原題 The African Queen 製作国 イギリス 製作年 1951年 上映時間 105分 監督 ジョン・ヒューストン 脚色 ジェームズ・エイジイ ジョン・ヒューストン 原作 C・S・フォレスター |
評価:★★★ 3.0点
1951年のこの映画は、総天然色(テクニカラー)、アフリカの長期ロケ、斬新な冒険活劇と、当時の観客にとって魅力的な作品でした。
ハンフリーボガートとキャサリンヘップバーンという、当時のハリウッドのスター二人が、絶妙の掛け合いも好評を博しました。
この映画は、異郷の中の冒険活劇物語として、古典的作品と評価されています。


<目次> |

映画『アフリカの女王』あらすじ |
イギリス人女性ローズ・セイヤー(キャサリン・ヘプバーン)は宣教師の兄サミュエル・セイヤー(ロバート・モーレイ)とともに、ドイツ領東アフリカの奥地で布教活動をしていた。
ある日、二人は老朽化した小型船アフリカの女王号で郵便を届けに来たチャールズ・オルナット通称チャーリー(ハンフリー・ボガート)から、第一次世界大戦が勃発したことを伝えられる。
チャーリーが立ち去った直後、村にドイツ軍が現れ住民たちは連れ去られ、村は焼き討ちされる。
サミュエルはドイツ軍を止めようとするがドイツ兵に殴られ、壊滅した村の惨状を見て精神に異常をきたして死んでしまう。
翌日、ローズは村に戻ったチャーリーに助けられアフリカの女王号に乗り込む。
ローズはチャーリーに対し、川下の湖に浮かぶドイツ帝国海軍の砲艦ルイザ号を、酸素ボンベと爆発性ゼラチンで作った手製の魚雷で撃沈することを提案する。
チャーリーは、途中にドイツ軍の砦や航行不能の激流や大瀑布があり反対したが、頑固なローズの冷たい沈黙を前に渋々承諾させられる。
アフリカの女王号は、荒れ狂う激流を下り木の葉のように揺れながらも、何とか乗り切り脱出する。
チャーリーは、これで恐怖を感じたローズが諦めてくれると考えたが、彼女は初めての川下りに興奮し、ルイザ号への攻撃を諦めようとしなかったため、チャーリーは彼女の無鉄砲さに怒り出してしまう。
チャーリーはありったけの怒りをぶつけた後に酒を飲んで川下りを辞めてしまい、それに激怒したローズは船に積んでいた酒瓶を全て川に捨ててしまう。
ローズの頑なな怒りに耐えきれなくなったチャーリーは彼女に謝り、約束通り川下りを再開する。アフリカの女王号はドイツ軍の砦に辿り着き、船の存在に気付いたドイツ軍は攻撃を始める。
船はボイラーが故障するなどのトラブルが起きて窮地に陥るが、チャーリーの機転でボイラーは応急処置が施され、また太陽の逆光でドイツ軍は正確な射撃が出来ず、船は無事に砦から離れる。
窮地を脱した二人は無事を喜び、興奮のあまりキスをし、お互いの好意を確かめる。
ドイツ軍の砦を抜けた二人だったが、間もなく大瀑布に到達する。船は木の葉のように流れに翻弄されたが、何とか難所を切り抜けた。
しかし、大瀑布を抜けた衝撃で舵と軸が破損してしまい、その修理に応急の鍛冶仕事で一晩で直し出発する。
しかし、途中で沼に迷い込んでしまい、航行不能に陥ってしまう。二人は川に戻ろうと沼を彷徨い、チャーリーは大嫌いなヒルに咬まれながらも水に入って船を引っ張り奮闘するものの、船は沼の奥地へと入り込んでしまい動けなくなってしまう。
そして、チャーリーは熱に倒れ、二人は死を覚悟する。しかし、その日の夜に降り始めた大雨によって船は押し流され無事に川に戻る。
湖に到達した二人の前に標的のルイザ号が現れ、二人は魚雷の準備を整える。
その日の夜、チャーリーはローズを下船させ、1人で攻撃すると伝えると、離れ離れになるのを嫌がるローズと口論になるが、最後はローズが二人で運命を共にしたいと言う言葉に、チャーリーも同意した。
二人は巡回から戻って来たルイザ号に向けて出発するが、直後に降り始めた大雨で湖が荒れて船は転覆した。
そして、ローズは行方不明になってしまった。

