評価:★★★★ 4.0点
トムクルーズ主演の、この映画。
トム・クルーズが、真剣に日本と武士道に向き合ったことが、映画を見ると伝わってきて胸が熱くなります。
<ラスト・サムライあらすじ>
アメリカ南北戦争の英雄ネイサン・オールグレン(トム・クルーズ)は、戦争やインディアン掃討のトラウマに悩み酒びたりの日々を送っていた。そんな彼に明治維新政府より、西洋式軍隊調練を依頼され来日する。
兵の訓練が進む中、反政府士族勝元盛次(渡辺謙)率いる一団が鉄道を襲い、オールグレンに、まだ訓練が未熟な部隊を率いて、出動するよう命令が下る。戦いはオールグレン側が壊滅的な敗北を喫し、同僚のガント(ビリー・コノリー)は戦死し、オールグレンは勝元らの捕虜となった。
オールグレンは、勝元や、彼の妹たか(小雪)武士の氏尾(真田広之)らと暮らすうちに、侍たちと絆を深めて行く。そして武士道に惹かれ、たかに惹かれていく中、新政府の大村(原田眞人)の忍者部隊に村祭りの晩に襲われ、オールグレンも共に闘い仲間として受け入れられる。
春になり維新政府より、勝元やオールグレンに天皇の名において、上京の命令が下り赴いたところ、政府の大村により勝元は謹慎処分となる。その勝元を仲間が救出させるが、その中で勝元の息子信忠(小山田真)は落命する。ついに反乱軍と政府軍が衝突することが避けられなくなり、オールグレンも勝元と共に戦いに赴く・・・・・・・
(アメリカ/2003年/154分/監督エドワード・ズウィック/脚本エドワード・ズウィック,マーシャル・ハースコヴィッツ,ジョン・ローガン )
さすがに、バリバリのハリウッド作品。
一点の曇りも無い、完璧な技術で見る者を、このサムライの規律の中に殉じたいとすら思わせる出来あがりです。
日本人から見ても、まるで邦画かと見間違えるほど、おかしな所が在りません。
なぜ忍者というご意見もあるかもしれませんが、実はアメリカ側スタッフも忍者は時代考証的に間違いだと認識した上で、それでも忍者は描きたいという意向だったようです。
それよりもこの腰の据わった剣さばき、体さばきの見事さに感動します。
この、しっかり剣道を修めた立ち居振る舞いに、この映画の日本文化に対する敬意を感じます。
その誠実さが、武士道の持つ形の美しさ、そして精神性に反映され、見事ととしか言いようがありません。
トム・クルーズが、真剣に日本と武士道に向き合ったことが、映画を見ると伝わってきます。
それが最も端的に示されているのが、主人公と小雪演じるヒロインとのラブシーンです。
ラブシーンと言いながら、実は服の着替えを手伝うシーンに込められた沈黙の内の交情です。
これはもはや伝統美の世界です。
主人公オールグレンとたか(小雪)の日本的ラブシーン
この沈黙の内に心を通じ合わせる姿には、日本文化に対する深い「リスペクト=尊敬」が秘められていると感じます。
しかしそれゆえに、映画としての訴求力が、通常のハリウッドブロックバスター映画に較べれば、落ちたようにも思うのです。
たぶん、トムクルーズは武士道を映画の題材として描こうとしたときに、その深い世界に、強い精神性に、誠実な規律に、強い印象を受けたのではないでしょうか。
そして武士道を正しく伝えようとすればするほど、その世界観に過剰に囚われてしまったように思うのです。
そしてついには、武士道を描くという一点を誠実に表現することと引き換えに、映画としてのエンターテーメント性を抑制したと、個人的には感じられたのです。
やはりラブシーンは、激しく抱きしめて、深くキスをして、というのが映像的には華やかであり、映画に相応しい表現ではないかと思うのです。
この、地味な文化、世界的な辺境である日本の時代劇、しかも西洋的な世界観に立脚していない異文明を、世界のマーケットを相手にするハリウッド映画コンテンツが描くことは、何も有利な要素はないようにすら思います。
つまり、トム・クルーズは自らプロデューサーを務めたことでも分かる通り、経済的リスクやハリウッド・スターとしてのキャリアを危険にさらしてでも、この映画を撮るべきだと考えて頂いたのだと信じております。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」という言葉がありますが、トム・クルーズがこの映画を「商業映画的な死を覚悟して」でも、利益は度外視して撮ったのだとすれば、その志こそ尊く気高いものだと思うのです。
それでは、結果はどうだったでしょう・・・・・・・・・
実を言えば、興行的にもそこそこ成功だと言って良いでしょう。
制作費 $140,000,000に対して、全世界興行収入$456,758,981で、2003年公開作品の中で20位ということで、ハリウッドコンテンツとして大ヒットとはいえないにしても、ヒット位の評価はあってしかるべきでしょう。
この難しい題材を、世界中に訴求できるドラマとして構築した、この映画のスタッフに賛辞を送りたいと思います。
しかし、この映画の世界観であれば日本映画界でも作り得るとも思うのです・・・・・
やはり成功の鍵はハリウッド・スター、トム・クルーズのオーラにこそ求めるべきでしょう・・・・・・
トム・クルーズの挑戦はまさに「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の、武士道の真髄を体現したものだと思います。
謹んで「ラスト サムライ」の称号をトム・クルーズ氏に進呈せんと存じ上げ申し候。
マイナス★一つは、映画としての訴求力が、日本文化を優先するあまり落ちていると感じるがゆえに、映画表現力として減点しました。悪しからずご了承下さい。
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ありがとうございます(^^)しっかりとしたお侍さんです。正直「るろうに剣心」より、ズットお侍です、ハイ(^^;
素晴らしい役者ですね!
勝元なんかの薩長下級成り上がり武士のお下品さを見ていると天下泰平の鎖国時代が日本の歴史において最高の時代だったと思わずにはいられません。
沈黙の恋愛、このシーンを見て思い出したのは映画『青いパパイヤの香り』まだ知らない秘めたるものがアジアにはまだあると妄想するのが旅の原動力かもしれません
ありがとうございます(^^)
まじめに撮っていただいていますよね。
相当しっかり、練習したらしいですね〜
サユリなんかに比べれば、日本から見た違和感は少ないですよねm(__)m
ありがとうございます(^^)
真田広之は今日本で一番お辞儀がキレイな俳優だと思います。
しっかり、剣道修行している成果でしょうか。
なるほど鎖国体制こそ日本人にとって、もっとも居心地のいい体制なのかもしれませんね・・・だから官民一体で外人排斥しちゃうのかしら?
旅をして日本に興味がないという西洋人に対する話題にはなりそうですね・・・・