2017年05月10日

映画『ドライビング・Miss・デイジー』アメリカの現代史/ネタバレ・ラスト・結末解説

ドライビング・ミス・デイジー(ネタバレ・ラスト 編)

原題 Driving Miss Daisy
製作国 アメリカ
製作年 1989
上映時間 99分
監督 ブルース・ベレスフォード
脚本 アルフレッド・ウーリー


評価:★★★★  4.0点

この映画は、アメリカの公民権運動を背景にしたアメリカの一時代を駆け抜けた、運転手とその主人の友情を描いた物語です。
この物語は、アメリカ社会が人種差別を真摯に反省したからこそ生まれてきた、ある種の悔恨が描かれた作品だと個人的には感じられてなりません。
名優二人が、説得力溢れた演技を見せ、物語に深みと味わいを与えています。

『ドライビング・ミス・デイジー』予告動画


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これ以降の文章には

『ドライビング・ミス・デイジー』ネタバレ

が含まれていますご注意下さい。

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(あらすじから)
drive-panic.png
認知症が発症したデイジーを優しく宥め、その後献身的に支えるホーク。
そして、ある日デイジーは言った。

デイジー:ホーク・・・・あなたは最良の友だわ。/ホーク:とんでもない、デイジーさん/デイジー:本当よ。あなたこそ。あなたこそ。

1973年、認知症が進み、体調も衰えたデイジーは現在老人ホームで暮らしている。
デイジーの家は売られ、今では老齢のホークも運転はしなくなり、時々タクシーでデイジーに会いに来ている。
しかし、彼女はホークの事が分かる時と分からない時があるという。
ホークとブーリーは、感謝祭のお祝いを述べるためデイジーの元を訪れる。
driv home.jpg
そしてデイジーは、息子が未だにホークに毎週運転手としての給料を払っていることを知り、法外だと言った。
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『ドライビング・ミス・デイジー』ラスト



【意訳】ホーク:感謝祭のパイを食べませんか・・・・・どうぞ・・・・・・・さあ、お手伝いしましょう・・・・・どうです、オイシいですか・・・・・じゃあもう少し。

ホークがパイをデイジーに食べさせているシーンで映画は幕を閉じる。
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『ドライビング・ミス・デイジー』結末感想



実はこの映画を見て、このユダヤの頑固な未亡人と初老の黒人運転手が、真に相互に親愛と友情により結びついていく様子に心打たれた。
drivi-poster.jpg
しかし同時に、その二人が当時の時代背景、社会通念に支配され、友達でありながら相互に主従の分を超えないという姿に痛々しさを覚えた。

実際この映画は、黒人運転手ホークが、デイジーの依怙地さを耐え忍び続ける映画だと言っても良い。

しかしそれでも、お互いにお互いを必要とする、お互いがお互いにとっての存在証明のごとき存在に変容していく姿が描かれ、単なる従属関係ではないことが実感として理解できる。

そして、そんな親愛を従属関係の形でしか表現できない、この両者の関係、この両者の距離感がもどかしく痛々しい。

Film.jpg
先の感想で、この映画は最後になって同じテーブルに座ったと書いた。
しかし、見てほしい。

実はホークは食べさせているだけであり、介護をしているだけなのだ。

真の友人のように、共に食事をするシーンではないのである。
キング牧師の公民権に対する命がけの運動があったとしても、古い時代に産まれ生きた者達に染みついた、時代の道徳や習慣は、決して簡単に消えはしないのだという事実を示している。

つまりこの映画のラストとは、アメリカが過去の歴史の中でどれほど人種差別によって人々を分断し、その影響が人々に何を強いたかを描いているのだと思えてならない。
お互いの親愛の情が、これほど歪な関係性の形で表される事のグロテスクさが感じられ、切なくなる。

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『ドライビング・ミス・デイジー』評価の不安



これまで書いたように、この映画の語るところを丹念に追えば、人種差別に対する悔恨を二人に託した物語だと、個人的には読み取った。
それゆえのアカデミー賞の高評価だろうと納得もした。

