評価: ★★★ 3.0
この映画の最後に、主人公の政敵が「ノブレス・オブリージュ」と口にします。
これは「貴族=選民の義務」と訳されることが多いようですが、本来的には「貴族の賜いし、下々への恩恵」ということらしく、つまりは「偉い人間は弱者を助けなさい」というボランティア的な意味合いだったようです。
<アメイジング・グレイスあらすじ>
18世紀奴隷貿易全盛のイギリス。富裕商人の家に生まれたウィリアム・ウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)は成長し、イギリスの交易の柱であった奴隷貿易を、非人道的だという思いから反対する。彼は聖職者か政治家かで進路を迷い、『アメイジング・グレイス』の作詞をした宗教家ジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)に相談すると政治家として世界を変えろとアドバイスされる。ウィルバーフォースは、21歳の若さで議員となり、盟友の英国首相ウィリアム・ピット(ベネディクト・カンバーバッチ)と共に、奴隷貿易廃止を訴える。賛同する仲間にトマス・クラークソン(ルーファス・シーウェル)、貴族出身で奴隷経験者のオラウダ・エクィアノ(ユッスー・ンドゥール)、いとこで下院議員のヘンリー・ソーントン(ニコラス・ファーレル)らがいた。彼らは1787年活動を開始し、熱心な運動の甲斐があり1年足らずで世論に影響を与え、39万人もの世論の支持を受けた。ついに1791年には国会に奴隷貿易廃止案を提出するが、しかし奴隷貿易賛成派の反対により否決される。落胆からウィルバーフォースは病に伏せ、ヘンリー邸で静養を余儀なくされる。そんな時、バーバラ・スプーナー(ロモーラ・ガライ)を紹介され恋に落ちる。バーバラの助けもあって、再び奴隷貿易に対する闘いに挑むことを決意する。ウィルバーフォースは国会の審議にあたり、前回の失敗を繰り返さぬよう一計を案じた・・・・・・・
(イギリス/2006年/118分/監督マイケル・アプテッド/脚本スティーヴン・ナイト)
階級社会のイギリスにおいて貴族が使う「ノブレス・オブリージュ」という言葉は、上から目線の傲慢な響きがあるようにも思います。
そういう中で、この映画の主人公「ウィリアム・ウィルバーフォース」は貴族ではありません。
富裕な商人の家に生まれた金持ちのお坊ちゃんです。
ウィリアム・ウィルバーフォース(William Wilberforce、1759年8月24日 - 1833年7月29日)は、イギリスの政治家、博愛主義者、奴隷廃止主義者。奴隷貿易に反対する議会の運動のリーダーを務めた。(Wikipediaより引用)
【ウィリアム・ウィルバーフォース奴隷廃止運動】
1785年、霊的な啓示を受け神のために生きることを誓った。彼が師事した一人が、福音主義運動のリーダーで英国国教会の聖職者、ジョン・ニュートンJohn Newton(アメイジング・グレイス作詞者他)だった。
1787年から1807年まで毎年のように奴隷貿易法案を提出し続ける。
そして20年に渡る執念の運動が実り、ついに1807年02月23日に庶民院の第2読会において、法案は283対16で可決される。
最終的に1807年3月に国王の裁可を受け、イギリス議会で奴隷貿易法が成立しイギリス帝国内での奴隷貿易を違法と定めた。
この主人公がキリスト教的倫理観から議会において闘い続け、ついに奴隷廃止に持ち込むわけですが・・・・・
この映画ではその理由として、主人公がキリスト教の持つ正義ゆえに奴隷という制度を許せなかったと描かれます。
歴史的にいえば、「ウィリアム・ウィルバーフォース」の主張する奴隷反対は、国民大衆の意見を代表したものであり、奴隷制を維持しようとする勢力が「貴族階級」であるとき、富裕市民と貴族階級の抗争という面もあるようです。
また奴隷制廃止の原動力も、キリスト的な人道主義・理想主義に原因を求める研究者と、現実的な経済原理による損得の力が大きく作用したとする論者の意見も、いまだに論争の決着はついてないということです。
確かに、この主人公に限って言えば
高潔な正義を追求して、
偉人と呼ぶべき人物である事は疑問の余地はなさそうです。
しかし、私みたいなヘソマガリには、この主人公が「美しいもの=真・善・美」を求めるのは、それに対応する「影」を自らの内に持っているのではないかと、つい考えてしまうのです。
それが、家族的な問題なのか、自らの階級に対するモノなのか、過去の経験にあるのか、この映画では語られていません。
しかしそれは「映画=映像を主体とした劇」の形で語ろうとしても、なかなか伝記的な内容を伝えるというのが困難であるという事情を表していいるように思うのです・・・・
詳細な業績を描くには大雑把すぎ、人間的なドラマを前面に出せば歴史的事実が疎かになりそうで、結局バランスを取ってスゴイ仕事をしたスゴイ人という描き方になってしまうように思います。
そういう意味でいえば、結局ある人物のプロモーション・ビデオとでもいうべき内容にしかなり得ないのではないかと思います。
そのプローモーション=拡販活動でいえば、ビジュアル的な魅力は感じられたのですが、肝心の歌が今一つ届かなかったと感じたもので、個人的には☆三つ位の営業力という・・・・・そんな評価です。
そしてそれはまた、この映画の題名となった名曲「アメイジンググレイス」のプロモーションビデオとしても、さほど効果的とは思えません。
そこで不肖、私がプロモートしちゃおうかという・・・・・
題して「アメイジング・グレイスの魅力のすべて」
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アメイジング・グレイス(英語:Amazing Grace、和訳例:すばらしき恩寵)は、イギリスの牧師ジョン・ニュートン (John Newton,1725–1807)の作詞による賛美歌である。特にアメリカ合衆国で最も慕われ愛唱されている曲の一つであり、またバグパイプでも演奏される。"grace"とは「神の恵み」「恩寵」の意。(Wikipediaより引用)===========================================================================
有名な宗教家そして歌手でもあるウィントレイ・フィップスが
解説し歌う「アメイジング・グレイス」の動画が感動的
ウィントレイ・フィップスのこの曲の解説が素晴らしい。
以下、動画の語りの大意を訳しています、適当ですが参考まで
ゴスペルのメロディーはピアノの黒鍵、五音階で作られています。
初期のアメリカでは”スレイブ・スケール”(奴隷音階)と呼ばれていました。
白人のドレミファソラシドの七音階とは違う、黒人の持つメロディーです。
ゴスペルとは白い魂と黒い魂が結び合ったもので、「Amazing Grace」も例外ではありません。
この詞を書いたのはジョン・ニュートンはクリスチャンになる前は奴隷船の船長でした。
私はジョン・ニュートンがその船で黒人の歌をたくさん聞いて、そして西洋とアフリカの魂がつながったのだと信じています。そして「Amazing Grace」を書いたのです。
アメリカ議会図書館で調べても作曲者は不明と書かれていますが、まさしくそれは名前もない奴隷達なのです。
”スレイブ・ノーツ”にジョン・ニュートンが作詞したのが「Amazing Grace」です。神の御慈悲により、この「Amazing Grace」で我々全てが結びついているのです。ハレルヤ!
