2017年06月30日

映画『北国の帝王』オヤジ達のプライド祭/あらすじ・ネタバレ・感想・ラスト・解説

逆風の中の男達

原題 Emperor of the North
製作国 アメリカ
製作年 1973
上映時間 121分
監督 ロバート・アルドリッチ
脚本 クリストファー・ノッフ

評価:★★★★  4.0点



このB級映画のお手本のような作品が作られた1973年というのは、アメリカン・ニューシネマの台頭でも明らかなように、ハリウッド映画の曲がり角だった。

そんな時代に、新たな映画の刺激を求めて撮られた映画の一本が、このオヤジ達が全身全霊をかけて戦う『北国の帝王』だったろう。
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『北国の帝王』あらすじ

1933年のアメリカは大恐慌のため、ホーボーと呼ばれる失業者が溢れ、彼は機関車に無賃乗車をして移動した。そんな、ホーボー達が恐れるのが車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)の乗る19号列車だった。その列車に無賃乗車した者は、冷酷無比なシャックのハンマーによって殴り殺されるのを覚悟しなければならなかった。
しかしそんなシャックの19号列車で、何度も無賃乗車を成功させた、ホーボー、Aナンバー・ワン(リー・マーヴィン)と呼ばれ、“北国の帝王”という尊称を贈られる男がいた。そんな、Aナンバー・ワンにまとわりつくシガレット(キース・キャラダイン)という若者がいた。彼はAナンバー・ワンの王座を奪おうともくろんでいるのだ。
Aナンバー・ワンは車掌シャックの列車に乗ると宣言し、多くのホーボーが叩き落される中、まんまと乗車に成功するがシガレットのせいで、シャックに見つかり崖下に叩き落された。しかしAナンバー・ワンは他の列車に乗り込むと19号列車に追いついた所で、再び乗り移った。察知したシャックとの壮絶な戦いが、再び19号列車の上で繰り広げられた。列車の底、車輪軸に体を縛り付けた二人に向かって、鋼鉄の棒が襲い掛かる。Aナンバー・ワンはエア・ブレーキをかけて列車を急停車させ、反撃した。火夫は傷つき、機関士は気絶し、ブレーキ係は命を落とした。
Aナンバー・ワンはシャックと対峙し、叫ぶ「シャック、貴様の年貢の納め時が来たぞ!」
走る列車の上で2人の男達の壮絶な一騎打ちが始まった。
『北国の帝王』予告

『北国の帝王』キャスト

A・ナンバーワン(リー・マーヴィン)/シャック(アーネスト・ボーグナイン)/シガレット(キース・キャラダイン)/クラッカー(チャールズ・タイナー)/ホッガー(マルコム・アタベリー)/コーリー(ハリー・シーザー)

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『北国の帝王』感想・解説


Film.jpgかつて大衆娯楽の王様であった映画は、TVの出現で娯楽の王座を滑り落ちた。
そして新たなメディアは、それまでハリウッド映画のドル箱だった、家族を対象とした健全で善良な映画も、TVドラマとして放送されることになった。
そんな世間全般のマジョリティーから見放された、ハリウッド映画が活路を見いだしたのが、悪辣で、醜い、しかし、刺激の強い、それまでのキリスト教的善良さである「真・善・美」に反する、刺激たっぷりの映画群だった。
つまり、この映画である。
そもそもそれまでのハリウッドであれば、主人公は正義を体現していた存在だったはずだ。
しかしこの映画のそれは、リー・マービン演じる「北国の帝王」と呼ばれる主人公が、ただの無賃乗車の達人という、いわば犯罪者を主人公にしている時点で善を描かないと宣言していただろう。

さらに、この「北国の帝王」が敵にする列車の車掌をアーネスト・ボーグナインが演じ、本来は犯罪を阻止する正義の立場であるはずなのに、明らかに悪魔的な悪役として、鬼のような形相で無賃乗車犯を襲う姿が描かれる。
結局ここに描かれたドラマは善も悪も無いと、主要な二人の登場人物が告げていたと思える。

kitaguni-kieth.jpgまたこの二人の他に、もう一人の重要なパートを若き日のキース・キャラダインが演じるが、この若者が意味したのは「真の男」としての力を持たない、男としての力不足を意味しただろう。
この映画では、未熟者を許さない、もしくは不完全な存在を認めないという、「男の真価」に対する信念の強さを見る。

じっさい、リー・マービンやアーネスト・ボーグナインが演じる、男としての貫禄に較べると、キース・キャラダインが、いかにもヒヨワに見える。

Kita-pos-2.jpg
結局この映画の、リー・マービンやアーネスト・ボーグナインに代表される中年の親父とは、経験と体力が高い融合を見せる真に強い男達を描いたものだった。

その強者二人は劇中で、その技能の全てを掛けて激しく戦う姿を見せる。
ここにある闘いは、すでに利益や犯罪という現実的な目標を喪失し、己の全存在を賭けた純粋な闘争と化し、ただ男のプライドの証明としてあった。
この男達の、善悪を超えた、ドロドロの、醜悪な、格闘劇は、しかし、アメリカ労働者階級の男達がその肉体と職業的経験をプライドとして、日々生き戦う姿の象徴でもあっただろう。

