2016年10月23日

映画『東京公園』現代日本の「のどけき光」/あらすじ・解説・感想・意味

「東京公園」に集う若者



評価:★★★★   4.0点

この静かで、端正な、澄んだ光のスナップ写真を重ねたような映画を見て、現代日本の若者が持つ感覚が表されているように思いました。

東京公園あらすじ


幼少期に無くなった母親の影響でカメラマンを目指している大学生の光司(三浦春馬)は、東京の公園を訪れ家族写真を撮影している。光司は、彼にしか見えない高井ヒロの幽霊(染谷将太)と同居し、ヒロの恋人だった富永美優(榮倉奈々)も、光司の家を訪ねてくる。また光司は、ゲイの原木健一(宇梶剛士)のバーでアルバイトし、光司の義理の姉・美咲(小西真奈美)と富永は、このバーの常連客である。
そんな、ある日歯科医の初島(高橋洋)から妻、初島百合香(井川遥)を尾行し密かに撮影して欲しいと、バイト料を積まれ頼まれる。依頼主であるの態度に光司は迷いを感じながらも、なかば強制されるように依頼を受ける。初島の妻・百合香が娘と東京の公園をいくつも散歩する写真を撮る。そんな中、母が倒れ、光司と美咲は両親の住む大島へと向かう。美咲と光司は、百合香のこと、富永のことを話す。光司が大島の話を富永に話すと、彼女は美咲の写真を撮るべきだと言われ、美咲のマンションを訪れる。そこで二人はお互いのことを語り、お互いの心に変化が生まれた・・・・・・・・

(日本/2011年/119分/監督・青山真治/脚本・青山真治,内田雅章,合田典彦)
【出演者】
志田光司(三浦春馬)、富永美優(榮倉奈々)、志田美咲(小西真奈美)、初島百合香(井川遥)、志田杏子(井川遥 一人二役)、初島隆史(高橋洋)、高井ヒロ(染谷将太)、志田裕子(長野里美)、志田実(小林隆)、原木健一(宇梶剛士)、初島かりん(岩花桜)


========================================================
スポンサーリンク

========================================================

東京公園・感想・解説


ホームビデオのように、淡々と、演技とも思えないほど、日常の光景を積み重ねていくうちに、その日常に小さな棘のような変化が現れます。
最初はその棘が何を意味するのか、見ていて理解できなかったのですが、相変わらずの日常の変化の記録を追っていくうちに、少しずつ少しずつその棘の意味が明瞭になって行き、ついにはある種の大団円を迎えます。
この「ことさら」主張しない演出と、それを支える脚本の静けさが素晴らしいと思いました。

そしてまた出演者も、監督のプランに忠実に応えて見事だと思いました。
ふだんTVで見る表情とは、まるで違う演技に感動します。

【榮倉、小西、井川、三浦春馬】

この映画で語られているのは、主人公とその家族・友人など、ホントに身近な世界です。
その狭い日常世界にもさざなみは立ち、時には大きな波立ちにも感じられます。
この映画における波は、恋愛とその喪失の形として現れます。

この恋愛という個人的な問題を、しかし大騒ぎをするでもなく、最終的には淡々と収めるその姿が、今の日本の若者にとって違和感のない世界観なのだと感じました。

例えば、かつての映画のように恋愛を軸に、世界と対決して見せたり、無理やり対立項を強めてみたりという、力みはありません。
それは致し方のないことという、どこか淡白さがあります。

kiga_4.jpgしかしそれは、例えば日本以外の、特に発展途上国であったとしたら成立しないのではないでしょうか。
貧しい世界において大事なのは、働き手としての伴侶であり、どれほどの持参金を持ちえるかということが優先されざるを得ません。
また、恋愛の先の新たな生命を考えれば、愛や恋の前に優秀な子孫が求められるでしょう。
つまり多かれ少なかれ、恋愛とは結婚という社会制度につながり、更には家族とその属する共同体の一部ですから、大げさに言えば社会的整合性が求められるべきもののはずです。

そして、その社会的整合性の要求ゆえに、恋とは命を掛けたものにならざるを得ないのです。

tokyokou.jpgそう思えば、この映画で描かれた、マイノリティー的な恋愛や、ジェンダーから自由な人々というのは、実は日本という平和で安定した国の、さらに東京という生活感のない、一種フィクションのような場所だからこそ成立しえた世界なのだろうと思います。
そしてまたフィクションのような恋愛だからこそ、消えたところで取り乱さずに済むのでしょう。

この透明で希薄な生命力に乏しい人々が生きれる、世界的にも稀有な町が「東京」なのだろうと、この映画を見て思いました。
そして実生活から離れて、人々が集まる場所を「公園」と呼ばないでしょうか。
そんな「東京公園」を見て、現実離れした世界であり人々だと感じながらも、どこか愛着を感じるのは、「散る桜」の美と通じる潔さ、未練を残さずに散る美しさを、この映画の若者達に感じるからかもしれません・・・・・・
toukyou.jpg
ちなみに、この「東京=公園」は、1945年の焦土から半世紀以上を掛けて日本社会に富・財産を蓄積することによって、なにもせずとも生きられるという状況があって、はじめて構築することができた世界的にも希有な「公園」だとおもいます・・・・・
次の50年もこの公園が、今と代わらず、どこか透明感を持った、花を咲かせていられるでしょうか・・・・・・・

スポンサーリンク


posted by ヒラヒ・S at 18:27| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
比較的新しい作品ですね!ちょっと珍しいなと思いました。
だが残念未見です。
でもなかなか良さそうですね!
Posted by いごっそ612 at 2016年10月23日 20:05
こんばんは🙋何かよさげですね〜😃小西真奈美さんは好きな女優さんです🎵優しい人間関係の話はいいですよね。
Posted by ともちん at 2016年10月23日 20:11
>いごっそ612さん
ありがとうございます(^^)
そうですね〜やさしい静かな映画です。
日本的な淡白さを感じましたm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月23日 20:16
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)
柔らかくきれいな透明なビジュアルが印象的です。
日本の若者の草食系の恋愛が、柔くて良かったですm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月23日 20:18
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック