2017年06月23日

60年代の凄春『ハスラー』ポール・ニューマンの出世作/感想・あらすじ・ネタバレ・ラスト・解説

若者達の挑戦
原題 The Hustler
製作国 アメリカ
製作年 1961年
上映時間 135分
監督 ロバート・ロッセン
脚本 ロバート・ロッセン 、シドニー・キャロル
原作 ウォルター・テヴィス


評価:★★★★★  5.0点

この1961年製作の、ビリヤードの対決を描いた映画の、異常な緊迫感は何だったろう。
若き日のポール・ニューマンにとって、ブレークのきっかけになったこの作品は白黒画面の効果もあって、見ている間中重苦しい緊張感に支配される。
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『ハスラー』あらすじ


ハスラーとして生きることを15歳で決めたエディ・フェルソン(ポール・ニューマン)は、徐々に腕を上げやがてシカゴに君臨するハスラー、ミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリーソン)に挑戦した。勝負は昼夜を通して行われ、前半はエディのペースだったが、油断し酒を飲み始めたエディは後半に入り逆転され、ついに敗れ無一文になった。エディは自暴自棄になり酒浸りになった。しかしある日、エディは作家志望の女子大生サラ(パイパー・ローリー)と出会い、小児麻痺で足が不自由な彼女のアパートで暮らすようになった。エディーは、金を稼ぐため、彼はサウス・サイドの小さなビリヤード場でバート(ジョージ・C・スコット)という男と会った。バートは、エディの腕をしって、胴元になると提案した。彼は75パーセントの分け前で資金を請け負うと言う。エディは断ったが、ある日入ったビリヤード場で因縁をつけられ、両手の指を折られてしまう。いよいよ困窮したエディは、バートのもとに行きフィンレーとの勝負をさせてくれと泣きつく。勝負は始まったがエディは負け続け、バートもエディーを見限ろうとした。そんなバートにエディーは泣いて助けを乞う。そんなエディにサラはもう帰ろうと言うが、エディーは怒り怒鳴りつけた。
そして、自分たち2人の未来に絶望したサラの身に、事件が起きる・・・・・・
ハスラー予告

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『ハスラー』感想・解説

絶対的王者と、金儲けしか考えないパトロンの、二人と戦わなければならない若者は張り詰めたように生きている。
BWHustler.png

BW-Hustler-she.jpg
一時、彼女を得て安らぎめいたものを得るとしても、けっきょく彼は勝負に己の全存在を賭ける。

その結果として、彼女を失わなければならなくなる。



しかし自分の能力の限界を目指して、
全精力を目標の一点に集中し、その野心のためなら全て失ってもかまわないという、非情なまでのストイックさこそ、かつての「若者」という存在ではなかったか。

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このストイシズムこそ、乏しい経験で圧倒的強者に挑む者にとって、必然的に採らねばならない戦術だったろう。

そんな若者達を主役とした映画が登場してきたのは、1953年『乱暴者』『波止場』のマーロン・ブランド、1955年「エデンの東」のジェームス・ディーンだった。
フランスだと ジャン=ポール・ベルモンドの『勝手にしやがれ』が1959年、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」が1960年とつづく。
実を言えば上の映画のように、1970年より前に描かれた若者を主人公とした映画には、暗くて切ないドラマが多いように思う。
ここには第二次世界大戦後10年を経て、経済状態も改善し、若者達が自分達の主張を口にできる社会的基盤が整ってきてはいても、自分をギリギリまで追い込まなければ「大人=支配層」の厚く高い壁を乗り越えられなかった事を意味しただろう。


そんな、若者達の死に物狂いの闘いを真正面から捉えた映画こそ、この「ハスラー」だと思うのだ。
なぜならこの映画以前の若者映画は、スネたり、暴れたり、犯罪を起したり、つまりは支配者達に正面から挑むまでの力を持ち得なかった。

