原題 50 First Dates 製作国 アメリカ 製作年 2004 上映時間 99分 監督 ピーター・シーガル 脚本 ジョージ・ウィング |
評価:★★★☆ 3.5点
明るいラブ・コメ調でありながら、古典的な物語を持つ恋愛映画だと感じました。
ヒロイン・ルーシーは記憶が一日しか持たない難病を患い、そんな過酷な運命に打ち勝って2人は恋を成就させるかというのが、ザックリしたストリーです。
ここにはクラッシックな恋愛映画が語って来た「運命の恋」を新たなデザインで表現し、ハリウッド的な結末で見る者を裏切らない、良質なラブ・ストリーになっていると感じました。

<目次> |

映画『50回目のファースト・キス』簡単あらすじ |
ハワイの水族館に勤める獣医、ヘンリー・ロス(アダム・サンドラー)は、ルーシー(ドリュー・バリモア)と出会い一目惚れし、互いに好印象を持ち翌日の再会を約束した。しかし翌日ルーシーはヘンリーをまったく覚えていず、ヘンリーは混乱する。実はルーシーは1年前の交通事故で、一晩寝ると前日起きたことを忘れてしまう障害を得ていた。ルーシーの家族、父マーリン(ブレイク・クラーク)弟ダグ(ショーン・アスティン)はルーシーを心配する家族は、ヘンリーとの交際に反対した。真剣なヘンリーの態度に打たれ、家族も応援を始める。そして、毎日ルーシーへ恋のアプローチ続けるヘンリーの恋の行方は・・・・・・・


映画『50回目のファースト・キス』予告 |
映画『50回目のファースト・キス』出演者 |
ヘンリー・ロス(アダム・サンドラー)/ルーシー・ホイットモア(ドリュー・バリモア)/マーリン・ホイットモア(ブレイク・クラーク)/ダグ・ホイットモア(ショーン・アスティン)/ウーラ(ロブ・シュナイダー)/スー(エイミー・ヒル)/ニック(ポマイカイ・ブラウン)/キーツ医師(ダン・エイクロイド)

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映画『50回目のファースト・キス』感想・解説 |
ですから、好意を持つ者がなぜその恋愛対象と完璧な相思相愛=「欲望充足」に至らないかの原因がそこにはあるはずです。
例えば、ハリウッドの古典的な恋愛映画では「身分違い」「親の反対」「事故」「戦争」「死」なんて言う、自らの意志ではなく「大きな運命」に翻弄されて、上手く恋愛が成就しないという理由づけがあります。
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時代が下り、人々が自由恋愛を繰り広げるようになると、恋愛のゴールとしての「幸福な結婚」というハッピーエンドが怪しくなってきます。
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そんな「結婚制度」に対する信頼の喪失ゆえに、現代に近ずき個人の自由が広がるにつれ「お金」「浮気」「理想」なんて言う「恋愛」のさまざまな価値観が「恋愛劇」の前面に出てきます。
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そんな恋愛劇に対する不信感は、イギリス映画でも同様です・・・・・
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そんなこんなで、恋愛ドラマも時代と共に変化してきているのを実感しますが・・・・・・
しかし、いかに変化しようとも、「恋愛の成就」を期待する観客の純情を、こんな原因があったらどんなに好きでもうまく行かないよねぇ〜、ど〜なっちゃうんだろ〜とハラハラドキドキさせられれば勝ったも同然です。
見る者は、恋人達の恋の行方に、我が事のように一喜一憂する事でしょう。

結局「恋愛映画」のキモは、恋愛がうまくいかない理由に説得力を持たせることだと言えるのではないでしょうか。
さて、この映画のキモ=「恋愛阻害要因」は「病気」です。
これは実は、ハリウッド伝統の「大きな運命」の範疇に入る「古典的要因」ではあります。
ハリウッド『ある愛の歌』や、日本で言えば『世界の中心で愛をさけぶ』『余命1ヶ月の花嫁』なんて、「不治の病」という運命で引き裂かれるカップルなんて言うのは、王道中の王道ですね。
これで泣かないようでは、人でなしとまで言われてしまいます。
で、この映画の恋愛阻害要因も「病気」ですが・・・・・・・・
でもここで語られる病気は、過去の「不治の病」系の病気とはちょっと違うユニークな点を持つものです。

実は、ある日を境にして短期記憶が長期記憶に書き込めなくなってしまうという、「リカバリー症候群」とでも名付けたい精神疾患、記憶障害を持つ彼女との恋というお話です。
つまり、ある日に出会ってお互いひかれ合ったとしても、彼女は記憶が一日しか保持できず、翌日にはキレイサッパリ彼の事を忘れてしまい、また最初から関係を作り直さなければならなくなるのです。
この「病気」のユニークなのは、従来の「病気ネタ」は=「死による恋愛消滅」に結びついていて、すべからく死んじゃったから恋愛がうまくいかなかったというストーリだったものを、「死なない」「でも恋愛にならない」という「ライトな病気」を持ってきた所です。
この設定はなるほど、深刻にならずに、恋愛の不成就を納得させる、ラブコメ設定にピッタリの「理由」で、よく考えたものだと感心しました。何せ、好きな二人の恋愛を邪魔するためには、普通であれば阻害要因として「親」「恋敵」「社会的反対」「事件・事故」なんて大掛かりな道具立てが必要な所です。
でも、この「病気」であれば、翌日起きれば恋が消滅しているのですから「永遠の恋愛物語」を作れることになります。
そしてまた、この「恋愛阻害要因」にメゲズに、彼女にアプローチする事によって男性側の純愛を際立たせるお話になっていると思います。
そういう意味では二人の運命に対して、古典的な恋愛ストリーが持つ同情や、その先の恋の行方に対する感動もあります。
ハリウッド「ロマンチックコメディー」としての標準は、十二分にクリア―しているのは間違いないでしょう。
素直に「2人の恋がどうなるかハラハラしたけど、この結末で感動した」と思えば★5でもおかしくない作品です。
そんなラブストーリーの新デザインを持つこの作品は、日本映画として2018年リメイク公開されました。
<リメイク映画『50回目のファーストキス』予告>

