評価:★★★★ 4.0
この映画を見て、ティム・バートンのファンタジーに対する、信頼の高さを感じて胸が熱くなりました。
<ビッグ・フィッシュあらすじ>
ジャーナリストのウィル(ビリー・クラダップ)は、自分の結婚式で父エドワード・ブルーム(アルバート・フィニー)が人を喰ったような「ビッグ・フィッシュ」の話で客から喝采を浴びたのを見て、ウィルは毎度の振る舞いに父に怒り、それ以来二人は仲たがいをしていた。なぜなら父エドワードから、母との馴れ初めや、未来を予見する魔女(ヘレナ・ボナム=カーター)や、若き日の冒険(ユアン・マクレガー)や巨人カール(マシュー・マグローリー)、危険な森とその先の美しい町など、とても本当とは思えないない話を幼少より聞かされ続けてきたからだ。
しかしある日、母親のサンドラ(ジェシカ・ラング)から、父の病状が悪化したとの連絡を受け、ウィルは出産を控えた妻、ジョセフィーン(マリオン・コティヤール)と共に帰省する。エドワードは既にベッドで寝たきりで過ごし、それでもファンタジックな思い出話を語っていた。ジョセフィーンはサンドラとの恋愛話を聞かされ、その恋に感激する。
だがウィルはそれを作り話だと言い、そんな嘘を言う父に対し「本当の父を知りたい」と怒り苛立つ。しかしそんな時、ウィルはエドワードの話に事実も含まれていることに気付く。ウィルの心に変化が訪れようとした時、エドワードの様態は急変する・・・・・・・・・
(アメリカ/2003年/上映時間125分/監督ティム・バートン/脚本ジョン・オーガスト/原作ダニエル・ウォレス)
【ビッグ・フィッシュ出演者】
エドワード・ブルーム(回想):ユアン・マクレガー
エドワード・ブルーム:アルバート・フィニー
ウィル・ブルーム:ビリー・クラダップ
サンドラ・ブルーム:ジェシカ・ラング
サンドラ・ブルーム(回想):アリソン・ローマン
ジェニファー・ヒル / 魔女:ヘレナ・ボナム=カーター
ジョセフィーン・ブルーム:マリオン・コティヤール
巨人カール:マシュー・マッグローリー
ミルドレッド:ミッシー・パイル
エージェント:ディープ・ロイ
ベネット医師:ロバート・ギローム
ノザー・ウィンズロー:スティーヴ・ブシェミ
エーモス・キャロウェイ団長:ダニー・デヴィート
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ビッグ・フィッシュ感想
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ビッグ・フィッシュ感想
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この監督の作品にしては珍しく、現実世界の比重の方が多く、その現実世界の父と息子の確執が語られます。

その確執の原因が「父親のホラ話」で、息子は「父の話」に食傷し、「いつもホラばかり吹いていて、父さんの本当の姿が見えない」とすら言います。
つまりは、ここで語られているのは「実像」と「虚像」との関係だと整理できるのではないでしょうか。

例えば、息子の立場に立てば父親は、自分の「実像」よりも大きな「虚像」をそのホラ話によって作り出していると見えるわけです。
しかし人は多かれ少なかれ、自らを装飾して生きているに違いありません。
つまるところ人の性格や本質ですら、他人との関係によって形成される「仮面」だというのが心理学の定説のようです。
そう考えた時、この父親が周囲の人に好かれ、社交的である原因がこの過剰な粉飾による「虚像」の創造によっていると思うのです。
この父親を「嘘つき」だと断じる事はたやすいことですが、人は皆、上記の心理学から言えば、嘘つきなのであり、どうせ真実でないのであれば皆の喜ぶ形にして提示すべきだと語られているように思います。
その証拠にこの映画の「虚像」としての「ホラ話」が、なんとファンタスティックな事でしょう。
その細部にまで至る「嘘」の作り込み、ビジュアル化は、ウットリするほど魅惑的です。
一面の水仙の中での恋の告白
【意訳】
サンドラ:なんて幸せ/エドワード:好きな花に囲まれた気分は/サンドラ:どうやって集めたの?エドワード:五つの州の隅々まで声をかけた。僕の妻が結婚してくれる唯一の方法だって。サンドラ:私のこと良く知らないのに?/エドワード:僕の人生の安らぎは他にないよ。
(ジョンが向かってくる)サンドラ:彼を傷つけないで/エドワード:君が望むなら。
ジョン:ここで何をしているんだ!俺の彼女に何してる!/エドワード:彼女が誰かのモノだって知らなかった。(ジョン殴る)ジョン:どうした!殴り返すのが怖いのか!/エドワード:僕は約束した/サンドラ:ジョン止めて!/エドワード:あんなに殴られたことは人生で初めてだった。でも奴も罰が当たった。体の全ての活動は先天的な心臓弁の不全で止まった。つまり心臓は弱かった。/サンドラ:止めて!あなたとは結婚しない!指輪が欲しいんでしょう!彼はほとんど知らない人、でもあなたより彼を選ぶ。
明らかに、ティム・バートン監督はつまらない「実像」よりも、華麗な「虚像」を愛しているのだと感じます。

