2018年03月21日

映画『グレイテスト・ショーマン』観客の高評価と批評家の低評価の原因とは!?/感想・解説・評価の混乱

映画『グレイテスト・ショーマン』(感想・解説編)

原題 THE GREATEST SHOWMAN
製作国 アメリカ
製作年 2017年
上映時間 105分
監督 マイケル・グレイシー
脚本 ジェニー・ビックス、ビル・コンドン
ストーリー ジェニー・ビックス


評価:★★★★    4.0点



恥ずかしながら、この作品中の一曲『ディス・イズ・ミー』を聞いて、涙が出ました。
個人的には、この映画はミュージカルとして完成度が高く、その音楽とダンスによって人を感動させる力に満ちていると感じます。
しかしアメリカ公開時の批評家の評価は最悪で、それが災いして公開後3日間で800万ドルと不調でしたが、観客の好評が口コミで伝わり、公開2週目の週末は1,550万ドルと大きな支持を獲得しました。
基本的な楽曲の強さに観客は反応し評価を高め、批評家は脚本とPTバーナムの実像との違いに反発しての低評価だったように感じ、以下追及したいと思います・・・・・

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映画『グレイテスト・ショーマン』予告

映画『グレイテスト・ショーマン』出演者

P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン/幼年期エリス・ルビン)/フィリップ・カーライル(ザック・エフロン)/チャリティ・バーナム(ミッシェル・ウィリアムス/幼年期スカイラ・ダン)/ジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン、歌声ローレン・アレッド)/アン・ウィーラー(ゼンデイヤ)/レディ・ルッツ(キアラ・セトル)/W・D・ウィーラー(ヤーヤ・アブドゥル=マティーンII世)/キャロライン・バーナム(オースティン・ジョンソン)/ヘレン・バーナム(キャメロン・シェリー)/ゼネラル・トム・サム(サム・ハンフリー)/コンスタンティン王子:刺青男(シャノン・ホルツァプフェル)/チャン&エン(ユーサク・コモリ:ダニアル・ソン)/フランク・レンティーニ(ジョナサン・レダヴィド)/ヴィクトリア女王(ゲイル・ランキン)

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映画『グレイテスト・ショーマン』批評家の評価


アメリカ合衆国の批評家の論調を見ると基本的には、低評価の理由は以下の2点に集約できるかと思います。

@歴史上のP.T.バーナムの実像とあまりにかけ離れている
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この歴史事実と相反するという論調は、実際のP.T.バーナムはこの映画のような善人ではない点が問題視されています。
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実体は金儲け主義で、障碍者を晒し者にしたり、幼児虐待・人権侵害スレスレのショーを行ったり、人魚の死体などインチキ商法と非難されても仕方が無い、詐欺師まがいの興行主だったようです。(白黒写真が実在のバーナム夫妻)

そんな歴史的な背景を踏まえつつ、その実体と映画のP.T.バーナムとの違いを非難する批評が有ります。
さらに、そんな歴史事実からして差別・使役されていた障害者に、P.T.バーナムのサーカスこそが生きる場所だと語らせることの欺瞞性や、ひいてはこの映画のテーマ自体に偽善があるとする意見があります。

A脚本の問題
脚本に対する欠陥を指摘する声があります。
一つには、あまりにもご都合主義の、上手く行き過ぎるストリー展開がうすっぺらいというもの。
そして、主人公P.T.バーナムの上昇志向の強さに嫌悪感を感じるという意見。

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映画『グレイテスト・ショーマン』批判問題に関する個人的考察



まず指摘したいのは、ミュージカルにとっての脚本とは、ミュージカル要素を展開させるためのスターター、添え物のようなもので、そう考えればこの映画の脚本は詰め込みすぎだと感じます。
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更に印象としては、この映画の強力なテーマソング『ディス・イズ・ミー』の、「自分のままの自分で良いという」主張がストレートに伝わる中、その同じテーマが脚本で何度も語られている点もうっとうしく感じられます。

この「自分のままの自分で良いという」テーマは、主人公バーナムの下層階級から上流階級への渇望と、その望みが虚栄に過ぎず、本来の自分になることで家族との幸福を得るという形で表現されます。
しかし、この同じテーマは、実はバーナムの相棒ザック・エフロン演じるフィリップ・カーライルが、「自分のまま」になるために上流階級からバーナムのサーカスという下流に参加し、更に人種差別のある時代に黒人女性との恋を成就するというクダリで、すでに完璧に語られていたのでした。

その上、何度も繰り返される『ディス・イズ・ミー』で、そのテーマの繰り返しの印象は更に強まります。
つまりは何度も同じテーマを、何人もの姿で繰り返し語られるわけで、単純に映画の脚本としても過剰な重複があると言わざるを得ません。

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その主張は、そこに歴史上で問題視されている人物を主人公に据えたことで、更に詳しい説明を脚本に求めるものになってしまいます。

しかし、ミュージカル映画の宿命としてストーリーの簡素化の要請に従わざるを得ず、結果的に説明不足のストーリーとなり、欺瞞性や御都合主義、さらにはテーマに対する偽善性すら感じさせ、最終的に混乱した脚本になってしまったと思います。

個人的には、歴史性を大胆にカットする(P.T.バーナムの名前を出さない)か、またはP.T.バーナムを偽善者の詐欺師のゲス野郎として描いて、最後にその罪を悔い改めてハッピーエンドとすれば脚本の混乱はなくなるとは思いますが・・・・・・・・・・・

しかし、その場合はP.T.バーナムという、アメリカ国内で知られた偉人に引き寄せられる観客を諦めざるを得ないでしょうし、バーナムを悪人として描く場合には、ヒュー・ジャックマンとしても演じ難いかとも思われ、難しいところでしょうか。

関連レビュー:ミュージカルと脚本の関係
『雨に唄えば』
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映画『グレイテスト・ショーマン』感想



上で書いた批判を踏まえても、聞く者の心を揺り動かす優れた音楽の力は、充分に見る価値があると思います。
その力こそが、圧倒的な観客の支持の源であると、口コミを読むと分かります。

<『This Is Me』ワークショップセッション>

更にその音楽を彩る、ダンスもパッション溢れる力強さに溢れています。
<グレーテスト・ショーマン特別映像>

そんなミュージカルの力は、海を越えて登美丘高校ダンス部のコラボ・プロモーション・ビデオにも。

このビデオを観た『グレイテスト・ショーマン』の主演二人も、登美丘高校ダンス部に感動したと言います。

他にも、素晴らしいナンバーが何曲もあり、この映画のミュージカルの力は、細かい欠点を補って余りあるものだと感じました。
<ネバー・イナフ>


<ミリオン・ドリームス>



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映画『グレイテスト・ショーマン』個人的評価



正直言って、この映画の脚本や歴史認識には問題があるかとは思います・・・
しかし、映画を観に来る観客に与えるものとして、感動以上の価値があるでしょうか?
そして個人的には、脚本が悪くとも、現実のPTバーナムとどれほどかけ離れていようとも、この映画の持つミュージカル要素には、間違いなく感動があり、その点を高く評価しました。

この映画の最後で示される言葉―

“The noblest art is that of making others happy”  by P.T. Barnum
“もっとも高貴な芸術とは他者を幸福にすることだ” by P.T.バーナム

この映画には、他者を幸せにする力が間違いなくあると思います・・・・・・・・



posted by ヒラヒ at 18:43| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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