原題 Gold RushThe Gold Rush 製作国 アメリカ 製作年 1925 上映時間 72分 監督 チャールズ・チャップリン 原作 チャールズ・チャップリン |
評価:★★★ 3.0点
チャップリンの映画の中でも、特に評価の高い一本です。
この大正15年に日本で公開された映画は、サイレントならではの言葉によらない、ユニークな笑いがギッシリ詰め込まれています。
個人的には、喜劇王チヤップリンの喜劇王と呼ばれるに相応しい、笑いの質の高さをこの映画では見ることができると思います。
<目次> |
映画『黄金狂時代』あらすじ |
アメリカのゴールドラッシュ時代のアラスカは、黄金で一山当てようという男たちが列をなしていた。そんな一人、険しい雪山をよたよたと登る男の名はチャーリー(チャールズ・チャップリン)。転んだり滑ったり、熊に遭遇しつつも、猛吹雪の中一軒の小屋に辿り着いた。チャーリーは中に入ると、食べカスの骨についた肉にかぶりついた。その背後から、お尋ね者の悪党ブラック・ラーセン(トム・マレイ)が出てきて、小屋から出て行けと脅した。チャーリーも、ドアを開け外に出ようとするものの、強風のため押し戻され、外に出ることができない。もみ合ううちに、ラーセンのほうが家の外に吹き飛ばされてしまう。
そこにもう一人、吹雪を避けて飛び込んできたのは、ジム・マッケイ(マック・スウェイン)という金鉱を掘り当てた山師だった。
そこにラーセンが戻ってきて、銃を振り回しジムと揉み合いになった。銃口が右へ左へと動き回り、慌ててチャーリーが逃げ惑うが、必ず銃口はチャーリーを追うのだった。
ジムがラーセンに勝利し、ひとまず三人は小屋で吹雪の収まるのを待つことにしたが、食べ物がなく飢餓感に苛まれ、チャーリーは目を盗んでロウソクを食べる始末だった。飢えに耐えかねたラーセンの提案で、食料を探しに行く者をトランプで決定することになり、ラーセンに決まった。ラーセンが外に出て進むと、彼を追う警官と出くわし、景観を射殺した。
小屋でゃ、感謝祭の日にチャーリーが自分の靴を鍋で煮始めた。十分煮ると、靴底と紐をチャーリーが、靴の上部の革ジムが食べた。
チャーリーは靴紐をスパゲティのように食べた。
しかし、食料は相変わらず無く、空腹のあまりジムの眼にはチャーリーが巨大な鶏に見え始める。ついに空腹でジムはチャーリーを食べようと追いかけまわすようになる。チャーリーは銃を抱えて、警戒するものの夜も眠れない。
そしてついに、ジムがチャーリーに襲い掛かった時、空いたドアから熊が侵入し、慌てて二人は逃げ出したが、チャーリーの放った銃弾が熊を倒し、食料は無事に確保されたのだった。
そして雪が止み、チャーリーとジムは小屋を後にし、二手に分かれた。
ジムが自らの金鉱へ戻ると、そこにはラーセンがいて金をすでに掘り出していた。怒るジムに対し、ラーセンはスコップをジムの頭に一撃し昏倒させると、金をもって山を降りていく。しかし、悪行がたたって崖が崩れ、ラーセンは命を落とした。
一方のチャーリーは、アラスカの地に新たに生まれた町へと向かう。そこは、人々が溢れ、ダンスホールにも女給が揃い盛況だった。チャーリーは落ちていた女給の写真を拾い、人目を気にしつつもこっそりしまった。その写真の女性はジョージア(ジョージア・ヘイル)で、プレーボーイ・ジャック(マルコム・ウエイト)に言い寄られ迷惑していた。それで、ジャックが誘ったにもかかわらず、当てつけに貧相なチャーリーをダンスパートナーに選び、見せつけた。
ダンスの途中、チャーリーのズボンの紐が落ち、ずり落ちるズボンを押さえながらも、チャーリーは踊り続け、途中紐を見つけズボンに巻き付けると、それは犬の紐で引きずり倒されてしまい、周囲の笑いを誘った。
踊りが終わり、再びジョージアを口説こうとするジャック。チャーリーは彼女の前に立ちふさがると、ジャックと顔を突き合わせる。ジャックはチャーリーの帽子で、その視界を奪った。チャーリーが宙に殴りかかったとき、柱から落ちた時計のせいでジャックは気絶した。帽子を脱いだチャーリーはそれを見て胸を張って帰って行った。
外を歩くチャーリーはとある小屋の窓から、食事の準備をしているのを覗き、その前で棒のように倒れ、気絶したふりをする。そこは鉱山技師のハンク・カーティス(ヘンリー・バーグマン)の小屋で、棒のようなチャーリーを抱えて、室内で介抱した。温め、食事を与え、飲み物を与えた。元気になったチャーリーに留守を任せ、ハンクは自らの仕事である探検へと出発した。
そんな時、ダンスホールの女給達が雪合戦をしながら、小屋の外にやって来た。物音にドアを開けたチャーリーの顔に雪玉が破裂する。
するとそこには、愛するジョージアがいてチャーリーは心を奪われる。
