原題 Clockwork Orange 製作国 アメリカ 製作年 1971 上映時間 136分 監督 スタンリー・キューブリック 脚本 スタンリー・キューブリック 原作 アンソニー・バージェス |
評価:★★★☆ 3.5
天才監督キューブリックの傑作である事は間違いない。
この作品のタイトル『時計仕掛けのオレンジ』とは、原作者バージェスの説明によると、第二次世界大戦前にロンドンのパブで古いコックニーのスラング「時計じかけのオレンジのような奇妙な=Queer as a Clockwork Orange」という表現を初めて聞いたと言う。
それを聞いた、バージェスは「自然(Orange)」を破壊するほど極端な「異質性・変態性(Queer)」または「狂気=マッドネス」を意味すると感じ、自らの小説のタイトルとした。
しかし、このキューブリックの作品は「異質性・変態性=クィアネス」または「狂気=マッドネス」を、あまりに美しく描きすぎて、「暴力讃美だと」世間から糾弾を浴びることとなった・・・・・



<目次> |

映画『時計仕掛けのオレンジ』ストーリー |
15歳のアレックス(マルコム・マクダウェル)は、つけまつげを右目だけに付け、不敵な笑みを浮かべ周囲を見回していた。

そのアレックスはギャング仲間ディム(ウォーレン・クラーク)、ジョージー(ジェームズ・マーカス)、ピート(マイケル・ターン)のボスで、そのメンバーは皆白い服と黒い帽子で装い、杖を持って行動する。

アレックスたちギャング団は、その夜コンクリート敷きの河原で、年老いた浮浪者(ポール・ファレル)の1人を袋叩きにし歓声を上げた。

更に、別のギャング団が女性をレイプする場に出くわし、そのグループと乱闘となる。

その闘いに勝利する頃、パトカーの音を聞き、近くの車を奪うと夜の街を笑いながら疾走する。

そのまま、アレックスは高級住宅街の一軒のベルを鳴らすと、近くで交通事故を起こしたので電話を貸してくれとだまし、その扉を開けさせた。

マスクをしてなだれ込んだ4人は、その家の初老の作家フランク(パトリック・マギー)とその妻(エイドリアン・コリ)を、あっという間に縛り上げた。

アレックスは朗らかに『雨に唄えば』を高らかに歌いつつ、フランクの腹を蹴り上げポーズを決める。

また、フランクの目前でその妻の服をハサミで切り暴行を働き、その家の金目の物を奪って去った。
明け方に中産階級の両親と住む市営団地に帰って来たアレックス。
部屋に入ると、ペットのヘビと遊び、こよなく愛するベートーベンの交響曲第九番を流し音楽に酔いしれてから眠りにつく。

翌朝、学校を休むと言うアレックスに関して、父親(フィリップ・ストーン)と母親(シェイラ・レイナー)が言葉を交わすが、そのまま仕事に出かける。

すると、そこに校正委員のデルトイドが現れ昨夜の事件を語り、アレックスが犯人だとにらんでいるデルトイド(オーブリー・モリス)は、さまざまな言葉で責め大人しくしていろと言うと去って行った。

街に出たアレックスはレコード店で、若い女性2人と出会い部屋に連れ帰り、3人でセックスを楽しんだ。

夜が近づき、ギャング団と合流したアレックスは、不穏な空気を感じた。
リーダーである自分に不満を募らせているディムとジョージーが反抗的な態度を見せたのだ。

ひとまず、共に歩き出した4人は川沿いを進んでいた時、突然アレックスはディムとジョージーを川に落とし、更にナイフで傷を負わせた。

2人が力なくうなだれるのを見渡して、アレックスはディムの提案した、大金持ちの老女ウェザース(ミリアム・カーリン)を襲う計画を実行に移す事にした。
老女の家に着くと、再び昨夜と同じ手口で一軒の家に押し入ろうとしたが、新聞で事件を知っていた老女に拒まれ、警察に通報された。
アレックスは裏口から侵入する事に成功するが、老女の抵抗にあった。

老女がアレックスに向かって毒づくと、彼は近くにあったペニス形のオブジェで老女を殴り、彼女は動かなくなった。
その時パトカーの音に気付いたアレックスが玄関を出ると、彼に反抗的なジョージーとディムは、アレックスを瓶で殴る。

他の3人は逃げたものの、アレックスは身動きが取れず逮捕されてしまう。
逮捕されたアレックスは反抗的な態度が災いして、警官や更生委員のデルトイドに囲まれ、リンチまがいの暴力を振るわれる。

