映画『第三の男』(ストーリー・あらすじ 編)
英語題 The Third Man 製作国 イギリス 製作年 1949年 上映時間 104分 監督 キャロル・リード 脚色・原作 グラハム・グリーン 音楽 アントーン・カラス |
評価:★★★★ 4.0点
第二次世界大戦が終わったばかりの、国際都市ウィーンを舞台に繰り広げられるサスペンス映画です。
この映画は、モノクロの撮影の美しさと、テーマ曲の響きが重なり、ノスタルジーとサスペンスが共鳴し、古典的名作としての品格を持った一本だと感じます。
個人的には、名優オーソン・ウェールズの存在感と説得力に圧倒されました。
映画『第三の男』あらすじ |
第2次大戦終結後の米英仏ソの連合軍四カ国共同占領下のウィーン。
そこは当時、闇商売が盛んな、危険な街だった。
アメリカ人の西部劇作家ホリー・マーチンス(ジョゼフ・コットン)は、生活に困り旧友のハリー・ライムから仕事を世話してもらおうとウィーン駅に降り立った。
マーチンスはハリーのアパートを訪ねると、管理人からハリーは昨日自動車事故で死亡したと告げられた。
マーチンスはハリーの葬儀に参列するため墓地に行くと、そこには3人の立会人がいた。
クルツ男爵(エルンスト・ドイッチュ)と、友人ポペスコ(ジークフリート・ブロイアー)と、美しい女性のアンナ・シュミット(アリダ・ヴァリ)だった。
葬儀の後、マーチンスはイギリス軍キャロウェイ少佐(トレヴァー・ハワード)から声を掛けられる。
彼は英国管轄区の警察組織に所属していた。
バーに入って深酒をしたマーチンスに、キャロウェイはハリーが汚い密売人で、殺人容疑もあると言った。
それを聞き怒ったマーチンスはキャロウェイに殴りかかるが、キャロウェイの部下ペイン軍曹(バーナード・リー )に取り押さえられた。
キャロウェイは飛行機の席を取るから、明日アメリカに帰れと勧告する。
ペイン軍曹に付き添われて、ホテルにチェックインしたマーチンス。
そのマーチンスの小説のファンだと、ペイン軍曹は語った。
マーチンスはそのホテルのフロントで電話を取り、墓にいたクルツ男爵と面談の約束をした。
マーチンスは旧友ハリーの潔白を証明するため、残ることを決意していた。
モーツァルト・カフェで待ち合わせたマーチンスは、クルツ男爵からハリーの死の様子を現場で詳細に聞き出した。
クルツは、事故の際に自分と墓にいた友人ポペスクがいて、事故死したハリーの死体を運んだと説明した。
マーチンスはアパートの管理人(パウル・ヘルビガー)を見つけ、彼にも話を聞こうとするが、なぜかそそくさと立ち去ってしまった。
そして、マーチンスは葬儀に参列していた女性アンナが何者かと尋ねると、クルツ男爵は彼女がハリーの恋人で、女優だと言った。
マーチンスは劇場にアンナを訪ねた。
彼は事件について話すうちに、ハリーに関わる人々が全て現場に終結していることに違和感を感じた。
アンナも不思議だとは思ったが、事故が起こりハリーが死んでいるなら、同じことだと語る。
しかしマーチンスは本当に事故があったのかと疑いだした。
そして、ハリーの住んでいたアパートをアンナと共に再度訪ね、管理人から事件当夜の状況を聞く。
すると、現場に男爵クルツと友人ポペスク、そしてもう一人”第三の男”がいた事実が判明する。
事件を追ううちに、アパートの管理人も何者かに殺され、マーチンスは何者かが自分を狙っているのを感じる。
マーチンスは命の危険を感じ、キャロウェイ大佐の元を訪ねると、帰国する決心を伝えた。
そのマーチンスにキャロウェイは、旧友ハリーが粗悪なペニシリンを密売し、病に苦しむ女子供の命を奪った非人道的な犯罪の首謀者であると聞かされた。
絶望し深酒したマーチンスは、次にアンナのアパートを訪ね、別れの挨拶をした。
しかしアンナのアパートからの帰り道、マーチンスは死んだ筈のハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)が、ウィーンの夜の影に居るのを見つけた。
ハリーの登場
マーチンスは必死に追いかけるが、ハリーは見通しの良い広場で、突然消えうせた。