チャーリーは女性達を、家に招き入れると、ジョージアは枕の下の自分写真でチャーリーの想いを知る。そうとは知らないチャーリーは、ジョージア達を何くれとなくもてなした。女性たちが帰るとき、チャーリーはジョージアに、また遊びに来るか尋ねると、彼女は大晦日に来ると答えチャーリーを喜ばせた。
一人になった室内で、チャーリーは喜びを爆発させ、暴れまくり、モノを落とし、枕の羽毛が飛散し部屋は雪のように白くなった。
そこへ手袋を忘れたとジョージアが戻ってきて唖然とする。
チャーリーは大晦日のパーティーの資金稼ぎに、雪かきに励んだ。右の家の雪を、左の家の前に投げ、ドアが開かなくなった左の家から依頼を受ける。その左の家の前にも雪が山積みとなるが、気づくとそこは留置場で、急いでその場から逃げ出した。
大晦日、チャーリーはごパーティーのご馳走とプレゼントを用意し、ジョージアを待ちっていた。いつしか睡魔に襲われ、夢の中で、彼女たちにパンにフォークを刺して足に見立て、顔の前でステップを踏ませると、二頭身のダンスのようにユーモラスで大受けを取った。
目が覚めたチャーリーは、ジョージが来ないことに落胆し、足はふらふらとダンスホールに向かった。
その頃、ジョージアはジャックたちと新年のパーティーで盛り上がっていたが、ふとチャーリーとの約束を思い出し、ジャックと女給仲間とチャーリーの小屋へと急いだ。華やかに飾り付けられ、プレゼントが用意されているのを見て、ジョージアは罪悪感にかられた。ジョージが無理やり彼女にキスをするのに平手打ちで応え、小屋を後にした。一方、金山の登記に登記所を訪れた、山師のジムは殴られた後遺症で記憶喪失に陥っており、その金鉱の場所をどうしても思い出せなかった。チャーリーといた小屋の場所が分かれば金鉱も分かると、チャーリーを探しに町へと出た。
その頃チャーリーはダンスホールで、ジョージアからの謝罪の手紙を受け取り、ジャックにちょっかいを出されつつも、ホール内を探し回った。すると、そんなチャーリーをジムが見つけた。小屋に連れて行ってくれれば億万長者にしてやると、二人で小屋に行くことを決めた。
その時、二階にいるジョージアを見つけたチャーリー。彼女に歩み寄ると愛を告白し、億万長者になって戻ってくると告げ、ダンスホールを後にした。
映画『黄金狂時代』予告 |
映画『黄金狂時代』出演者 |
チャーリー(チャールズ・チャップリン)/ジョージア(ジョージア・ヘイル)/ビッグ・ジム・マッケイ(マック・スウェイン)/ブラック・ラーセン(トム・マレイ)/ハンク・カーティス(ヘンリー・バーグマン)/ジャック(マルコム・ウエイト)/バーテンダー(スタンリー・J・サンフォード)
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映画『黄金狂時代』解説公開時の評価 |
サイレント映画としては映画史上5番目に高い収益を上げ、1926年には興行収入が600万ドルを超え多くの観客に愛されました。
そして、映画会社ユナイテッドアーティストは100万ドル、チャップリン自身は200万ドルの利益を得るという商業的利益を上げます。
商業的な成功と同様、映画の批評家達からも、作品的な質の高さを絶賛されたのです。
モーダント・ホールという評論家はニューヨークタイムズに「詩情、哀愁、優しさを連想させるコメディです。チャップリンの全映画の傑出した宝石であり、『キッド』や『担へ銃』のような傑作中の傑作よりも、より多くのアイデアと独創性を持つ」と書いています。
映画雑誌「バラエティ」では、それは、「今までに撮影された最大かつ最も精巧な喜劇だった」と絶賛し「そしてここ数年の最大のヒット市場で、まさに『国民の創生』など劇映画に匹敵し、競合し得る作品だ」と書きました。
雑誌「ニューヨーカー」は、映画のドラマとチャップリンのコメディーシーンがうまく融合せず機能しなかったと批判しつつも、1925年年末の映画のベスト10のリストに『黄金狂時代』をしっかりランクインさせています。
そして、遠く海を隔てた日本でも1925年12月17日に公開され、1926年度のキネマ旬報ベストテン第1位に輝きました。
そして、1958年のブリュッセル万国博覧会で発表されたリストでは、この映画が史上2番目に偉大な映画と評価しました。
ちなみに一位は、セルゲイ・アイゼンシュタインの『戦艦ポチョムキン』だったそうです。
ソビエト連邦: 『戦艦ポチョムキン』 映画と共産主義、2つの革命!モンタージュ理論は誕生のワケ!? エイゼンシュタイン監督の映画史上に輝く古典 |
この『黄金狂時代』も100年が経ち、年と共にそのランクを下げつつあります。
