2019年01月03日

映画『タイタニック』オタク的情熱の表現力/感想・評価・解説・アカデミー受賞式風景

映画『タイタニック』(感想・評価 編)

英語題 Titanic
製作国 アメリカ
製作年 1997
上映時間 189分
監督 ジェームズ・キャメロン
脚本 ジェームズ・キャメロン


評価:★★★★    4.0点



大作恋愛映画と世間で認められているこの作品は、しかしシンプルな恋愛劇以上にクダクダしいディティールに、その時間を取られているように感じられます。

そんな疑問を抱きつつ見ていくうちに、この映画で若い二人の恋愛劇を描くのはオマケみたいなものではないかと思いだしました。

この映画は恋愛劇であるには違いありませんが、実は監督キャメロンの「タイタニック愛」を謳ったものだったと、今は信じています。

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<目次>
映画『タイタニック』予告・出演者
映画『タイタニック』感想
映画『タイタニック』解説
映画『タイタニック』オスカー受賞式
映画『タイタニック』デカプリオのオスカー事件

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映画『タイタニック』予告

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映画『タイタニック』出演者

ジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ)/ローズ・デウィット・ブケイター(ケイト・ウィンスレット)/キャルドン・ホックリー(ビリー・ゼイン)/101歳のローズ(グロリア・スチュアート)/マーガレット・“モリー”・ブラウン(キャシー・ベイツ)/ブロック・ロベット(ビル・パクストン)/リジー・カルバート(スージー・エイミス)/ファブリッツィオ・デ・ロッシ(ダニー・ヌッチ)/スパイサー・ラブジョイ(デビッド・ワーナー)/トーマス・アンドリュース(ヴィクター・ガーバー)


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映画『タイタニック』感想


この映画は下の<ストーリー編>で、物語をまとめてみて気が付いたのですが、実にシンプルなストリーであることに驚きました。

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ザッと言えば「イギリスの落ちぶれた貴族の娘と、アメリカの売れない青年画家が船で出会い、望まぬ結婚を強いられている娘は青年と恋に落ちるが、船が沈み悲劇がおとずれるものの、貴族の娘は強く生きて行く」というのがあらすじです。

ホントこれだけの話を、3時間かける必要があるでしょうか?
イイエ、ありません。

けっきょく、この映画にとってストーリーは付け足しに過ぎないのだと感じます。

それは、レオナルド・デカプリオとケイト・ウィンスレットの若い二人の恋愛ドラマも同様に見えます。
確かに2人は、まさに旬というアイドル的な輝きをその身にまとってはいます。
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レオナルド・デカプリオのアイドル性を堪能するなら、この映画『タイタニック』こそベストだと思います。

しかし、デカプリオ自身はアイドルに飽き足らず、その後本格俳優を目指して突き進みます。
そんな反アイドル宣言をするため、こともあろうにケイト・ウィンスレットを相手役に凄まじいカップルの痴話げんかを演じる映画に出演しています。
関連レビュー:タイタニックカップル復活映画
『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』
ケイト・ウィンスレットとレオナルド・デカプリオの壮絶バトル
1950年代のフェミニズムとアメリカンドリームの行方


それはともかく、この『タイタニック』に話を戻せば、恋愛物語に上手く感情移入できない性分の私にとっては、2人の恋もメインの主題を上手く説明するための、材料に過ぎないのだと感じます。

それではこの映画の主題、この映画のもっとも伝えたかった内容とは何だったでしょう・・・・・

私は、ジェームス・キャメロンにとって大事だったのは、タイタニックとその沈没の再現にあったのだと信じています。

じつを言えばこの意見は、この映画のジェームズ・キャメロンを追ったドキュメント本『タイタニック―ジェームズ・キャメロンの世界』(右写真)を読むことで、更に確信を強くしました。
その本の中で、海洋マニアで知られるキャメロン監督が、深海に沈んだタイタニック号に取り付かれ、実際の沈没状況を潜行し確認する様子や、従来から彼がタイタニックの文献を買いあさっていて、船内の様子を手に取るように知っていた事実が語られています。