その「虚像=ファンタジー」に対する愛は、往々にして過剰で偏執的という世界にまで踏み込まれ、ついには全編ファンタジーで埋め尽くされてしまいます。
しかしこの映画におけるティム・バートンは「つまらない現実よりも素晴らしい嘘を描く」と直截に宣言するために、現実と虚構の対比を描いたのではないかと想像しました。
この映画には、そんなティム・バートンのファンタジーに対する信頼が表現されていたように思います。
このファンタジックな世界はミュージカルとなっても魅力的です。
ブロードウェイ・ミュージカル「ビッグ・フィッシュ」予告
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以降「ネタバレ」と「ラスト」を含みますので、ご注意下さい。
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この現実主義者の息子と誇大妄想的な父親はどうなったでしょう?

実は、父の話に真実も含まれていたと理解した息子が、父は丸っきりの嘘つきではなく、人々を楽しませようとして話を大きくしていたのだと理解し和解します。
その和解は死に行く父に向かって、現実主義者の息子がファンタジックな父の人生を語る、感動的なシーンです。
これこそは、人の死をも含めた「人間の痛み」をファンタジーが癒しえる事の証明だったはずです。
つまり「ファンタジーとは愛」なのです・・・・・・
父の臨終で語られる息子の「ホラ話・父の一生」
【意訳】
ウィル:父さん待っている皆が見えるかい?・・・・・・・・つまり・・・・・・みんなだ・・・・・・信じられない。
エドワード:我が人生の物語だ。
ウィル:不思議だけど、悲しい顔が見当たらない・・・・・・みんな父さんに会えて喜んでいるよ・・・・・・みんな盛大に見送ってる。
エドワード:みんなさようなら!サラバ!あでゅー (川に入る)愛しい人は川の中に
しかしそれであれば、この父親が話していた内容がまんざら嘘ではないと語ることで、物語としての「許し=カタルシス」を描く必要があったのかという疑問を個人的には感じました。
「ビッグ・フィッシュ」ラストシーン
葬儀には父の話していた登場人物が会葬に訪れる。
【意訳】
ウィル(ナレーション):一つのジョークを何が面白いのか分からなくなる位、何度も聞かされたことがあるだろうか?しかし、それが、突然始めて聞いたように響くことがある。なぜそれを最初に愛したかを思い出すのだ。
(プール)ウィルの息子:おじいチャンは15フィートの巨人と戦ったんだ。/他の子:うそだ!/ウィルの息子:お父さん!そうでしょ!/ウィル:まあねそんな話だ/ウィルの息子:ほら。巨人でもおじいチャンは闘ったんだ。だっておじいチャンは、ガラスの眼を持つ老女のおかげで、どう死ぬか分かっていたから・・・
ウィル(ナレーション):それは、父の最期の冗談だと思う。一人の男が彼の物語を何度も語ると、彼自身が物語りになる。彼が死んだ後も、永遠に生きつづける。
むしろ矮小な現実を提示し、その現実をどういう形でファンタジックに変容せしめたかを描くことで「つまらない現実よりも素晴らしい嘘を描く」というテーマがハッキリし、同時に子から父の「許し」も鮮やかになったように思うのです・・・・・・
生意気言ってスミマセン・・・・
そんなワケで★一つをマイナスさせていただきます。
ビッグ・フィッシュの挿入歌、パール・ジャムの歌う「Man of the hour」
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ありがとうございます(^^)えっ!ブログどこらへんが脚色なんですか?本当はAKBの一員だったり・・・・それはそれとして、この映画はファンタジーの絵作りが凄いですm(__)m
ありがとうございます(^^)ティム・バートンはファンタスチックな絵が圧巻です!ネタバレとラストで当分攻めようかと・・・しかし上手くはまらないケースが多いですm(__)m