評価:★★★★★ 5.0点
実は黒澤監督の時代劇とは、過去のチャンバラ映画とは隔絶した表現がされていました。
そのルーツはハリウッドの西部劇にあると感じます。
この作品『椿三十郎』が最もそんな特徴を表わしていて、見過ごせない一本です・・・
またこのラストには、黒澤リアリズムの本質が隠されていると思います。
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以降
椿三十郎・ネタバレ
を含みますので、ご注意下さい。========================================================
しかし、黒藤邸に詰めていた次席家老の黒藤(志村喬)竹林(藤原釜足)らが臆病なのを利用し、三十郎は隣に責め手が控えていると伝え、斬り込み合図の椿の花を流させる事に成功した。
合図を見た若待の斬込みで、城代家老睦田(伊藤雄之助)は救われた。


黒藤邸に室戸半兵衛(仲代達矢)と菊井(清水将夫)が戻ったときには、後の祭りだった。
室井はこれまでと言い捨て、去った。
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椿三十郎・ラストシーン
========================================================藩に平和が戻り、慰労の宴が催され九人の若侍が揃ったが三十郎の席は空いていて、三十郎は姿を現わさない。

救助された城代家老は、事のしだいは知っており、穏便に済ませる積りだったと語り、若者達を恐縮させた。

三十郎がすでに邸内にいないことが分かり、若侍達は後を追う。
そして対峙する、三十郎と室戸半兵衛を発見する。
三十郎と室戸半兵衛の対決
二人の勝負は、一瞬早く三十郎の居合い斬りが勝った。

勝負に勝った三十郎に「お見事」と声を掛ける若侍・伊坂(加山雄三)。
三十郎は「馬鹿」と怒号する。
「いい刀とは、鞘に収まった刀だ。」
「半兵衛も俺も、抜き身の刀だ。」
「おまえらは、鞘におさまってな。」
「あばよ」そう言い捨てて、肩を揺らして去っていく。
この最後の決闘シーンは、間違いなく「ハリウッド・西部劇」そのものだと思います。
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上の椿三十郎の最後の決闘シーンについて、仲代達矢がその著書『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)に、詳細な内容を語っています。この本もとっても面白くてオススメです。
仲代達矢がこれまでの作品を振り返る。日本映画は昭和20年代から30年代を中心に黄金時代と呼ばれる。ちょうどその頃、仲代達矢はデビューした。俳優座養成所でのこと、小林正樹、岡本喜八、黒澤明ら名監督との出会い、高峰秀子、原節子、勝新太郎といった有名俳優との仕事などを回想する。映画会社の専属にならない、当時としては珍しいフリーの立場を貫いた。一年の半分を映画、もう半分を舞台ときっちりわけて仕事をしてきた俳優だからこそ、日本映画の盛衰を冷静に見ていた。現在の映画界についても鋭く語る。(amazonより)
上の本を元に、再現実況シーンをでっち上げてみました。現場の緊迫した状況が伝われば幸いです。
また、このシーンの黒澤の演出方法にこそ、リアリズムの本質が現れていると思います・・・・
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椿三十郎の決闘シーンの架空・実況中継
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大変な事件が起こったようです!
黒沢監督の作品「椿三十郎」の撮影中、「ラストの決闘シーン」において誰も予想しなかった事態が起こり、今も現場は緊張に包まれている模様です!
現地から中継に切り替えます!
こちらは現地です、ほんとにひどい状況です。

現場に立ち会った若侍役の田中邦衛氏は、あまりの事に「驚愕」し、まだショックから立ち直ってない様子です。

また同若侍役の加山雄三氏も「何も聞いていなかった。あんな事になるなんて」と茫然としております。
映画出演者に取材した所、誰もが口を揃え「この一騎打ちの場面は台本に詳細は何も書かれていなかった」と証言しています。
当事者の一人「椿三十郎」役の三船敏郎氏は、最後の立会シーンに関しては、黒沢監督からの指示通り、その抜き打ちの型を一人で練習し続け、誰にも知らせなかったとの情報もあります。