しかし、私はIMDBを見て不安になってしまった事を、告白しなければならない。
IMDb_logo.pngInternet Movie Database(インターネット・ムービー・データベース、略称:IMDb)は俳優、映画、テレビ番組、テレビ・スターおよびビデオゲームに関する情報のオンラインデータベース。1998年からはAmazon.comによって提供されている。
IMDbでは映画上映スケジュールや予告編をチェックできるほか、写真ギャラリーやテレビ番組の放送予定、DVDの発売情報、 人気チャートの閲覧や、映画情報を共有することができ、150万本以上の映画とテレビ番組にアクセスできる。(wikipediaより)

このIMDbには、一般の評価コメント欄がある。
Film2.jpg
そのコメントを見たところ、その高評価の理由に、私が思っていたこととは違う言葉が発せられていた。

いわく、古き懐かしいアメリカが描かれているとか、この美しいノスタルジーとか、この映画の持つ古い時代を良きものとして捉えた批評が圧倒的に多かったのだ。
人権問題を主軸とした物語だという目線は、むしろ少数派だと言っていい。

もしこの映画が「古き良き時代」にノスタルジーを感じるための作品だとしたら、その古き良き時代を構築し得たのは、ひとえに差別を受けていた人々の、モーガン・フリーマン演じるホークの、忍耐と忍従があったからこそなのである。
従ってこの物語を「古き良き時代」の賛歌と見た瞬間、この映画は旧弊な「白人に仕える、従順で無垢な黒人」という「アメリカ白人の考える、人種差別肯定」を謳った作品と化してしまうだろう。

もしそんな映画であるとすれば、この映画は人種差別的な、醜悪な、偏見を助長する、人権主義に反する作品であると言わざるを得ない。
繰り返しになるが、個人的には、この作品の主題は「反人種差別」の物語だと信じている。
しかし、IMDBを見る限り、それが十分観客に伝わっていないというのが実情だ。
だとすれば、映画表現力として齟齬またはノイズがあるという事であり、もう少しダイレクトに言及すべきだったのだろう。

たとえば……
【自作ラストシーン】
ブーリー:いつも感謝してます。お母さんの具合は?/ホーク:やあやあ、時々俺すら忘れちまうんだよ。本当に俺を必要としているのかと疑うね。ほんとに厳しい、人種差別主義者だったから。/デイジー:私は人種差別主義者じゃありません。/ホーク・ブーリー:間違いなく、人種差別主義者だ。/ホーク:でも、いい、恨まない、そんな人間を愛した俺が悪いのさ。/ブーリー:ユダヤ教にまで改宗してもらって…/デイジー:結婚できて幸せよダーリン/ホーク:俺もだよハニー




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posted by ヒラヒ at 18:41| Comment(4) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは( ̄▽ ̄)モーガンさんならではの映画ですね〜これは心打たれるでしょう。主従関係を越えられないというのはわかります。悲恋でもありますかね・・
Posted by ともちん at 2017年05月10日 21:14
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)モーガンフリーマン渋い演技です。でもアカデミ−賞を取れていないという・・・・・ここまでマジメに仕えていると、恋するのも畏れ多いという気になるんではないでしょうか・・・・・・・
Posted by ヒラヒ・S at 2017年05月10日 22:27
こんな昔の映画なのに認知症を取り扱っているのに驚きました。
日本ではこの時代まだボケとか言ってましたよね。
アメリカは医療も進んでいるからかかなあ。と勉強にありました。機会があったら観てみたい映画です。
Posted by いごっそう612 at 2017年05月12日 06:26
>いごっそう612さん
いそがしいのにありがとうございます(^^)
アメリカは早いですね〜
老人ホームの孤独死というのも映画で見て、日本はこうは成らないだろう何て思っていたら、まるっきり一緒になってしまいましたし・・・・映画としてどう感じるかお聞きしたいですね(^^
Posted by ヒラヒ・S at 2017年05月12日 17:22
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