留置場で、アレックスは老女・ウェーザーズの死を知り、裁判では殺人罪で懲役14年の実刑判決を言い渡され、刑務所に移送された。
バーンズ看守長(マイケル・ベイツ)の厳しい検査を受け、彼の服役生活が始まった。

2年が経ち、アレックスは模範囚として認めてもらうべく、牧師(ゴッドフリー・クイグリー)の助手をするなど日々アピールをしていた。
そんなある日、アレックスは囚人を短期で厚生させ出所できる「ルドヴィコ療法」の存在を知り、牧師に尋ねた。

牧師は「危険な療法だから、止めろ」と忠告するが、その療法を受ければ短期で出所できると聞いたアレックスは諦めなかった。
ある日視察に訪れた内務大臣(アンソニー・シャープ)に向かって、自分を「ルドヴィコ療法」の被験者にしてくれと直訴した。

内務大臣も、罪状といい、凶暴な性格といい、うってつけの人材だと彼を実験台に選んだ。
その2週間の治療が終われば、出所できると聞き、アレックスは喜んだ。
アレックスは、医療施設へと転居し、そこで毎食後注射を打たれ、固定された椅子の上で映像を見せられた。

瞬きも出来ないように固定されたその眼に、延々と残忍な暴力シーンとレイプ映像、そして戦争の場面が映し出された。

そうするうちに、吐き気を催したアレックスは、視聴している間中、吐き気を催すようになって行った。
そんなある日、鑑賞中のBGMとしてベートベンが流れ、アレックスは思わず抗議をする。
こんな映像に、この素晴らしい音楽をかけるのは冒涜だと言うのだ。

それを聞いた、実験を提唱したブロドスキー博士(カール・ドゥーリング)は、以後わざと第九を流し続けた。するとついに、アレックスは第九を聞いても、生理的に拒絶反応を示すようになった。
2週間が過ぎ、アレックスに施された「ルドヴィコ療法」の成果を披露する場が設けられた。
政府関係者やマスコミ、そして刑務所関係者も列席する中、アレックスは壇上に立たされた。

そのアレックスに向かって舞台のそでから現れた男がケンカを売り、アレックスに暴力を振るった。アレックスが殴り返そうとすると、吐き気が襲い、暴力行為が生理的にできない体になっていた。

続いてステージには、半裸の女性が登場し、アレックスはその胸に触れようとした時、再び悪寒に襲われ吐き気をもよおし膝をついた。

暴力も性衝動も生理的に拒否反応を示す、その結果に観覧者から大きな拍手が起こった。この結果に、バーンズ看守長も喜びの笑みを浮かべた。

しかし刑務所の牧師は、これは単なる拷問で、人間性を省みない悪行だと反対の声を上げたが、その声を圧して賛辞の声が沸き起こった。
翌日アレックスは出所し、その足で両親の家へと帰ったが、息子を迎えて両親は困惑した顔を見せた。
アレックスの部屋には、ジョーという若い下宿人が住んでおり、ジョー(クライヴ・フランシス)とアレックスの両親はお互いを思いやる親密な関係にあった。

アレックスは自分の部屋が無いことに文句をいうが、ジョーは両親にしたことを考えれば当然だと彼を責めた。その言葉に怒ったアレックスが、殴りかかろうとするが吐き気を催し果たせない。
なすすべもなく、家を後にし川沿いを歩いていると、一人の老いた浮浪者に金をせびられたが、その老人は、映画冒頭でアレックス達ギャング団が暴力を振るった相手だったのだ。

それに気づいた老人は、仲間の浮浪者を呼びアレックスを袋叩きにした。
そこに警察官が来て浮浪者を追い払ったが、その警官はディムとジョージーの2人だった。

邪悪な笑みを浮かべた2人は、アレックスを町はずれに連れ出し、古い水桶に顔を突っ込み、散々に警棒で殴った。

酷いケガを負って人気のない郊外を、よろめきながら歩くアレックスは、一軒の住宅を見つけその呼び鈴を鳴らした。
それは、アレックス率いるギャング団が襲い、妻を強姦した老作家の家だった。

マッチョなジュリアンという男性に迎え入れられたアレックスは、中に入ってから、その事実に気づいた。
老作家フランクは、襲撃されたのち車椅子生活となり、妻は事件後に自殺していたが、犯行時マスクをしていたため、アレックスが犯人であると作家は気付かなかった。
しかし老作家は、アレックスが新聞で読んだ、政府の「ルドヴィコ療法」の被験者だと知り、その施術の非人間性を政府糾弾に使うため、アレックスを大々的に新聞で取り上げる計画を立てた。