また、もう一人の当事者であり被害者ともいうべき、室戸半兵衛役の仲代達矢氏も「あの決闘でこんな事態になるとは」と虚ろな瞳で語っています。
そしてやはり、三船氏と同じく監督の指示により密かに居合を練習したとの事です。さらに、仲代氏は「三船さんの殺陣は凄まじく速いので、負けないように必死に練習した」とも語っています。
総合しますと、問題のシーンの撮影において、実際どうなるか知っていたのは監督とごく一握りのスタッフだけだった模様で、しかも思ったより血シブキ効果を強くしすぎてしまったという、制作側にとっても予想外の事態によって、更に現場が混乱した模様です。

仲代氏は「あまりの勢いに体が崩れそうになったのを、必死に踏み止まった」と語り、さらに「そこも黒沢監督は、決闘の迫力を出すため計算していた」のではないかとの、疑念を今も捨て切れていないとの事です。
結局、監督・黒沢氏が密かに企てた計画に、全てのスタッフ出演者が騙されたというのが実情のようです。
その動機に関しては、この出演者も驚愕する、大事件発生の瞬間を記録に留めること以外には考えられず、その「事件記録」がどれだけの衝撃かは、見たものの「記憶」に刻みこまれて永遠に消え去る事はないかと思われます。
以上現場からでした。

ありがとうございます。
スタジオには映画研究の専門家をお招きしておリます。
いかがお考えでしょうか?

え〜私が思いますに、黒沢監督は以前から殺陣は踊りじゃない、あんな歌舞伎のような立ち回りで人は切れないと言ってたね。
クス・・・結局、殺陣をリアルにすれば、殺人現場を再現するってことでしょ?
人が死ぬ瞬間が事前に分かったり、何が起こるかなんて、誰もわからないのが当たり前でしょう?
それは突発的な非日常のはずでしょ?
クス・クス・・・そういう意味であれば、これだけ完璧に「事件」を発生させるためには、この詐欺師まがいの手しかないんじゃないの?

ケケケ・・でもマネできないよ・・・・
ケケヶ・・・・二度やっちゃったら・
ケケ・・・事件じゃないもんね・・・
ケケケケケケケケケ・・・
これで、殺陣っていうかアクションの本質が「事件性」に在って、その「事件性」ゆえに見る者に衝撃が与えられるってことが、ハッキリしちゃったよネ・・・ケケ
でもサ〜すっごいよネ・・・ケケ・・・・何か自分でも切りたくナンナイ?これ、コ〜フンすんじゃん!
これ見るとさ〜 ばさ〜ってばさ〜ってキリタクナルよね
ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ
ザア-----------------------ザ--・・・CM「驚きの切れ味!二枚刃は切れる!!」

イヤXX、マズぃ・・・でしょ!?このコマーシャルって−
え?始まって−
ゴホン・・お見苦しい点がありました事をお詫び申します。
いずれにしてもとんでもない世界映画史上、空前絶後の「事件」が起きた模様をお伝えしました。
当ブログ関連レビュー:
『羅生門』
裁きの真実を問う黒澤映画の古典。
この映画も完璧な一本。
「羅生門」は人間存在のリアリティーを語っていると感じます。
『七人の侍』
チャンバラ活劇のリアリズム
世界を驚嘆させた黒澤映画の古典。
時代劇アクションのリアリティーを語っています。
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ありがとうございます(^^)血=ヘモグロビン映画と呼ばれたらしいです(^^;これ以降黒澤監督、血を控えたと言う・・・・暦史的な出血サービスでした💦
色々技術もあがったんじゃないっすかはてな
そろそろwordpress挑戦してみては?
さすが黒澤監督という過激な演出ですね。
ありがとうございます(^^)wordpressを覚えられる気がしないという・・・・醜いデザインで、恥ずかしいんですが・・・・
黒澤監督はやはり大衆作家、娯楽作家なのだろうと、個人的には思いますね