2019年12月14日

映画『タイタニック』はどこまでホント!?史実と映画の嘘/解釈・解説・史実間違い・考察

映画『タイタニック』(解説・間違い 編)

英語題 Titanic
製作国 アメリカ
製作年 1997
上映時間 189分
監督 ジェームズ・キャメロン
脚本 ジェームズ・キャメロン


評価:★★★★    4.0点



この映画は恋愛劇である以上に、監督キャメロンの「タイタニック愛」が表出した作品だと思います。
実際、督キャメロンは「タイタニック」に取り付かれ、「タイタニック」のありとあらゆる資料や研究を読み漁り、ついには沈没したその海にまで潜るという、強い情熱を持っていたのです。
film1-Blu-sita.jpg

そんなキャメロンの事ですから、事細かに、丹念に、精緻に、タイタニックの沈没を史実に忠実に描き切りました。
film1-Blu-sita.jpg

しかし、そんなキャメロンであっても、ミスが起こるという点を、以下に書かせて頂こうと考えています。
更には、意図的に、映画のドラマを盛り上げるため、真実がないがしろにされる点もあるのです・・・・・・・
film1-Blu-sita.jpg

<目次>
映画『タイタニック』予告・出演者
映画『タイタニック』解説/映画内の間違い
映画『タイタニック』解説/映画と実話の関係

film1-Blu-sita.jpg

映画『タイタニック』予告

film1-Blu-sita.jpg
film1-Blu-sita.jpg

映画『タイタニック』出演者

ジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ)/ローズ・デウィット・ブケイター(ケイト・ウィンスレット)/ルース・デウィット・ブケイター(フランシス・フィッシャー)/キャルドン・ホックリー(ビリー・ゼイン)/101歳のローズ(グロリア・スチュアート)/マーガレット・“モリー”・ブラウン(キャシー・ベイツ)/ブロック・ロベット(ビル・パクストン)/リジー・カルバート(スージー・エイミス)/ファブリッツィオ・デ・ロッシ(ダニー・ヌッチ)/スパイサー・ラブジョイ(デビッド・ワーナー)/トーマス・アンドリュース(ヴィクター・ガーバー)


スポンサーリンク


film1-Blu-sita.jpg

映画『タイタニック』解説

映画内での間違い

まず最初に紹介する「星座」のトピックスに関しては、キャメロンの完璧主義を表して、3D版では修正するという執念を見せています。
しかし、世間の厳しい眼は、更なる間違いを作品内で見出します・・・・・・・・歴史・実話映画のツラい所でしょうねぇ。
Film2-GrenBar.png
<星座が違う>
Film2-GrenBar.png
映画の終盤、ローズが板の上で漂流するシーンで星が映し出されます。しかし、その星座は1912年当時の天上の星とは違う配置だったのです。
アメリカの天文学者ニール・デ・グラス・タイソンが指摘したもので、タイタニック号が沈没した1912年4月15日午前4時20分に大西洋上で見える星ではなかったという。そこで、キャメロン監督は同氏に送ってもらった星図を基に、3D再リリース時に星座を修正しました。

Film2-GrenBar.png
<ジャックは未来人?>
Film2-GrenBar.png
ジャックは映画内で、ウィスコンシン州チペワフォールズ近郊のウィスソータ湖で釣りをしたと語っています。
しかしその湖はタイタニックが沈没してから約6年後に出来たダム人工湖だったそうです。
<ウィスソータ湖>
それで、一説にはジャックは未来から来たタイムトラベラーだと言う説も・・・・・・

Film2-GrenBar.png
<ジャックとローズのパーティーは無かった?>
Film2-GrenBar.pngジャックが彼女の命を救った礼として、ローズと共に一等客のレストランで豪華なディナーパーティーに招待されます。
しかし現実には、厳格な規則があったため、三等客と一等客が上級のパーティーに招待されたり、上流階級と交わることは許されなかったといいます。

Film2-GrenBar.png
<ローズの絵画コレクションが凄すぎる>
Film2-GrenBar.pngローズの絵画コレクションとして、その船室に飾られたのは、ピカソ、モネ、セザンヌ、ドガなど大量のフランス印象派絵画です。もちろんこれらの絵が海に沈んだという記録はありません。
titanic_art-dogas.gif

もっとも、微妙にオリジナルとは違うようにも見えるので、現代に残る名作絵画の習作かもしれませんが・・・・・・・

Film2-GrenBar.png
<当時の女性は化粧してない?>
Film2-GrenBar.png1912年当時の上層階級の女性は、あまり化粧をしていませんでした。実を言えば、女性の化粧とはハリウッド映画の影響で世間に広がったもので、この時代に化粧をしているのは売春婦位だったという事です。
titanic_cosm.PNG
ただし、フェミニズムなど過激な発言をしたいと思った時、赤い口紅を塗ったそうですので、この映画のローズに合っているとは思いますが、全ての女性が化粧していますから時代考証ミスと言わざるを得ません。

Film2-GrenBar.png
<マードック航海士に謝罪>
Film2-GrenBar.png
映画はタイタニック号沈没の際に、制止を振り切りボートに逃げる男性客を、一等航海士マードックが射殺し、その後自らの命を絶つシーンが描かれています。(写真左:映画のマードック/右:実在のマードック)
tytanic_murdoc.png

しかし、マードックは乗客の避難を最後まで手伝って、10艘の救命ボートを海に浮かべたのち、タイタニックと共に海に沈んで行ったというのが、証拠となる電報に書かれていた事実でした。
マードックの地元、スコットランドのダンフリースでは、名誉回復を求め映画を非難する声が上がりました。そして1998年、20世紀フォックスの当時の副社長が、マードックの80歳の甥スコットを訪問し、映画『タイタニック』のマードックの描写が不正確だったと謝罪しました。

