原題 All the President's Men 製作国 アメリカ 製作年 1976 上映時間 139分 監督 アラン・J・パクラ 脚本 ウィリアム・ゴールドマン |
評価:★★★ 3.0点
この映画で語られるのは、ニクソン大統領にトドメを刺した「ウォーターゲート事件」です。
新聞社ワシントン・ポストの二人の記者が、命の危険も顧みず追い続けた事件の、実際の所を調べてみると、記者だけではなくFBIやCIAそして司法関係者も、アメリカの最高権力者に対し戦った姿が見えてきました。
そんな事件のあらましと映画の登場人物の、実在モデルを紹介したいと思います。
<目次> |
映画『大統領の陰謀』予告 |
映画『大統領の陰謀』出演者 |
カール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)、ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)、ハリー・ローゼンフェルド(ジャック・ウォーデン)、ハワード・シモンズ(マーティン・バルサム)、ベン・ブラッドリー(ジェイソン・ロバーズ)、ディープ・スロート(ハル・ホルブルック)、ジュディ・ホバック(ジェーン・アレクサンダー)、ダーディス(ネッド・ビーティ)、ヒュー・スローン(スティーヴン・コリンズ)、ケイ・エディ(リンゼイ・クローズ)、ポール・リーパー(F・マーリー・エイブラハム)、ヒュー・スローンの弁護士(ジェームズ・カレン)
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「ウォーターゲート事件」概要 |
ウォーターゲート事件(Watergate scandal )とは、1972年6月17日にワシントンD.C.の民主党本部で起きた盗聴侵入事件に始まったアメリカの政治スキャンダル。 1974年8月9日にリチャード・ニクソン大統領が辞任するまでの盗聴、侵入、裁判、もみ消し、司法妨害、証拠隠滅、事件報道、上院特別調査委員会、録音テープ、特別検察官解任、大統領弾劾発議、大統領辞任のすべての経過を総称して「ウォーターゲート事件」という(wikipediaより) 事件以前に、1971年に国防総省秘密文書(ペンタゴン・ペーパーズ)がニューヨーク・タイムズ他各社に掲載され、ニクソン大統領は政府からの情報漏洩を防止する目的で、別名「鉛管工(plumber unit)」と呼ぶ特別調査チームを作り、ベトナム戦争反戦運動活動家や報道関係者、更にはホワイトハウス職員、そして民主党員とその監視の対象を広げていき、そのチームの指揮をゴードン・リディとハワード・ハントが執っており、それがそのままニクソンの再選委員会の対立候補の妨害やウォーターゲート事件の盗聴につながっている。
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「ウォーターゲート事件」年表 |
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『大統領の陰謀』解説英語題『All the President's Men』意味 |
この題は、イギリスの童謡『マザーグース』の一節から、引かれたものだ。
マザー・グース『オール・ザ・キングス・メン』
Humpty Dumpty sat on a wall,(ハンプティ・ダンプティ へいにすわった)
Humpty Dumpty had a great fall.(ハンプティ・ダンプティ ころがりおちた)
All the king's horses,(王様の馬全てを あつめても)
And all the king's men,(王様の家来全員 あつめても)
Couldn't put Humpty together again.(ハンプティを もとにはもどせない)
上の歌詞の、all the king's men(王様の家来全員)がタイトルの起源で、この歌詞には「覆水盆に返らず=起きてしまった事は取り返しがつかない」という意味を含むという。
そんな『all the king's men』というタイトルを冠された映画が、『大統領の陰謀』以前にあった。
1949年のロバートロッセン監督が撮ったハリウッド映画『all the king's men』。
この映画は1950年開催の、第22回アカデミー賞作品賞に輝いた。
ストーリーは、野心家の政治家が権力の虜となって汚職やスキャンダルで自滅していく。その周囲のスタッフが右往左往しても、とどめようが無く政治家が破滅に向かう姿を描く。2006年のリメイク『オール・ザ・キングスメン』予告
そんな上の映画は、まさにニクソン政権の末期の姿に重なる。
それゆえ、この『大統領の陰謀』の原題は『All the President's Men』と名付けられたのだろう。
この映画は「アメリカの理想の破綻」を、「ウォーターゲート事件」を題材に「アメリカンニューシネマ」が描いた描いた作品だと感じる。
そして同時に、その「アメリカの理想の破綻」は、もはや押し止めようもないのだという事実を、「アメリカ国民=All the President's Men」に突きつけたのがニクソン・スキャンダルという現実だったのではないか。
実は、上の事件年表を見れば分かる通り、ワシントン・ポストが必死に記事を世に送り出しても、ニクソンは大統領選で圧勝する。
そのことは、アメリカ国民はどれほど疑わしくとも、「大統領=アメリカの民主主義の象徴」である国家元首が、そんな無様なスキャンダルを起こすわけがないと、自分たちの構築した「アメリカ民主主義」の「理想」を信じていた事の表れではなかったか。
しかしその国民の希望は、ニクソンが引き起こした「大統領職からの落下」によって、すでに「アメリカ国民=All the President's Men」が右往左往しても「アメリカの理想」を回復させえないという、「モラルの崩壊=モラル・ハザード」を如実に語る事件として記憶されることとなった。
そんな「アメリカの理想」を喪ったアメリカ国民の狼狽を、この題名が鮮やかに描き出して見事だと感じた。
関連レビュー:アメリカンニューシネマの解説 映画『イージーライダー』 疾走する反抗の美学 アメリカンニューシネマとハリウッド |
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