原題 Citizen Kane 製作国 アメリカ 製作年 1941年 上映時間 119分 脚本 オーソン・ウェルズ 、ハーマン・J・マンキーウィッツ 撮影 グレッグ・トーランド |
評価:★★★☆ 3.5
この映画は、各国の権威あるランキングで、ベスト1に輝く古典的名作として評価が高い作品です。
映画史的に見れば、映像表現と脚本に新たなデザインを加えたことで、次世代の映画を生む原型になったと言うべきでしょう。
ここでは、その現在と過去を切り返す複雑なカットバックを、そのストーリーで追ってみようと思います。




<目次> |

映画『市民ケーン』ストーリー |

その奥深くに1人住む、新聞王のチャールス・F・ケーン(オーソン・ウェルズ)の手から、雪降る一軒家のスノードームが転がった。

そして彼は、「バラの蕾(Rose Bud)」とつぶやき、死んでいった。

生前何かと世間を騒がせていたケーンの死は、ニュース映像や新聞によって世界を駆け巡る。
ニュース映像を作るプロダクションでは、ケーンの生涯を描くドキュメンタリーの制作中だった。
しかし、そのニュースの最後、ケーンの死に際の言葉「バラの蕾」の意味を説明できずに、製作が中断されていた。
ニュース映像を作るプロデューサーは、記者トンプソン(ウィリアム・アランド)に「バラの蕾」の真実を取材しろと命じた。

トンプソンは、最初に、ケーンのアルコール依存症の妻スーザン(ドロシー・カミンゴア)に会う。

次にトンプソンは、ケーンの後見人サッチャーの銀行へと足を運び、その日記を読み始めた。

そしてケーンの子供時代が、コロラド州の貧困家庭で始まったことを知る。
1871年、ケーンの実家は小さな宿屋を営んでいたが、ある日客が宿賃がわりに鉱山の権利書を置いて行った。
しかし、その地で金鉱が発見され一家は裕福になる。そこでケーンの母親メアリー(アグネス・ムーアヘッド)、は財産管理をニューヨークのサッチャー(ジョージ・クールリス)の銀行に委託した。

またケーンの後見人もサッチャーに依頼し、教育を授けるとともに、暴力的な父親()から守ろうとした。
サッチャーと話し合う家の外では、幼いケインは雪の上をそりで遊んでいた。
しかし、ケーンはサッチャーに引き取られるのを拒み、そりで彼を殴る怒りの抵抗を見せた。

しかしサッチャーはケーンの後見人となり、彼をニューヨークへ連れて行った。
ケーン25歳の時、彼は信託基金を完全に自己管理とし、世界で6位の資産家となっていたが、ビジネスには興味がなかった。
サッチャーの反対を押し切り彼が選んだのは、新聞社の経営だった。

そしてその後、新聞・ラジオをつぎつぎ買収し、報道界の王となったケーン。
しかし1929年の大恐慌の後、ケーンは破産し新聞社の経営権をサッチャーに売却せざるを得なくなった。

手記を読み終えたトンプソンは、それでも「ばらの蕾」の意味を掴めなかった。
次にトンプソンは、ケーンのマネージャ―だったバーンスタイン(エヴェレット・スローン)にインタビューした。

バーンスタインはケ―ンと親友リーランド(ジョゼフ・コットン)が、新聞社に乗り込むところから話し始めた。
ケ―ンは新聞社の売り上げを重視し、でっち上げ記事も平気で、部数を伸ばしていった。

そのお祝いにと、狂騒的なパーティーで盛大に祝った。

そして欧州に旅行に行くと、金に任せて美術品を買い漁りもした。

帰国したケーンは、挨拶もそこそこに、新聞社の事務所を後にした。
アメリカ合衆国大統領の姪、エミリー・ノートン(ルース・ウォリック)と恋に落ちたからだった。

ケーンは、エミリーと結婚した。
続いてトンプソンは、ケーンの親友で、記者として雇われているリーランドに、老人ホームで会いインタビューした。

ケーンは最初、悪徳資本家に搾取される市民を守るため、正義感に満ちた報道をする意欲に燃えていたと彼は語った。
リーランドは、ケーンの就任時の新聞改革宣言文を譲り受け、大事に保管すると言った。

しかし、徐々にケーンはその理想から離れ、リーランドは失望していく。
ケーンとその妻エミリーの夫婦関係も、朝食でしか顔を合わせず愛は冷めていく。

そんな時、ケーンはアマチュア歌手のスーザン・アレキサンダーと出会い浮気を始めた。

時を同じくして、ケーンはニューヨーク州知事選挙に打って出て、政界への進出を目論む。
新聞37社他報道関連の一大コングロマリットのトップとなったケーンの人気と影響力は絶大で、現職のゲティス知事(レイ・コリンズ)の汚職を暴くとの公約を掲げ選挙戦で優位に立った。

そんな時、ゲティスはスーザンとケーンとの不倫関係を知り、スキャンダルを暴露されたくなければ、立候補を取り下げろとケーンに迫った。しかしケーンは応じず、スーザンとのスキャンダルが暴露されてしまう。

彼の夫婦関係と、政治的キャリアは終わりを告げた。
その様子を見ていた、友人リーランドはケーンに愛想を尽かし、シカゴ支社への転勤を希望した。

一方のケーンは妻エミリーと離婚し、スーザンと結婚した。
彼は、スーザンにオペラの才能があると言い、彼女にオペラ歌手として活動するよう強制し、自社の新聞で批評家に褒めさせた。

しかしエミリーは自らの才能の無さを自覚し、歌手活動を嫌がるようになる。
そんなエミリーに、ケーンは大きなオペラハウスをシカゴに建て、舞台に立つように強いた。

シカゴのリーランドはケーンから妻スーザンを褒めるように求められたが、従わずに酷評を書く。

ケ―ンはリーランドを解雇したものの、リーランドの否定的な記事の続きを自ら打ち、そのまま新聞を発行する。
そんなケーンに、リーランドは新聞改革宣言を送りつけ決別した。


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映画『市民ケーン』予告 |
映画『市民ケーン』出演者 |
チャールズ・フォスター・ケーン(オーソン・ウェルズ)/ジェデッドアイア・リーランド(ジョゼフ・コットン)/スーザン・アレクサンダー(ドロシー・カミンゴア)/バーンステイン(エヴェレット・スローン)/ジェームズ・W・ゲティス(レイ・コリンズ)/ウォルター・サッチャー(ジョージ・クールリス)/メアリー・ケーン(アグネス・ムーアヘッド)/レイモンド(ポール・スチュアート)/エミリー・ノートン(ルース・ウォリック)/ハーバート・カーター(アースキン・サンフォード)/トンプソン(ウィリアム・アランド)/ジム・ケーン(ハリー・シャノン)/ロールストン(フィリップ・ヴァン・ツァント)/新聞記者1(アラン・ラッド)新聞記者2(アーサー・オコンネル)

映画『市民ケーン』が高評価の映画ランキング紹介 |
そんな、「映画ベスト100」の企画を以下にご紹介します。
アメリカ映画協会(AFI)ベスト映画企画 AFI『史上最高のアメリカ映画100本』 アメリカ映画界の選んだアメリカ映画のベスト100!!! 映画の100年の100本 |
イギリスBBCのベスト映画企画 英BBC『100本の偉大なアメリカ映画』 批評家の選んだハリウッド映画のベスト100!!! 映画の歴史を作ったアメリカ映画の古典 |
英国エンパイア誌のベスト映画企画 エンパイア誌『史上最高の100本の映画』 『市民ケーン』46位、日本映画が高評価!!! エンパイア読者・映画観客が選ぶ、オール・タイム・ベスト100 |
英国映画協会(BFI)選出!『映画監督が選ぶ映画べスト100』 『映画監督が選ぶ映画べスト100』 日本映画が高評価!!! 2012年に発表、オール・タイム・ベスト100 |

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以下の文章には 映画『市民ケーン』ネタバレがあります。 |
時は現在。トンプソンは再びケーンの妻スーザンと会い、インタビューに成功する。

スーザンは彼女の失敗したオペラキャリアを思い出す。
彼女は自分の才能の無さを自覚し、それでも歌手を辞めさせてくれないケーンに苦しめられる。
そして精神的に追い詰められ自殺を試みるが、ケーンに見つかり果たせなかった。

しかしその騒動に、ついにケーンもスーザンが歌手を止めることを許す。
そしてケーンは、スーザンと二人、ザナドゥと呼ぶ世界一の豪邸に閉じこもり、日々を贅沢三昧で過ごした。しかし日増しに、そのケーンに支配された暮らしに、彼女は耐えきれなくなる。

そして、ある日スーザンは「欲しいのは愛情で、物ではない」と言い捨て、ケーンの元を去った。

次にトンプソンはケインの執事レイモンド(ポール・スチュアート)にインタビューする。

レイモンドは、スーザンが去った後のケーンの様子を語った。

そして、スノードームを見ると急に動きを止め、それを見ながら「バラの蕾」とつぶやいたと言う。

その後ケーンは宮殿の中で1人暮らし、最期の時を迎える。
彼が「バラの蕾」と言って亡くなった瞬間、手に持っていたスノードームが床に落ち、くだけ散った。

結局、記者トンプソンは「バラの蕾」の謎を解くことができなかった。
しかし、その言葉の謎は、ジグゾーパズルの一片に過ぎないと語り、宮殿を後にする。


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映画『市民ケーン』結末・ラスト |
宮殿では莫大な量の彼の遺品が次々と整理されていた。
そして焼却炉にケーンの幼少期のソリが投げ込まれた。
そこには「バラの蕾」が描かれていた。
その焼却炉の煙が屋敷の煙突から黒く立ち上る。
その門扉には「立入禁止」の札がかかっていた。
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