2020年05月03日

映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』マット・デイモンの失敗!?製作の裏側解説!/簡単あらすじ・アカデミー賞受賞式の騒動・評価考察

人は悲劇に打ち勝てるか?

原題 Manchester by the Sea
製作国 アメリカ
製作年 2016年
上映時間 119分
監督 ケネス・ロナーガン
脚本 ケネス・ロナーガン
製作 マット・デイモン


評価:★★★★☆ 4.5



この映画には、ほんとうに心打たれました。
この作品の持つ質の高いドラマは、多くの人々から評価を得て、アカデミー賞でも主演男優賞と脚本賞に輝きました。

しかし、この映画が製作される過程では、ケッコウな混乱も生じていたのでした。

そんな混乱の元凶は、ハリウッド・スターのマット・デイモンに有りました

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<目次>
映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』簡単なあらすじ
映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』予告・出演者
映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』解説/映画製作の経緯
映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』解説/アカデミー授賞式の騒動
映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』評価/満点にしたいけど・・・・

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映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』かんたんなあらすじ

今はボストンで孤独な生活を送っているリーは、ある日兄の危篤を知らされ生まれ故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーへと車を走らせた。しかし時遅く兄は帰らぬ人になっていた。兄の遺言で、自分が兄の息子パトリックの後見人になっており、その地でパトリックと共に住むことを求められていることを知った。しかし、リーはその町でパトリックと暮らすことを拒み、ボストンに引っ越すことを甥に告げた。それを聞いたパトリックは、マンチェスター・バイ・ザ・シーで恋人や様々なつながりがあるため、ボストン行きを拒否する。町が雪で閉ざされる中、兄の埋葬は雪解けの春まで待たねばならず、2人はギクシャクしながらも日々を過ごす。しかし、葬儀の日が近づいても、両者の新たな生活をどうするか解決がつかないままだった。実はリーは、その生まれ故郷に住むことに耐えられない、つらい過去があったのだ―
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映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』予告

映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』出演者

リー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)/ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)/ジョー・チャンドラー(カイル・チャンドラー)/パトリック・チャンドラー(ルーカス・ヘッジズ/幼児期ベン・オブライエン)/ジョーの元妻エリーズ(グレッチェン・モル)/ジョージ (C・J・ウィルソン)/ホッケーのコーチ(テイト・ドノヴァン)/ガールフレンド:シルヴィー・マクグラン(カーラ・ヘイワード)/ガールフレンド:サンディ(アンナ・バリシニコフ)/サンディの母ジル(ヘザー・バーンズ)/エリーズの婚約者ジェフリー(マシュー・ブロデリック)/ジョエル(オスカー・ウォールバーグ)/リーの上司(スティーヴン・ヘンダーソン)/弁護士ウェス(ジョシュ・ハミルトン)/通行人(ケネス・ロナーガン)


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映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』解説

マット・デイモンと映画製作の裏側

この映画はマット・デイモンと友人ジョン・クラシンスキーとの対話から、その最初のアイデアが出てきたといいます。
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友達の2人は『プロミスド・ランド』(2012)の脚本を共同執筆し、一緒に出演もしていました。(写真:右マット・デイモン左ジョン・クラシンスキー)

その時には、その作品とともに『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』の構想も持っており、2人は、クラシンスキーが主演し、デイモンが監督すようと話し合っていました。
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そしてデイモンは、映画『マーガレット』で共に仕事した脚本家ケネス・ロナーガン(写真:左ケネス・ロナーガン)に脚本を依頼します。

しかし、デイモンとクラシンスキーの二人は他の仕事に忙殺され、プロジェクトは宙に浮いてしまいます。
それでも脚本の初稿を読んで感銘を受けたデイモンは、ロナガンを監督し、自分自身が主演すると、2014年9月にその共同作業を発表します。
しかし、デイモンのスケジュールは2年先まで詰まっていました。
そこでデイモンは、友人のケイシー・アフレック(写真:右ケイシー・アフレック)に主役の座を譲ったのでした。

