『レヴェナント:蘇えりし者』(解説・オスカー編)
原題 THE REVENANT 製作国 アメリカ 製作年 2015 上映時間 157分 監督 アレハンドロ・G・イニャリトゥ 脚本 マーク・L・スミス、 アレハンドロ・G・イニャリトゥ 撮影監督 エマニュエル・ルベツキ 音楽 坂本龍一 |
評価:★★★★ 4.0点
この映画は、アメリカの伝説上の人物ヒュー・グラスをモデルに描いた、レオナルド・ディカプリオのアカデミー賞受賞作です。
この映画の持つ迫力は、映画のドラマとしての強さ以上に、ディカプリオの壮絶なオスカーへの執念が演技に乗り移っているように思います。
これは壮絶なドキュメンタリー記録映画ではないでしょうか。
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『レヴェナント:蘇えりし者』予告 |
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『レヴェナント:蘇えりし者』出演者 |
ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)/ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)/アンドリュー・ヘンリー(ドーナル・グリーソン)/ジム・ブリッジャー(ウィル・ポールター)/ホーク(フォレスト・グッドラック)/アンダーソン(ポール・アンダーソン)/マーフィー(クリストッフェル・ヨーネル)/ポワカ(メラウ・ナケコ)/ヒュー・グラスの妻(グレイス・ドーヴ)
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『レヴェナント:蘇えりし者』解説レオナルド・ディカプリオ:オスカーへの道 |
ディカプリオは1993年の『ギルバート・グレイプ』で、アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされています。
若干19歳のこの時に、すんなりウィナーになっていれば、ここまでコジれることも無かったと思うのですが・・・・・・・・・・
関連レビュー:若き日のディカプリオ 『ギルバート・グレープ』 自己犠牲を問う映画 ジョニー・ディップ主演映画 |
この後の彼は、アイドル路線で『ロミオ+ジュリエット』なんて二枚目路線をひた走っていました。
しかし、そんな中でもディカプリオにとっての代表作『タイタニック』で、ショックな事件が起こります。
『タイタニック』の沈没 |
1997年の『タイタニック』は世界中で大ヒットし、作品賞・監督賞・主演女優賞を含むアカデミー賞の14部門、史上最多ノミネート(アカデミー史上『イブの総て』と並び一位タイ)されたにも関わらず―――
何と!
ディカプリオは主演男優賞にノミネートすらされなかったのです。
このときには、ディカプリオは、通常作品賞ノミネートされれば、出演者も参加するのが普通なのですが、アカデミー賞授賞式に参加しませんでした。
本人が怒って参加しなかったとも、母親に「こんなに馬鹿にされて出ちゃだめ」と止められたとも言いますが・・・・・・・
その後「思い上がっていた」と反省の弁を、どんな理由にせよ述べてます。
更には『タイタニック』の翌年1998年『仮面の男』では、ワースト映画の祭典ラムジー賞の主演男優賞を獲得するという屈辱を受けます。
『ギャング・オブ・ニューヨーク』の屈辱 |
そんなこんなで、デイカプリオが本気でオスカーに勝負を賭けに行ったと思われるのが、2003年巨匠マーティン・スコセッシ監督と初コンビを組んだ『ギャング・オブ・ニューヨーク』です。
関連レビュー:ディカプリオ主演 『ギャング・オブ・ニューヨーク』 ニューヨーク市民の起源 マーティン・スコセッシ監督 |
この映画もアカデミー作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞・撮影賞・編集賞・美術賞・衣装デザイン賞・歌曲賞・録音賞の10部門にノミネートされるほど、評価の高い作品でした。
しかし、ディカプリオにとってショックだったのは、本来の主演はレオナルド・ディカプリオのはずなのに、主演男優賞にノミネートされたのがダニエル・デイ=ルイスだったという・・・・・・・・・
ダニエル・デイ=ルイスは『マイ・レフトフット』で、すでに主演男優賞を獲得しているのだからよさそうなものですが・・・・・・・・・
実は、各部門のノミネート対象者は、映画の製作スタジオの推薦によるといいます。『ギャング・オブ・ニューヨーク』ならばミラマックスのお偉方が、主演男優賞はダニエル・デイ=ルイスで行くというように決めるらしいのです。
実を言えば、このオスカーを獲るか否かが映画の収益に大きく影響するので、決して遊びや冗談ではなく、ましてや情実でデカプリオになんて甘い感傷が入る余地はなく、獲得する可能性が高い方を選ぶという冷徹な打算の産物なのです。