この映画で初めて、大人と対等の挑戦者としての若者を描き得たように思う。
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支配者達に対する若さの挑戦は、上で述べたように厳しい節制と、自らの全存在を賭けざるを得ないほど厳しい闘いではあったが、しかし同じ土俵に上っていると言えるだろう。
実際、この「ハスラー」では接戦を演じ、最終的には相打ちに近い形まで、その勝負を持ち込んだ。
しかし、それでも、己の青春全てを捧げて、相打ちである。
昔の大人は強かった・・・・・・

それから、70年代の公民権運動やベトナム戦争をへて若者達の声は徐々に力を増し、この映画の怒れる若者「ファースト・エディ」がジイさんとなり果てた1986年の「ハスラー2」を見ると、エディーが若造の生意気さに怒りまくるという逆転現象となる。
関連レビュー:ポール・ニューマンとトム・クルーズの共演『ハスラー2』
第2次ビリヤード・ブームの立役者
ポール・ニューマンのアカデミー賞受賞作

シミジミ「世界は変わる」ということを実感せざるを得ない・・・・・
ぜひ合わせて「ハスラー2」を見ることをおすすめしたい。

ホント、大人の権威の失墜にビックリします。
関連レビュー:若者たちの戦い
『勝手にしやがれ』
ジャン・ポール・ベルモンドとジャン・リュック・ゴダール監督
ヌーベル・バーグの開幕

関連レビュー:若き日のアラン・ドロン
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ルネ・クレール監督の名作
何も持たない若者の戦い

関連レビュー:ジェームス・ディーン『理由なき反抗』
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以降の文章には

『ハスラー』ネタバレ

があります。ご注意ください。

BWhustler-yuwaku.jpgエディは、フィンレーとの勝負に勝った。

しかしその時には、エディーに絶望したサラは、言いよるバートに身をまかせた。

そして、自殺してしまう…

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『ハスラー』ラスト

その事件を受けて、エディはもう一度ミネソタ・ファッツに挑戦をした。
今回の勝負は執念が実りエディが勝った。
そこへバートが現れ、マネジャーだと主張し、賭金の分け前を要求した。

【意訳】俺は彼女を愛してた。俺は彼女と一緒に、ビリヤードゲームをしていた。でもアンタには、それも関係ない。いったいアンタが気にかけた相手がいたのか?ただ勝て、勝て、アンタが言うのは勝て、それだけが重要なんだ。アンタは勝利を知らないんだ、バート。アンタは敗者だ。だって、アンタは心が死んでる、それに周り中を死人に囲まれ無ければ生きられないんだ。/エディー:高すぎる、バート。代償が高すぎる。もしそれを払えば、彼女は生きられたのか、死なないのか。それが真実じゃないのは、2人とも知っているだろう、バート?彼女は生きていて、彼女は死んだ。アンタは…アンタは手下に俺を殺せと言ったほうが良いぞ、バート。どんな方法でも殺したほうが良い。もし奴らが俺を爆発させたとしても、全部の破片を掻き集めて、それで、神よ、神よ助けてくれ、バート・・・・・俺はここに戻ってきて、それでお前を殺してやる。
/バート:わかった・・・・わかったよ。ただな、今後一切、ビリヤード場に足を踏み入れるな。/エディー:フアッツ・・・・・・アンタは、凄いビリアードを見せてくれた。/ファッツ:それはお前もだ、ファースト・エディー。


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posted by ヒラヒ at 17:02| Comment(2) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは( ̄▽ ̄)白黒はいいですね〜ニューマンさんがお若い事(笑)「評決」で注目した俳優さんです。ギャンブルで身を立てるのはほんの一部の人だけですよね。
Posted by ともちん at 2017年06月23日 20:38
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)ハスラー2はチャライですけど、これはドップリ暗いです。私はギャンブルはすぐ熱くなるんで、無理ですね〜
Posted by ヒラヒ・S at 2017年06月23日 20:54
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