2016年09月22日

映画『ベストキッド(1984年)』マイノリティーの勝利・あらすじ・感想・解説

御当地ソングのパワー



評価:★★★★   4.0点

この映画シリーズは大ヒットして1〜4まで作られ、更に2010年にジャッキーチェンでリメイクが作られるほど、世界で受け入れられた作品です。
しかし、個人的にこの第一作にある疑問を持ってきました。
それは、主人公がヒスパニック系のラルフ・マッチオで、副主人公とも言うべき存在が日系人のパット・モリタだということです。
子供のころ見たときには、何とも思わなかったのですが、実はこれは不思議なことではないかと感じるようになって来たのです・・・・・・・・・・・・

ベストキッドあらすじ
母のルシール(ランディ・ヘラー)と高校生のダニエル(ラルフ・マッチオ)は母子家庭。ニュージャージーからカリフォルニア州サンフェルナンド・バレーに引っ越して来た。その地で女の子アリ(エリザベス・シュー)と知り合うが、アリを好きなジョニー(ウィリアム・ザブカ)率いる不良グループにいじめられる。ダニエルはカラテ道場コブラ会に入門し鍛えようとするが、そこにはジョニー達がいた。
ハロウィンの夜ダニエルがジョニーのグループにイジメられている所に、日本人・ミヤギ(ノリユキ・パット・モリタ)が現れ彼を救う。ダニエルはコブラ会を退会し、3ヵ月後の学生カラテ・トーナメントでコブラ会とジョニー一派と闘うために、ミヤギとともに一見奇妙な特訓を始めるのだった。そして、ついにカラテ・トーナメントの日が来た・・・・・

(アメリカ/1984年/126分/監督ジョン・G・アヴィルドセン/脚本ロバート・マーク・ケイメン)
監督ジョン・G・アヴィルドセンは『ロッキー』の監督。
脚本ロバート・マーク・ケイメンはこの映画以降、『96時間』シリーズや『トランスポーター』シリーズを手がける人気脚本家に成長。


実を言えば、ハリウッドのブロックバスターと呼ばれるような超大作映画では、ウイル・スミスのようにスターになってしまえば別ですが、通常は白人が主役になります。

これは、アメリカの映画観客を考えたとき圧倒的に白人層が多い事を考えれば、観客の持つ属性に近ければ近いほど、見る側が感情移入をするという原理に従い、必然的に導き出されるキャスティングによるものでしょう。

そう考えた時、この映画のキャステイングは不思議です。
ラルフ・マッチオは「アウトサイダー」に出ていたとはいえ、スターと呼ぶ存在とは言えません。
しかも、ヒスパニック系・日系のマイノリティ軍団に倒される敵役が、白人(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント=WASP)です。

つまりは、マイノリティがメジャーを退治するという映画であり、これは白人にとって愉快な物語ではありえません。

そういう事実を整理してみれば、この映画は多分マイノリティに向けて作った映画であり、マイノリティが顧客だとすればさほど多くの収益を上げられない映画だという事になります。besutokid.jpg

逆に考えれば、マイノリティの顧客、ここではアジア系・ラテン系、の集客見込み=収益を元にして、映画製作費を考えたのでは無いかと想像します。
だとすれば、この映画のキャステイングは出演料を多額にできなかったでしょうし、映画全体としても大がかりなロケだとか大規模なスペクタクルはムリだったに違いありません。

第一作目のそこはかとなくチープな質感は、以上の結果によるものではないでしょうか。

しかし、この一作目は予想外の大ヒット、$8,000,000の予算で$90,800,000の収益、になりました。
そこにパット・モリタの演じる日本的な謙譲と、柔よく剛を制するの精神が世界に深い感動を与えたからだと、日本人としてそう思いたいのはヤマヤマですが・・・・・・・

ぶっちゃけ「日本のマーケット=映画観客数」がたくさんいたというのが、成功の鍵を握ったようにも思うのです。
日本のマーケットというのは、一億人以上の人口を背景に相当の収益が見込まれる市場です。

そのいい例が、野球を題材にした映画に見て取れます。
「がんばれ!ベアーズ大旋風 -日本遠征-」はシリーズの3作目、石橋貴明の出た「メジャーリーグ」は2〜3作目というように、いずれも世界で野球文化を共有する数少ない国=日本でこの映画の一作目がヒットしたが故に、日本のマーケットを意識しての設定であり出演者を使ったシーリーズ続編というわけです。


この「ベスト・キッド」のシリーズ2作目は、沖縄が舞台でしたが、それもこういう事情だろうと思うわけです。
<カラテキッド2予告>
しかしこの映画は日本の観客から見ると不思議な沖縄ですが、$115,103,979という、一作目以上の利益を生んだので3作目が撮影されたと想像します。世界的に見ればエキゾチック日本と喜ばれたのだということでした。

しかしこの映画のヒット、ハリウッド映画界に一つのビジネスモデルを提供したように思います。
それはマイノリティを描いた映画も、その観客収益に見合う資金で上手く作ればペイし、さらに他人種も巻き込めれば大化けするという事実です。
例えばこれ以降日本人を意識した、日本マンガの実写化や、ヒスパニックを意識した「ラ・バンバ」など、隙間を狙ってスマッシュヒットを産みだしたりしています。

この心配りが、ハリウッドの映画産業をますます巨大なものに変化させたように思います。

やっぱり御当地ソング=特定の人々に訴える作品は、その人達の心を捉えて離さない力がありますよネ。

「ベストキッド2」映画はともかく、ピーター・セテラの主題歌「Glory Of Love」は良い曲です。


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posted by ヒラヒ at 05:17| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは🙋なるほど。ヒスパニック系だのアジア系だの考えた事がありません😅最後は正義が勝つのって万人受けするとしか思ってませんでした。古いほうをスカパーで観ました(ФωФ)
Posted by ともちん at 2016年09月22日 19:40
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)単純にスッキリしますよね。
ミヤギさんキャラ立ってるし・・・・
Posted by ヒラヒ・S at 2016年09月22日 21:52
ベストキッドかあ〜懐かしいなあ
新しく出るたびに、主人公の彼女が変わっているのは笑いました。
リメイク版もけっこう良かったすよ!
Posted by いごっそ612 at 2016年09月23日 06:35
>いごっそ612さん
ありがとうございます(^^)
リメイク版も、シッカリ押さえるところ押さえてましたね。
個人的には『ベストキッド4』のヒラリー・スワンク(ミリオンダラーベイビーの女ボクサー)もチョット好きですm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年09月23日 14:19
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