Kita-pos-3.jpgそういう意味ではこの映画は、日々苦しい労働に立ち向かう、アメリカ中産階級及び低所得者層の男達をターゲットにした映画だったはずだ。
そしてその観客を想定したとき、難しい理屈や、崇高な理念をキッパリと切り捨てた、純粋無垢な「B級映画」が生まれたのではなかったか。

そこには、やはり見たい者だけが見れば良いという割り切りを前提にして、描かれているに違いない。
そして、この見る者を選ぶ作品の系譜は、アメリカン・ニューシネマを経由し、現在ハリウッドの善悪を超越した作品として、引き継がれているように思う。
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以降の文章には

『北国の帝王』ネタバレ

を含みますので、ご注意下さい。
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(あらすじから)
車掌シャックは手に鋼鉄の鎖を持ち、Aナンバー・ワンに襲い掛かった。
Aナンバー・ワンの体を、何度も重い鎖が打ちつけられた。
kitaguni-last1.jpg

しかし彼は貨車に懸架されたマサカリを持って反撃に出て、シャックに重傷を負わせ列車から叩き落した。
Kitaguni-2.jpg

どんどん遠くなる、シャックを見つめるAナンバー・ワンの横に、シガレットが立った。
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『北国の帝王』ラストシーン


Aナンバー・ワンはシガレットをも列車から突き落とした。
kitaguni-last3.jpg

19号車が遠く去る中、Aナンバー・ワンの叫び声が線路に残る。
「貴様のようなチンピラに“北国の帝王”を名乗る資格はない。」と・・・・・・・・

大人の戦いに、小僧が顔を出すなという・・・・・
ほんと昔の大人は、強く大きかったと思う。

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posted by ヒラヒ at 17:52| Comment(8) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは(^◇^)何か単純明快なわかりやすいストーリーですね(笑)警察なんかの関わりは無意味ですね〜てっきり仁侠ものの邦画だと思いました(笑)(笑)
Posted by ともちん at 2017年06月30日 18:34
こんな題名絶対面白くないだろう・・と思いきや
評価4.0・・
舐めてはいけませんね(笑)
Posted by いごっそう612 at 2017年06月30日 21:04
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)完璧なB級映画です(笑)無賃乗車の名人が「帝王」って・・・・・と私も思いますが。「ミナミの帝王」はたぶんコッチの名前のパクリです(^^;英語名の直訳が日本題ですが「労働者階級のヒーロー」ということでしょうね〜
Posted by ヒラヒ・S at 2017年06月30日 22:27
>いごっそう612さん
ありがとうございます(^^)個人的にはB級映画の名作だと思います。「ミナミの帝王は」コチラの名前のパロディーだとおもいますが・・・・命がけの無賃乗車の物語です(^^;
Posted by ヒラヒ・S at 2017年06月30日 22:30
こんばんは。
先日は、ブログにメッセージありがとうございました。
とても元気づけられました。
更新も、少しずつはじめていければと思っています。
こちらにも、またお邪魔させていただきますね。
Posted by 逢坂莉子 at 2017年06月30日 23:51
やっと、見た映画が出てきました。この作品は最高ですね。見た後にすかっとします。でも、軽トラで暴走しながら突っ走るとか橋の上からたちしょんするとかトラクターであたりかまわずふんづぶすとかそんな類の気持ちよさです。B級映画という見方はしたことなかったです。そういう背景があったのですね。そういえばこの映画に似た色合いのフィルムって同じテイストが流れてますね。深く納得です。
この映画アーネスト・ボーグナインの怪演につきますよね。本当にすごい役者だったと今この時もどこかのパブでアメリカ人の親父が語ってる姿が見えます。彼の顔見ただけで震え上がりました。でも時には頼もしいおやじだったり心優しい男だったり、これだけ個性が強いのにそのたびの作品でリセットできるキャラクターの強さは本当に素晴らしい。はまり役を超えたはまり役です。
Posted by すくなひこな at 2017年07月01日 08:44
>逢坂莉子さん
ありがとうございます(^^)いろいろありますよね〜
一ファンとして、更新再開はありがたいお話です。
私個人としては、無理はせずマイペースで行こうと思っております・・・・・無理をするとある日や〜めたとなりかねないので(^^;
わたしも、またお邪魔させていただきます。
Posted by ヒラヒ・S at 2017年07月01日 10:23
>すくなひこなさん
ありがとうございます(^^)この映画の監督、ロバート・アルドリッチ監督はこの手の男の勝負を描かせると上手い人ですね〜『特攻大作戦』、『ロンゲスト・ヤード』『飛べ!フェニックス』など、そして傑作 『カリフォルニア・ドールズ』まで・・・・どこか庶民大衆を励ます映画だと感じます。
その点は世界一の映画王国インドの作品に通じるとも愚考しますが(^^)
Posted by ヒラヒ・S at 2017年07月01日 10:30
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