評価:★★★ 3.0点
ディズニー作品で見られるアメリカン・ファンタジーを、そのまま細部まで緩むことなく映像化した事に、拍手を送ります。
また、童話といえば出てくる女性は、善良な乙女か、邪悪な魔女という定型を覆して、生々しい女性の情感を伝えて見事です。
これは、女性監督だからこそ、若い女性が持つ恋に対する、ためらい、恥じらい、誘惑、戦慄、期待、など男性には描ききれない感情を汲みだせたのだと想像します。
『赤ずきん』あらすじ
中世の村でバレリー(アマンダ・セイフライド)は、村の裕福な家の跡取りヘンリー(マックス・アイアンズ)との婚約が決められたことを知る。しかし彼女には秘密の恋人、木こりのピーター(シャイロー・フェルナンデス)がいた。2人は駆け落ちを決意するが、血のように赤い満月の夜、バレリーの姉が何者かに殺されてしまう。この村は、古来、生け贄を捧げることで魔物の襲来を回避していたが、ついに犠牲者が出たのだ。復讐のため村人たちは、魔物ハンターのソロモン神父(ゲイリー・オールドマン)を村に招く。村を調べたソロモンは、魔物は満月の夜だけ狼に変わる「人狼」で、村人たちの中の誰かだと告げる。犠牲者は更に増え村人が混乱する中、"狼"があらわれバレリーに言う“一緒に来い”・・・・狼男の正体とは・・・・。
『赤ずきん』予告
(アメリカ・カナダ/2011年/120分/監督キャサリン・ハードウィック/脚本デヴィッド・レスリー・ジョンソン )アマンダ・サイフリッド(ヴァレリー)/ゲイリー・オールドマン(ソロモン神父)/ビリー・バーク(セザール)/シャイロー・フェルナンデス(ピーター)/マックス・アイアンズ(
『赤ずきん』出演者
ヘンリー)/ヴァージニア・マドセン(スゼット)/ルーカス・ハース(オーガスト神父)/ジュリー・クリスティ
(おばあちゃん)
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『赤ずきん』感想・解説 |
この映画のテーマは、人の情念の持つ「執着」の怖さを描いて、スリルとサスペンスとしているようにに感じました。
人の持つ恋などの強い思いが、禍々しい邪悪な力に変わる様を=「狼」に変身する「人間」で象徴しているように思います。
出演者も「マンマ・ミーア!」のアマンダ・セイフライド、「ダークナイト」のゲイリー・オールドマンという、ちょっと気になる俳優で、監督は「トワイライト〜初恋〜」のキャサリン・ハードウィックですので、危険な恋が好きなら見なければいけません。
これらの利点をザックリまとめて☆3.0とさせて頂きました。

褒めただけで終われないのが、悪い癖で・・・・この映画を好きな方はスルー願います。
まず作品的な混乱を指摘させて頂ければ、女性の艶めかしいリアリティを描いたがゆえに、ファンタジーの意匠をまとっていながら、どこか現実的な作品世界として定着していると感じました。
その事によって、おとぎ話=ファンタジーの持つ、現実世界の歪みや澱を仮想世界と典型的人物に仮託させ、魔術的な世界の展開の果てに「解消=死・消滅」させることでカタルシスを得るという、この物語様式が本来持つ力を殺いでしまったように思います。
この女性監督の別の作品を見れば、純粋ファンタジーというよりは、ファンタジー・ティストの世界感の中で危険な相手との恋を描く事を、得意にしているように思います。
それから考えれば「娘と人狼の運命的な恋」というのが、本来この監督が撮るべき映画なのかな〜と思います。
しかし、ハリウッドの現実はそれを許しません。
その変わり展開されるのが、誰が「狼」なのかの犯人探しのミステリーとサスペンス、そして狼を狩るアクションシーンです。

これは、基本的には物語やテーマの要請というよりは、ハリウッド映画界の「賭けた資金と利益の回収」という厳しいビジネスの掟ゆえだと考えます。
往々にしてハリウッド映画の資金回収パターンは、恋愛、アクション、ミステリー、笑いなどの要素によって、人の情動に刺激を与える事によって利益を生み出そうとします。
この映画に関しても、恋愛とアクションとミステリーが刺激の主役として、観客の関心を引こうと必死です。
しかし、残念ながら前にあげたテーマ性が強くにじんだために、これらの刺激がストーリーの本質から遊離してしまい、エンターテーメント性とテーマ性が相反する方向に向かってしまったように思います。
そして、映画としてのまとまりがなくなったように思うのです。
いい雰囲気だっただけに、おしいな〜です。
そこで、哀しいおとぎ話を一つ・・・・
昔々、狼と娘の美しいファンタジー物語を、お金を払って買ったお金持ちがおりました。
お金持ちは、そのお話を聞くためだったら、皆いくらでもお金を払うに違いないぞと思って、舌舐めずりしていたのです。
しかし、その物語をもっと面白くすれば、ますます儲かると思いだしました。
そこで激しい戦いのお話を更に買って、その美しいお話に付け加えました。
しかし、無理やりそんな話を入れたもので、もとのお話の美しさが無くなってしまいました。
お金持ちはそれに気がつきましたが、もう大金をつぎ込んでいるので元には戻れません。
そこでお金持ちは、更にいろいろ刺激的な話を買いまくり、恋愛を入れたり、人を殺してみたり、その犯人を探させてみたりと、聞く者が興味をもちそうな話をどんどん入れました。
そして、結局何の話かわからなくしてしまいました。
それでもアキラめきれないお金持ちは、本物の狼にこの話を演じさせれば、皆珍しがって儲かるに違いないと考え、狼の元に行きました。
話を聞く前に、狼に食べられてしまいました。
こうして、お金持ちは「お金」も「美しい物語」も「命」も喪ってしまいましたとさ・・・・・。めでたしめでたし?
アマンダ・サイフリッドのインタビュー
キャサリン・ハードウィック監督の「トワイライト〜初恋〜」女性陣メロメロのラブストーリー
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ありがとうございます(^^)
女性目線で行けば、危険な恋は魅力的でしょうね〜
そういう意味では「ゴースト」のような。
でも、狼の正体「お前か!」と突っ込み入れたくなりませんでした?
ありがとうございます。
絵はキレイでしたね〜どこか艶かしいテーストで・・・・
脚本が混乱していると思うんですが・・・(^^;