この曲を歌う時、私は奴隷船で船底から響いた奴隷たちの歌のように歌いたいと思います。
あたかもジョン・ニュートンが初めて奴隷船で聞いた時のように。
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作詞者のジョン・ニュートン は黒人奴隷の「奴隷貿易」に携わり財を築く。
その奴隷貿易の輸送中、多くの奴隷が輸送先に到着する前に、病気や虐待、栄養失調などで死亡した。
ニュートンも同様の扱いを奴隷に対して行っていたが、ある日、船が嵐に遭い浸水、遭難寸前に陥った時、彼は必死に神に祈り、その船は運よく難を逃れた。ニュートンはこの日から神の恩寵に気付き、それ以降、聖書や宗教的書物を読むようになった。1755年、ニュートンは船を降り、牧師となり、そして1772年「アメイジング・グレイス」が作詞された。歌詞中では、黒人奴隷貿易に関わったことに対する悔恨と、それにも拘らず赦しを与えた神の愛に対する感謝が歌われている
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という事で・・・・・・・以下私の好きな 「アメイジング・グレイス」歌集
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スコットランドの魂を伝えるから澄んだ歌声
ケルティック・ウーマン の歌う 「アメイジング・グレイス」
ニュージーランド代表
ヘイリー・ウィンストン の歌う 「アメイジング・グレイス」
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【アメイジング・グレイス歌詞】
Amazing grace!(how sweet the sound)
驚くべき恵み(なんと甘美な響きよ)
That saved a wretch like me!
私のように悲惨な者を救って下さった。
I once was lost but now I am found
かつては迷ったが、今は見つけられ、
Was blind, but now I see.
かつては盲目であったが、今は見える。
'Twas grace that taught my heart to fear.
神の恵みが私の心に恐れることを教えた。
And grace my fears relieved;
そしてこれらの恵みが恐れから私を解放した
How precious did that grace appear,
どれほどすばらしい恵みが現れただろうか、
The hour I first believed.
私が最初に信じた時に。
Through many dangers, toils and snares.
多くの危険、苦しみと誘惑を乗り越え、
I have already come;
私はすでにたどり着いた。
'Tis grace has brought me safe thus far,
この恵みがここまで私を無事に導いた。
And grace will lead me home.
だから、恵みが私を家に導くだろう。
When we've been there ten thousand years,
そこに着いて一万年経った時、
Bright shining as the sun,
太陽のように輝きながら
We've no less days to sing God's praise
日の限り神への讃美を歌う。
Than when we've first begun.
初めて歌った時と同じように。
(Wikipediaより引用)
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日本代表
本田美奈子の歌う「アメイジング・グレイス」
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奴隷たちの運命をさかのぼって・・・・・・・
アフリカ大陸から
レディスミスブラックマンバーゾの「アメイジング・グレイス」
アメリカに渡りゴスペルに
ゴスペルの伝説的ソリスト、ハーワード"スリム"ハントの「アメイジング・グレイス」
ホイットニー・ヒューストンの歌う 「アメイジング・グレイス」最後にこの人、Mr.プレジデント・オバマ。
アメリカ初の黒人大統領の歌う 「アメイジング・グレイス」は、過去の過ちを超えて人類が成し得た進歩の証のようにも思います
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関連レビュー:ゴスペルの魅力いっぱいの映画 『天使にラブソングを』 ウーピー・ゴールドバーグの代表作 ゴスペルソング名演 |
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どえらいええ事言うたわ〜♪
凄いです!
執筆活動時間は何時間くらいですか?
自分は2時間くらいっすね。
ありがとうゴざいます(^^)本田美奈子さん白血病だったみたいですね〜そうですねいい歌声ですね・・・・・惜しい人を・・・・
やはり、この映画を見るともう執念に近いですからね〜やはり『ノブレスオブリージ』かと・・・・長すぎるかと反省していますm(__)m
ありがとうございます(^^)
長すぎて嫌がられれるんじゃないかと危惧しつつ・・・・・実を言えば、核となる記事が欲しいという思いがあって、クドクなっているような・・・・・・記事自体は前記事の焼き直しなので、写真とあらすじ補足情報を入れて、それでも3時間ぐらいはかかっているかも知れません(^^;)前記事がなくなれば、二日に一回の更新ペースに落とそうかと・・・・・・