その際にデイモンは、「この役はケイシー・アフレック以外の誰にも譲らない」と語ったのです。

譲られたケーシーはTVのインタビューで、マット・デイモンが役を譲ったのはハッピー・エンディングではなくアクションが少なかったからだと冗談のように語っています。
【大意】司会者が「大変感動したが、ある者はもう少しハリウッド的な明るさが欲しいという声もあるがどうかと尋ねる」。ケイシーアフレックスは「監督の脚本を読んで、言うとおりハリウッド的ハッピーエンドではないと思った」司会者は「マットデイモンが役を、君以外に譲らないと言った意味をどう考えている」と聞く。ケイシーは笑いながら「彼は、ハリウッド的ハッピーエンドを愛しているし、アクションシーンもさほどないから、アプローチの仕方が分からなかったから、譲ったんじゃないか」と答える。(映画シーン後)司会者がミッシェル・ウィリアムズにこの仕事を選んだ理由を尋ねると、彼女は「ケイシーと10年ぐらい前にローガンの脚本を読んで、その時から一緒に仕事をできたら良いなと思っていた」と語る。ケイシーが疑うと、その時の作品名を上げ「一緒に仕事するのが夢だった」と言う。(2:16秒まで)

この映画は2017年開催の89回アカデミー賞に何部門もノミネートされ、授賞式にはケイシー・アフレックスとマット・デイモンも出席しています。
そして、この映画の製作の経緯は、アカデミー賞司会者ジミー・キンメルによって、さんざんに「イジられ」ました。

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映画『マンマチェスター・バイ・ザ・シー』解説

アカデミー賞受賞式

2017年開催の89回アカデミー賞、冒頭の司会者ジミー・キンメルのスピーチで、デイモンをネタに笑いを取ります。
実はデイモンとキンメルは、キンメルが司会のTV番組内で、長期に渡りお互い熾烈なデスり合戦を繰り広げる、深い確執を持つ仲だったのです。
【大意】我々の間には問題があるが、誰もが知っている通りマットは利己的な人間だ。しかし今回は利己的でない行いをした。今回『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のプロデューサーで、主演男優賞にもノミネートされた役を彼自身がやるつもりだった。でも、やらずに子供時代からの友達のケイシー・アフレックに役を譲った。オスカーを手にするチャンスを友に譲り、自分は中国のポニーテール(髪)映画『グレートウォール』に出て、8000万ドル損した。(2:52秒まで)

このキンメルとマットの確執は、更に授賞式で繰り広げられました。
マットがプレゼンターとして登場し、この『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が受賞した、最優秀脚本賞の場でキンメルが邪魔に入ったのです。

2017年アカデミー賞・最優秀脚本賞スピーチ

ケイシー・アフレックスとマット・デイモンがプレゼンター。
ケイシー:映画にとって大事な要素はと訊ねられたヒッチコック/マット:彼は、3つの要素があると答えた「脚本、脚本、脚本」/ケイシー:彼の言葉が正しかったことが、今年のノミネート作の物語とテーマで証明された。/マット:ノミネート作には我々の兄弟の話も入っている。おい、なんだ!冗談は止めろよ。音楽を止めろ、紹介中だぞ。ヒドイことするな。(地下でキンメルがタクトを大きく振る:もっと大きく、家に帰しちまえ)
ノミネート作品は最後の追跡(テイラー・シェリダン)/ラ・ラ・ランド(デミアン・チャゼル)/ロブスター(ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリプ)/マンチェスター・バイ・ザ・シー(ケネス・ロナーガン)/20センチュリー・ウーマン(マイク・ミルズ)
受賞者はケネス・ロナーガン。
【ケネス・ロナーガン受賞スピーチ・意訳】
どうもありがとうございます。私は映画が大好きです。私は映画に参加するのが大好きです。ありがとう、マット・デイモン。すべてはあなたから始まりました。ありがとう、キンバリー・スチュワード、ケビン・ウォルシュ、ローレン・ベック、クリス・ムーア。ありがとう、ケーシー・アフレック、ケーシー・アフレック、ケーシー・アフレック。そして、ミシェル・ウィリアムズとルーカス・ヘッジス、そして映画のすべての素晴らしい俳優。アマゾンとロードサイドとシエラは、このように素晴らしい仕事をしました。この映画は、ひどい逆境に直面してお互いを大切にしようと努める人々について語ります。私は、私が愛し、私を愛してくれた素晴らしい人々によって、私の人生全てを世話してもらってきました。マーラ・ブックスバウム (広報担当)でなければ、これを持つことは出来ませんでした。J.スミス-キャメロンがいなかったら、私はここにいなかったでしょう。ネリー・ロナガン、この上なく愛していますが、もっと愛します。特に継父のマイク・ポーターに感謝します。過去5年間に渡り私の母の世話をしてきました。これは、その人生の途上で、関わった人のほんの一例です。そして同じく、父にさよならを、彼は今年亡くなりました。本当に感謝します。