映画『アフリカの女王』予告 |
映画『アフリカの女王』出演者 |
チャールズ・オルナット:チャーリー(ハンフリー・ボガート)/ローズ・セイヤー(キャサリン・ヘプバーン)/サミュエル・セイヤー(ロバート・モーレイ)/艦長(ピーター・ブル)/第一士官(セオドア・ビケル)/第二士官 (ウォルター・ゴテル)/ショーナの砦上官(ピーター・スワンビック)/ショーナの砦ドイツ兵(リチャード・マーナー)/下士官(ジェラルド・オン)

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映画『アフリカの女王』解説映画公開時の評価 |
1951年映画のプレミア上映の際、ロサンゼルスタイムズのエドウィンシャラートは「キャスティングと圧倒的大自然の両方で、その斬新さが印象的」と評し、映画のエンディングは「信じられないほど、巧妙に工夫されており、メロドラマチックで、そして西部劇的で、大変に効果的。」としています。

ボズレー・クラウザーのニューヨーク・タイムズ紙の批評は「完全に信じられないほどのロマンスを備えた映画の巧妙な仕事であり、風変わりな愛の物語と同様、途方もない野生の枠組みの中の冒険が設定されています……不満はありません」と書いています。
バラエティー誌ウィリアム・ブロードンは「この物語は冒険とロマンス、まさに第一次世界大戦が始まった時のアフリカで、カップルが経験する心を奪うような映画です。まさに十分意趣を凝らしたロケーションとハンフリ・ボガートとキャサリンヘップバーンのスターチームが想像力を掻き立てます。」
ニューヨーカーのジョンマッカーテンは、「キャサリンヘプバーンとハンフリーボガートはいくつかの注目すべき演技を生み出した。彼らのその演技ができたのは幸運である。困難な状況下、明らかな混乱下の中で彼らの演技はなされた。」
1952年のワシントンポストのリチャード・コ― 「ヒューストンは危険なトリックを試し、ほとんどの場合、それを美味しいスタイルで引き出しました。そして二人のスターから、彼はアカデミー賞にノミネートされたパフォーマンスを引き出した。」
このように公開当時には、アクションの斬新さと、二大ハリウッドスターのロマンスと、アフリカ・ロケによる大自然の魅力で、ユニークなデザインが施された刺激的な映画だったため、批評家と観客の双方から認められヒットしたのです。
1951年の興行収入では、パリのアメリカ人(1951)、欲望という名前の電車(1951)、陽のあたる場所(1951)、クオ・バディス(1951)に次いで5位にランキングされています。
そして、この映画の演技で、1952年開催のアカデミー賞の主演男優賞にハンフリー・ボガート、主演女優賞にキャサリン・ヘップバーンがノミネートされ、ボギーが最優秀主演男優賞のオスカー像を手にしました。

第24回アカデミー賞・主演男優賞スピーチ |
プレゼンターはグリア・ガーソン
グリア・ガーソンは、自身の10分に及ぶ史上最長スピーチ(1943年『ミニヴァー夫人』のオスカー)を語り、笑いを取る。ノミネート者を紹介。
ハンフリー・ボガート(アフリカの女王)/マーロン・ブランド(欲望という名の電車)/モンゴメリー・クリフト(陽のあたる場所)/アーサー・ケネディ(Bright Victory)/フレデリック・マーチ(セールスマンの死)
受賞者はハンフリー・ボガード(アフリカの女王)。
[アナウンサー大意]ハンフリー・ボガードは2度のノミネートで、初のオスカー。グリアガーソンから祝福のキスを受ける。
【受賞スピーチ・意訳】
ベルギー・コンゴの中心から、パンテージ・シアターまでの道のりは、とても長く、そして私はここがあそこより多少居心地が良いのが、とてもうれしい。私は至らぬながら、私が今ここにいる事を助けてくれ、多大な貢積を残してくれたジョン・ヒューストン氏とキャサリン・ヘップバーン嬢に敬意を表したい。大変感謝しています。
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以下の文章には 映画『アフリカの女王』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
チャーリーはルイザ号に捕まってしまい、スパイ容疑で死刑を宣告される。
そこにローズも、連行され、彼女はチャーリーが処刑されることを知り、二人でルイザ号を攻撃するつもりだったことを告白し、共に処刑されることを選択する。
二人は甲板で絞首刑に処されることになり、チャーリーは艦長に最後の願いとして「ローズと結婚させて欲しい」と頼み込む。艦長は頼みを聞き入れ二人の結婚を宣言した。
処刑を執行しようとする。

映画『アフリカの女王』結末 |
しかし処刑直前にルイザ号は湖に転覆していたアフリカの女王号に衝突し、魚雷が爆発して沈没する。
湖に投げ出された二人は大成功を喜びあった。
岸に向かって大声で歌を歌いながら泳ぎ去った。
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