ディカプリオの心中察してあまりありますが・・・・・幸か不幸か、この映画は1つもウィナー(受賞)には輝きませんでした。
『アビエイター』以後 |
2005年の『アビエイター』で、再びスコセッシ監督と組んだ作品で、大富豪ハワード・ヒューズを演じ、主演男優賞に初ノミネートします。
結果的には、レイ・チャールズを演じたジェイミー・フォックス『Ray レイ』に栄冠をさらわれましたが、一歩前進は間違いないでしょう。
関連レビュー:ブルースの伝説 『Ray レイ』 盲目の天才歌手の伝記 ジェイミー・フォックスのオスカー受賞作 |
次にノミネートされたのは2007『ブラッド・ダイヤモンド』で違法ダイヤモンド密売人を演じ再び主演男優賞にノミネートされますが、受賞に至らず。
仮に『ブラッド・ダイヤモンド』じゃなくて、スコセッシ監督の同年の『ディパーテッド』にも出演していたので、コチラは作品賞、監督賞、脚色賞、に輝く高い評価の作品でしたから・・・・
もし、こちらで主演男優賞を競っていたらとも思いますが、やっぱり出演者の豪華な顔ぶれに『ギャング・オブ・ニューヨーク』の二の舞を恐れたのかとも思います・・・・・・・・・
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ディカプリオの迷走 |
その後も、健気にオスカー挑んでいくディカプリオ。
もはや、役の選択や監督選びもオスカーに焦点を当てたことが傍目にも分かるようになります。
そもそも『アビエイター』のハワード・ヒューズも、アカデミー賞獲得のためには、実在の人物で病気持ちなら獲りやすいというので選んだと言われていますが、それでも栄冠には至らず。
じゃ〜、さらにヒートアップさせクリント・イーストウッド監督と組んだ『Jエドガー』のFBI長官のエドガー・フーヴァーを演じ、この人はゲイで性同一性障害に女装趣味、さらに権力亡者という、コレデモカのてんこ盛りにも関わらず、結果はやはり残念。
ついには開き直って、タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』では差別主義者のゲスを演じ、どうだとばかりに悪人を演じますが獲得に至らず。
それでもダメならとばかり、再びマーティン・スコセッシ監督とタッグを組み『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で成金、ゲス、ドラッグ中毒、挙句の果てにオカマまで掘られてもダメ・・・・
ここまで迷走を続ければ、もはや自分でもどうすべきか分からなくなっているんじゃないでしょうか・・・・・・
そして今作、なりふり構わず、アカデミー賞監督、アカデミー賞カメラマンを揃えて、万全の体制で「アメリカの魂」をコレデモカとばかりに次から次にスタントなしのガチンコ撮影。
トラブル続きの命すら危ぶまれる、狂気のごときディカプリオ。
映画自体も自分の一人芝居で、この映画の評価がイコール自分の評価となるよう、周到に計算されてオスカー対策は万全。
ホントに、もはや、やれることはやりつくし、この映画の、一人芝居の生きるか死ぬかの命がけのギリギリの芝居でダメだったらと思えば、命すら断ちかねないんじゃないかと・・・・・・・・・・・・・。
これはもう芝居じゃなくて、「ディカプリオ:オスカーへの道」というドキュメンタリーです。
そう考えればデカプリオ自身が、ヒュー・グラスのような執念の人なのでしょう・・・・・
このディカプリオの執念が乗り移った表情は、間違い無く一見の価値があります。
だって、ベジタリアンなのに生の肝臓にかぶりつくんだぜ・・・・・・
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『レヴェナント:蘇えりし者』評価 |
本当に、心の底から、その役者魂と、オスカーに対する執念には満点を上げますが、ディカプリオの一人芝居を前に出しすぎたために、映画的なドラマとしての力が削がれたと、やはり私は感じてしまいました。
それゆえ、映画の評価としては★3.5です。
しかし、この映画をディカプリオの「ドキュメンタリー映画=オスカーへの道」として見たとき、間違いなく傑作だと申し上げましょう。
それゆえ、私は映画表現としては★3.5にプラスして、デカプリオの執念★0.5で、合計★4.0と評価させていただきました…。
何にせよ、おめでとう!ミスター・ディカプリオ!!
下のリンクで紹介させて頂いた、ディカプリオのスピーチも力の入った、思いのこもったものです。
関連レビュー:ディカプリオ・オスカー受賞スピーチ 2016年開催・第88回 アカデミー賞 授賞式紹介・スピーチ和訳 全受賞・ノミネート作品紹介 |
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