2016年10月07日

『海街diary』広瀬すずが妖精のような映画/あらすじ・感想・解説



評価:★★★    3.0点

広瀬すずの瑞々しい魅力に感動しました。
しかし、同時にどこか彼女がこの世の存在ではない、妖精のようにも見えたのでした・・・・

海街diaryあらすじ
神奈川県鎌倉市で暮らす三姉妹、長女・幸(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)のもとに、自分たちが幼い頃に離婚して家を出て行った父の訃報が届いた。三人は父の葬儀が行われる山形に向かい、母親違いの妹・すず(広瀬すず)と出会う。父の再々婚相手の家族と暮らしていたすずは、その家に血のつながる者をなくしていた。そんなすずに幸は、鎌倉に来て一緒に生活をしようと声を掛け、四姉妹の暮らしが始まる。その鎌倉を舞台に4姉妹の恋や別れ、家族間の葛藤など日々の出来事を丹念に描いていく。

(日本/2015年/126分/監督・是枝裕和/脚本・是枝裕和/原作・吉田秋生 )
上記以外の出演者加瀬亮・鈴木亮平・池田貴史・坂口健太郎・前田旺志郎・キムラ緑子・樹木希林・リリー・フランキー・風吹ジュン・堤真一・大竹しのぶ

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海街diary感想
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丹念に撮られた是枝監督の、すでに「是枝調」(勝手に私が名付けましたが)と呼ぶべき作品の色を持った、映画だと感じます。
個人的に大好きな、『ディスタンス』『歩いても歩いても』や『そして父になる』の系譜に連なる一作だと思います。

基本的な作品コンセプトは「是枝調」に共通の、日常を可能な限り日常のままフイルムに収め、その中で浮かび上がる日常の些事に潜む人の心や、家族のしがらみを、繊細に描写するところが持ち味だと感じます。

この是枝監督の作品群は、昭和の巨匠小津安二郎の「家族劇」の伝統を引継ぐものだと感じます。小津監督の描いたのは、自らの美意識に作品世界を従属させ、小津の様式の元に日本の日常を美へと昇華するものだったと感じます。
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しかし今回、是枝監督の描くこの映画の日常は、どこか希薄で、淡白で、美しくはあるけれども浮遊しており、これまでの是枝作品に較べれば、小津の伝統を継ぐ日本の日常に潜む人間関係の棘のような痛みや凄みが感じられないのが不思議です。

また今回の作品を見て、個人的には四人姉妹を描いた別の映画、谷崎潤一郎原作、市川崑監督の『細雪』を想起しました。
この美しい映画は、第二次世界大戦前の階級社会が持つ美意識を映像に定着したモノだったと思います。

sasameyuki.jpg

しかしやはり、この映画の四姉妹は美しくはあるけれども、『細雪』に較べれば、どこか地に足が着いていない気がして、いつもの恐ろしいほどの「日常のリアリティ」がなく、冒頭でも書いたとおり4姉妹が妖精のように感じられ、従来の是枝作品とは趣が異なっているように思います。

映画では父親が女性に走り、母親も子供を捨てて家を出て行きます。
それゆえ、長女は子供時代を喪い、大人として妹達の面倒を見ざるを得ませんでした。
そんな長女と同じ運命を背負ったのが、だらしない父親と幼少期を過ごさなければならなかった、妹・すずでした。
umimaci.jpg

結局この姉妹は「大人=親」の欠落を子供達が健気にも埋め、お互いの寄り添う気持ちによって家族として暮らす物語です。

それは、親が親として機能していない、現代日本の家族の肖像を示すものだったでしょう。

同時に、家族の紐帯がすでに血縁関係によって保証されるものではなく、家族個々の意思によって形成されるべきだという提言のようにも感じられます。

そう見てくれば、過去の是枝作品に共通する、「家族=血族」として機能していない、現代日本の家族をテーマに置いた映画だったでしょう。

しかし、繰り返しになりますが、この映画は過去の作品から較べればリアリティーが希薄で、妖精のような儚い美が浮遊している映画だと、個人的には感じられて仕方がありません。

実を言えば、これ以前の作品『空気人形』にも一種の違和感を覚えました。

しかしそれは、その作品がファンタジーという作風ゆえの触感の違いかと思っていたのです。

しかし、この映画を見て『空気人形』と同じ違和感を感じたとき、是枝監督は描くのが苦手な対象があるのではないかと感じるようになりました。


つまりは『空気人形』のペドゥナや『海街diary』のように若い女性達を描こうとすると、是枝監督の表現はどこか希薄で浮遊した顔を見せるのだと感じるのです。

それは、写真家が美しいモデルを前にした時に、モデルの魅力に惹き込まれて、モデルに「撮らされる」という経験をするそうですが、その状況下では結果として自分の写真に成っていないといいます。

失礼ながら、この映画でも同様の事が起きたのではないでしょうか・・・・・・

umimati-1.jpg

この映画での是枝監督は、これまでのように人間性の奥底にある闇を、日常の描写の中で表出させるという、恐ろしいほどの演出力を行使し得ていないと感じました。
それゆえリアリティーがあってしかるべき物語でありながら、どこか『空気人形』と同じような、キレイなファンタジーのように見えてしまいました。

その原因は、つまるところ、四人の娘達のオーラを前にして、彼女達の内面を掘り下げるところまで追いきれず「ファンタジー」となってしまったと、僭越ながら想像しました・・・・・・・・

カンヌ映画祭のレッド・カーペットを歩く、美しき4姉妹と是枝監督

例えばこの映画を、古くは「溝口健二監督」、今なら「河瀬直美監督」が撮ったならば、そこには女性特有の心理の奥底が顔を覗かせたようにも思ったのです。

この映画単体の美しさを見れば★4は十分あると思うのですが、他の是枝監督作品と較べたとき一段下がると感じ★3とさせて頂きました。

関連レビュー:小津安二郎監督『晩春』
関連レビュー:市川崑監督『細雪』
関連レビュー:是枝裕和『空気人形』

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posted by ヒラヒ・S at 17:23| Comment(4) | TrackBack(1) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは(ФωФ)TSUTAYAでチラチラ気になってました。観たいですね〜いい役者さん出てますよね🎵現実的には一緒には暮らせないだろうなぁと。う〜ぬ、、、ドロドロしてるはず(笑)
Posted by ともちん at 2016年10月07日 18:05
>ともちんさん
有り難うございます。(^^)キレイな映画で、標準以上なんですが・・・・
いつもの是枝監督のスゴミが感じられないという。
ちょっと、鼻の下が伸びたかと💦
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月07日 18:48
広瀬すずちゃん可愛かったですね〜。
今『ちはやふる』見ていますがなかなか演技も上手いですね!
こんな四姉妹がいたら評判でしょうね。
Posted by いごっそ612 at 2016年10月07日 19:57
>いごっそ612さん

ありがとうございます(^^)かわいかったですね〜
女姉妹というのは、ちょっと男からは想像できない世界があるようにおもいますね〜キレイな映画でした
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月07日 20:42
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