2017年03月06日

映画『巴里のアメリカ人』ハリウッドの欧州コンプレックッス/感想・あらすじ・ネタバレ・解説・ラスト

舞台芸術より映画芸術を!



評価:★★★★  4.0点

ニューヨークの星付きのフレンチ・レストランに日本人の方が行った時の事です。
なぜか対応が悪いし、ボーイも中々やってこない・・・・隣の席のフランス人にはすぐ行くのに。
腹が立って、ムッシュー・シル・ブ・プレ(給仕さんこっちへ)と言ったら、ウイ・ムッシューとすぐ来たという・・・・・・・
この映画は、そんなアメリカのスノビズム、アメリカのヨーロッパ・コンプレックスを現した映画だと思います。


巴里のアメリカ人・あらすじ


画家を目指し、パリに暮らすアメリカ人ジェリー・ミュリガン(ジーン・ケリー)だが、絵は一向に売れない。ジェリーは友人の米国人のピアニスト、アダム・クック(オスカー・レヴァント)がフランス人の売れっ子歌手アンリ・ボウレル(ジョルジュ・ゲタリ)と会っている所を訪ね、初対面のアンリと息投合し、ジェリーとアンリは一緒ステップを踏み、歌を歌う。(下:ジーン・ケリーとジョルジュ・ゲタリ「By Strauss」)

ある日ジェリーは街で絵を並べて売っていると、リッチな米国婦人ミロ・ロバーツ(ニナ・フォック)と知り合い、彼女は彼の絵を買ってくれた。しかしミロは、絵よりもジェリーをツバメにすることを望んでいたのだった。しかし、ジェリーは自分の画才を認められたと喜び、パリの街で子ども達に囲まれに歌い踊る。(下:ジーン・ケリー「アイ・ガット・リズム」)


その夜ミロに誘われ行ったキャバレーで、ジェリーはパリ娘リズ(レスリー・キャロン)に一目惚れし、無理やり彼女の電話番号を聞き出すが、実は彼女こそフランス人歌手アンリの彼女だった。翌日から、ジェリーはリズの勤める香水店にまで顔を出しアプローチし、ついにリズもジェリーの歌とダンスに感動し口づけを交わす。(下:ジーン・ケリー「our love is here to stay」)


しかし、アンリのリサイタルがあるリズは去っていった。リズはがアンリの元に行くと、アンリはアメリカへ演奏旅行に行くので、リズと結婚して一緒に行きたいと言った。戦争中両親を亡くして、アンリに援助を受けてきたリズは、彼を深く信頼し恩を感じて婚約していたためリズは承諾せざるを得なかった。そのいきさつを聞いたジェリーは、彼女に別れを告げた。
その夜パトロンのミロとジェリーは美術学校の大晦日のパーティーに出かけ、そこでリズとアンリに会う。人影のないバルコニーで、二人は再び別れを告げ、リズは目に涙をためながらアンリとともにパーティー会場を離れていく。去るリズを見送りながらジェリーは、空想の世界に入っていった・・・・・・・

(原題 An American in Paris/アメリカ/製作年1951/113分/監督ヴィンセント・ミネリ/脚本・原作アラン・ジェイ・ラーナー/音楽ジョージ・ガーシュウィン)

<巴里のアメリカ人・受賞歴>

1951年度・アカデミー作品賞、脚本賞、8つの部門に受賞
また、1951年にアカデミー名誉賞としてジーン・ケリー


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巴里のアメリカ人・感想

以下の文章には当映画に関する、悪評が含まれますご注意下さい。
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ハリウッド黄金期の、輝くばかりのミュージカルを堪能できます。
ほんとにジーン・ケリーの踊りのすごい事。
全身をスクリーンにさらしてノーカットで踊り続けられる俳優が、今いるでしょうか?

ジーン・ケリーとジョルジュ・ゲタリ「ス・ワンダフル」

この明るく元気なヤンキー青年の代名詞のような、ジーン・ケリーという俳優の魅力を再認識しました。
作曲もアメリカの誇り、ジョージ・ガーシュインということで、この映画はアメリカ文化の精華とも呼ぶべき一本だと思います。

ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin、1898年9月26日 - 1937年7月11日)は、アメリカの作曲家。本名、ジェイコブ・ガーショヴィッツ(Jacob Gershowitz)。ポピュラー音楽・クラシック音楽の両面で活躍しアメリカ音楽を作り上げた作曲家として知られる。通称『完璧な音楽家』。
pari-ame-George_Gershwin.jpg【略歴】
1920年代以降は、作詞家となった兄アイラ・ガーシュウィンと組んで、レビューやミュージカル向けに多くのポピュラー・ソングを送り出した。ガーシュウィン兄弟によって作られ、後年までスタンダード・ナンバーとして歌われている歌曲は『私の彼氏(The Man I Love)』『バット・ノット・フォー・ミー』『アイ・ガット・リズム』などをはじめ、おびただしい数に上る。
クラシックにも取り組み、1924年には『ラプソディ・イン・ブルー』(Rhapsody in Blue)を発表。当時ガーシュウィンにとって管弦楽法は未知領域だったためファーディ・グローフェの協力を得て、ジャズとクラシックを融合させたこの作品は「シンフォニック・ジャズ」の代表的な成功例として世界的に評価された。
その後独学でオーケストレーションを学び、いくつかの管弦楽作品を残した。そのひとつ『パリのアメリカ人』(An American in Paris、1928年)もよく知られている。(wikipedia引用)


では、何で満点じゃないのというと、この映画にはアメリカ文化の悪いところも同時に現れているように思うからなのです。
pariame-lautrec.png
その悪いところというのが、この映画の売り物、ラスト『パリのアメリカ人』をバックに踊る18分間のダンスシーンに現れていると、個人的には思えるのです。

それというのも、確かにこの18分はそれまでのミュージカルとは一線を隠した「芸術的なダンス」として世間の高い評価を受けています。

なるほど、そのクライマックスは曲との相乗効果で、確かにアーテイスティックな洗練も感じられます。
終盤近く18分のダンスの一部

それでもしかし、このラストのダンスは、そもそもハリウッドミュージカルのダンスでしょうか?

