評価:★★★★ 4.0点
最近、ハリウッド映画に『実話モノ』が増えたような気がするのは、私だけでしょうか?
この映画もそんな一本です。
エリン・ブロコビッチの半生を描いたこの映画は、実録ゆえの説得力と、ジュリア・ロバーツのタフなキャラクターの演技が感動を呼びます。
<エリン・ブロコビッチあらすじ>
離婚歴2回、3人の子持ち無職のシングルマザーのエリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)は、貯金も尽きかけて、求職のための面接の帰り自動車事故に巻き込まれた。100%勝てるという引退間際の弁護士のエド(アルバート・フィニー)に依頼するが、和解金を取り損ねた。怒ったエリンはエドワードの法律事務所へ押しかけ、和解金の代わりに自分を雇えと強引に働き始める。
事務所で書類整理をしているとき、大手企業PG&E社が、建物購入に際し住民の健康診断書が添付されていた事に疑問を持つ。エリンは、現地調査に出向き、住民の声を丹念に拾い、PG&E社が有害物質を周辺地域に垂れ流していることを確信する。
しかし孤軍奮闘の努力は報われず、エドの理解も得られなかったが、病に苦しむ住人を救いたいという信念のもと、被害者達に提訴するよう働きかけ600人以上もの署名を集め、ついにはエドも本格的にその問題に向き合う事となる。またエリンの家庭の面倒は、隣家のジョージ(アーロン・エッカート)が見てくれるようになった。周囲の協力と、被害者住民の信頼を背景に、エリンは大企業と交渉の場に望むのだった・・・・・(下・エリン・ブロコビッチ予告)
(アメリカ/2000年/131分/監督スティーヴン・ソダーバーグ/脚本スザンナ・グラント)
ジュリア・ロバーツにアカデミー主演女優賞
<エリン・ブロコビッチ感想>
この映画だけの情報で言えば、エリン・ブロコビッチと言う人は、アカデミックな法律知識のない、シングルマザーの、いわばヤンキー(不良の意味です)上がりのような、考えるより前に突っ走ると言うような人でとして描かれています。
そんな体当たりの現場主義が、頭でっかちのエリート弁護士達を叩き潰すという痛快娯楽作品です。
やはり、この現代を生きる、自立した女性としてのパワフルさがこの映画の魅力でしょう。
これによって、シングル・マザーや、子供を抱えて日々大変な思いをしている母親達の心に訴えることができますし、更に大きく捕らえれば働く女性の希望として見る者の心を打つと思います。
また、貧困層を代表するようなこの主人公が、富裕エリート弁護士と大企業を相手にして、徒手空拳で戦いを挑み勝利する構図に、人口の大多数を占める一般庶民を満足させる、下克上の爽快さが味わえる作品になっています。
そして、これが実際にあった物語だということで、この映画のメッセージを強く大きくしていると思いました。
【現実のエリン・ブロンコヴィッチ】
エリン・ブロコビッチ(Erin Brockovich, 1960年6月22日 - )は、アメリカ合衆国の環境運動家。正式な法律教育を受けていないにもかかわらず、1993年にカリフォルニア州の大手企業PG&Eを相手取って訴訟を起こし、3億3300万ドルの和解金を勝ち取った女性。
エリン・ブロコビッチはカンザス州ローレンスで生まれ、カンザス州立大学で学んだ。卒業後に働き始めるがすぐに辞め、お金のために美人コンテストに参加するようになる。1981年にミス・パシフィック・コーストになるが、1982年にはカリフォルニアへ移った。(Wikipediaより)
実際、彼女の自伝によるとこの映画以前の結婚や苦労は相当のもので、パニック障害や拒食症、事故による脊髄ヘルニアなど苦労の連続だったようです。また、この和解の勝利の後もお金を巡るトラブルに巻き込まれたりといろいろ起きたようですが、自分の中にある力を信じようと訴えています。
[カメオ出演するエリン・ブロコビッチとエド・マズリー]
ウェイトレスを演じているのが現実のエリン・ブロコビッチ、ジュリア・ロバーツの後ろに座っているのがエド・マズリーです。
そもそも「本当にあった○○」という語り口は、物語にリアリティを与える最も確実な方法です。
しかし、映画や文芸作品まで範囲を広げても「ノンフィクション=非虚構=事実」より、「フィクション=虚構」の方が圧倒的に多い理由を不思議だとは思いませんか?