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映画『50回目のファースト・キス』考察実在の記憶障害事例 |
そんな事例を「dailymail」の伝える記事で紹介させていただきます。
![]() 病気で記憶を奪われた若い女性は、夫と離婚したことを思い出し毎日泣きます。 ・ロシアのカザン出身のベロニカ・メシャリカコバさん(29歳)は、記憶喪失に苦しんでいます。 ・彼女の短期記憶の問題は、変性疾患のポルフィリン症によって引き起こされました。 ・彼女は11月に離婚を申請した夫との記憶を失っています。 ・毎日、彼が仕事から帰ってこない時、彼女に彼が去ったと言わねばなりません。 ロシアのカザン出身のベロニカ・メシェリヤコワさん(29歳)は、 ポルフィリン症と呼ばれる変性疾患に苦しんでおり、短期記憶に影響を及ぼしています。 彼女は昨年11月に夫が彼女と離婚していた記憶がなく、彼が仕事から帰ってこないと毎日告げられなければならない。 ![]() 衝撃:ヴェロニカ・メシェリヤコワ(29歳)は、夫が彼女を去ったと言われると泣きます-彼女は病気と短期記憶喪失のために毎日忘れているという。 ![]() 悲痛な事実:メシェリヤコワさんは、夫が仕事に行ったばかりだと思っているので、夫が彼女と離婚したことを毎日思い出させる必要がある。 夫婦は病気になる前に結婚し、明らかにされていない理由で昨年離婚した。 メシェリヤコワさんの夫は2017年11月に離婚を申請しましたが、彼女はこれについての記憶が無い。 夫が仕事をしていると思っており、毎日、夜帰宅しないと、母親は離婚について改めて話さねばならず、取り乱した状態が続いている。 地元のニュース報道によると、彼が彼女から去ったことを再度言わなければならず、彼女は泣いていると伝えている。 ![]() 彼女の病気の結果として、メシェリヤコワさんは歩く能力を失った。 数年前の彼女のポルフィリン症の症状を緩和する手術も、彼女を好転させられなかった。 メシェリヤコワさんの母親は、理学療法中に彼女を介助しており、彼女が再び歩くことを学び、いつの日か彼女の元夫と再会することを望んでいる。 ポルフィリン症は、赤血球の機能を助けるために使用されるポルフィリンと呼ばれる有機化合物を、体内で分解できないための一群の障害。 ポルフィリンは必須要素だが、濃度が高すぎると、神経系や皮膚の正常な動作を阻害する。 急性間欠性ポルフィリン症の症状には、腹部、脚、筋肉、幻覚、方向感覚喪失、呼吸障害、発作、動悸などが引き起こされる。 (Daily Mail on line 2018年3月8日より引用和訳:http://www.dailymail.co.uk/news/article-5476685/Young-woman-robbed-memory-illness-cries-day.html) |
余談になりますが、このポルフィリン症は古くからある病気で「吸血鬼=ヴァンパイア」伝説の原因となったとする説もあります。
関連レビュー:バンパイア伝説とポルフィリン症の関係 映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』 映画史に残る、ホラー映画の名作!! バンパイア伝説の起源 |

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映画『50回目のファースト・キス』評価 |
上で★5でもおかしくないと言いつつ・・・・・・私のこの映画の評価は、★3.5点なんですけど・・・・・・
ちょっと説明させて下さい(汗)。
私のマイナスの理由は、単純にこの「恋愛阻害要因」=「1日分の短期記憶が長期記憶に書き込めずに、目覚めると前日の事を忘れる」という設定が、このラブコメに使うにはもったいない位の「素材=アイデア」だという1点にあります。

実際この映画に描かれたような病気、短期記憶の「記憶障害」も実例があるようです。
そんな、実在例の実際が、この映画に見られる程度に日常生活が可能なものなのかは、正直なところ存じません。
しかし実在の病気だとしたら、すべての病気がそうであるように苦悩や悲劇があるべきでしょうし、それが見えればこの語り口にはマッチしないようにも思います。
それゆえこの「ラブコメ調」の映画、楽天的な映画に使うには、どこかこの「病気」の納まりが悪い気がします・・・・・
さらには、この「1日分の短期記憶が長期記憶に書き込めずに、目覚めると前日の事を忘れるヒロインとの恋」が、哲学的な重い問いを発している事を、観客は無意識のうちに感じて違和感持ちはしないかと思うのです。
すなわち「恋愛における必然」とか「運命とはなんぞや」とか「人と人が惹きあう事」や「愛がユニークなものか、継続の上で成立するか」なんていう、「恋や愛」に関する根本的な「哲学的恋愛観」をこの設定が、発しちゃってるように思います。
また、同様にちょっとヒネって「恋愛が持つ狩猟性」だとか「永遠のバージニティ」なんていう「恋愛と官能」に関する刺激的なシチュエーションも暗示してくれてもいます。

この映画の雰囲気に合うのは「魔法にかかって、1日たつと忘れてしまうヒロイン」という、ファンタジー設定だろうと思います。
そこに、変に現実感と「深い問題をはらんだアイデア」を持ち込んでしまえば、見る方が混乱してしまうのではないでしょうか。
やはり、「語るもの=ラブコメ」と「語られるもの=病気と恋愛」の関係で、ちょっとバランスが悪いと思えたのでした。
あ〜もったいないと、個人的には感じられて・・・・・・・・この評価です。
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