これは「バレエ」と呼ぶべきではないですか?
USA-flag.png
ここにアメリカ人の「ヨーロッパ文化」コンプレックスを見るように思うのです。

そもそもこのダンスがあったからこそのアカデミー賞受賞のようにも思えるのですが、この「バレエまがい」のダンスに、私はそれほど感動できませんでした。

やっぱり、ジーン・ケリーに全身タイツは似合わないって・・・・・・・
ジーン・ケリーの全身タイツ
ロートレックの絵の中に入って、踊るバレエ的なダンス。
しかし、個人的にはハリウッド・ミュージカルとは違う表現だと感じる。

この18分には、それまでハリウッドが大衆に対して提供してきた、「明るく楽しい娯楽」を個人的には感じられなかったのです。

そして、ハリウッド・ミュージカルからその長所がなくなれば、その輝きは失われてしまうと思うのです。

さらに言えば、アメリカ・ミュージカルの音楽のベースはアフリカ系アメリカ人がもたらしたブルースにあり、アップテンポなダンス表現もブラックカルチャーが色濃く反映しています。

ニコラス・ブラザースのダンス
ニコラス・ブラザーズ(Nicholas Brothers)は黒人の兄弟のタップダンスチームで、1930年代後半から40年代頃までハリウッド映画に多く出演。(下は1942年)

1985年アポロ劇場のサミー・ディヴィス・Jrとタップダンサー

上の動画を見ればハリウッド・ミュージカルが、ブラック・カルチャーとヨーロピアン・カルチャーのどちらに近いか一目瞭然ではないでしょうか。

pariame-pos.jpg
そんなアフリカ大衆が歌って踊った、お祭りのような華やかさこそ、ミュージカルの真髄だと思います。


そういう意味で言えば、ヨーロッパの王侯貴族を楽しませるための、「バレエ」や「クラシック音楽」とは水と油とさえ言いたくなります。


ま〜そういうわけで、映画というジャンルで最も映える「ハリウッド・ミュージカル」というスタイルを確立したのに、わざわざ映画的でない踊りをする事は無いでしょ?

アメリカ人がヨーロッパの洗練に憧憬の念を持つのは、自らの文化にない伝統や格式を求めるスノビズムからだと思うのですが・・・・・・・
「ハリウッド・ミュージカル」を最高と思う私にとっては、欧州の要素はジャマでしかないのです。

そんなわけで、この映画から☆一つ減らさせて頂きました。

えっ〜と・・・・・余計な話ですが、じつはジーン・ケリー欧州スタイルで売ってたフレッド・アステアのダンスに憧れてたりして・・・・最後のダンスはなんかアステアっぽい・・・・・

もっともアステアがヘップバーンと出た、『パリの恋人』というミュージカルがありました。
が、これも今一つで・・・・・・アステアといえども「ミュージカルと欧州」は「水と油」のようで・・・・・
フレッド・アステアとオードリー・ヘップバーンが共演した『パリの恋人』


そしてさらに決定的な証拠を提示すれば、この映画のバレエ的な要素を本当のバレリーナが踊る「パリのアメリカ人」が有りますが、明らかにジーン・ケリーのバレエ的な踊りよりも、訴求力があります・・・・

バレエ的なダンスを本当のバレエダンサーと較べてみると、ジーン・ケリーの体の線が気になります。やはりジーン・ケリーの持ち味とは、違う踊りだったように思えてなりません・・・・・・


やっぱり『雨に唄えば』がジーン・ケリー、いやハリウッド・ミュージカルの最高傑作だと私は思います。

関連レビュー:
『雨に唄えば』
ハリウッドミュージカルの傑作
ハリウッドミュージカルの歴史


関連レビュー:
『ラ・ラ・ランド』
新時代のミュージカル
デイミアン・チャゼル監督の秀作


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以降の文章に

巴里のアメリカ人・ネタバレ

巴里のアメリカ人・ラストシーン

とを含みますので、ご注意下さい。
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(あらすじから)
空想から醒めたとき、ジェリーはパーティー会場に戻ってくるリズを見つけた。
実はアンリは2人の話を立聞きし、ジェリーとリズが愛し合っていることを知って、自ら身を引いたのだ。
そして、2人は晴れて結ばれたのだった。


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posted by ヒラヒ at 20:45| Comment(4) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは( ̄▽ ̄)ジーン・ケリーさんの「雨に唄えば」は最高ですね♪オードリーさんの激しいダンスは引きました(笑)すごいなぁ〜タップダンスは「座頭市」で観た時(そこのシーンのみ)驚きました(笑)
Posted by ともちん at 2017年03月06日 22:03
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)「雨に唄えば」はハリウッドという気がします🎵オードリーは留学して学ぶほど、本格的なバレリーナだったんです。気合い入りすぎてますよね(^^;タップは黒人に限るという気がm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2017年03月06日 22:28
ミュージカルは『ラ・ラ・ランド』まであんまり好きじゃなかったので敬遠していました。『ラ・ラ・ランド』で観てみようという気になりましたね。『雨に唄えば』もチェックしときます。
Posted by いごっそう612 at 2017年03月07日 07:21
>いごっそう612さん
ありがとうございます(^^)ミュージカルもなかなか楽しいですよ🎵『雨に唄えば』は古典ですので地道にアクセスがあります(^^)
Posted by ヒラヒ・S at 2017年03月07日 11:09
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