2017年アカデミー賞・主演男優賞スピーチ

ブリー・ラーソンがプレゼンター。
ケイシー・アフレック(マンチェスター・バイ・ザ・シー)/アンドリュー・ガーフィールド(ハクソー・リッジ 命の戦場)/ライアン・ゴズリング(ラ・ラ・ランド)/ヴィゴ・モーテンセン(キャプテン・ファンタスティック)/デンゼル・ワシントン(フェンス)
受賞者はケイシー・アフレック。

【ケイシー・アフレック受賞スピーチ・意訳】
私には過ぎた名誉で、感謝します。最初に演技を教えてくれたデンゼル・ワシントンに感謝します。私は彼と今夜初めて会った。有難う。そして他の候補者と、その偉大な仕事に。あなた方と共にここにいる事が私の誇りです。皆が勇気を持っていて、行動している事を知っています。私だけがここにいるのではなく、名前を上げれませんが、多くの人々の才能と強い意志の結果です。しかし多くをケネス・ロナーガンに負っています。彼の役割、彼の脚本、彼の監督無くして、ここにはいません。みなさん、私はもっと偉大な、もっと意味ある事を言いたいが、しかし、私は本当にこの大きなコミュニティの一員となったのを誇りに思います。この一年を見まわして私が含まれる事に驚きます。それは身に余る事です。マット・デイモンがこの機会を作ってくれた。Mara Buxbaumありがとう、PatrickとBoomerと、すべての人に。もちろん、父と母に、たいてい、いつでも信じてくれた。ベン、愛する、我が兄弟。全ての人に感謝します、どうも有難う。
関連レビュー:アメリカアカデミー賞
『アカデミー賞・歴代受賞年表』
栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞
授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。
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映画『マンマチェスターバイザーシー』評価



この映画には本当に感動しました。
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現代人が立ち向かわざるを得ない、人としての罪と償いの困難さを描いて説得力がありました。

そしてその最後には、人の成し得る奇跡を示して、つらい運命を抱えた多くの人々に希望を感じさせるものだと思いました。
・・・・・・・・正直に言えば、ドラマとその演技が示した、優れた表現を見れば★5の満点をつけたかったのです・・・・・・

しかしそう出来ませんでした。
これは、個人的な評価基準の言い訳に過ぎないのですが、私にとって「満点の映画は1000年後にもその映画が古典として残る」か否かです。

それゆえ、感動とか、面白いとかという個人的な印象と同時に、『七人の侍』であるとか、『2001年宇宙の旅』、ゴダールの『勝手にしやがれ』、 『ゴッドファーザー』など、映画史に重要な足跡を残し得る作品として成立しているかを、重視しています。
そういう点で見れば、この映画は優れた表現力と説得力を持って心を打つものの、映画表現に画期的な要素を書き加えたとは言えないと感じたのです。

そんなことで、この映画は私自身にとっても「重要な一本」で、生涯愛し続けるであろう作品なのですが、それでもこの評価★4.5とさせて頂きました・・・・・・




posted by ヒラヒ at 18:00| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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