて泳ぎだした。
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