2016年09月06日

園子温映画『冷たい熱帯魚』壮絶グロ殺人事件/実話解説・あらすじ・ネタバレ・ラスト感想

血で描く家族の肖像

tumetai .jpg

評価:★★★★   4.0点

この恐るべき犯罪を描いた、狂気のような映画「冷たい熱帯魚」は実話を元にした作品だ。
その事件を元にして、園子温監督が脚本を書きメガホンを取った、人間の深淵を覗き込むような恐ろしさを秘めている。
「埼玉愛犬家連続殺人事件」
1993年に埼玉県熊谷市のペットショップ「アフリカケンネル」を舞台に発生した事件。犯人であるペットショップ経営者夫婦が詐欺行為を働き、それが露見する前に連続して被害者愛犬家を殺害していったもの。当時、その残虐性と死体を溶かし証拠隠滅を図った異常性が世間を騒がせた。主犯として逮捕された元夫婦の関根元被告と風間博子被告は2009年に死刑判決が確定し、現在も収監されている。(本件共犯者の手記→)

埼玉愛犬家連続殺人事件 WikiPediaリンク:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%BC%E7%8E%89%E6%84%9B%E7%8A%AC%E5%AE%B6%E9%80%A3%E7%B6%9A%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6

この凄惨な事件をドラマとして描き、その血塗られた殺人シーン、死体処理の様子を、これでもかとばかりに画面上で繰り広げる。
でんでんの怪演を見るだけでもトラウマになりそうなほどの迫力を持つ。
また、主役の吹越満が徐々に沼に沈むように、精神的に追い込まれていく様は本当に悪魔的で、戦慄を覚える。
見る価値は十分なのだがR―18のレィテイングもあり、グロテスクな描写に満ちているので、血が苦手な人は見ないほうが良いだろう。

冷たい熱帯魚あらすじ


熱帯魚屋を経営する社本信行(吹越満)は、妻・妙子(神楽坂恵)、娘・美津子(梶原ひかり)との3人暮らし。家庭内は後妻に入った妙子を美津子が嫌い、妙子もそんな暮らしに疲れ結婚に後悔していた。そんな冷えた家庭に、ある日スーパーマーケットで娘が万引きしたという電話が掛かる。二人はスーパーに謝罪に赴くと、そこに居合わせた村田幸雄(でんでん)が助け舟を出してくれた。村田も熱帯魚店を経営しており、社本とその家族を招いた。そこで村田は妻・愛子(黒沢あすか)を紹介し、美津子に村田の店で住み込みで働かないかと提案する。そんな縁で社本は村田と付き合うようになったある日、村田の熱帯魚店に呼び出された。そこには弁護士の筒井(渡辺哲)と、客の吉田(諏訪太朗)がいた。そこで、社本は吉田の殺害現場を目の当たりにし、さらに村田と愛子が死体の解体作業を始める手伝いを命じられる。しかし、これは始まりに過ぎなかった……

という訳で、この映画は殺人の狂気と、人の血で満ち満ちている。
それは強いインパクトを持つもので、見ている方は刺激を通り越して、なぜこれを見せられなければならないのかと自問自答をせざるを得なくなる。
その答えは、この映画の中で間違いなく表現されていると思う・・・・・・・・・
tumetainet.jpg

====================================================
====================================================
====================================================
以降ネタバレがあります。ご注意下さい!!!
====================================================
====================================================
====================================================

この映画は、過剰に血とグロテスクな死体解体シーンが繰り返される。
さらに、レイプや暴力など、反社会的な行為に満ちている。
その強い刺激がなぜ描かれなければならなかったか?

作中で、登場人物の村田幸雄(でんでん)は言う
「ずっと親父に殴られて、反抗する気力も無くしちまった」
「社本、お前もそうだろう」

つまりは、殺人者村田とは強い父権下で成育し、反抗すら許されなかった人格の成れの果てなのだ。
彼が幼児虐待の被害者であるとすれば、成長して暴力行為の加害者もしくは被害者になるケースや、不安や自己破壊的行動に走ったとしても、驚くにはあたらない。なぜなら、それだけの傷をその心に負っているからだ。

この映画で繰り返し描かれる死体処理シーンが、父権の象徴とも取れるキリスト像と共に描かれる時、村田にとってこの解体作業とは父に対する復讐であり、自らの過去を昇華する作業ではなかったか。
つまりは、この映画の血と暴力などの反社会的な行為の執拗な描写とは、一見ありきたりな「不幸な家庭で育った人間の悲劇」を、その過剰な刺激をテコに賦活させる試みであり、それは明らかに効果を上げていると感じる。
tumetainettai.jpg
このドラマで語られた、成育家庭に恵まれなかった子供たちが、生涯に渡ってどれほど苦しめられるかの証明としてこの映画はあるだろう。

また、この村田に支配された社本は、新たな「虐待者=村田」を父として奉じ、反抗を封じられていた。
しかし、最終的に村田を殺し、村田の妻を殺し、自らの妻を殺し、ついに社本自身も自殺する。
これは、虐待された子供が親となった時、自らの子供を虐待してしまうという、「負の連鎖」があるという。
その連鎖を断ち切るためには、自らの命を投げ打つほどの強い覚悟と、犠牲心によってのみ、成し得ると語られているのではなかろうか。

映画の題名「冷たい熱帯魚」には、悲しい生い立ちを背負ったがゆえに「冷酷な人間」にならざるを得なかった者の、哀しみの姿を見出す。

========================================================
関連レビュー:園子温監督作品
『紀子の食卓』
「自殺サークル」の姉妹作品
平成の家族の行方
『自殺サークル』
「紀子の食卓」の姉妹作品
集団自殺はなぜ発生したか?
『愛のむきだし』
愛と宗教を巡る冒険
西島隆弘, 満島ひかりの体当たり演技
『リアル鬼ごっこ』
女子高生達が追い詰められる!
トリンドル玲奈, 篠田麻里子,出演
『ちゃんと伝える』
園子温監督の自伝的作品
AKIRA主演の父と子の別れ


スポンサーリンク
posted by ヒラヒ at 17:21| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは!子供の頃虐待を受けた人は自分の子供を虐待する確率が高いとか。確かに負の連鎖ですね(´・ω・`)ただの暴力シーンだらけの映画では無いようですね。吹越さんは・・おちゃらけてる役が似合うんですが(笑)
Posted by ともちん at 2016年09月06日 20:51
>ともちんさん
ありがとうございます。凄まじい血と暴力なんですが、やはり眼が離せないという・・・・吹越さん・・・・・・怖いです。イッチャッテマスm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年09月07日 00:12
いや〜凄い映画でしたよね(^^;
園子温作品はヤバいと思わせる作品でした。
Posted by いごっそ612 at 2016年09月07日 05:40
>いごっそ612さん
ありがとうございます。血まみれでしたね((((;゜Д゜)))
でんでん怖かったですね〜実話を元にしているのは知りませんでした(^^;
Posted by ヒラヒ・S at 2016年09月07日 07:21
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック