BBCは定期的に映画に対する深い洞察と敬意に満ちた記事を載せてくれて、一映画ファンとして心打たれるものがあります。
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今回は、英語を使っていない映画のベスト100の発表と言うことで、必然的にアメリカハリウッド映画やイギリス映画が除外されることになっています。
すると、日本人として嬉しいことに、日本映画が実に高く評価されています。
まずはBBCの、当プロジェクトを総括した文章を以下に紹介します。
『史上最高の外国語映画ベスト100』
BBCカルチャーは世界の映画のベストを決めるために、43カ国・209人の批評家に投票を求めた。
-これがそのトップ100。
2018年10月30日
3年前BBCカルチャーは、『100の最も偉大なアメリカの映画』を決めるために、最初の大々的な批評家の投票を実行した。さらに2つの評論家調査によって、『21世紀の最高の映画』と『史上最高の喜劇』を見出そうと挑戦したーそしてそれはいずれもアメリカの映画が1位を獲得した。
今年は、ハリウッドから遠く離れた、全世界の最高の映画にスポットライトを当て祝う時だと我々は感じた。私たちは、批評家達に、特に英語以外の言語で作られた好きな映画に投票するように依頼した。その結果、BBCカルチャーは100の偉大な外国語映画の結果を手にした。
映画の卓越した多様性と豊かさに敬意を表して、英語圏以外の評論家に多く声を掛け、諸言語の文化的な背景を持つ世界中の映画評論家に依頼し、参加した209人の批評家は43カ国に渡り、合計41の言語を話す。
その結果、100本の映画は24カ国、67人の監督、19の言語で製作されている。フランス語は映画の国際言語であると主張できる。27本の高い評価を得た映画がフランス語だったからだ。続く12本が中国語で、11本がイタリア語と日本語で作製されていた。更に最小を見れば、ベラルーシ語(『Come and See』)、ルーマニア語(『4 Months, 3 Weeks and 2 Days』)、(セネガルの)ウォロフ(『Touki Bouki』)のように、いくつかの言語では1本の映画だけが選ばれた。
最終的なリストで残念な点は、女性監督または共同監督の映画が少なかったことだった。それは100本のうち4本のみだった。しかし我々は男性評論家と同じくらい多くの女性評論家に連絡した。回答した評論家のうち94人(45%)は女性だった。
統計としては、日本映画(11)、中国(6)、台湾(4)、香港(3)、韓国(1)の25本の東アジアの映画で4分の1を占めた。また、日本を代表する黒澤明監督の『7人の侍』は、どの国の批評家にも愛された――ただ日本を除いて。投票した日本の6人の批評家は、黒澤氏の映画には1票も投じなかった。
しかし、文化は国境に縛られず、そして言語が素晴らしい映画作品を楽しむ上での障害となり得ないのは明瞭である。それぞれの民族の映画は必然的に独自のアイデンティティーと歴史に結びついているが、映画の言語は普遍的なのだ。(後略)
以上、大幅に意訳してます。原文はこちら⇒「The 100 greatest foreign-language films」
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英BBC『史上最高の外国語映画ベスト100』リスト |
という事で、いよいよベスト100をご紹介!
当ブログで記事にした映画にはリンクが貼ってありますので、良かったらお読みください。
映画リストに合わせてBGMに『シェルブールの雨傘』はいかが?
100. 霧の中の風景(テオ・アンゲロプロス, 1988年)
99. 灰とダイヤモンド (アンジェイ・ワイダ, 1958年)
98. 太陽の少年 (チアン・ウェン, 1994年)
97. 桜桃の味 (アッバス・キアロスタミ, 1997年)
96. ショア (クロード・ランズマン, 1985年)
95. 浮雲 (成瀬 巳喜男, 1955年)
94. 友だちのうちはどこ? (アッバス・キアロスタミ, 1987年)
93. 紅夢 (チャン・イーモウ, 1991年)
92. ある結婚の風景 (イングマール・ベルイマン, 1973年)
91. 男の争い (ジュールズ・ダッシン, 1955年)
90. 二十四時間の情事 (アラン・レネ, 1959年)
89. 野いちご (イングマール・ベルイマン, 1957年)
88. 残菊物語 (溝口 健二, 1939年)
87. カビリアの夜 (フェデリコ・フェリーニ, 1957年)
86. ラ・ジュテ ( クリス・マルケル, 1962年)
85. ウンベルト・D (ヴィットリオ・デ・シーカ, 1952年)
84. ブルジョワジーの秘かな愉しみ (ルイス・ブニュエル, 1972年)
83. 道(フェデリコ・フェリーニ, 1954年)
82. アメリ (ジャン=ピエール・ジュネ, 2001年)
81. セリーヌとジュリーは舟でゆく (ジャック・リヴェット, 1974年)
80. 忘れられた人々 (ルイス・ブニュエル, 1950年)
79. 乱 (黒澤明, 1985年)
78. グリーン・デスティニー (アン・リー, 2000年)
77. 暗殺の森 (ベルナルド・ベルトルッチ, 1970年)
76. 天国の口、終りの楽園。(アルフォンソ・キュアロン, 2001年)
75. 昼顔 (ルイス・ブニュエル, 1967年)
74. 気狂いピエロ (ジャン=リュック・ゴダール, 1965年)
73. これがロシヤだ (ジガ・ヴェルトフ, 1929年)
72. 生きる (黒澤明, 1952年)
71. ブエノスアイレス (ウォン・カーウァイ, 1997年)
70. 太陽はひとりぼっち (ミケランジェロ・アントニオーニ, 1962年)
69. 愛、アムール(ミヒャエル・ハネケ, 2012年)
68. 雨月物語 (溝口 健二, 1953年)
67. 皆殺しの天使 (ルイス・ブニュエル, 1962年)
66. 不安は魂を食いつくす (ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー, 1973年)
65. 奇跡 (カール・テオドア・ドライヤー, 1955年)
64. トリコロール/青の愛 (クシシュトフ・キェシロフスキ, 1993年)
63. 田舎町の春 (フェイ・ムー, 1948年)
62.Touki Bouki (ジブリル・ジオップ・マンベティ, 1973年)
61. 山椒大夫(溝口 健二, 1954年)
60. 軽蔑 (ジャン=リュック・ゴダール, 1963年)
59. 炎628 (エレム・クリモフ, 1985年)
58.たそがれの女心 (マックス・オフュルス, 1953年)
57. ソラリス(アンドレイ・タルコフスキー, 1972年)
56. 恋する惑星(ウォン・カーウァイ,1994年)
55. 突然炎のごとく(フランソワ・トリュフォー,1962年)
54. 恋人たちの食卓 (アン・リー, 1994)
53. 晩春 (小津安二郎, 1949年)
52. バルタザールどこへ行く (ロベール・ブレッソン, 1966年)
51. シェルブールの雨傘 (ジャック・ドゥミ, 1964年)
50. アタラント号 (ジャン・ヴィゴ, 1934年)
49. ストーカー (アンドレイ・タルコフスキー, 1979年)
48. ビリディアナ (ルイス・ブニュエル, 1961年)
47. 4ヶ月、3週と2日 (クリスティアン・ムンジウ, 2007年)
46. 天井桟敷の人々 (マルセル・カルネ, 1945年)
45. 情事 (ミケランジェロ・アントニオーニ, 1960年)
44. 5時から7時までのクレオ (アニエス・ヴァルダ, 1962年)
43. 美しき仕事 (クレール・ドニ, 1999年)
42. シティ・オブ・ゴッド (フェルナンド・メイレレス/カチア・ルンヂ, 2002年)
41. 活きる (チャン・イーモウ, 1994年)
40. アンドレイ・ルブリョフ (アンドレイ・タルコフスキー, 1966年)
39. クローズ・アップ (アッバス・キアロスタミ, 1990年)
38. クー嶺街少年殺人事件 (エドワード・ヤン, 1991年)
37. 千と千尋の神隠し (宮崎駿,2001年)
36. 大いなる幻影 (ジャン・ルノワール, 1937年)
35. 山猫 (ルキノ・ヴィスコンティ, 1963年)
34.ベルリン・天使の詩 (ヴィム・ヴェンダース, 1987年)
33. プレイタイム (ジャック・タチ,1967年)
32. オール・アバウト・マイ・マザー (ペドロ・アルモドバル, 1999年)
31. 善き人のためのソナタ(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク, 2006年)
30. 第七の封印 (イングマール・ベルイマン, 1957年)
29. オールド・ボーイ (パク・チャヌク, 2003年)
28. ファニーとアレクサンデル (イングマール・ベルイマン, 1982年)
27. ミツバチのささやき (ビクトル・エリセ, 1973年)
26. シネマパラダイス (ジュゼッペ・トルナトーレ, 1988年)
25.ヤンヤン 夏の想い出 (エドワード・ヤン, 2000年)
24. 戦艦ポチョムキン (セルゲイ・エイゼンシュテイン, 1925年)
23. 裁かるるジャンヌ (カール・テオドア・ドライヤー, 1928年)
22. パンズ・ラビリンス(ギレルモ・デル・トロ, 2006年)
21. 別離 (アスガル・ファルハーディー, 2011年)
20. 鏡 (アンドレイ・タルコフスキー, 1974年)
19. アルジェの戦い ( ジッロ・ポンテコルヴォ, 1966年)
18. 悲情城市 (ホウ・シャオシェン, 1989年)
17. アギーレ/神の怒り (ヴェルナー・ヘルツォーク, 1972年)
16. メトロポリス (フリッツ・ラング,1927年)
15. 大地のうた ( サタジット・レイ, 1955年)
14. ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン (シャンタル・アケルマン, 1975年)
13. M (フリッツ・ラング, 1931年)
12. 覇王別妃 (チェン・カイコ―, 1993年)
11. 勝手にしやがれ ( ジャン=リュック・ゴダール,1960年)
10. 甘い生活 (フェデリコ・フェリーニ, 1960)
9. 花様年華 (ウォン・カーウァイ, 2000年)
8. 大人は判ってくれない (フランソワ・トリュフォー, 1959年)
7. 8 1/2 (フェデリコ・フェリーニ, 1963年)
6. ペルソナ (イングマール・ベルイマン, 1966年)
5. ゲームの規則 (ジャン・ルノワール, 1939年)
4. 羅生門 (黒澤明, 1950年)
3. 東京物語 (小津安二郎, 1953年)
2. 自転車泥棒(ヴィットーリオ・デ・シーカ,1948年)
1. 7人の侍(黒澤明,1954年)
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英BBC『史上最高の外国語映画ベスト100』リストの感想 |
個人的には古い映画も見る努力をしている積りですが、正直言えばリスト全体の4割位しか見ていません。
その4割の印象で語れば、実に面白くない映画が並んだという・・・・・
しかし、評論家というのは・・・・・・・・
このリストを見る限り、楽しいや、爽快、嬉しいという人間にとっての幸福を意味する価値観は、悲劇や哲学的問題に劣ると言われているような気がしてきます。
それは人間にとっては、天国より地獄の方が、より切実だということでしょうか?
それとも、非英語圏の大多数を占める第三世界においては、未だに日々地獄にあるという事実を、このリストは示しているのかもしれません・・・・・・
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ラベル:ベスト100
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