Film2-GrenBar.png
<ジャックはタイムトラベラー?その2>
Film2-GrenBar.pngジャックとローズの会話に、サンタモニカ桟橋の遊園地で「吐くまでローラコースターに乗ろう」というセリフが有ります。
titanic_coaster.gif
しかし、サンタモニカ桟橋のローラコースターが建設されたのは、1916年の事でした・・・・・・・

Film2-GrenBar.png
<ジャックはタイムトラベラー?その3>
Film2-GrenBar.pngジャックがタイタニックに乗ろうと桟橋を走るシーン、彼の背中に背負われていたリュックサック。
titanic_swedishbp.jpg
このリュックサックはスェーデン陸軍のリュックサックで, 1939年型のモデルなのでした。

Film2-GrenBar.png
<疑惑の20ドル札>
Film2-GrenBar.png映画が2時間を過ぎた頃、キャルドン・ホックリーが20ドル札をマードック航海士のポケットに入れるシーンが有ります。
titanic-20.jpg
しかし、20ドル札が発行されたのは、タイタニックが沈んだ2年後の1914年だったのです。

Film2-GrenBar.png
<自由の女神もタイムトラベル>
Film2-GrenBar.pngラストで、ローズが上陸した1912年のニューヨーク港の風景が描かれます。
しかし、そこにある自由の女神は時空を超えて、今現在と同じ姿で立っているのでした。
映画の自由の女神は全身緑色に塗られていますが、実際の塗装作業に35年かかっており、1912年当時であれば地の茶色に緑の塗装が終わっておらず半分ヌードのような姿が正しかったのです。さらに言えば、自由の女神が手に持つ松明のリングの色。映画では金色ですが、この金色になったのは建立100周年記念の1986年なのです。

Film2-GrenBar.png
<三等客室は鍵が掛けられたか?>
Film2-GrenBar.png
三等客船(最下層)の船室にいた乗客は、その扉を南京錠で閉ざされる描写が有ります。
タイタニック研究家のリチャード・ホールズは、この事実を裏付ける歴史的証拠はないと語っています。
しかし、別の研究者は疫病による隔離のため施錠されていたはずだと主張し、未だに結論を見ていません。

Film2-GrenBar.png

スポンサーリンク


film1-Blu-sita.jpg

映画『タイタニック』解説

映画にとって史実とは?

上で書いたような、史実との違いがなぜ問題になるかと言えば、この映画があまりにも純粋に、忠実に、タイタニックの沈没の真実に向き合っているからだと感じます。

それゆえ、僅かの瑕瑾ですら見逃れず、何やかやとクレームが入るのでしょう。

それは逆に言えば、研究者も含め、真剣に議論が行う事が可能なほど、この映画は精密な情報を持っている事の証左に違いありません。

しかし映画という、ドラマを通じて人々の心に感動を生もうとする「芸術形式」にとって、そこまで事実にこだわる必要があるのかとも思います。

例えば、この映画で出てくる印象深いシーンに、上で挙げたマードック一等航海士の自殺シーンが有ります。
tita_Murdoch.jpg
しかし、これはフィクションでした。

また、三等客室に施錠されている描写は、史実として検証されていないにもかかわらず、鍵を掛けられた描写が成されています。

更に挙げれば「史実・実話解説 編」で紹介した、タイタニックを保有する海運会社の社長イズメイは、悪者として劇中で描かれています。
しかし、実際は最後まで乗客を助け、たまたま生存してしまったために生涯苦しみ、一生の贖罪を科された身だったのです。(写真左:実在のイズメイ/右:映画のイズメイ)
titanical-Ismay.jpg
この映画におけるイズメイの扱いは不当だとして、当作品のアドバイザーである研究者がクレームを入れたそうです。
しかし、制作側からは「脚本は変えない。観客がそれを望んでいるからだ」と拒否されたのです・・・・・

つまり、映画をドラマとして盛り上げるためには、よりドラマチックになるように、事実を選択し改変を加えているのです。

Titanic-pos .jpg
そうであれば、ここまで細かい事実にこだわる必要が、本当にあったのかと問わざるを得ません。

結局、この映画はタイタニックの歴史的事実を、監督の個人的な執着によって、個人的な趣味で、描いた作品だというのが、私の結論です。
皆さんにお聞きしたいのですが、もしレオ様の恋愛劇が無く、この沈没の史実のみを映画いた映画を3時間に渡り見せられたとしたら、この作品がここまでヒットしたでしょうか?

この映画はタイタニックの悲劇が、そのまま運命の恋愛劇へと昇華したからこそ、観客の感情移入を促したのだと思えます。
つまりはドラマとしてはメロドラマがメインボーカルであり、タイタニックの沈没の史実は、それを支えるバックコーラスのようなものでしょう。

そんな事を考えれば、もしレオナルド・デカプリオとケイト・ウィンスレットが、眩いアイドルの輝きを発して悲劇の恋を演じなければ、たぶん世界的な大ヒットにはならなかったに違いありません。

そしてもし、「若い二人」によるヒットがなければ、その撮影時の混乱や、資金の肥大化、果ては映画会社との確執を抱えていたこの映画は、歴史上のタイタニックと同様に、映画製作史上で未曽有の大沈没を演じていた事でしょう・・・・・・・

え!?

もしかして、監督ジェームズ・キャメロンは、そこまで史実を忠実に再現しようと――




posted by ヒラヒ at 17:00| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]