しかし、まだまだその評価は高く、例えば「映画ベスト100」という企画では常連となっている古典です。
「映画史上最高の作品ベストテン」(英国映画協会『Sight&Sound』誌で10年毎に選出されるリスト)
1952年:「映画批評家が選ぶベストテン」第2位
1962年:「映画批評家が選ぶベストテン」第14位
1972年:「映画批評家が選ぶベストテン」第12位
1982年:「映画批評家が選ぶベストテン」第32位
1992年:「映画批評家が選ぶベストテン」第42位
「AFIアメリカ映画100年シリーズ」
1998年:「アメリカ映画ベスト100」第74位
2000年:「コメディ映画ベスト100」第25位
2007年:「アメリカ映画ベスト100(10周年エディション)」第58位
2000年:「20世紀の映画リスト」(米『ヴィレッジ・ヴォイス』紙発表)第50位
2008年:「史上最高の映画100本」(仏『カイエ・デュ・シネマ』誌発表)第86位
2013年:「オールタイムベスト100」(米『エンターテイメント・ウィークリー』誌発表)第8位
このように、この作品はサイレント時代の「古典」として、世界各国で高い評価を得ており、下の『ベスト100企画』をご覧頂ければ、たくさんのリストにランクインしているのが分かるかと思います
◎『映画ベスト100』企画を紹介! 世界各国で選ばれた『映画100本』のリストを紹介!!! 映画界、映画ファン、映画評論家など、選定方法もさまざま! 日本映画も各リストでランクイン! |
チャップリンの作品中ベストとの評価も高く、チャップリン本人も何度か「これが一番記憶に留めて欲しい映画だ」と語っていたそうです。
また、こんな旧い映画の歴史に興味があれば、米国アカデミー賞の歴代受賞リストはいかがでしょうか?
関連レビュー:オスカー受賞一覧 『アカデミー賞・歴代受賞年表』 栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞 授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。 |
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以下の文章には 映画『黄金狂時代』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)そしてチャーリーとジムは小屋へと戻ると、ジムの持っていた酒で体を温めるうちに飲みすぎて寝てしまった。その外では、猛吹雪が荒れ狂い、夜のうちに小屋は崖からはみ出るほど移動していた。
翌二日酔いの状態でチャーリーが起きると、小屋は崖から半分飛び出ていた。チャーリーは家の揺れを、二日酔いのせいで目が回っているのだと思い、歩き出すとバランスが崩れ家が谷へ落ちかけ、ヤジロベエのように揺れた。
瞬間、ロープが石に引っかかり、かろうじて30度は傾いた家をつなぎ止めていた。ジムもチャーリーと一緒に傾く家の中で、絶体絶命の危機を迎えた。二人はなるべく振動をさえつつ、チャーリーを踏み台にしてジムが、上り坂を這い上るように、玄関ドアから脱出を果たした。しかし、バランスが崩れた小屋は、更に傾きを増し、チャーリーと共に崖から落下する。瞬間、ジムが投げたロープを掴んだチャーリーは落下を免れ、小屋だけが遥か下へと墜落して行った。
映画『黄金狂時代』結末 |
億万長者となった山師ジムとチャーリーは、アラスカからアメリカ本土に向かう一等船室にいた。その下の三等船室には偶然にも、ジョージアがいた。彼女の周りでは、船員が密航者の探索をしていた。
名士となったチャリーに新聞の取材があり記者はチャーリーに、古く汚れた服で写真を撮りたいとリクエストした。
そのボロ服でカメラ前でポーズを取るが、下がりすぎ、階段を三等船室のデッキへと転げ落ちていった。
【意訳】船員:お前は密航者だな。探していたんだ!/どうぞ、どうぞ、彼を捕まえないで!私が彼の船賃を払います!/船長:密航者なんてとんでもない!ビッグ・ジム様のパートナーで億万長者だぞ。/チャーリー:(執事に)ジェームス、お客様一人分の準備を。/記者:失礼ですが、閣下、この淑女は?(チャーリーが耳打ち)/記者:おめでとうございます。記者はふたりカメラの前に立たせる)/記者:これは素晴らしい物語だぞ!/カメラマン:動かないで!(キスするチャーリーとジョージア)ああ!写真をダメにした!(1925年版)
<1945年版>(チャーリーが耳打ち)/記者:ハッピーエンドですね(チャーリーとジョージアは階段に向かい)THE END。
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