更にその沈没の様子を、史実を可能な限り忠実に再現しようとする執念も、その本には克明に記されています。
その執着は、周囲とも摩擦を引き起こさずにはいません。
当初は1億ドルだった予算は、超過に超過を重ね、ついには2倍に当たる2億ドルに及ぶ資金を投入する自体となります。
更に138日の予定の撮影スケジュールは160日に伸び、その間にさまざまなトラブルが続き、ついにはスタッフの食事に毒が投入されるという、前代未聞の不穏な現場となります。
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その最中に在ってキャメロンは映画会社の重役とケンカし、巨大なセットに振り回され、ついには監督料800万ドルを返上してですら、そのタイタニックの沈没を描ききらねば死ねないという鬼気迫る情念を感じます。

その本を読むにつけ、この映画の主題は、タイタニック号という船への「キャメンロンのオタク愛」の表明にあったのだと思えてなりません。

そのオタク的「タイタニック愛」を表現するために、沈没のあらゆるシーン、一等船室から、船底まで、描ききるため、若い二人の恋愛ドラマが必要とされたにすぎないと感じます。

だからこそ、この二人の恋と関係のない沈没のディティールが作品の大半を占める理由だと納得したのです。
そんな監督の個人的な「タイタニック趣味」を、映画会社を敵に回して、スタッフにそっぽを向かれながらも、力技で沈めきった、その腕力に感動しました。

正直言って、職業的映画監督として破綻していると言わざるを得ません。
しかし、創造者としては「あっぱれ」と褒めたい気持ちを抑えられません。

なぜなら、もしこの映画が低評価で、十分な収益を上げていなかったならば、ジェームスキャメロンという映画作家は間違いなくこの世界から抹殺されたに違いありません。

そんなリスクを背負いながら、「男=オタク」の夢を賭け、映画という姿で現実のものにした、その情熱こそ「モノづくりの原点」であると感じ心打たれたというお話です。
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映画『タイタニック』評価


正直に言えば、ストーリーが必要としている以上に、タイタニックに関わる無駄な表現や、いつになったら沈むのというぐらい冗長な沈没シーンに、意識が遠く成りかけたと告白しなければなりません。

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実際のところ封切前には、批評家の評価は高くなく、公開前は歴史に残る大コケ映画になると辛辣な評価が下されていたのです。

しかし、一般の観客の絶大な支持を受けて歴代最高の興行収益を上げたがゆえに、1997年12月の封切りから3カ月後のアカデミー賞の頃には、後追いで評価が高くなっていったようです。
個人的には、この映画で語られているのが、ジェームズ・キャメロンの趣味嗜好に基づく「オタク的タイタニック愛」だと気付いた時に、この長さとは監督の「愛の深さ」に比例しているのだと知り、その情熱の過剰さに射すくめられ、オタク愛の昇華の物量の凄まじさに心打たれ、そのボリュームの規格外の巨大さに圧倒され、この評価としました。

映画としての技術的な拙劣さを超えて、この映画はその情熱によって、「古典作品」となる骨格を持っているように思います。
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映画『タイタニック』解説

アカデミー受賞式とその他受賞歴

第70回アカデミー賞(1998年開催)/作品賞、監督賞、撮影賞、主題歌賞、音楽賞、衣裳デザイン賞、視覚効果賞、音響効果賞、音響賞、編集賞の11部門で栄冠に輝いた。

第70回アカデミー賞・監督賞スピーチ

プレゼンターはウォーレン・ベイティ
ノミネート者を紹介。
ピーター・カッタネオ(フル・モンティ)/ガス・バン・サント(グッド・ウィル・ハンティング旅立ち)/カーティス・ハンソン(L.A.コンフィデンシャル)/アトム・エゴヤン(スウィート ヒアアフター)/ジェームズ・キャメロン(タイタニック)

受賞者はジェームス・キャメロン(タイタニック)
【受賞スピーチ・意訳】
みんなの事は分からないが、俺には最高の瞬間だ。この舞台に立った全ての監督は俳優に感謝する。そして俺もスゴイ俳優陣を持った。彼らは俺のために飛び降りた。ケイト、グロリア、レオ、キャシー、フランシス・アンド・ビリー、ビル、スージー、ルイス、そして他の約80人の皆んな、君らは毎日私に純金を渡してくれた。そして俺はこの金(オスカー像)を皆と分かち合う。オスカーにノミネートし、獲得させてくれた他のみんなに感謝する。特に友であるプロデューサーRae SanchiniとJon Landauに。(以下家族の名前を挙げ感謝)皆に俺の今どう感じているか伝えるのは無理だ。心臓が破裂しそうだ。言うとしたら”俺は世界の王だ!”