(右/現実のエリンとエド)
もちろん昔は世間が狭くて、広く共有される事件や人物が少なかったという事情は有るかと思います。
しかしそれ以上に、「物語」という「フィクション=虚構性」が持つ優位な点があって、それゆえ「フィクションの構造」が力を持っていたため、これだけの数の作品が作られてきたのでしょう。
そんな「ノンフィクション」に無くて「フィクション」にある優れた力の一つに、「原理=理想」の提示というものがあるように思います。
つまり、現実という複雑な状況の集積を基にすれば原因と結果の因果関係が曖昧にならざるを得ませんが、フィクションであれば「理想」を語りやすい設定、筋立て、キャラクターも含め、明確に主張を表現できます。
そして、科学的知見の集積が少なかった時代には、世界全体がカオスとして人々の前に広がっていたはずです。
そんな、混沌として先の見えない世界を、裁断し、整理し、秩序を与えるためには、虚構の形式で世界を単純化するしかなかったと思うのです。
そんな「原理=理想」の典型が神や悪魔、天国と地獄ではなかったでしょうか・・・・・・
そう考えたとき、最近「ノンフィクション」が増えてきた理由とは、人々が何らかの「原理=理想」、たとえば「神」「愛」「夢」「平和」等々の「真・善・美」、を求める心が弱くなったことの証左のようにも思うのです。
この映画ではその「原理」を、環境問題や、弱者救済、正義という言葉に置き換えられる内容を表わしてはいます。
しかし、それらの「原理」を超えてこの映画が最終的に主張するのは「金=マネー」でした。
かつて人々に求められた「勝利」とは、「真・善・美」であったはずですが、それが今や「金銭」になったという事を、この映画は如実に表わしているように思います。
そんな意味も含めて「現代の英雄」を描いた、「実録映画」の秀作だと思います。
エリン・ブロコビッチのテーマ曲/ シェリル・クロウの歌う「Everyday Is A Winding Road」
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以降
『エリン・ブロコビッチ』ネタバレ
を含みますので、ご注意下さい。========================================================
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エリン(ジュリア・ロバーツ)は、全米史上最高の和解金350億円を原告団のため獲得しました。
そして、大きくなった法律事務所で窓際の個室を与えられたエリン。
この映画のラストは、ボスのエドからボーナスをもらうところで終わります。
エリン・ブロコビッチのラスト・シーン
<意訳>
エリン:分かった、ありがとう。どうしたの?
エド:ボーナスを持ってきた。でも覚悟して欲しい。我々が話し合った金額じゃない・・・・
エリン:なんで?/エド:後で良く考えてみたんだが、適切な金額じゃない。君は承服し難いかもしれないが、私を信じて−/エリン:あなたを信じて欲しいって?偉そうなこと言わないであなたは分かってない。/エド:話がややこしくなったが、やることをやった/エリン:はっきりしてる。ややこしくなりっこない。弁護士はいつも揉めさせるけど、ややこしくしないで!だから弁護士は卑劣だって言われるのよ!なんてケチなの!私はケトルマン訴訟の賠償金を2倍にしようと、子供を預けて住民を説得してるっていうのに、ボーナス・カットしようと言うの!これ以上引っ掻き回さないで!問題は金じゃない―
エド:小切手を置く/エリン:私のやった仕事はもっと価値が−
エリン小切手を見る200万ドル(1ドル100円換算で2億円)の文字。
エド:言ったろう、よく考えて、前の金額が適切だと思えなかったから、増やした。
エド:ビューティークィーンって謝り方を習わないのか?実にムカつくね。
エドから、破格のボーナス「2億円!」を受け取ったエリン。
おめでとう!!エリン!!!
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ありがとうございます(^ ^)ジュリアロバーツのアカデミー賞受賞作です・・・本当にあった話だと思えば、勇気をもらえる映画だと思いますm(__)m
映画業界はネタ不足なのか?確かに実話映画多くなった様は気がしますね。
ありがとうございます(^^)確かに実話であれば、話題のニュースを取り上げれば、観客は増えるような気はしますね〜おかげさまで、検索からアクセスが増えてきました・・・タイトルの件は、シーサーブログだと設定できないような・・・・研究しますm(__)m