マーチンスは、ハリーに会ったという事実をイギリス軍キャロウェイ大佐に通報した。
警官隊は墓地でハリーの棺を掘りだし、死体を確認した。その棺におさめられていたのは、ハリーの手下のヨセフ・ハービンという男だった。
その頃、アンナは偽造パスポートを持っていた罪で、ソ連側の警官に連行された。
それを知ったマーチンスはアンナを助けようと、クルツ男爵のアパートに行くと、ハリーに会いたいと求めた。
そして観覧車で待つマーチンスの元に、ハリーが姿を現す。マーチンスは、アンナがソ連に逮捕されており、ソ連と密接なハリーのコネで助けられないかと訴える。
それに対しハリーは、アンナを助けるのは無理だと答える。
更にハリーは、アンナをマーチンスが面倒見てくれればありがたいと言った。そして、ウィーンでは心を許せる者がいないから、マーチンスに仲間にならないかと誘った。
もし、その気ならどこでも指定の場所に行くが、その時は警察抜きにしてくれとマーチンスに警告した。
【映画史に残る名セリフ】
【意訳】ハリー・ライム:ボルジアは30年間で戦争や恐ろしい殺人、ひどい流血があった。でも彼らはミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチやルネッサンスを生んだ。スイスでは友愛による500年の民主主義と平和のもと、作られたのは鳩時計だけだ。じゃあ。
マーチンスは、アンナを助けようとしないハリーの言葉に、ついに友を裏切る決意をする・・・・
(下にネタバレが有ります)
映画『第三の男』予告 |
映画『第三の男』出演者 |
ホリー・マーチンス(ジョゼフ・コットン)/アンナ・シュミット(アリダ・ヴァリ)/ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)/キャロウェイ少佐(トレヴァー・ハワード)/ペイン軍曹(バーナード・リー)/管理人(パウル・ヘルビガー)/クルツ男爵(エルンスト・ドイッチュ)/ポペスコ(ジークフリート・ブロイアー)/ヴィンクル医師(エリッヒ・ポント)/クラビン(ウィルフリッド・ハイド=ホワイト)
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これ以降 映画『第三の男』ネタバレがあります。ご注意ください。 |
(あらすじから)
マーチンスはアンナを助けるなら、ハリーを呼び出し罠にかけるとキャロウェイに約束した。
同意したキャロウェイは、アンナをソ連側から引き取り釈放した。
しかし自由の身になったはアンナは、自分が愛する者を売ったマーチンスを裏切り者だと罵った。そして彼女は、用意されたパスポートを破り捨てた。
マーチンスはアンナの態度を見て、キャロウェイとの約束は無効だと言った。
しかし、キャロウェイは病院にマーチンスを連れて行き、ハリーが元凶となった悲惨な患者たちを見せた。
それを見たマーチンスは衝撃を受け、約束通り囮となって彼をカフェに呼び出した。
しかしその場にアンナが姿を見せ、ハリーが現われた時、彼に警告を発した。
ハリーは危険を知り下水道に飛び込み、地下での追跡と銃撃戦が繰り広げられた。
【下水道の追跡劇】
必死に逃げるが、追いつめられたハリーは、ついにマーチンスの銃弾に倒れた。
そして墓地では、本当のハリーの葬儀が執り行なわれた。
映画『第三の男』ラスト・シーン |
そして葬儀が終わり、マーチンスはアンナを待つ。
しかしアンナは氷のような冷たい顔で、彼の前を通り過ぎていった。
映画『第三の男』結末感想 |
ここまで、クールに男を振る女性がカッコいい。
つまりは、死んだハリー・ライムがたとえ悪魔であっても、一度好きになったら理も非もなく一途に思い続ける純潔と潔癖さがこの歯切れの良いラストを生んでいるのだと思う。
いまどき、ここまで一途に相手を思えるか疑問な気もするが、やはり真剣に相手を想い、そこに殉じようとする姿は、気品に通じるのかと感心したのでした・・・・・・・・・・
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