評価:★★★★ 4.0点
もう半世紀も前の作品ですが、実は、このミュージカル映画はディズニーらしくないと、ず〜っと思っていました。
楽しく愉快な名曲に彩られた作品だと思いますが、ヤッパリ、ディズニー的なファンタジー世界とは違うと感じます・・・・
<メリー・ポピンズあらすじ>
ロンドンの厳格な銀行家バンクス氏(デイヴィッド・トムリンソン)と、政治活動に熱心な妻(グリンス・ジョーンズ)は、二人の子供をナニー(乳母兼教育係)に任せているが居つかない。新しいナニーを募集したところ、パラソルを開いたメリー・ポピンズ(ジュリー・アンドリュース)と名乗る若い女性が空から舞い降りてきた。彼女は不思議な魔法を使い部屋をかたずけ、大道芸人バート(ディック・V・ダイク)の道路上の絵に入って、遊ぶこともできた。子供達は大喜びし、明るくなったが、厳格なバンクス氏は気に喰わない。そんなある日メリー・ポピンズと子供たち二人は、父に会いに銀行に行き頭取に預金を迫られ小銭を取られます。それに対して子供達が「お金を返せ」と騒ぎ出したため、ついに預金の取付け騒ぎにまで拡大する。その責任を追求されバンクス氏はクビを言い渡される・・・・・
(原題アメリカ/1964年/139分/監督ロバート・スティーヴンソン/アニメーション監督ハミルトン・S・ラスク/脚本ビル・ウォルシュ,ドン・ダグラディ/原作・監修P・L・トラバース)
アカデミー賞に13部門にノミネート。主演女優賞、作曲賞、主題歌賞、編集賞、視覚効果賞の計5部門受賞
私の知っているディズニー作品は、シンデレラにしても白雪姫にしても、本来の民間伝承されてきた「おとぎ話」をキレイサッパリ漂白し、美しくて楽しい物語に書き換えていると感じていました。
それゆえ、口当たり良く、スムーズで、子供も親も害のない美しい物語として捉え、世界中に広まっていったと思うのです。
しかし、その反面このディズニーの漂白ファンタジーは、本来持つ「おとぎ話=ファンタジー」のもつ力を削いでしまったと考えざるを得ません。
ファンタジーの世界を語ったレビューです。
ギレルモ・デル・トロ『パンズ・ラビリンス』
そもそもファンタジーとは、キリスト教的「真・善・美」の正しい物語
から、はみ出した澱が固まったようなもので、それゆえ眼を背けるよう
な残虐さや、オドロオドロしさを持ち、人の無意識を刺激し、物語内で
人の持つ「負の感情を浄化」する事で、一種の社会的な安全弁として機能してきたと思うのです。
しかし、ディズニー映画にはその「負の感情の浄化作用」が無いのが不満でした。
さらに言えば、このデイズニー・ファンタジーという特殊な人工的作品を、ファンタジーの本来の形だと勘違いする人が多くなったような気がします。
そのおかげで最近のおとぎ話は、日本の伝承物語も含め、道徳的に悪い内容は浄化するという形で、ファンタジーの伝統に対する破壊的行為が平気で行われています。
そして、その責任は間違いなくデイズニーのせいだと思っています。
そんなディズニー作品にあって、この作品はメリー・ポピンズの出現によって、安定した世界が不安定になり、思いもかけない事態が発生します。
破り捨てたはずの募集のチラシを持って現れるメリー・ポピンズ
最初はまだ社会制度から距離のある子供に始まって、その歪みや異常は徐々に影響力を強くしていきます。
【スプーンフルシュガー】子供たちの夢を体現するメリーポピンズ
【スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス】無意味な歌詞が楽しい
【チム・チム・チェリー】
そしてついには、社会において最も信頼されるべき場所「銀行」の基盤さえ危うくします。
銀行の取り付け騒ぎのシーン
そんな不安定な社会に直面した品行方正な大人は、その異常な事態に人格を崩壊させ、そこで初めて真の自分の姿を発見するという、見事な昇華を見せます。
【凧をあげよう】厳格なバンクス氏が子供達と遊ぶ変化を見せる
これこそが「ファンタジー」としての、正しい力だと感動しました。
つまり正しく安定した制度によって生まれる社会的な歪みや影の部分を、反社会的な存在が開放してやり、社会の安定を取り戻す事こそ「ファンタジーの作用」として求められるものだったはずです。
その解放の過程が、これほど見事に描かれているディズニー作品を他に知りません。
けっこうそこに至るまでに、反社会的な事態が描かれるのですが、通常の清く正しいディズニーファンタジーでは決して描かれないシーンだと感じました。
それゆえ、この悪戯な家庭教師を描いた映画が、本当にディズニー作品かと疑っていたのです。
その疑問は、ようやく『ウォルト・ディズニーの約束』を見て氷解しました。
そこで原作者トラヴァースは「私の物語がハリウッドの軽薄さで台無しにされてしまう」、「アニメーションはダメ。ミュージカルなんて論外よ!」と、実に正当な主張を繰り広げました。
つまりは、原作者のトラヴァース女史が必死に「ファンタジーの伝統」を、「デイズニー的予定調和」に抵抗し、死守したのです。
もっとも「ウォルト・ディズニーの約束」もディズニー映画ですから「ディズニーファンタジーはファンタジーじゃない」とはさすがに言ってませんが・・・・そんなやりとりがあったんじゃないかと勝手に想像しています。
実際、トラヴァース女子はプレミア上映を観て、あまりにも意向を反映されていないと、上映の間じゅう泣きどおしだったといいいますガ・・・・・・・・
しかし、それゆえデイズニーらしくないディズニー・ファンタジーが生まれることになったのだと納得しました。
ビヴァ!!トラヴァ―――――ス!!!!!!!!!
<特報:メリー・ポピンズ続編決定>
『メリー・ポピンズ』続編、コリン・ファース出演か
英児童文学作家パメラ・L・トラヴァースの原作をベースに、米ディズニーが制作したミュージカル映画『メリー・ポピンズ』。その続編『Mary Poppins Returns(原題)』が映画『スノーホワイト/氷の王国』(16)の女優エミリー・ブラント主演で制作されるが、映画『英国王のスピーチ』(11)の俳優コリン・ファースが出演する可能性が出てきた。(中略)
実力派の豪華スター陣が集結した『メリー・ポピンズ』続編。キャストには他に、ブロードウェイ舞台『ハミルトン』の俳優リン=マヌエル・ミランダが点灯夫のジャック役、映画『イントゥ・ザ・ウッズ』(15)の女優メリル・ストリープがメリーの従姉トプシー役、映画『007 スペクター』(15)の俳優ベン・ウィショーがバンクス家の長男マイケル役、映画『シャッターアイランド』(10)の女優エミリー・モーティマーが長女ジェーン役で名を連ねる。
ストーリーはオリジナル版の時代から25年後のロンドンが舞台。大人になったマイケルとジェーンが不幸に見舞われた矢先、メリー・ポピンズが再び姿を現すという。脚本は映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(13)のデヴィッド・マギー。監督はミュージカル映画『シカゴ』(03)のロブ・マーシャルが務める。現地時間2018年12月25日より全米公開予定。(エキサイトニュースより引用)
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最近のディズニーは当たりが多いので、こういう失敗作を経験に成功を収めたのでしょうかね?
ありがとうございますm(__)m
お戻りですか(^^)またよろしくお願いしますm(__)m
この映画は、ディズニーの口当たりの良いファンタジーに対する抵抗の作品だと思いました・・・・
ありがとうございますm(__)m
この映画、ご存知なのが凄いです・・・(^^;
「スパカリ〜」は名曲だと密かに思っています(^^)