評価:★★★★ 4.0点
じつは、この映画は何度も見ていて、その度に胸が熱くなるのです。
それでいながら、その感動が何故であるのか、どこから来ているのか、どこか掴みきれないもどかしさがあって、レビューを書くことにためらいがありました。
<おおかみこどもの雨と雪あらすじ>
大学生の花(声:宮崎あおい)は大学で、人間の姿をしていながらもおおかみという狼男(声:大沢たかお)と出会う。二人は惹かれあい同棲を始め、やがて子どもを授かる。生まれて来た姉の雪と弟の雨も、父と同じ狼人間だった。家族4人は都会の小さなアパートで、ささやかながらも幸せだった。しかしある雨の日、父が死んでしまい、おおかみこどもの姉弟を女手一つで育てる花は、豊かな自然の残る田舎に移住する。そこでは、家族3人慣れない田舎暮らしに戸惑いながらも、周囲の人々に助けられながら自給自足に近い生活を営み、子供達も成長していくのだった・・・・・・・
(日本/2012年/117分/監督・脚本 細田守/キャラクターデザイン貞本義行)
<おおかみこどもの雨と雪・感想・解説>
このアニメが語るもののヒントを得たと思ったのは、ハリウッド映画の「赤ずきん」を見たときでした。
その映画自体は混乱してちょっと困った出来でしたが、リスクを知りながらも「恋」ゆえに「狼」を待つ主人公の姿が、なかなかメロウでロマンチックでした。
そして気が付いたのです、この映画も「狼=危険な恋」に魅せられた「娘=赤ずきん」の物語であり、同時に「狼=危険な恋」が終わったあとの後日談ではないかと。
そして主人公の女性が表わしているのは、危険と知りつつ近寄ってしまう人間の性と、その危険を引き受けてでも相手と添おうとする、人の想いの強さだと思うのです。
これは女性側から見れば、男性を選び、恋をして、結ばれることが「赤ずきん」の物語と同様常に危険を伴う行いであり、同時に危険であればある程強く執着せざるを得ないという「恋」の真実を表しているように思います。
その結果「赤ずきん」が背負うべき過酷な運命、新たな命の養育が待っているのです。
そう思ってみれば、この映画の「狼」が早々に映画から消え去るのは、この女性が「赤ずきん=無垢な少女」から「母」と変わるその変化は、最終的に女性が自ら選択して初めて成し得る変容であり、結局男性が女性の人生に根本的に関わる事はないと語られているように思います。
女性にとって本質的に関わる人々が、母であり自ら産んだ子である時、命の系譜を紡ぐ必然の中で危険な恋を経ざるを得ないし、同様に男性とは「子=命」を生むための一過性の必要でしかないと告げているように感じました。
それゆえ、娘の「雪」は母と同様「恋=危険」の味を知って「女」の人生を歩みだし、息子の「雨」は母の手の届かない場所に去ってゆきます。
そういう意味で、この映画は「女性映画」であり、同時に人類の「命のつながり」を描いた映画だと思いました。
こんな形で考えてみれば、このテーマを描くためには「恋という危険な行為」を表す「狼」、「命を宿し育てる女性」を表す「強く自立した女性」、そして「女性の本質が命=自然である」ことを現す「自然=田舎」の描写が必要であったと思うのです。
そして何よりも必要だったのは、このテーマを際立たせるための理想的な人間や自然の裏側に、現実ではあるモロモロの苦しみを感じさせない事だったのではないでしょうか?
例えば、実写でこのアニメのまま母を描けば、世の子育て世代の母親たちから「有り得ない=リアリティを持ち得ない」存在だと非難されるでしょう。
かといって実写に合わせ、もっとシングルマーザーの現実の労苦を書き込むのであれば、ファンタジーとして成立しないに違いありません。
またこの美しい自然も、そこに潜む禍々しい脅威が、実写映像にしたならば峻厳過酷に感じざるをえないでしょう。
そして何よりも、ここで描かれた狼人間の生活を実写化するのは、特殊効果を駆使しても、物語のイメージに合わせるのは相当困難かと思います・・・・
そういう意味で「アニメ」には実写化した時の現実の重みから自由でいられる「ファンタジー化作用」を持つように感じました。
ただ惜しむらくは、自然・現実的描写が上手すぎて、ややもすると「アニメ」として見れないためイメージに混乱が生じたように思います・・・・それゆえマイナス☆1です・・・・・
と書いておいて何ですが・・・・・・・どんなに過酷な現実でも、恋というファンタジーをまとったならば、少女は否応なく母になるのかも知れません・・・・なんてキザなことを思ったりしました。
細田監督作詞、高木正勝作曲、歌:アン・サリー。主題歌「おかあさんの唄」
この歌詞に細田監督の思いが詰まっているようにおもいます・・・・
関連レビューはこちら⇒「赤ずきん」
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ラベル:細田守
個人的には『サマーウォーズ』がナンバーワンですが(笑)
細田守も新海誠が出てきたので次回作気合入れなければなりませんね。
ありがとうございます!
母の強さに泣きました・・・・サーマーウォーズが家族で、これが母で、化け物が父の物語だと、今気が付きました(^^)
ありがとうございます(^^)
男目線だと、ただただ母は偉大だと感じますが・・・・
ただ現役母は、こんなナマッチョロイものじゃないという声もあったりして、配慮してみましたm(__)m