2016年10月14日

『激突!』襲い来るトラックの恐怖の映画・ストーリー・ネタバレ解説

一対一の対決の相手とは?



評価:★★★★★ 5.0

1971年スティーブン・スピルバーグ監督の出世作。
見て無い人はラッキーです。
ジョーズよりずっと怖いです。

激突!あらすじ
デビッド・マン(デニス・ウィーバー)は、カルフォルニア州を車で南に向って急いでいた。途中、40トンタンク・ローリーの運転にイラついて、アクセルを踏んでタンク・ローリーを追い抜いた。しかし、それからタンク・ローリーとデビッドの車の危険なデッドヒートが始まる。タンク・ローリーは執拗に追いかけ、追い越しスピードを落して道をふさぐ。前でノロノロ運転をし背後からアオる。デビッドは命の危険を感じ、必死の逃走劇を繰り広げるが・・・・・・・

(アメリカ/1972年/監督スティーヴン・スピルバーグ/脚本リチャード・マシスン/原作リチャード・マシスン )

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<激突・感想・解説>

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大型トレラーの運転に苛立った主人公が、クラクションを鳴らし強引に追い越しを掛ける。
そこから逆にトレーラーの執拗ないやがらせが始まり、ついには命の危険を感じて、隠れたり、ドライバーに謝ってみたり。
あらゆる方法を試みても、どれも甲斐なく、最終的に「西部劇」のように対決を決意します・・・・・


とりあえず、このシチュエーションが怖い。

何気なく追い越しを掛けたりとか、クラクションを鳴らすなんて誰でも経験がありますよね・・・・・
また、演出がうまくてこのトレーラーが身震いしたり、咆哮を上げるように突進したり、ライトが獣の眼のように光ったり・・・・
トレーラーのドライバーが出てこない事もあって、この車自体がまるで巨大な怪物となって、意思を持って襲ってくるように見えます。
duel2.png

でも一番の成功の理由は、眼に見えない圧倒的な力を持った何者かに押し潰されるという、現代人が持つ不可避の強迫観念みたいなもの、漠然とした恐怖、心の奥底にある禍々しい何者かををハッキリ呼び起こす力を、このトレーラーの執拗な脅迫という中に見出すからだと思います。

supiruba-gu.jpgスピルバーグ監督は、この物語に敢えて主題を持ち込まずに、追いかけっこを延々描くことで、狼に襲われる赤ずきんのような童話的な悪夢を観客にもたらしたと思います。

そしてこの映画の成功によって、以降『ジョーズ』や『ET』『ジュラシック・パーク』など、おとぎ話的な作品でヒットを生むことになります。



やっぱりただひたすら追いかけられるっていうのは、誰でも怖いですよね・・・
しかも相手が見えないと、結局、敵は自分の心の中でどんどん大きくなっていって・・・
最終的には自分の中の恐怖との格闘という事になってしまいます。
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以降に

『激突!』ネタバレ

『激突!』ラスト

を含みますので、ご注意下さい。
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flamerble.jpg
この映画の原題Duelとは一対一の決闘の意味。
この主人公は、実は自分の中の幻の恐怖と闘っていたのでは無いかと思うわけです。
 
その証拠にこのトレーラーに「flammable=可燃性」と書いているくせに、最後まで火を噴くことはないのです・・・・・・なんかユーレイっぽいというか、幻の存在のように感じませんか・・・・

やはり最大の恐怖とは自らの内に有り、心の中のその恐怖に立ち向かう行為とは、自らのコンプレックスや反社会的な、自らが封印してきた対象と直面することを意味します。

それゆえ、この主人公は自らの分身である車を、無意識の敵を倒すために、犠牲にしなくてはならなかったのだと思うのです・・・・・・・・

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関連レビュー:スピルバーグの戦争映画
『プライベート・ライアン』
第二次世界大戦の物語
トム・ハンクス主演・アカデミー賞受賞作品
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関連レビュー:スピルバーグの代表作
『E.T.』
SFおとぎ話
宇宙人と少年のヒューマン・ドラマ


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posted by ヒラヒ at 21:29| Comment(8) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは!これは怖かったですよね〜( ̄▽ ̄)最後まで相手の姿はないという・・何で恨みを買うかわからないですね。追い越し禁止!
Posted by ともちん at 2016年10月14日 21:50
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)
しかし、大分県に行ったらミンナ煽ってくるので恐怖を感じました。地元の人に聞くと、凄い事故が多いとのことでした(TT)
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月14日 23:22
これのリメイクかな?観たことがあります。
オリジナルは1971年・・多分見ていない
車のクラクション・・過剰はダメですね・・
怖い
Posted by いごっそ612 at 2016年10月15日 06:36
>いごっそ612さん
ありがとうございます(^^)
TVドラマとして作られたので、お金がかかってなさそうですが、その分シンプルで、恐怖の演出力の高さが伺えますm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月15日 14:24
テレビで放送された時のデニス・ウィーヴァーの吹き替えが何故か徳光和夫アナでした。
もちろんVHS、DVDには収録されておらず、まさに悪夢のような吹き替えでした。「何で俺がこんな目に(棒読み)」
こっちのセリフだよ!!
Posted by 兎おっさん at 2016年10月15日 17:57
>兎おっさんさん
ありがとうございます!徳光和夫アナは、きついですね〜
吹き替えの声によって、イメージが違ってしまいませんか?
イーストウッドの山田 康雄は違うんじゃないかと(^^;
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月15日 21:01
昔は字幕至上主義でしたが、最近は吹き替えもありかなと思うようになってきました。
たしかに吹き替えでだいぶ印象が変わりますよね。
必ず専属ならまだしも、放送局、販売元によって声優が違ったするのもイメージが固定しない原因かと。エディ・マーフィーが山寺さんVerと下條アトムさんVerではだいぶ違いますもんね。

私はイーストウッド=山田康雄派なんですよね〜

吹き替え映画も突き詰めていくと、なかなか奥深い世界です。
Youtubeで聴ける、ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルで脚本家の三宅隆太さんと語った「吹き替え特集」が面白いですよ。
Posted by 兎おっさん at 2016年10月15日 23:38
>兎おっさんさん
ありがとうございます(^^)
確かに、字幕も常に言葉が足りないですし、吹き替えの方が脚本通りのセリフになってますよね〜
結局、吹き替えのマッチングは先にどの声のイメージが、その人についているかだという気がします。
イーストウッドに関しては、私は本人の地味で暗い声のイメージが沁み込んでいるのだろうと思います・・・・・この声じゃ明るい役は出来ないな〜みたいな(^^;
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月16日 11:52
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