第70回アカデミー賞・作品賞スピーチ

プレゼンターはショーン・コネリー
ノミネート作品を紹介。
恋愛小説家/フル・モンティ/グッド・ウィル・ハンティング旅立ち/L.A.コンフィデンシャル/タイタニック

受賞作はタイタニック
【受賞スピーチ・意訳】
ジョン・ランドー:今日朝起きて、今日が終わって欲しいと思った。今は時が止まって欲しい。私は演技も作曲も特殊効果も出来ないのに、なぜプロデューサーなんだろう。でも、私は、ジムと私自身が感謝すべき多くの人を持っている。私は今晩ここにいる候補者全て、そしてすでに感謝を述べた人々、驚異的な俳優達に、再び感謝したい。あなた達なしではここにいなかった。(以下、関係者、家族の名前を上げ感謝)我々は、偉大な脚本を書いた素晴らしい脚本家、ジム(ジェームス)・キャメロンがいなければ、ここにいない。

ジェームス・キャメロン:俺はジョン(プロデューサー)が何度も「輝く」のを見た。彼は皆と全てに感謝し、全て言ってくれた。そして俺の眼には、まだ最後の風車が回るのが見える。それで、俺はいくつかの事を言いたい。俺たちは今夜ここに映画の魔法を祝うために居る。そして俺は、魔法の一部となって、そしてその実践者だった全ての日に感謝している。俺はそれを愛している。そして今夜、我々は盛大な祝賀を経験している。そして、この映画が世界中で観客の心を開かせた出来事は、”タイタニック”に起きた不思議な波としか言いようがないと思う。それには、この映画に関わった者すべてが感謝し、そしてこれからも永遠に彼ら観客に感謝し続ける。俺は多くの人々が家で見ているのを知っている。
強い陶酔感の真っ只中にあって、この幸福感と成功をもたらしたのが、現実に多数の死者を出した、1912年に世界に衝撃を与えた実際の事件に基づく映画であることを思い巡らすのは容易ではない。それで俺は、ここで皆から数秒の時間を頂きたい。偉大な船と共に死んだ1500人の男女や子供に対して数秒の黙とうを捧げたい。”タイタニック”のメッセージはもちろん、偉大な船でさえ沈むのであれば、想定外の事態が起こる可能性があるということで、未来は未知で、我々が真に保持しているのは今日だけだ。尊い命。だから、この数秒の間に俺は皆が世界で最も貴重な自分自身の心臓の鼓動に耳を傾けてほしい。”タイタニック”のための数秒の黙とうに、どうか俺と共に加わって欲しい。心より感謝します。それでは、私はギル・ケイツ(アカデミー授与式プロデューサー)が(長すぎるのを)我慢していると確信している。大丈夫、あなたは本当に、あらゆる手を使って今夜を記憶に残るよう作り上げた。じゃあ、夜明けまでパーティーに行こう。


その他受賞歴


第55回 ゴールデングローブ賞(1998年開催)/最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀作曲賞、最優秀主題歌賞
第23回 LA批評家協会賞(1997年開催)/美術賞
ピープルズ・チョイス・アワード(1999年開催)/ 映画賞
全米製作者組合賞(1999年開催)/劇場映画賞
日本アカデミー賞(1999年開催)/最優秀外国作品賞
もっとも、このアカデミー賞授賞式では『タイタニック』を巡り、一つの事件が起こりました。

私は勝手に

レオ様欠席事件

と呼んでいますが・・・・・・
事件の詳細は下の記事でどうぞ。
関連レビュー:デカプリオのオスカーへの執念
『レヴェナント:蘇えりし者』
レオ様の「タイタニック・オスカー欠席事件」からの道のり
アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督

アカデミー賞に興味がある方は、よろしければこちらもどうぞ。
関連レビュー:オスカー受賞一覧
『アカデミー賞・歴代受賞年表』
栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞
授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。
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posted by ヒラヒ at 16:55| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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