アレックスを風呂に入れ、その間にフランクはシンパの反政府的言論グループに電話した。
しかし、その老作家の顔色が青ざめた。
風呂の中から、アレックスの『雨に唄えば』の高らかな声が流れてきたのだ。

その歌こそ、憎き犯人の声だと瞬時に老作家は悟った。

食事を摂りながら、新聞の取材を受けたアレックスは、その治療の苦しさ辛さを問われるままに答えた。
その様子を老作家は怒りに満ちた目で見つめる。

取材が終わろうとした時、アレックスは糸が切れたように意識を喪い、テーブルに頭を打ち付けた。ワインの中に薬が入っていたのだ。
意識を取り戻したアレックスは2階の部屋に密閉されていた。

下の階では大音量でベートーベンの第九を流し、階上でのた打ち回るアレックスの様子を、酷薄な顔で窺っていた。

ついにアレックスは、生理的な拒否反応の苦しさに耐えきれず、窓から飛び降りた。


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映画『時計仕掛けのオレンジ』予告 |
映画『時計仕掛けのオレンジ』出演者 |
アレックス(マルコム・マクダウェル)/ディム(ウォーレン・クラーク)/ジョージー(ジェームズ・マーカス)/ピート(マイケル・ターン)/老浮浪者(ポール・ファレル)/ビリー・ボーイ(リチャード・コンノート)/ミスター・フランク(パトリック・マギー)/ミセス・アレクサンダー(エイドリアン・コリ)/ウェザース:キャットレディ(ミリアム・カーリン)/保護観察官デルトイド(オーブリー・モリス)/警官トム(スティーヴン・バーコフ)/バーンズ看守長(マイケル・ベイツ)/牧師(ゴッドフリー・クイグリー)/ブロドスキー博士(カール・ドゥーリング)/女医(マッジ・ライアン)/主人公の父親(フィリップ・ストーン)/母親(シェイラ・レイナー)/下宿人ジョー(クライヴ・フランシス)/内務大臣(アンソニー・シャープ)/テーラー医師(ポーリーン・テイラー)

映画『時計仕掛けのオレンジ』高評価の映画ランキング紹介 |
AFI選定「アメリカ映画ベスト100」47位
AFI選定「スリルを感じる映画ベスト100」47位
AFI選定「アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100」悪役部門12位
雑誌エンパイア選定「史上最高の100本の映画」76位
英国映画協会(BFI)選定「映画監督が選ぶ映画べスト100」75位 他
映画を見るときの参考にして頂ければと、当ブログでは世界各国、様々な選定者の「ベスト100企画」を紹介しています。
◎『映画ベスト100』企画を紹介! 世界各国で選ばれた『映画100本』のリストを紹介!!! 映画界、映画ファン、映画評論家など、選定方法もさまざま! 日本映画も各リストでランクイン! |

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以下の文章には 映画『時計仕掛けのオレンジ』ネタバレがあります。 |
病院で意識を取り戻したアレックスの体は、全身ギプスに覆われていた。

そんな彼は、政府の「ルドヴィコ療法」の犠牲者として、世間の同情を受ける立場になっていた。
アレックスの両親も見舞いに来て、息子のために嘆き、政府を非難した。

病院では精神科の女医テーラー(ポーリーン・テイラー)は、アレックスの洗脳が解けたかどうか、その成果をテストした。
刺激的なイラストを見せられ、想起したイメージを問われたアレックスから、暴力やSEXに関する言葉がどんどん出て来た。

テーラー女医は、アレックスの洗脳が解けた姿の下品さに、皮肉な笑みを見せた。
そんなアレックスのもとを、内務大臣が見舞いに訪れた。
彼は政府の「ルドヴィコ療法」政策を推し進めた張本人として、世論で叩かれていたのだ。
それゆえ、アレックスに個室を準備し、彼を懐柔し、反政府運動を和らげようと必死だった。

大臣がアレックスに、両者が和解した所を記者たちに撮影させたいと持ち掛けると、彼はずるがしこい顔で「世論は変わりやすい」と口にし、その申し出を受け入れた。

病室に内務大臣がプレゼントした巨大なスピーカーと花が運び込まれ、そこから第九が流れ出したが、もうアレックスがえずくことは無かった。

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映画『時計仕掛けのオレンジ』結末・ラスト |
カメラを構えた記者団の前で、アレックスと内務大臣は友好的な姿を見せた。
記者のカメラが発するフラッシュの中、アレックスはSEXの妄想を思い浮かべていた。
アレックスの声が流れる。「俺は完璧に治ったね。」
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